もし宮永照と大星淡がタイムリープしたら   作:どんタヌキ

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ちょっとした修正点
4、5話の地の文の池田って所を華菜に変更。
他のキャラがみんな下の名前なのに(大人はともかく)、池田だけ池田なのも何かかわいそうな気がしたので……

たまに天鳳という所でネトマやっているのですが、これが中々話のネタになる。選手の思考とか、されたら嫌な和了とか。



あと気がついたらお気に入り500に到達しました、読者の皆様には本当に感謝です!
次の目標は、お気に入り600です!その為には、自分もよりよい話を書きたいですね。


14,長野県予選団体決勝~先鋒戦~

『間もなく決勝戦が始まろうとしています。解説には今日も藤田プロにお越し頂いています。本日もよろしくお願いします』

『ん、カツ丼うまい』

 

 

 

 これから決勝戦先鋒戦が始まろうとしていて、何かいつもとはまた違った空気が包み込んでいるような会場内。実況席からは、アナウンスが鳴り響く。

 そこに、一人の人物が誰よりも早く入場していた。

 

(……)

 

 その人物とは、風越の部長でもある福路美穂子。既に席に座っており、目を閉じて集中している。

 

 

 

「私が一番乗りだじぇ!……って、もう一人いたじょ」

 

 美穂子より少し後に入場してきたのが手にタコスを持ってきた人物、優希だ。

 まだ席には座ろうとはせず、手に持っていたタコスをサイドのテーブルに置き、立ったまま目を閉じる。

 

 

 

(私が……清澄の勢いをつけるんだ!絶対に、流れを作るじぇ!)

 

 集中しながら、少しの時間思い耽る。

 そして目を開け、テーブルに置いていたタコスを手に取ろうとした。

 

 

 

(……あれ?)

 

 だが、そこにタコスは無かった。

 おかしい、そんなはずはと考えた優希は周りを見渡す。

 

 

 

「うっめーなー、このタコス」

「じょ!?」

 

 既にタコスは、龍門渕の先鋒である井上純の口の中に収まっていた。

 

「あ、わりぃ。このタコス君の?腹へってたから、つい食っちまった」

「私のタコスが……タコスが……」

 

 純としては、腹が減っていたからつい食べてしまったという軽い気持ち。

 誰のかはわからなかったが、対局後にでも何らかの食べ物でも返せばいいか、という気持ちであった。

 

 

 

「うえぇぇぇぇぇん!!」

「ッ!?」

 

 ところが、純が思っていたよりも深刻な状況に陥ってしまった。

 優希が本気で、泣いてしまったのだ。

 

「ノッポが……私のタコスを……」

「ノッポ!?わ、悪かった!頼むから、泣き止んでくれ!」

『おおっと、これはどうした事か。何かトラブルでしょうか』

 

 どうしたらいいか、と思い切り焦ってしまう純。

 アナウンサーはその様子を、とても冷静に実況していた。

 

 

 

「……最後に私が入場したと思ったら、これはいったい」

「タコスがぁ……」

 

 とても高い緊張感を持ちながら鶴賀学園の先鋒、津山睦月が最後に入場した所、思ってもいない場面に遭遇してしまいこちらも困惑してしまう。

 

「そうか、何か腹減ってるんだろ!?俺の控え室から、何か食べ物持ってくるから、な!」

「ん、腹が減っているのか?一応、私の方の控え室にもせんべいなら大量にあるぞ……時間は、急げばギリギリって所か」

「タコスじゃなきゃ……駄目なんだじぇ……」

 

 優希からはタコスの一点張り。

 他の部員も、流石にタコスは無いと諦めた表情で卓につく。純に関しては、最後までスマン!と謝りっぱなしであった。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「いやー、やっぱり珍しいよなあ」

「華菜ちゃん、どうしたの?」

 

 先鋒戦が始まる前の事件を風越の控え室のモニターで見ていた池田華菜は、その光景を見て珍しがる。

 そんな華菜の様子を見た吉留未春は不思議そうに、尋ねた。

 

「キャプテンなら、例え試合前でもあの泣いていた清澄の一年を気にかけるって思ったけどずっと目を閉じて集中してたから。キャプテンらしくない気がして……」

「確かに……言われてみたらそうかもしれない。敵でも、対局以外は優しくするのがキャプテンのイメージだけど」

「よっぽど、自分に集中しているのでしょうね」

「あっ、久先輩!」

 

 華菜の疑問、そしてそれに対し賛同した未春。

 両者が何故なのか、と悩んでいた所に久から声がかかってきた。

 

「二人が思っているイメージ、間違っていないと思うわよ。だけど美穂子は今、そんな余裕が無いんでしょうね」

「余裕を持たないキャプテンなんて、普段からだと想像が出来ないし……」

「……これから相手には宮永照、天江衣といった化け物が出てくる。そうなっている以上、自分が稼がなきゃって意志が強いんでしょうね、美穂子は。責任感が強いから」

 

 他に構っている余裕が無いくらい、美穂子は自分の事で精一杯だと久は指摘する。

 その理由として、これから他校には全国トップクラス。いや、トップが出てくるのだ。

 

「後の私達が……ふがいないせいで」

「あら、華菜は私もふがいないって言っているのかしら?」

「い、いや!久先輩!そんなつもりじゃ」

「冗談よ。……ま、でも。私がふがいないってのは事実かもしれないけどね?」

 

 久は冗談、と一度流すがそれでも自身の実力の無さは自覚していた。

 勿論、部内ではトップ争い。全国でも、通用する実力の持ち主だ。だが、照などと比べてしまうとどうしても劣ってしまう。

 

 

 

「……それでも、最後に勝つのは風越よ」

「は、はいっ!勿論です!」

 

 個人では勝てなくても、チームとして勝てばいい。

 そんな思いを持ちながら、久は一言呟いた。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「……ユーキ、あれピンチじゃない?」

「優希ちゃん……大丈夫かな……」

「こんなすばらくない状況……流石に予想外ですね」

「……あまり良くない状況。タコスは、優希にとってやる気スイッチみたいなものだから」

 

 一方その頃清澄控え室は、完全に良くない空気を感じ取っていた。

 それも、部員全員の一致の思いである。

 

「……あれっ、京ちゃんからメール来てる」

(サキの携帯が……正常に作動している?)

(これは……雪でも降るんでしょうか)

 

 その時、咲の携帯に京太郎からメールが来ていた。

 淡、煌の二人はその普通の光景が奇跡だと感じていたのはまた別の話。

 

「タコス急いで探してくる!……だって」

「流石、キョータロー……その動きの積極性といい」

「優希や淡さんに何か言われたりしたらよく反論する姿を見受けられますが、いざという時は……頼りがいのある、すばらな須賀君です」

「京太郎君、先鋒戦の前半戦が終わるまでに間に合うかな……」

 

 部員全員が、京太郎の行動力に感心するばかりであった。

 

 ちなみに、予選は決勝以外は各ポジション半荘一回ずつで行われていた。

 だが、決勝からは半荘二回ずつとなっている。照の言う前半戦とは、最初の半荘戦の事だ。

 

「タコスが無い時のユーキって本当に酷いからねー、下手したらキョータローより弱いんじゃない?」

「さ、流石に始めたばかりの京ちゃんよりかは……いや、否定できない……」

 

 タコスを食べていない、つまり集中力の無い時の優希というのはかなり酷いものがある。

 それは最近麻雀を本格的に始めたばかりの京太郎にも劣るかもしれないというレベルであった。

 

 

 

「……はっ」

「どうしたの、お姉ちゃん?」

 

 何かに気づいたかのような表情をしながら呟いた照に対し、咲は尋ねる。

 

「タコスは無いけど……私が持ってきたドンタコスなら」

 

 そう、本日も照は大量のお菓子を持ち込んでいる。

 その中身は甘い物が大半ではあるが、スナック菓子やチップス系のお菓子も含まれていた。

 

 そしてその中に、ドンタコスもあったのだ。

 

「確か……ドンタコスもユーキの好物だったよね」

「これを今ダッシュで優希に渡しに……!」

 

 ドンタコスもまた、優希の集中力を上げるための食べ物である。

 それに気づいた清澄内の部員は、急いで会場にドンタコスを持っていこうとする――――が。

 

『間もなく、先鋒戦が始まります』

「あー、始まっちゃった!」

「優希には何とか、この前半戦耐えてもらうしかない」

 

 会場に向かおうとする前に、先鋒戦開始間近のアナウンスが鳴り響いた。

 つまり今の段階で、優希にドンタコスを渡す事は出来ないという事になる。

 

 

 

 清澄部員は、何とか耐えてくれる事を祈る事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 ――――東一局。

 場決めにより東家が優希、南家が美穂子、西家が純、北家が睦月というスタートになった。

 

 

 

(清澄のこの子……決勝に来るまでの牌譜から見ても東場での爆発力は凄まじかったはず。だけど、おかしいわね……)

 

 七巡目、美穂子は手を切りながら上家の優希の様子を見ながら異変を感じ取っていた。

 未だ、リーチ宣言はどこからもかからない。優希にいたっては、来る気配すら感じないと美穂子は思っていた。

 

(だったら、このチャンスは逃せない……逃さない……!後の子達の為にも……!)

 

 

 

「ロン、8000点です」

「じょー……」

 

 十一巡目、美穂子が優希からロン和了。

 そして親は流れ、東二局へと進んで行く。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「ツモ、4000オール」

 

 東二局、美穂子が親満をツモ和了し連荘していく。

 

(……まっずいなー、風越が乗ってきてやがる)

 

 純は二連続和了をして、既に優位に立っている美穂子を見ながらそんな事を考えていた。

 

(流石、名門のキャプテン張るだけの実力はあるって事か。しかも、ツキも来てそうだな。だったら、一度流れを変えたい所ではあるが……)

 

 純は場の流れを察知し、そして鳴く事により上手く自分の方に引き寄せていく麻雀を得意としている。

 現在、純が感じ取っていたのは美穂子に流れが来ている事。だからこそ、一度鳴いておきたいと考えてはいるが――――美穂子からは、鳴ける牌が捨てられて来ない。

 

(ッ、風越は俺の鳴ける所全て抱えてやがるのか!?)

 

 思ったように鳴けないというのは麻雀ではよくある事だが、それにしても出なさすぎだ、と純は考える。

 

 

 

「ロン、7700の一本場は8000」

「うぅ……」

(おいおい、マジかよ……)

 

 美穂子が優希から再びロン和了。これで三連続和了となる。

 だが、純が驚いているのには別の理由があった。

 

(俺の鳴ける所、潰しながら手を作ってやがるのか……!)

 

 本当に上手い事純が鳴きたい牌を抱えつつ、美穂子は自身の手を完成させていた。

 

 

 

 ――――東二局、二本場。

 

(これはマジで、俺が鳴けない可能性ってのは高いかもな……だー、くそ!上家がこんな奴とか運悪すぎだろ!)

 

 純は美穂子が自分の上家に座っており、そして鳴けない運の悪さに文句を心の中で言う。

 

(その鳴けない、最悪の事態を想定しながら進めて行かないとならねーかもな……流れが風越にありそうって事は、普通に手を作っても聴牌速度で勝てない気もするしなあ)

 

 純は前半戦の今後、どのように手を進めて行くか考える。

 自分の力だけではどうしようもないかもしれない、という最悪の状況を考えつつ、作戦を立てていく。

 

 

 

「チー」

 

 二巡目、純の捨てた牌を睦月が鳴いた。

 

(流石に決勝に上がってくるだけはあるな……わかってるじゃねえか!)

(うむ、こちらとしても風越の親はさっさと流しておきたい……鳴ける所を出してくれるなら、それはそれでありがたい)

 

 純の考えた作戦とは、自分ではなく他家を利用して場を進めていく事。

 睦月としてもこの状況、どうにかしたいと考えていた。純に上手く利用されていると言えば言い方は悪いが、それでも何とか手を進めて行く。

 

(しかし清澄、本当に全然だな……俺がタコス食ったせいか?いや、流石にそれはねーか……)

 

 などと冗談っぽく純は考えていたが、まさかそれが本当だとは本人は知る由も無い。

 純から見ても、今の優希は全く脅威にすらなりえない存在なのだ。

 

 

 

「ツモ、2000オールの二本場は2200」

(ッ、これでも……)

(……止まらないのか、風越の福路美穂子!)

 

 

 

 美穂子の勢いは、まだまだ止まらない。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

「先鋒戦前半が終了しましたが、藤田プロ。風越の福路が勢いのままそのまま突き抜けていったといった模様の前半戦でしたが」

 

 ここは実況席、アナウンサーと藤田プロがいる場所。

 前半戦が終了し、アナウンサーが藤田プロに解説を促した。

 

「そうだな、まさにその言葉通りだ。龍門渕の井上、鶴賀の津山も何とか和了ろうと必死に頑張ってこそいたが、それでも福路の勢いは止まらなかったな」

 

 純と睦月も小さくてもいいから何とか美穂子に和了らせないように動いてはいたが、それでも美穂子の勢いは前半は最後まで途絶える事は無かった。

 

「それにしても、清澄の片岡。早くも失点は四万越え」

「酷いな」

「昨日相当チームを勢いづけ、かなり注目の選手の一人でしたが。決勝戦、マークがきつくなって中々自分の麻雀をさせてもらえていないのか、ここまでは調子が上がりません」

 

 団体戦予選の初日、優希は初戦だけではなく全試合でかなりのプラス収支を残してきた。

 その活躍は他校からも注目されるほどで、あの宮永照が先鋒に置いた理由もわかる、と周囲を頷かせるほどの活躍をしてきたのだ。

 

 だが、ここまでは最も失点を重ねてきている。

 

 

 

「マーク?違うな。それ以前の問題だ」

「と、言いますと?」

「マークすらされていないよ、本人の集中力がまるで無い。周りも決勝に上がってきているだけあって、それなりの実力者だ。あれじゃあ、通用はしないな」

 

 藤田プロは優希本人の問題だと指摘する。

 

「なるほど……」

「とはいえ、私もあの先鋒にはそれなりに注目はしてたんだ。昨日の活躍を見ただけにな。それに、まだ一年生だろ?これから長野を代表する選手、いや、頑張れば全国でも上位の選手になれる可能性だってあるな」

「ほほう、藤田プロにそこまで言わせるだけの可能性を秘めていると?」

「宮永照が先鋒に置くだけの物はあるって事だ。前半戦は酷かったが、後半戦はどうかな」

 

 藤田プロはそれでも、優希の持っている物というのは認めていた。

 一年生でありながら、全国チャンピオンがいるにも関わらず先鋒という大事なポジションを任されて、結果を残してきた昨日の実績と、その打ちっぷりだ。

 

 

 

 風越が大量リードを持ちながら、後半戦を迎える事となる。

 

 清澄・58400(-41600)

 風越・162100(+62100)

 龍門渕・87000(-13000)

 鶴賀・93500(-7500)

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

(こんな……こんなんじゃ駄目だじょ)

 

 前半戦を終了し、各選手は少しの休憩時間へと入っていた。

 優希は一度部屋を出て、一人ベンチに座っている。

 

 

 

(せっかく……先鋒を任されたのに、何も出来なかった……何も役目を果たせていないじょ)

 

 前半戦の不甲斐なさに、一人落ち込む優希。

 ――――そんな時だ。

 

 

 

「おーい!」

「……じょ?」

 

 優希からすると、とても聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 そしてその優希を呼んだであろう人物の手元には。

 

 

 

「京太郎おぉぉぉぉっ!」

「うわっとぉっ!?」

 

 優希は京太郎の元へ思いっきり飛びついた。

 

「お前は使える犬だじぇ!」

「い……犬?まあ、これを食わないと調子でねーだろ。ほら、タコス」

 

 京太郎の手元にはタコスの入った袋。

 そしてそれを、優希に手渡す。

 

 

 

「うまいじぇ!これで、力が出る!」

「そうか、それならよかった……って、ん?」

 

 京太郎は遠くから人がこちらに向かって歩いてきているのを見た。

 そして、その人物はこれまたよく知る人物だった。手には、何かのお菓子の袋を持っている。

 

 

 

「優希、それに京太郎君。ここにいたんだ」

「照先輩!?」

「これ、優希に。ドンタコス」

「じょ!?」

 

 やってきたのは控え室から優希のためにドンタコスを持ってきた照であった。

 

「ありがとう京太郎君、わざわざ外にタコスを買いに行ってくれて」

「大丈夫ですよ!タコス食われてこいつがヤバいって感じたんで……万全の状態で挑んで欲しいですから、そのためには俺に出来る事だったら」

「京太郎ぉ……」

 

 照は急いでタコスを買ってきてくれた京太郎に感謝し、優希もそんな京太郎に感謝しつつ涙目になりながらタコスとドンタコスを頬張っている。

 

 

 

「優希」

「……じょ?」

 

 そんな食事中の優希に、照が声をかけた。

 

「前半戦の事は気にせず、後半戦は打ってきて欲しい。大丈夫、いつもの優希ならきっと勝てる」

「……むぐっ、正直、あの前半戦を気にするなと言われても無理があるじょ……」

 

 食べた物を喉の奥に運び、口の中身を空にして優希が話し始める。

 照は気にしなくてもいいと言ったが、優希はあの前半戦がよっぽど悔しかったため忘れる事など出来なかった。

 

 

 

「……だけど、それを私は糧にする。倍にして返してやるじょ!」

「……ふふっ、期待してるよ?」

 

 忘れる事は出来ない。だが、むしろそれを糧とし後半戦は暴れてやる、と優希の意気込み。

 照も思わず、いつも以上に期待してしまうほどの気合の入りようであった。

 

 

 

「じゃあ、俺は観戦室で見てるから。頑張れよ、優希!」

「おう、任せとけ!今の私はダブルタコス力により、無敵だ!」

 

 そんな応援の言葉を残して、京太郎は優希の元を離れていった。

 

 

 

『間もなく先鋒戦後半が始まります』

「っと、じゃあ私もこれで。優希、頑張ってね」

「勿論だじぇ!」

 

 後半戦開始のアナウンスが館内に鳴り響き、照もその場を離れる。

 優希は再び、会場入りする。前半戦終了の時とは全く真逆の、いい表情をしながら。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 ――――東一局。

 

(ッ、また上家が風越かよ!?マジでついてねー……)

 

 場決めにより東家が優希、南家が睦月、西家が美穂子、北家が純と決まる。

 純はまた不運な場になってしまった事を呪っていた。

 

 

 

(前半戦とは違う私の、私らしい打ち筋を通すんだ!)

 

 優希はとにかく気合が入っていた。

 そんな優希の気合に応えるかのように、配牌時点から、更にはツモもかなりいい具合であった。

 

 

 

「リーチだじぇ!」

 

 六巡目、優希がこの先鋒戦初のリーチをかける。

 

 

 

(あのリーチ、多分だがやべえ……清澄も、後半に入ってやっと目覚めたか)

 

 純も優希の親リーに相当警戒していた。

 

(鳴いて流れを変えれればまだしも……どうにか出来るか?)

 

 自分がここで鳴ければ勢いは緩和されるであろうと純は今までの経験から何となくではあるが、感じていた。

 ――――が、美穂子からは鳴ける牌は出ず。

 

(ッ、そこは出せよ!マジで自分中心でしか、考えれてねーんじゃねーのか!?)

 

 もしこれがいつもの美穂子だったら純みたいに流れを読む、という事は出来ずとも、何かしらの警戒をして下家に一発消しをさせる事くらいはしたかもしれない。

 だが、今の美穂子は自分が和了って後輩を楽させるためにどんどん稼ぐ、その考えの比重が高かった。

 

 だからこそ、振りこみさえしなければ後は自分の手を出来るだけ早く作る、その事を一番に考えていた。

 美穂子はあらかじめ安牌で取っておいた数枚切れている字牌を捨てる、これでは純も鳴けない。

 

 

 

「ツモ!8000オールだじぇ!」

 

 優希、一発ツモで親の倍満を和了――――!

 睦月はその速度と火力に唖然とし、美穂子はしまったという表情、純はやっぱりかというある意味納得の表情だった。

 

 

 

「前半戦は不甲斐なかったけど、後半戦はそうは行かない。勝負はこっからだじぇ!」

 

 

 

 東一局、優希の親は続いていく。




今回のまとめ
タコス、食われる
美穂子、前半戦無双
京太郎、有能
後半戦、優希の反撃

場を見て更には相手の手牌もある程度見抜く美穂子って、鳴き主体の純にとって結構な天敵だと個人的には思います。原作ではあまりそんな場面は無かったけど。

流れを変えたい所でも鳴けないって、純にとっては相当歯がゆいでしょうね。

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