もし宮永照と大星淡がタイムリープしたら   作:どんタヌキ

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1~10話、もう一度編集し直して来ました。
主な部分は、地の文。某所で指摘された所を元に、地の文の三点リーダーをなくすなど、細かいところの訂正。

あ、話の内容そのものは全く変わっていないので大丈夫です!


11,合宿

「さて」

 

 日を跨ぎ、合宿二日目。二泊三日の内の、二日目の朝だ。

 

「今日から本格的に、打ってくよ。明日もあるけどお昼にはここを出るから、今日一日が一番大事になってくるから」

 

 全員が朝食をしっかりと取り、そして同じ部屋に集まっている。

 部屋には自動卓があり、そして京太郎が持ってきたノートパソコンもあり、十分な環境といえる。

 

 照は部長らしく、全員に声をかけ意識を高めるように促す。

 

 

 

「ねえテルー、私凄く頭が痛くて……しかも昨日の夜の記憶無いし、誰かわからない?」

「……きっと、一過性の頭痛。少し時間がたてばよくなるはずだから、痛くても我慢しよう」

「そうかな、うう……何だか内部というより、外部がズキズキするような……」

 

 だが、淡の一言で場がしまるような事はなかった。

 凄く頭が痛そうに、さすっている淡の姿があったのだ。

 

 そしてここにいる照と淡の二人以外の部員は全員して共通の事を二つ思っていた。

 

 一つは、記憶が無くなるってそれ本気でヤバい奴なのでは、という事。

 もう一つは、このポンコツ部長、さらりと流しやがったという事だ。

 

 

 

「……じゃあ、早速だけど打っていく。淡はちょっと休んでもらって後から入ってもらうとして、えっと……」

 

 その時、照は少し申し訳無さそうな表情をしていた。

 部員のほとんどは何故そんな顔をしているのかわからなかったが、一人だけその表情について見当がついている者もいた。

 

 

 

「……えっと、俺の事は気にしないでください。今は団体の方が大切、初心者の俺は気にしなくていいですよ」

 

 その声を聞いて他の部員も何となく察する部分があった。

 

 京太郎である。

 初心者という所もあって優先順位は他のメンバーよりも低い、と京太郎は自身でそんな事を思っていた。

 

 京太郎が卓に入ることにより、他の人が打つ時間も減ってしまう。そんな考えから、京太郎は遠慮をしてしまう。

 

 

 

「何言ってんのさ!?キョータローだって清澄の部員なんでしょ!?だったら、遠慮なく卓で打ちなよ!」

「いや……どう考えたって団体メンバーの実力アップの方が優先だろ。俺が卓に入って、他の人が打つ時間を割いたら……」

 

 だが、それに待ったをかける人物も。

 淡はそれはおかしいと声を荒げるが、京太郎は頑なに自分の意志を変えようとはしない。

 

 京太郎は優しく、気遣いが出来て、そして変な所で頑固なのだ。

 淡もそれを察したのか、自分が説得しようとしても卓には入ってくれないだろうと感じた。

 

 ――――だったら、それはそれでやりようがある。淡は、ある事を考えていた。

 

 

 

「あー、もう!それならこっち来て!ほら、さっさと!」

「え?ちょ、待てって!?」

「テル達は先に打ってていいから!ちょっと席外す!」

 

 そんな事を言いながら、淡は京太郎の腕を引っ張って隣の部屋へと行ってしまった。

 他の部員は、その一瞬の流れについていけず呆然とするばかり。

 

 

 

 だが照だけはそうではなく、考えている事があった。

 

(……淡には借りを作っちゃったかな)

 

 照も京太郎に関してはどうするべきか、迷っていた。

 打たせるべきか、打たせないべきか。

 

 京太郎が言うように、今は優先順位だと団体のレベルの底上げが一番必要になってくる。勿論、京太郎も大事ではあるが。

 

 普段部内で打つ時、京太郎が入る時は照は卓から離れる。

 その理由としては、当然実力差。強い相手と打つ事は、負けて悔しさを覚える、向上心のアップなど、いい事があるように思われる。――――が、離れすぎた実力差は、マイナスの面が多すぎる。

 向上心など生まれない、むしろ心が折れる。悔しさ所か、絶望感を覚える。それでは意味無いと、照も今までの経験からわかっている。

 

 そして今日、照は卓から離れないと決めていた。その理由として、優希や煌がいつも以上にどんどん自分に立ち向かって、掴む所を掴んで欲しいと思っていたからだ。

 ここに京太郎が入ってくるとなると――――正直な所、言い方は悪いが時間が無駄になってくる。自分が抜けて、それだけ団体のレベルアップの時間が減ってしまう。

 

 照は京太郎が優しい事を知っていたので、そんなこっちの気持ちを察してくれると、いわば甘えの気持ちがあった。当然、それは京太郎には申し訳の無い事ではあるが。

 だが、その照が直接どうにかしてやれない京太郎の事を淡はどうにかしてくれた。これは、大きな借りだ。

 

 

 

「――――さて、今いる四人でまずは対局するよ。今日は、というかいつでもそうあって欲しいんだけど……特に今日は、先輩とか後輩とかそういうのは気にしないで欲しい。誰であろうと気になる部分があったら指摘する、きっとそれはプラスになるから」

 

 照は煌、優希、咲に対してそう話す。

 気になる部分はどんどん言っていく、そして今日は合宿なのでその部分を直す時間は十分にある。だからこその、改めての声かけだ。

 

 

 

「よし、じゃあ始めようか」

 

 その一声から、ある意味本当の合宿が始まっていく。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 照達が対局を始めようとしていた頃、淡と京太郎は別の部屋に移動していた。

 

「何だってんだよ淡、いきなり……」

「何って、特別指導だけど?卓で打つ気が無いなら、別のやり方があると思ってさー」

 

 無理やり連れられて来たような形になった京太郎はいったい何だと淡に尋ねる。

 それに対し淡の口から出てきたのは指導、という言葉。

 

「今スマホ持ってるでしょ?」

「ん?ああ、あるけど……」

「このサイト、開いて欲しいんだ」

 

 淡は自分のスマホを京太郎に見せ、どのサイトを開けばいいか指示する。

 そしてそのサイトとは――――大手のオンライン麻雀サイトだ。

 

「このサイト、結構牌の偏りとかも無くていい所だと個人的には思ってるんだよねー」

「いつも俺の打ってるサイトとは違うな……で、開いたけどどうしろってんだ?」

 

 京太郎は淡にどうすべきか聞くが、京太郎も何となくこれからすべき事を察していた。

 麻雀のサイトを開く、それが意味する事とは。

 

「アカウント作って、打ってほしいんだー」

「まあ、そうなるよなあ」

 

 実際にそのサイトでネトマをするという事。

 それを淡から指示され、その事は京太郎が恐らくそうくるだろうな、と考えていた事でもあった。

 

「あ、今日ずっとネトマで打ってもらうから頑張ってね」

「はあ!?」

 

 だが、淡は京太郎の考えていた事よりも更に上のことを口にする。

 

「だって卓につかないならそれ位しかやる事無いじゃん?」

「まあ……そうだけどよ」

 

 だからといって、一日中ずっとネトマをしろと言われるとは京太郎は思ってもいなかった。

 だが、淡も別に考えも無しにこんな事を言っているわけではない。

 

「今まで一日中ネトマなんて経験無いでしょ?」

「そりゃなあ、平日は学校だし、だからと言って休日ずっとネトマとかしてたって事も無いな」

「ずっと続けるって大変な事なんだよ。――――だからこそ、続けれたら身につくものもある」

 

 例えば、日を跨いで二十回対局するのと、一日で二十回対局する。それは打つ回数こそ同じものの、身につくものは違う。

 そう、淡は言いたいのだ。

 

「人間、同じ事を一日中ずっと続けてれば凄く慣れが生じるもの何だってばー」

「……何だか、随分と淡らしくない台詞だな」

「うっ、うるさいなー!?それに集中力が格段に上がるし、思ってもいないものが見えてきたりするかもよー?」

「思ってもいないものって具体的に何だよ?」

「さあ?それを身につけれるかはキョータロー次第だね」

 

 短時間に同じ事を何度も繰り返せば、人はその分慣れるのが早くなる。一日中を短時間、と表現するかしないかはさておいて、だ。

 

 思ってもいないもの、という意味深な台詞に対し京太郎は疑問に思う。が、質問をした後に淡から返って来た言葉は、具体的な内容については教えてくれなかった。

 

 これまでの淡の説明に対し、京太郎も共感できる部分もあるし、淡もこっちの事を考えてメニューを作ってくれたんだな、と感謝の気持ちも生まれてくる。

 だが、それとは別に疑問に思う事も一つあった。

 

「何でわざわざこっちの部屋に?スマホでなら、向こうの部屋にいながらでも出来るんじゃ……」

「……向こうの対局をちらちら見ながらネトマ打っても絶対に訳がわからなくなるよ。それに、集中力が散漫しちゃうだろうしねー。ま、まずはとにかく基礎雀力を身につけろって事」

 

 淡が照達の部屋で京太郎にネトマをさせない理由もいくつかあった。

 一つは、集中力が無くなる事。何かを見ながら自分の行動をする、というのは集中力が落ちて当然の事だ。

 

 そしてもう一つは、淡はまず京太郎に普通の麻雀で強くなって欲しいと思っている部分がある。

 あの卓で行われる麻雀は、普通の麻雀とは呼べない物である。そんな物を見ながらネトマをしても、京太郎も戸惑ってしまうだろう。

 

 いずれ麻雀の特別な力に立ち向かうとしても、だ。それは基礎の麻雀の力が無いと厳しいものがある。

 これは、淡が過去に敗北して気づいた事でもある。――――だからこそ、淡は京太郎にまずしっかりと実力を身につけて欲しい、と願うわけだ。

 

 自身が敗北して気づいた事を、他の人に伝える。

 経験を、共有するという事だ。

 

 

 

「ま、最初の半荘くらいは私もアドバイスしながら見てあげるからさ。ほら頑張れー」

「……何か、悪いな。俺なんかの為に」

「いやいや、指導ってこっちの為にもなるんだよ?改めて、自分がわかっているかの再確認とかさ」

 

 自身がわかっていないものは当然、教える事などできない。

 教えれるという事は、自分がそれをしっかり理解しているからこそ成り立つものである。

 

 

 

「今日でめっちゃ強くなってさ、明日はキョータローも卓に入っちゃおーよ!」

「一日でそんなに伸びるわけ……いや」

 

 そんな訳無いだろ、という気持ちは勿論京太郎の中にある。

 だが、こうして初心者の自分もしっかりと指導してくれている淡の期待にも応えたいと思っている部分も勿論ある。

 

 更に言えば、ああ言って卓を譲りこそしたものの、心の中では自分も打ちたいと京太郎は思っていた。

 

 

 

「……ああ、明日は打てればいいな」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 淡は現在、照達のいる部屋と京太郎のいる部屋を繋ぐ廊下を歩いている。

 京太郎のネトマの半荘が終了して、元いた部屋へと戻ろうとしていた。

 

(今、東四局くらいかなー?)

 

 ネトマと実際に打つのとでは、対局の進行のスピードがかなり違う。

 だからこそ、淡はちょうど半分ぐらい終わった程度だと予想していた。

 

 

 

 ――――だが、そんな予想は完全に的外れだった。

 

 

 

「……え?」

 

 ガラッ、とドアを開けてすぐに視界に入ってきたのは卓に頭を突っ伏している照と優希の存在、それといつも通りの咲と煌であった。

 

 

 

「……えっと、どういう状況かな?説明ぷりーず」

「ああ、淡さんお帰りなさい。えっとですね……」

 

 ここから、煌が淡にわかりやすく説明した。

 

 優希が飛んだ、照が咲に点数で負けた、咲一位、照二位、煌三位、優希四位。

 そんな感じで、いきなり力尽きている人物が二人。

 

「テルもほんっと、負けず嫌いだよねー。まあ、そもそも負けているのを見れているのは最近何だけどさ……」

「そうですね、その性格がここまで実力をのし上げてきた一因でもある気がしますが……」

「お姉ちゃんの負けず嫌いは、昔からだね……」

 

 淡、煌、咲の三人は照の姿を見ながら同じ事を考えていた。

 照がああやって卓に頭を突っ伏しているのは、純粋に悔しいからだと。

 

 淡と煌の二人は、そういえば部活で照が咲に負ける場面を見たら大体ああやって頭を突っ伏していたなあと、思い振り返っていた。

 

 

 

「ぷはっ」

「あ、テルーが蘇った」

「……すぐに次の対局するよ。淡、入って」

「えっと、じゃあラスの私が抜けるじぇ……」

 

 そう言って結構目に涙が浮かんでいる優希が卓から離れようとする。

 

 普段部活で打つ時は大抵、ラスの者が抜けていくのが普通である。

 だからこそ、優希もそのいつも通りの行動をしようとしていた。

 

「あ、優希は抜けないで」

 

 だが、照はそれをさせない。

 

「変わるのは咲と淡の所だけ。私、煌、優希の三人はずっと固定ね」

「じょ!?一日中ずっと、照先輩と対局……え、そんな事ってあっていいのか!?」

「休憩はご飯の時とか、対局二回終わったら十分の休みを取るとか、そのくらい。ほとんど休みは無しだよ」

 

 その死の宣告に近い物を聞いて優希は顔を真っ青にさせる。

 

 ただ一日中麻雀を打つ、それだけでも相当ハードであるだろう。

 だが、照と一日中麻雀を打つ。それが意味する事といえば、きついという一言で済まされないレベルのきつさだ。

 

 そして自分と同じくその地獄を味わう先輩はどう思っているのか。優希は、チラッと煌の方に目を向けた。

 

 

 

「……やってやろうじゃありませんか!ね、優希!?」

「あー、その……うん、やるじぇ……」

 

 

 

 煌は、燃えていた。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「……ふうっ、時間的にもこれで今日のメニューは終了。お疲れ」

「はっ、はは……やり抜きました、この死の対局とも言える物を……!すばら……!」

 

 昼食を取って、麻雀を打ち、夕食を取って、麻雀を打ち。

 そして終わりの時間がやってきた。

 

 煌はくたくたになりながらも何とかやり抜いた、その達成感に浸っている。

 

「優希、よく耐え抜きましたね!……優希?」

 

 煌は自分と同じくその地獄を戦い抜いた後輩、優希にねぎらいの言葉をかけるが返事は来ない。

 

「……ユーキ、気失ってない?」

「え?ちょ、ちょっと優希!?」

 

 淡の指摘で煌は焦って、優希の肩を掴みガタガタと揺らした。

 

 

 

「……はっ!ここはどこだじぇ!?」

 

 その振動によるショックで目を覚ましたのか、目を覚ましてはいるが意識ははっきりしていない優希であった。

 

「優希!気を確かに!」

「あっ、そうだじぇ……うぅ、ちょっと牌を握るのがトラウマになりかけたじぇ……」

 

 一瞬ではあるが、麻雀そのものがトラウマになりかけた優希。

 だが、それでも耐え抜きはした。

 

「優希、煌、お疲れ。よく頑張ったね、後はゆっくり休んで」

「そ、そうさせてもらうじぇ……」

「私も流石にくたくたです……」

 

 そんな必死に頑張った後輩に、心の底からねぎらいの言葉をかける照。

 

 

 

「ねえサキ、何だかテルの表情やけに生き生きしてない?」

「あはは……多分今日の通算成績で私に勝ち越したからじゃないかな」

「ああ、そういう事……」

 

 何だかいつもよりも生き生きしている事に疑問を抱いた淡は咲に尋ねたが、その理由は単純であった。

 

「あ、私京ちゃん呼んでくるね!」

 

 全て終わったならもう呼んできてもいいだろうと咲は判断し、別の部屋にいる京太郎を呼びに自分の今いる部屋を出た。

 

 淡は京太郎がどこで何をしているのか対局中に全員に話しているので、咲も場所はわかっている。

 ついでに言えば、淡と咲は二人で入れ替わりで打っていたので、咲が京太郎の様子を見に行く事もしばしばあった。

 

 その中で、最初はどこにいるのかわからなくて若干迷子になったというのは余談ではあるが。

 

 

 

「ふー、疲れたねー」

「……一応、淡は対局の回数は半分のはずだけど」

「いやいや、これでも私は休みの時も色々見てたんだからね?指摘する部分とか、探しながらさ」

「それについては、本当に感謝してる。淡がこんなに他人に指導するのが上手いとは思ってもいなかった」

「大したこと言ってないけどねー」

 

 淡は京太郎だけではなく、ここで対局していた者の指導も行っていた。

 主にそれは、煌と優希ではあるのだが。

 

 今の淡はデジタルとアナログの両方の部分をしっかりと把握している。

 両方知っているからこそ、言える事もある。それは単純な技術面だけではなかった。

 

「しっかし、今日だけで相当レベルアップしたんじゃない?特にユーキは」

「そうだね、これなら大会でもかなり期待できるかもしれない」

「……もうちょっと打ってたら、麻雀が打てなくなる身体になってたかもしれないけどねー?」

「淡は冗談を言うのが下手だね」

(冗談じゃないんだけどなあ……)

 

 苦笑いしながら淡は照と話していた。

 

 照も淡も、優希と煌に関しては前よりも実力が伸びた事に関する手ごたえを感じていた。

 

 淡の言っている麻雀が打てなくなるというのは冗談なんかではない。

 だが、そのギリギリのラインで戦っていたからこそ実力が伸びたというのもある。

 

 

 

「京ちゃん連れてきましたー」

「マジ、もう本当にへとへと……」

「お、キョータローおつかれ!」

 

 少し時間がたってから咲が京太郎を部屋へと連れて来た。

 京太郎も相当疲弊したような表情ではあった。

 

 

 

「……って、なんじゃこりゃあああっ!?」

 

 

 

 だが、自分の疲れなど可愛いくらいに。

 優希と煌、特に優希の疲れというものは京太郎の目から見ただけでもわかるくらいに、ひどかった。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 そんなこんなで激動の二日目を終え、日を跨いで三日目。

 この日は、合宿最終日だ。

 

 

 

「皆昨日は本当にお疲れ様。今までの人生で一番疲れた人もいると思う」

 

 朝飯を食べ終わり、いつものように全員が一つの部屋に集合する。

 そして照が、全員に対して話す。

 

 照のこの言葉は、別に冗談でも何でもない物だ。

 その証拠に、優希はやたらとぶんぶんと顔を縦に振っていた。

 

「お昼にバスが来るから、そこまでが合宿。……今日は、全部自由行動にするつもり。打ちたかったら打ってもいいし、打ち方の研究をしたかったら打たずにそれでもいい。自分のやりたいように時間を使って」

 

 残りは昼の時間帯までの数時間といった所。

 その時間を照は全て自由時間にすると言ったのだ。

 

 理由としては、昨日打った中で恐らくそれぞれが何かを掴み取った事を自覚した、それを打って確認するか打たずに確認するかは本人次第だと照は思ったからである。

 そして、それを聞いてから真っ先に――――優希が照に声をかける。

 

 

 

「照先輩、打ってほしいじぇ!」

「……随分とやる気があるんだね、昨日は何かを掴めた?」

「もうちょっと、もうちょっとで……更に、掴める気がするんだじぇ。対局、お願いします!」

「ふふっ、勿論いいよ。ただ、それだともう二人ほど面子がいないとね」

 

 

 

 ――――その後、照に声をかける人物がもう一人。

 

 

 

「あの、俺も……卓に入ってもいいですか!?」

 

 昨日は卓に入ることの無かった京太郎である。

 

「まだ……下手だけど、それでも昨日、俺も必死に頑張りました!勿論、一日で実力差なんて全然埋まってるとは思ってないですけど……それでも、一局打ちたいんです!」

 

 京太郎は京太郎で他の部員とは違った所、影で努力をしていた。

 その必死にやった成果を何とか出したい、そう京太郎は思っていた。

 

「何とか……必死に食らい付くんで!お願いします!」

 

 そんな頼み込む姿から必死さを既に感じていた照。

 断るか断らないか少し迷っていたが、これならば大丈夫であろうと判断する。

 

「手加減はしないよ?」

「……!ありがとうございます!」

「おっ、キョータローも入るんだ。だったら私も入っちゃおうかなー?」

 

 昨日ちょくちょく指導していた京太郎がどれだけ出来るようになったのか、興味を持った淡もその卓に入り込もうとする。

 

「じゃあ、この四人で打とうか。皆、私に勝つくらいの意気込みで来てね?」

「そんなのはいつもの事だよっ!」

「今日こそ……勝ってみせるじぇ!」

「俺も……やれる事はやる!」

 

 

 

 

 

 それぞれがやりたいように時間を使い、合宿三日目も無事終わって全ての日程は終了した。

 そしてそれからの時間も有効に使い、清澄麻雀部員はインターハイ予選に向けて必死に練習してきた。

 

 

 

 

 

 ――――そして、六月四日。

 インターハイ県予選の日を、迎える事となる。




今回のまとめ

淡、教え上手
地 獄 絵 図(卓)
みんなレベルアップ

書いていて思った事なのですが、咲だけ熱意が他とかけ離れすぎてて空気になりかねない所が。原作の主人公なのに……
勿論、ちゃんと出しているキャラは出しているからにはしっかりと見せ場を作りたいと意識はしているのですが。

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