【一部完結】Fate/Grand Order〜Bの因子〜 作:ちょっつー
ジードからもう3周年って本当です?
さあさあ、レッドファイッ!!の始まりです。
感想、評価お待ちしてます
誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく
それは、ガウェインの掛け声と共に聖罰が始まってすぐだった。
今すぐにでも難民の人たちを助けるために動きだそうとしていた私の手を、ベディヴィエールさんが掴んで抑えてきた。
(落ち着いてください博樹殿。私たちの目的は聖都への侵入です、難民を助ける事ではありません)
(そんな! 見捨てろっていうんですかここにいる人たち全員!!)
(人理を正し! 元の歴史に修正する!! それが貴方の使命のはずです!! それを忘れてはいけない。……人理を修復すれば、この聖罰の犠牲も無かったことになる。自分の使命を忘れず、どうか落ち着いてチャンスを待ってください)
────ッ!! ベディヴィエールさんの言ってる事は正しい。人理を修復する、その使命を全うするためなら、今から失われる命は見捨てて最善の道を選ぶことの方が確かに大事だ。
言われていることの意味は理解できる。みんなを、家族の事を助けるためを思えばそうする事が一番だから……。その為なら、一時の感情に蓋をすることだって……。
そうやって私はベディヴィエールさんの言う通りにしようとしたその時。あの親子の声が聞こえてきた。
獅子王の聖抜を拒んだ母親サリヤさんは、周りで始まった聖罰から自分と息子のルシェドくんがこの後どうなるのか理解して、足が震えて動けないのかへたり込みながらも、ルシェドくんの事を守ろうと強く抱きかかえながら目の前に立つガウェインを見ている。
「獅子王の聖抜は聖なる儀。この滅びゆく世界で唯一無二の安住の地、それこそが獅子王の治めるこの聖都。
────は?
(たかだが子供一人の命だと……!?)
(博樹殿……?)
「恨むのなら、親子ともども聖抜に選ばれなかったその不運を恨みなさい!!」
ガウェインが親子に剣を振り下ろすその時、「お母さん?」と何が起きているのか分かっていない子供を抱きかかえながら、母親は同じ言葉をずっと繰り返し呟いていた。
「どうか、この子だけは……どうか、この子だけは……!!」
────助けて
その声が、私には妻の声と重なって聞こえた気がした。
『フハ、フハハハハハハハ!! 逆鱗に触れたなぁ!!』
ベリアルさんが頭の中で何か言っているようだが、どうでもいい。
気づけば、ベリアルさんが動かしている訳でもないのに身体が勝手に動き出しガウェインへと向かって行っていた。
目視できない程の速さで、知覚できないほどの鋭さで、ガウェインの顔面目掛けて全力の拳を放つ。
「ガ……ハッ!!!?」
『さあ、見せてみろ宮原博樹!! お前の怒りを!! その猛りを!!!』
「何をやっているんだよ……アナタはあああああああっ!!! 」
・
・
・
・
(何が……起きたというのです!?)
難民たちも、傍らに控えていた騎士たちも、ガウェイン本人すらも理解できなかった。
獅子王の聖抜を拒んだ親子を粛正しようとしたその瞬間に、正門に叩きつけられていたのだから。
(あの男が、やったというのですか……!!)
ガウェインの目に映るのは、表情からも、その身から放たれる威圧からも分かるほどに強大な怒りを向けてくる相手だった。
ガウェインが叩きつけられた壁からズルズルと自然に落ちると、そんな彼のことを守ろうと粛正騎士たちが博樹の前に立ちふさがる。
「貴様!! 円卓の騎士であるガウェ「邪魔なんだよ、貴方たちに用はない」え?」
粛正騎士たちが言葉を言い終わる前に、博樹は回し蹴りで騎士の事を地面へ叩きつけもう一方の騎士へはギガバトルナイザーを投げつけ、その身体を貫通させて倒した。
(私の騎士たちを、こうも容易く!? 何だ、この男は!?)
「なあ、貴方はあの親子を見ても、何も感じなかったのか? 」
「……貴方が異邦から来た旅人、人理を正すべき訪れたマスターですね」
ガウェインの問いに答えずに、博樹は彼の目の前に立つ。
今度は油断することはないガウェインは、近づいてきた博樹の事を斬るために聖剣ガラティーンをその自慢の腕力で振り下ろす。
「なっ!?」
(ガウェイン卿のガラティーンを片手で! しかも素手で受け止めた!?)
「質問してるのはこっちなんだよ。先にこっちの質問に答えろ」
博樹はガウェインの質問に答える気は一切ない。腹部へ向けられてた蹴りをガウェインは左手で受け止めたが、そんなことはお構いなしに博樹はガウェインの事を強引に蹴り飛ばす。
「なんであの人の手があんなにも黒いと思う? なんで足が焼け爛れていると思う!! 」
「ガっ!?」
最初喰らった一撃のように吹き飛ばされることはなかったが数メートルほど後ろへ下がらされたガウェイン。追撃に対して即座に反応しようと顔を上げると一瞬で目の前へと移動してきた博樹がナイザーを振り下ろしていた。 ガウェインは剣でその攻撃を受け止めるがその攻撃の重さに地面が割れる。
「
「グっ!! (武器を扱う腕は二流、それを振るう技術も拙い。それなのに何故、ここまでの力が出せる!?)」
ガウェインに休ませる、考えさせる暇など与えさせない。博樹はまるで暴れ回るようにギガバトルナイザーを振るい、ガウェインはその攻撃を何とか防いでいくことしか出来ない。
博樹の腕が一流のそれには及ばないことは理解できる、だというのに付け入る隙が見当たらないその矛盾に頭を悩ませながらガウェインは博樹の攻撃を防いでいく。
「自分はどうなってもいい、死んでも覚悟で守り続けていたんだぞ!!
「グっ!!」
打ち合っていた博樹の腕から突然ナイザーが消え、ガウェインへと頭突きを浴びせる。
予兆もなく行われる突飛な行動に流石のガウェインも反応できずに顔面に直撃し、最初に顔面を殴られたのも合わせて二枚目な顔には血が滴っている。
「それを貴方は、『たかだか子供1人の命』だと? ふざけるなっ!!! 」
更に怒りを増していく博樹の感情に合わせるように、ギガバトルナイザーから溢れる闇がその深みを増していく。
「どんな絶望だろうが、どんな地獄だろうが親にとって子供っていうのは
獅子王から“不夜”の
それは誉れある円卓の騎士として、獅子王の騎士としてあるまじき行為だ。 ガウェインは己を奮起させ、魔力を更に引き出す。
「貴方が何を語ろうと獅子王の意思は変わらない!! 子を守る親ですって? そんな者たち、この正門の前にごまんといましたよ!!」
魔力を引き出したガウェインの一撃が振り下ろされる。疑似太陽を搭載されたその聖剣に灼熱の炎を纏わせて斬りつけてくるその攻撃を博樹はナイザーで受け止める。
「我々は我々の正義に基づいて行動している!! 獅子王の選択は絶対!! その絶対を覆すことは決してあり得ない!!」
「────ああそうか、だから貴方はそんなにも機械じみているんだな」
ガウェインの灼炎と博樹のナイザーから振るわれる闇がぶつかり合う。基本を忠実とした洗練され自分の流儀へと昇華させたガウェインの剣と、型も技もないただの暴力である博樹の力という真逆のもの衝突しあう。
「与えられた責務を全うする、獅子王に従う心ない機械人形。それが貴方だ
「それの、何が悪いというのですかっ!」
博樹とガウェインの衝突は次第に勢いを増していき、ぶつかり合った灼炎と闇が2人の四方を囲んでいく。そんな状況の中でも2人は一歩も引かずに戦い続ける。
「私は誓ったのだ!! 自らの全てを我が王に、獅子王に捧げると!! その為なら私は心を捨て、機械でもなりましょう!」
ガウェインの強烈な一撃、博樹の事を包み込む勢いで迫ってきた灼炎をナイザー使い払ったが、視界が見えなくなってしまったその一瞬の隙を、突かれてしまった。
「獅子王の選択に一切の例外は許されない」
「ルシェド、お母さんが絶対に守るからね……」
粛正騎士の生き残りが、サリアとルシェド親子へ向けて剣を振り下ろそうとしていたのだ。その事に気づいた博樹は目の前のガウェインのことなどどうでも良くなり、2人の事を助けるために背を向けてしまった。
「しまっ!!?」
「御免っ!!」
すぐに助けに向かおうと動き出す博樹。しかし、その隙を見逃すほどガウェインは甘くない。
灼熱と共に無防備になった博樹の背中へ剣が届き、肉を焼き斬った。
「ぐっ……!! ガアアアアッ!! やら、せるかああああ!!! “ベリアルデスサイズ!!! ”」
それでも、意地でも親子には触れさせないために、背中に感じる痛みを度外視してナイザーを振るい、博樹は親子を襲う騎士を消滅させる。
「はあ……はあ……」
「貴方をこのまま放置するには余りに危険すぎる!!」
瞳の炎は消え、先ほどまで感じていた圧を博樹から感じなくなったガウェインだったが、もし万が一獅子王の障害になりえるかも知れないと考え魔力を最大解放する。
【この剣は太陽の移し身。あらゆる不浄を清める焔の陽炎】そう言いながら、ガウェインは聖剣を天に昇る太陽と重なるように空に投げる。
宝具の展開。博樹のことを障害と捉えたガウェインは、完全にトドメを刺すために博樹へ向かって太陽の聖剣を振りかざす。
「【
「ここまで外道に堕ちたかガウェイン卿!! 【
「ぐううううっ!!! これは……私のガラディーンを押し負ける!!」
倒れる博樹のことを守るように、ベディヴィエールが右手にある銀の腕を開放しガウェインのガラディーンを打ち破った。
本来ならば、いくらベディヴィエールの銀の腕がヌァザの腕そのものだったとしても押し退けるので手一杯だった。しかし、ガウェインは博樹との戦闘による消耗によって体力を消耗していたことも相まって、軍配はベディヴィエールに上がり、ガウェインのことを払いのける事に成功した。
「ぐ、っぅぅぅぅうううう……!」
「ベディ、ヴィエールさん……貴方、腕が……!」
「心配しないでください博樹殿。立香たちが道を切り開いてくれました、撤退しましょう!!」
銀の腕の内部が焼けようとも、ベディヴィエールはその痛みに耐え、倒れている博樹の事を担いで戦線から離脱していく。確りと、あの親子もつれて……
「ま、待ちなさい!! ベディヴィエール卿!! 貴方ほどの騎士が何故……!! 王に叛逆するというのですか!!」
片膝をつきながら叫ぶガウェイン卿の言葉を無視して、ベディヴィエールは戦線を離脱していった。
・
・
・
・
「はっはっはっはっは!! おいおいマジかよ!! ガウェインのヤツ。あの傷で、父上の一撃を喰らってもまだ生きてやがる!! どんだけ頑丈なんだよアイツ!」
獅子王へと今回の聖抜の儀の不手際を報告したガウェインへ下された処罰は、獅子王自らの槍をその身で受けるというものだった。
聖槍の一撃によってしばらくは再起不能になったが、何とか生きているらしいガウェインはそれで、今回の罪は赦された。
「……しかし、ガウェイン卿をあそこ迄追いやった相手というのは誰なのでしょうか? 人間でも、サーヴァントでもない不確かな者という情報だけ……」
「詮索は不要だトリスタン。今問題なのは太陽王ただ一人だ、貴公らは奴との決戦に備えよ」
それだけ言って獅子王は騎士たちの前から姿を消した。
そして王の補佐官であるアグラヴェインは難民たちは無視し、外部からのマスターたちの排除を命じていた。
────その中で難民たちがどうなろうと、不可抗力だと言って……
「ガハッ……!! はあ、はあ、はあ……。ベディヴィエール卿……、そしてヒロキ……と呼ばれていましたね……。貴方たちは、私がこの手で必ず……!!」
【獅子王に従う心ない機械人形】
6章のガウェインの心情、6章舞台でガウェインがロボットダンスを披露していることから選んだ言葉。
感情のまま怒りをぶつける博樹さんにそれを言われるという。
【赤目博樹】
怒りが限界突破したことでベリアルの力を博樹が解放させた状態。
博樹の本来の性格かベリアルが抑えてくれているのかは定かではないがそのお陰か、ヤベーイ!ハザードやメタルクラスタ、サンブレのように当たり構わず暴れ回ることはなく、敵と認識した相手にだけ一切の容赦なく潰す。
多分全クラスに2倍weak、防御無視(というより貫通?)コマンドカード5枚全部バスターに毎ターンスター50発生くらいのぶっ壊れ状態なためみんなのトラウマ相手でも1人で戦えていた。
【ベリアルデスサイズ】
ギガバトルナイザーから放たれる鎌状の光線。あんまり出番のないような技かもしれないが、ジードの回想シーンで光の戦士たちをその技だけで一掃したり、ウルティメイトゼロに致命の一撃を与えたりと威力だけなら最高クラスの技。