もし宮永照と大星淡がタイムリープしたら   作:どんタヌキ

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やっと長いプロローグから本編に入れたような、そんな感じです。


12,予選

 六月四日。

 この日、長野では麻雀のインターハイ県予選が行われる日。

 

 既に数多くの高校生――――麻雀部員が、会場入りしていた。

 

 

 

「ねえ」

「……何でしょう」

 

 その中で清澄麻雀部員――――淡が、煌に対し尋ねる。

 煌の表情は、これから淡が何を言うか既にわかっているかのような顔つきであった。

 

 

 

「……テルとサキは?」

「……淡さん、言わなくてもわかっているでしょう」

「ああ、やっぱそうなんだ……」

 

 今ここにいるのは淡と煌。

 そして京太郎は現在トイレに、優希は飲み物を買いに自動販売機の所まで向かっている。

 

 京太郎と優希の二人に関してはどこに行ったかも聞いているので淡と煌の二人は特別心配はしていない。問題なのは、気がついたらいなくなっていた宮永姉妹である。

 

 清澄麻雀部員は、会場入りした時は部員全員であった。

 しかし、目を離した隙に照と咲の二人が消えていたのだ。

 

 

 

「うおおおっ!!」

 

 淡と煌がそんな悩みを抱えていた時、どこからか歓声が聞こえてくる。

 

「長野屈指の名門校、風越女子だ!」

「昨年度は準優勝、今年は雪辱に燃えているはず……!」

 

 風越のメンバーが会場入りしてきた。

 それを見た他校の生徒、更にはマスコミ勢が反応して声をあげていたのだ。

 

「おい、あっちには龍門渕だ!」

「昨年度優勝校!」

 

 別の所からは、龍門渕の部員が一人を除き、四人会場入りしてくる。

 

「何だか凄く盛り上がってるね、これから優勝するのは清澄なのにさー」

「あはは……」

 

 何でもないように言い切った淡に対し煌は苦笑いするしかなかった。

 

 

 

「……もしかして、あの制服」

 

 ここで、一人のマスコミが目の矛先を向ける。

 

 清澄高校は初出場のチームだ。本来ならば、注目されるどころか空気のような扱いでもおかしくは無い高校である。

 だが、実は話題性は他の名門校を凌いでピカイチであった。

 

 部員が部員だ。

 

 まず、個人戦のチャンピオンである宮永照。

 その人物が部長となり団体のチームを率いているのだ。注目されないわけが無い。

 

 更には、照ほどではないが注目されるべき人物がもう一人存在していた。

 

 

 

「なあ、あれってインターミドル二位の大星淡だろ!?」

「本当だ、早速取材しなくては!」

 

 そう、十分な実績を持ってる淡である。

 一人のマスコミが声をあげると、流れるように他の多数のマスコミも目を向けてきた。

 

「うわっ、空気になれていたと思ったのに気づかれた!?」

「マスコミ、こちらに向かって来ていません?」

「煌先輩、逃げよっ!」

「あれ、淡さんならこういうインタビューとか受けるの好きそうだと思っていましたが違うのですか?」

「最初はそうだったけど段々やっているうちに面倒臭くなってきたんだって!あいつらウザいし!」

 

 普段目立ちたがり屋の淡は、最初はインタビューを受けるのが大好きだった。

 だが、あまりのマスコミのしつこさにうんざりし、基本的には出来るだけ相手をしないようにしている。

 

 ただ、それでも受けるべき場所ではしっかりと、むしろトラッシュトークとも解釈されるのではないかというくらい自信満々なコメントを残していくのだが。

 

 

 

「あっ、大星淡が同じ清澄の部員とどっかに向かって行ったぞ!?」

「あまり追い過ぎるのも流石にな……試合前の生徒だし」

 

 淡が困惑する煌の腕を無理やり引っ張って館内のどっかへと逃げていった。

 それを状況が状況なだけに、無理やり追いかける事も出来ないマスコミは悔しがるだけだった。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「藤田プロ!本日も解説お疲れ様です!」

「ああ、こんにちは」

 

 一方、会場の他所ではWEEKLY麻雀TODAYの女性記者である西田順子が、今日の解説のために来ているプロ雀士、藤田靖子に挨拶をしていた。

 

「向こうで大星がいたらしいが、アタックしなくてもいいのか?」

「またしかるべき時に、取材を試みますよ。時間も時間ですしね」

「なるほど、貴方達が俗に言うマスゴミと呼ばれるような存在じゃなくて安心したよ」

「あはは、酷い言い草ですね……私達は、ちゃんと相手の事も考えて取材してますよ」

 

 西田も淡に対してまた別の機会に取材を試みようとしていた。

 そんな一応の所は常識を弁えている西田に対し、藤田プロは皮肉ったような言葉で返した。

 

「藤田プロ、今回の団体戦はやはり龍門渕、風越、清澄の三校に絞られますかね?」

「さあな、麻雀なんてやってみないとわからんよ。それに、清澄には確かに宮永と大星がいるが、他の三人に関しては未知数だしな」

「という事は、ただの数合わせの可能性もあると?」

「わからん。ただ確実に言えるのは、麻雀に絶対など存在しないという事だ」

 

 西田の質問に対し、無難に答えていく藤田プロ。

 

「じゃあ、もう一つ聞きたいことが。ずばり、プロとしての見所は?」

「――――清澄、宮永照。それに龍門渕、天江衣」

「二人だけですか!?他にもいい選手はいるのでは……?」

「ああ、いい選手ならたくさんいるよ」

 

 西田は藤田プロに対し注目すべきポイントを尋ねる。

 そして返って来た言葉は――――二人の選手だけ。

 

 西田も長野の麻雀部員に関しては記者という事もあり、かなり熟知している。

 いい選手がたくさんいる事も知っている。だからこそ、二人だけというのには疑問があった。

 

「だが、いい選手止まりなんだ。宮永と天江に関しては、その上を行く」

「その上……?風越の福路や竹井などは……?」

「いい選手たちだ。全国でも通用するレベルだろう。だが、それよりも上の存在というものはあるんだよ」

 

 全国で通用すると、全国のトップクラスとでは大きな差がある。そしてそれは、普通には超えられない壁だ。

 

「……それを踏まえて改めて言わせて貰うが、それでも絶対は無い。ましてや、団体戦だ。宮永や天江だけが戦うわけではないのだからな」

 

 そんな台詞だけを残して、呆気に取られる西田を残し藤田プロはその場を去っていった。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「……完全に迷った」

 

 今大会注目度ナンバーワンと言っても過言ではない人物、宮永照。

 彼女は現在、迷子だった。

 

「……こっちかな」

 

 そんな迷子の理由も、トイレを探すだけという本来なら迷子になる事はありえないであろう理由。

 だが、そんな理由であっても迷子になるのが照なのだ。それは、咲にも言える事なのだが。

 

 

 

「おっせーな、衣の奴まだこねーのか?」

 

 そんな照の向かい側から歩いて来る四人組――――龍門渕の部員である井上純、沢村智紀、国広一、龍門渕透華。

 全員が唯一来ないメンバー、天江衣の事を心配しながら廊下を歩いていたのだった。

 

 

 

「――――ッ!?」

「なっ……!?」

「えっ……!?」

「……!」

 

 その四人が照とすれ違った時に感じた異質な気。

 

「今の人物って……もしかして」

「……あれは、清澄高校の制服」

「ああ、あんな有名人の顔をわからないわけがねえ……」

「悔しいですが、私よりも圧倒的に目立っている人物……宮永照ですわね!?」

 

 四人は一斉に照の方へと顔を振り向ける。

 

 少し麻雀に詳しいものならば絶対にわかるであろう有名人。

 宮永照、それだけで注目すべき存在であるのだが――――この四人は、それだけではない。

 

「衣に似た空気……いや、それ以上かもしれない。僕は、感じたよ」

「衣に……!?いや、確かに凄いものは感じたけどよ、それは流石に……」

 

 全員が恐ろしい気を確かに感じ取っていたのだ。

 

 特に一は同じメンバーである衣よりも凄まじい物を感じたと発言する。

 純もそこまでは、と否定こそしようとするがその表情は硬かった。

 

「まあ、宮永照が凄いってのは周知の事実だ。それは否定しねえよ。だが、衣より凄いかどうかは……」

「……打ってみないとわからないですわね。衣の凄さは私達が一番知っているはずですわ。もし、衣よりも凄いのならば……」

「……それは、本当に化け物だね」

 

 

 

 龍門渕の部員達はゴクリ、と唾を飲み込む。

 そして、いつか当たると予想される相手のチームの部長を眺めるだけだった。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「あっ、テルー!」

「こんな所にいましたか……」

 

 淡と煌はマスコミから逃げつつも照と咲を探していたのだが、その内の照を見つける事に成功する。

 

「あ、淡と煌だ。よかった」

「よかったじゃないって!心配してたんだからね!」

「一応照先輩と咲さんの携帯に連絡は入れてみたのですが……まあ、いつものパターンですよね」

 

 前回にもあった、携帯の充電切れ。

 この姉妹は携帯の機能を使いきれないどころか、それ以前の問題を解決できていないのであった。

 

 

 

「……あっ、ユーキからメール。なになに……あっ、サキも向こうで確保出来たみたいだね。最初に集まっていた場所に戻るようにキョータローにも連絡まわしてるみたいだから、私達も戻ろっか」

「そうですね……あっ、でも向こうにはマスコミがたくさんいるのでは?」

「大丈夫!テルに全て任せるから」

「えっ」

 

 全てを照にぶん投げる淡であった。

 三人は、会場内で最初集まっていた場所へと戻っていく。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「宮永選手、三年生にして今回団体戦初出場という事で!何か一言、お願いします!」

「宮永選手!」

「宮永選手、是非何か一言!」

 

 その後、清澄部員が全員揃う事には一応成功した。

 だが、案の定と言うべきか。見事なまでに、マスコミが群がってくる。

 

 それも淡にすら誰も向かおうとはせず、全員が照に向かって来ているのだ。

 

 

 

「……すっげー、何というか、何もかもすっげー」

「宮永選手って言うたびに咲ちゃんがちょこちょこ反応してるのが面白いじぇ」

「だって、私だって宮永だもん……」

 

 そんな光景を普段見る事が無いのかただただ呆然とするばかりの京太郎、隣にいる咲の反応を面白がって見ている優希、所々名前を聞くたびに肩をビクッとさせる咲。

 

「それにしても、やっぱ……」

「ああ、淡さんも知っていましたか。何というか、あれは……すばらというべき物なのか」

「いや、別に素晴らしくは無いと思うけどさ」

 

 淡と煌は、照のインタビューを受けている様子、主に表情を見ながら感じている所があった。

 

 

 

「――――ええ、マスコミの皆様お疲れ様です。そうですね、今年団体戦に出れる事は大変喜ばしく……」

 

 いつもの無表情はどこへやら、満面の笑み――――営業用スマイルと呼ばれる物を、照は振りまいていた。

 

「あんな照先輩、初めて見たぜ……」

「照先輩のあんな笑顔、何だか怖いじぇ……」

「でもお姉ちゃん、完璧に見えてどこかぎこちない……」

 

 京太郎、優希、咲の三人はあの照の営業用スマイルを見た事が無かったのかそれぞれの感想を小声で述べていく。

 

 

 

「……なあ、今君お姉ちゃんって言ったか?」

 

 その咲の小声を、一人のマスコミは聞き逃さなかった。

 

「副将に選ばれている宮永咲、それに容姿といい……もしかして」

「ええ、皆さんが思っている通り咲は私の妹ですよ」

 

 照は堂々と咲が妹である事を明かす。

 その表情は、営業用スマイルとも少し違った――――本当の意味での、満面の笑みであった。

 

 昔はマスコミに対し妹はいないと散々言ってきた照であったが、今日初めて妹がいる事を明かしたのだ。

 

 

 

「宮永照に妹が!これはスクープだぞ!」

「妹さんも、やはり宮永照選手のようにかなりの実力者なのですか!?」

 

 マスコミ達がその宣言に今まで見せてこなかった驚きをそれぞれが見せていく。

 そしてその中には当然のように、咲の実力に対する質問も飛んできていた。

 

 

 

「そうですね……ああ、先程の質問も踏まえた上で、一つ言いたい事があるのですが言ってもよろしいでしょうか?」

「え、あ、はい!是非!」

 

 マスコミから質問をする所か、逆に照から言ってもいいのか、という提案が飛び出してくる。

 当然のように、マスコミはそれを了承していく。

 

「今回は初の団体戦を組ませて頂いたという事で……もしかしたらですが、数合わせの面子もいるのでは?と思う方もいるかもしれません」

 

 今回の清澄の団体戦メンバー、これには色々な噂が飛び交っていた。

 ネットの掲示板等でも、照が最後の団体戦に出れるように何とか初心者でもいいから集めたとか、そんなような噂もあった。

 

「ですが、そんな事はありません。一人一人が、皆しっかりとした実力を持っています」

 

 照は自身が思っている事をそのまま言葉にする。

 今までの部活、それから合宿での成長を見てきていて、そのままの照の思っている言葉だ。

 

「という事はやはり、今回の予選も勿論優勝を狙っていると……?」

「予選……そうですね、それは勿論あります。ですが」

 

 そして照は一息間を置いてから、声を出す。

 

「私達は、全国優勝。それが出来るメンバーだと部長の私は思っています」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「いやー、テルってば凄いねー。久々にテルをかっこいいと感じたっ!」

「久々って……」

「私も照先輩がいつも以上にすばらに感じました。全国優勝が出来るメンバー……すばらっ!そんな照先輩の期待に、私達は応えなくてはいけませんね!」

 

 間もなく試合が始まろうとしている時間。

 現在、先鋒の優希と京太郎以外の四人が選手控え室にいた。

 

「でも、私は思った事しか言ってない」

「そんな事言っちゃったら、マスコミが記事にでかでかと取り上げちゃうんじゃないかなー?」

「それならそれで、別に構わない」

「私は、淡ちゃんの発言の方が問題だったような気が……この予選会で、大将の私に回ってくる事なく優勝しちゃうんじゃない?って発言」

「……うん、過ぎたことは気にしない!」

 

 それぞれが思った事を口にする。

 

 実は淡はあの後、やはり目立ちたかったのかマスコミに対し発言をしていた。問題発言を、だ。

 淡も淡で、その事は多少ではあるが後悔していなくも無かった。

 

「京ちゃんは?」

「観戦室。控え室は基本、団体のメンバーしか入れないから」

「ああ、そうなんだ……」

 

 咲は京太郎が部屋にいないのを不思議に思い照に尋ねた。

 理由としては、団体戦に選ばれている選手しか入れないからである。

 

 観戦室は卓分の数だけあり、それぞれに大きなスクリーンが設置されている。

 控え室にもそれなりの大きさのスクリーンが一つ設置され、好きな対局をリモコンで切り替える事が出来るといった具合だ。

 

 当然、自分の高校の対局を見ているのが普通ではあるが。

 

「あー、じゃあ私はてきとーにキョータローの様子でも見に行くがてら、ぶらぶらしてくるかなー」

「え?」

「だいじょーぶ!ちゃんとユーキの活躍は見るし大将戦までには戻ってくるからさー。ま、どうせ大将戦まで回らないだろうけど?」

 

 それだけを言い、淡は控え室を飛び出していった。

 

 ちなみに会場の控え室、観戦室以外にも所々スクリーンは設置され、移動しながらでも見れる場所というのは多少ではあるが存在する。

 

「淡ちゃん、フリーダムだね……」

「ま、いつもの事だから」

 

 自由奔放な淡を見て咲は心配するが、照はいつもの事だからと特に心配はしてなかった。

 白糸台時代も自由人だったのだ。根本的な所は、変わってはいない。

 

 

 

「お、優希の出番が間もなくですよ!すばらな活躍を期待したいですね!」

「優希ならきっと大丈夫」

「優希ちゃん、頑張って!」

 

 既に他の三人が卓についていて、ようやく優希がテレビからも見える所に姿を現した。

 

(優希もあんな事を照先輩に言われて燃えないはずが無い……頑張ってきてください!どんな結果であろうと、私がしっかりと繋いでいきますから!)

 

 

 

 煌も出番が次という事もあり、優希の応援は勿論、既に煌自身も燃えていた。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

(清澄の先鋒……つまり、全国優勝出来るメンバーの先鋒。ここに、私は選ばれているわけだじぇ)

 

 優希は卓がある個室に入り、既に座っている。

 対局開始までは、残り一分。

 

(そんな事をマスコミの前で堂々と言われて、やる気にならないわけが無い!私の実力を見せ付けて、照先輩の期待に応えるんだじぇ!)

 

 既に集中力を極限まで高め、卓に目を向ける優希。

 

(もし実力が足りないのなら試合の中で伸ばす!常に全力だじょ!今の私のタコスパワーは、極限だじぇ!)

 

 個室への入室前に、しっかりとタコスも食べてきた優希。

 そしてそれも、優希の集中力を極限まで高めている要因でもあった。

 

 

 

「よろしくだじぇ!」

 

 

 

 ――――そして、対局の時間が訪れた。

 予選が、ついに開幕する。




今回のまとめ

清澄、マスコミに絡まれる
照「宮永咲は私の妹です」
照、営業用スマイル

原作だと和以外空気過ぎてそこまでマスコミに絡まれるような要素も無かった清澄ですが、このメンバーならこうなるんじゃないかなーって思いながら書いてました。
次回からはようやく予選の対局が始まります。

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