【一部完結】Fate/Grand Order〜Bの因子〜   作:ちょっつー

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お待たせしました。BOX周回&開封だったりレイドだったりと忙しかった最近。
しばらく書いてないとモチベが下がってしまう作者は大変でした……。

デルタライズクローにベリアロク参戦、ギャラクシーファイトにはまさかのトレおじアーリースタイル!と話題に事かけない円谷には感謝しかないですね。

 正直ベリアロクの扱いは不安も振り払われる勢いで好みの物だったので最高に嬉しいです!

感想、評価お待ちしてます

誤字脱字、ご指摘ありましたら気兼ねなく


5

 “茨木童子”平安時代、京に現れて悪逆を尽くした鬼の一体で大江山の頭目の一人。

そんな彼女と初めて邂逅したのは平安時代に生まれた特異点でのこと。『酒呑童子と一緒に大暴れしたい』という願いが聖杯の力によって歪められ、暴走し暴れていた。

 

……だったんだけど

 

ぐぎゃああああああ!!! は、放せ! 放さんかこの愚か者!! な、何故吾の力が発揮しない!? どうなっている?』

 

『仕切り直しなんぞさせる訳がないだろう? かかってこい、テメェが飽きるまで倒し続けてやる』

 

 相手の逃走をベリアルさんが許すはずもなく、聖杯の力で馬鹿みたいに高かった体力を全て小一時間で削りきって特異点を修復したんだよね……。

 最初はベリアルさんと協力せず、金時と一緒に私たちだけで戦ったからあの時の茨木童子がどれだけ強敵だったか理解できたんだけど……茨木童子への恐ろしさよりもベリアルさんの規格外の強さに驚かされた印象が強かったんだよね……。

 

 

 後出会ったのは……そうだ! 鬼ヶ島の特異点だ! 

その時は別に特異点を作り出してしまった原因とかでは一切なくて、鬼としての面目が立たないってことで敵対関係だったけど特異点の原因を止めるのに一役買ってくれたんだっけ? 

 

『ひいっ! き、貴様はあの時の!! な、なんだ……また吾と一戦交える気か!?』

 

『今の貴様如き相手にした所でたかが知れている。邪魔だけはするなよ?』

 

 大江山の首魁だって言ってた割に以前のベリアルさんとの戦闘がトラウマになっちゃったのか、ベリアルさんと話をするときは酒呑ちゃんの後ろに隠れながら話してたり、憎めない所がある可愛い子なのかなって印象だったんだよね。

 

 だから、カルデアに来てくれたら仲良くしたいなって思って。あの子に話を聞いたこともあったっけ……

 

『茨木ぃ? 旦那はん、あの子のことうちに聞いてどうするきぃ?』

 

『茨木童子の事、いつかこのカルデアに呼べるときが来るかもでしょ? だからその時までに彼女の事知っておけたらな〜って』

 

『そないな事調べればすぐに分かる……。けど、旦那はんが聞きたいんはそういう事やないんよねえ?』

 

『うん。経歴とか逸話とか調べれば分かる話じゃなくて。なにが好きだった〜とかこういう性格だった〜みたいな隣にいた酒呑ちゃんだから知ってる事ってあるでしょ? そういう人柄、鬼だから鬼柄かな? が知りたくて!』

 

『ふふふ、ほんま旦那はんはおもろいわぁ。ええよぉ、うちもあの子の話するんは楽しいさかいなぁ』

 

 鬼ヶ島の特異点を修復した後に召喚に応じてくれた彼女、酒呑ちゃんに茨木童子がどんな子だったのか、本当だったのかは酒呑ちゃんの性格的に怪しいけど聞くことができた。

だから、決して知らないわけじゃない! 今度会ったら絶対に仲良くなってやるぞ~~~!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 て、意気込んでた筈だったんだけどなあ……。

 

 

「茨木童子、だよね? ギルガメッシュ王に召喚されたサーヴァントの……」

 

「何だ────あのいけすかない王の知己か、(なれ)ら!」

 

(べリアルさん。彼女のこと、立香ちゃんに任せて大丈夫なんですか?)

 

(案ずるな。オレやお前ではない、アイツだからこそ掴めるものがある。だからこそここに連れてきた)

 

 折角会えた茨木童子は、ベリアルさんの事も私たちの事も知らない、出会っていない彼女だった。

今目の前にいる茨木童子はギルガメッシュ王が召喚したサーヴァントの内の1騎。天草四郎、風魔小太郎、巴御前はこの戦いの中で散っていったという話だったけれど茨木童子は別。

鬼である彼女は、鬼という存在を恨む牛若丸に脅された結果、ウルクから逃げ出したって聞いていたけど……こんな所にいたなんて。

 

「ああ違うの! 違くはないけど話を聞いて!」

 

「聞かん! 許しもなく立ち入ればどうなるか、その身に刻み込んでやろう!!」

 

 酒呑ちゃんが言っていたように、茨木童子は私の話を聞こうともせずその手に持つ骨刀を振り回してくる。

けど、そこには確かに敵意は感じるけど、殺意は感じられない。やっぱり、酒呑ちゃんが言っていた通りだ。

 

『あの子は他の鬼とは違うさかい、むやみやたらに人を殺そうなんて真似はしいひんよ。するとしても最初のうちは相手のこと驚かせてくるくらいとちゃう?』

 

「ほっ、はっ、だから、話を……!!」

 

「吾は大江山が鬼の首魁! この茨木童子から逃れられると思うな!! 此処に、原初の盗賊団を率いらんとするモノであるぞ!!」

 

「んっくっ!!」

 

 流石にいつまでもサーヴァントの攻撃を避け続けることは無理だった。

倒れた私を見下ろすように、骨刀の切っ先を私の首元へと突き付けてきた。

 

「はっ、戦う力も持たずしてこの吾の前に現れるとはなあ。このまま惨めに殺されるのが嫌ならば、あそこにいる気味の悪い奴も連れて即刻ここから去れっ!!」

 

「嫌だ!」

 

「っ!! 何……?」

 

 私の力で骨刀を押し返せるはずがないことは分かっているけど、せめてもの抵抗のつもりで骨刀を握りしめながら私の思ったことを茨木童子にぶつける。

 

「ねえ茨木童子。どうして貴女は()()を守っているの?」

 

「────ッ!!」

 

「鬼である貴女にとって人間は食糧の筈だよね? そんな貴女がどうして「黙れ!!」

 

「喰っていない、この地に無断で呼び出されてから、吾は一度足りとて生きた人間を喰ろうたことなどありはせん! ここにいる人間どもは、ウルクでは生きていられぬと戦い続けることなど出来ぬと逃げ込んだ者たちだ! 獣たちも同じだ! 異形の魔獣どもに住処を荒らされ、居場所を失っていたのを拾ってやっただけに過ぎない!」

 

 やっぱり、そうだったんだ。

 私に威嚇攻撃をするときも、彼女は絶対に私とベリアルさんが視界に入る位置で陣取り、集落の方へ足が行かないように攻撃をしてきていた。

 

「拾ってあげた……。違うよね? 貴女は守ってたんだ、魔獣が巣食うようになってしまったこの地で、居場所がなくなってしまった人や獣たちの拠り所となって……」

 

『あの子は他の鬼たちとは根本の部分から違うんよ。自分のことしか見ぃひん鬼たちには死んでも出来んくらいに、あの子は周りば~っか見よるんよ。…………京の町で当てもなく歩いてた鬼の手ぇ掴でまうくらいになぁ』

 

 酒呑ちゃんから話を聞いた時にはピンとこなかったけど、実際に茨木童子と出会って実感した。

この子は鬼としての矜持、威厳を持ちながらも“個”を何よりも重視する他の鬼とは違う“全”を重視する子なんだって……。

 

 だから、それが分かってしまったから、その手を掴みたいと思ってしまった。

ベリアルさんに連れてこられたから、彼の思惑通りに動くんじゃない。私が、私自身が茨木童子の手を掴みたいと思ったから動くんだ! 

 

「茨木童子。私はね、ウルクを守るために戦ってるんじゃない。私の居場所を、生きてく場所を守るために戦ってるの」

 

 私は握りしめていた骨刀から手を離し、茨木童子の手に触れる。

真っ赤な鬼の手は、その見た目に反してとっても冷たくて今にも崩れてしまいそうなほど、弱々しい印象を受けた。

 

「貴女の言う通り、私には戦う力はない。魔獣の群れに飛び込んだしたら一瞬で殺されちゃうだろうね。だけどあそこにいるベリアルさんや、他の仲間たちが一生懸命に戦ってくれているから今も私はこうして生きてる」

 

「そうか、貴様マスターとかいう存在か。あのいけすかない王は力を持っていたが、何も持たず力ある者の後ろに隠れて生き続けるとは惨めよのぉ」

 

「うん。守って守って守ってもらったから今もこうして私は生き続けてる。生き汚いって点においちゃあ鬼にも負けてない自身があるね」

 

「なあに? 生き汚い、その一点において鬼と競おうと言うのか貴様は? はっはっはっはっは! 笑わせるな! それは鬼の極致にて、この吾がもっとも得意とする所ぞ! その吾に啖呵を切るとは、覚悟は出来ておろうなぁ?」

 

 そう言って茨木童子は握っていた私の手を払って後ろへと飛び退く。

骨刀を肩に担ぎ、私の方へ向けられた左手から炎が燃え上がり始める。

 

「っ!! たしか、叢原火……!」

 

「ほう、知っているか? 生き汚さを誇るというのなら我が焔、耐え抜いて見せろ!!」

 

「……なら、これを耐え抜いたら私と一緒に、生き汚くこの時代を生き抜いてもらうよ! 茨木童子!!」

 

 まだその手から離れていないというのに感じる炎の熱を肌に感じながら、その恐怖に向かい合いながら私は叫んだ。

 一切動こうとしないベリアルさんの周りを囲むように陣取る獣たちを横目に、茨木童子の炎をどうやって耐えればいいのか頭を巡らせていく。

 

「ぎゃっははははは!! まだそれだけの口が開けるか! 見せてみろ、貴様の生き汚さとやらを! 走れ、叢原火!!!」

 

 どうすれば耐えきれるのか答えが出ないまま、巨大な手の形をした焔の火が迫ってくる。

 邪魔する者を屠ろうとするその炎、誰かを暖めるのではなく傷つけるためだけの熱。

 この炎が茨木童子の気持ちそのものだとしたら…………。

 

「あああああああ!! 独りで燃え続けるこの炎を掃え!! 私のサーヴァントぉおおおおおおお!!!!」

 

「はああああああああああっ!!!!!」

 

「何っ!?」

 

 私の声に呼応するように駆けつけてくれた()が叢原火を受け止め払い飛ばした。

来てくれる確証なんて、この炎を打ち消せるかどうかなんてわからなかった。けど、貴女なら来てくれるって信じてた、だから叫んだんだ。

 

()()()()()…………と、マーリン?」

 

「ご無事ですか先輩!?」

 

 心配して駆け寄ってくるマシュの背中にマーリンが背負われていることに疑問を抱いていると、そんな私の考えを読んだのかマシュの背中から降りたマーリンが両手を広げて話し出す。

 

「どうやってこの短時間でこんな場所まで来たのかってだろう? そんなの簡単さ! このマーリンお兄さんの魔術と、カルデアのナビゲートによる最短距離のルートの導き、後は彼女のがんば、あ、ちょっと待ってくれ流石に揺らされ続けて気持ちが…………オロロロロロロロロォ」

 

「うわぁ……」

 

『まあ今嘔吐してる彼の言う通りだよ立香ちゃん』

 

 端まで行って胃に入っているもの全部吐き出してるマーリンを横目に、息を切らしてまで私の所へ来てくれたマシュに感謝を告げ、私は攻撃の手を下ろした茨木童子の元へと歩いていく。

 

「先輩!!」

 

「大丈夫だよマシュ。大丈夫……」

 

「ふんっ、吾と話をし時間を稼いだわけでもない、アレが来ることを確信していたわけではない。これがお前の生き方か?」

 

「うん。でも、結果的に私はまた生き残れた。賭けは私の勝ちってことで良いよね茨木童子?」

 

 ふんっと鼻を鳴らして茨木童子は不貞腐れたように骨刀を降ろし、荒ぶっていた炎も静め地べたに座り込んだ。

一応納得してくれた……ってことかな? 

 

「吾の炎を耐え抜いたお前、お前の名を名乗れ」

 

「えっ? あ、マシュです。マシュ・キリエライトです!」

 

「魔酒か……。気に入った、名に魔と酒が入っておる。……で?」

 

「「で?」」

 

「貴様だ貴様!! 少しは察せこの馬鹿者が!!」

 

「あっ! 私か!! なんだ~それならそうとはっきり言ってよ茨木童子。長いから茨木ちゃんかな?」

 

「途端に慣れ慣れしいなき貴様。いいか! 話を聞く気になったというだけだ、吾の力を貸すとは言っていない」

 

 目くじらを立てる茨木ちゃんを他所に、そそそ~っと目の前まで走って行って私は自分の手を彼女へと伸ばした。

 話を聞いてくれるってだけでもありがたいんだ。ここから、力を貸してもらえるよう、合わせられるようする。

 

「私の名前は藤丸立香。立香って呼んでよ、茨木ちゃん!」

 

 

 

 

 

 




立香ちゃんは星4運よりも星5運の方が強い子。
殺意はないし、ただの人間だからと手加減して攻撃していた茨木童子だが実際あそこまで避けられるとは思っていなかった。2〜3発当てて痛い目にみればいいと思って振るっていた。
しかしながらスカサハブートキャンプ受講者だったためギリギリ避けることが出来た。

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