もし宮永照と大星淡がタイムリープしたら   作:どんタヌキ

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15,先鋒戦決着

(……ふぅっ)

 

 東一局一本場。美穂子は、小さく息を漏らす。

 

(少し……自分を見失っていたみたいね、見ているつもりの周りが見えていなかった)

 

 先程の優希の倍満、あれはやろうと思えば他家に上手く鳴かせ、一発を消す事は出来なくはなかった。

 一発が消えれば点数は落ちるし、もしかしたらそのまま和了れなかったかもしれない。

 

 あの和了はただ親の倍満を和了されたという所だけではなく、優希を乗せてしまったというのがかなりの問題点でもあるのだ。

 

 

 

(つもりじゃ駄目ね、しっかりと見て、冷静に判断をしないと)

 

 つもりというのは本人はそう思っていても、案外しっかりと出来ていない事の方が多い。

 だからこそ美穂子はもう一度気を引き締め、周りをしっかり見て、これからの場をどうにかして進めて行こうという意識を強める。

 

 

 

 ――――だが。

 

 

 

「ロン!11600の一本場は11900だじぇ!」

「ッ!?」

 

 そんな美穂子が、振り込んでしまう。

 

(清澄の子がリーチせずダマ和了……!?決して油断もしていなかったし、冷静にいつも通りの打ち方をしていた。それでも振った)

 

 その事実に、美穂子は驚くばかりであった。

 

(……清澄の一年生、片岡さん。あの宮永さんが先鋒に置いた意味がわかる気がする。勢いに乗ると、相当手ごわい……!)

 

 だが美穂子はその事実に焦るのではなく、むしろ冷静さが増していった。

 相手の実力を認めた上で、自分のいつも通りの麻雀を貫き通すという気持ちが一層強くなる、それだけの話であるのだから。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「清澄の片岡、風越の福路にロン和了です!後半戦に入り勢いに乗ってきたか!」

 

 実況席では、アナウンサーが興奮した口ぶりでマイクに向かって声を出していた。

 

「しかし驚いたな。風越の福路はかなり放銃の少ない選手だ、それが振り込むとはな」

「福路がどこかで油断をしていた所があったという事でしょうか?」

「いや、違うな。あれは清澄の方が上手かったというのもあるだろう」

 

 アナウンサーが藤田プロに対し油断だったのかと問いかけるが、それを否定する。

 単に、実力の問題であると藤田プロは話す。

 

「あまり過去のデータが無い上に、昨日の暴れっぷりだ。とにかく火力重視の選手かと思っていたが……意外と器用な所もあるじゃないか」

「この状況では、流石の福路も動揺してしまうでしょうか?」

「いいや、あの面構え見てみなよ。私も動揺するのではないかと思っていたが……流石は名門の部長か、更に集中力を増したようにも見えるぞ?」

 

 他者からも優希はとにかく高打点で押していくイメージを持たれていた。

 だが、あの場面での奇襲。その事実は誰もが驚く事であるし、更には心理状況を揺さぶるかもしれない点数以上に大きな和了だ。

 

 それでも、美穂子はぶれる事が無かった。

 そしてそれを、藤田プロは評価する。

 

 

 

「まだまだ先が読めないな、清澄がこの勢いを持続させるかもしれんし、風越がまた蘇るかもしれん。あるいは……他が目覚める可能性もあるかもしれないな?」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

(さて……まずはこの清澄の子の勢いをどうにかしなきゃならないわね。私も配牌はまずまずだけど……)

 

 東一局二本場、美穂子は自分の手を見つつ、全体も見ながらじっくりと思考する。

 

(この段階で一向聴、火力も悪くない……けど)

 

 五巡目、美穂子の手の伸びはまずまず。

 だが、優希の河や表情等を見ながら考えを切り替えていく。

 

(既に中張牌も切られてる、それにあの自信満々な様子……仮にこのまま私が手を伸ばしていっても、競り負けるかしら?)

 

 普通ならばそのまま勝負に行くような、良手。

 それでも進もうか進まないか迷っているというのは、それほど優希の存在が脅威という事。

 

 

 

(だったらいっそ……こっちかしらね)

 

 美穂子は下家の純を横目でチラリと見てから、牌を河に捨てた。

 

 

 

(……!)

 

 純、その捨て牌を見て表情を変える。

 

「チー!」

 

 

 

 そして迷わず鳴いた。

 

 前半戦から今まで、鳴くチャンスが全く無かったというわけでは無い。

 だが、純が本当に鳴きたいと思ったタイミングでは初めての事だ。

 

 

 

(風越……自分では清澄をどうにかする事が出来ないと判断して、こっちを頼ったって事か?)

 

 今までの展開なら純の鳴きたい所を潰し、美穂子自身が和了するために手を進めて行っていた。

 だが今回はそうではない。逆に、鳴かせたのだ。

 

 

 

(……まあ、その考え自体は悪いとは思わねえよ。確かに、あの清澄の爆発力は異常だ。止めたい気持ちも十分わかる)

 

 純自身も実際、前半戦は睦月に鳴けそうな所を出して美穂子の勢いを止めようとしていたのである意味、似たような事をしている。

 

(だがな……自ら手放した流れってのは、中々帰ってこない物なんだぜ?)

 

 

 

 ――――十巡目。

 

 

 

「ツモ、1200、2200だ!」

(じょー、行けると思ったのに途中から手が伸びなかったじぇ……)

 

 純のツモ和了。

 他家が相当厄介と感じていた優希の親が、ようやく流れる。

 

 優希も途中までは高く、そして速度もあったのだが、あと一歩の所で思ったような引きが来なかった。

 

 

 

(……風越、ホッとしたって感じの表情だな。だがこっから……また自分にいい流れが来るとは思うなよ?)

 

 美穂子は恐らくこの対局で最大の難点であった優希の東場の親を流したという事実に、少なからず安心していた。

 一方、和了った純は今ので自分に流れが来たと確信し、これからの展開に自身でも期待していく。

 

(こっからまくって……トップになってバトンを渡す!)

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「やはりと言いますか……南場に入って優希の勢いが落ちていますね」

「前半戦絶好調だった風越の人もそこまで伸びてない……あの龍門渕の大きな人が調子付いちゃってる感じがする。優希ちゃん、大丈夫かな……」

 

 後半戦も南場に突入。

 控え室からモニター越しに試合展開を見ている清澄メンバーは、優希の勢いが落ちてきた事を心配する。

 

「鶴賀が小さいのちょくちょく和了ってるから龍門渕の連荘もないけど、やっぱりユーキが心配だねー」

 

 淡が指摘したように、親の連荘自体がほとんど起こっていないので割とサクサク場が進んでいる。

 それでも今一番調子付いているのは純であり、睦月がどうにかして喰らいついている状況だ。

 

 

 

「……いや、きっと大丈夫」

 

 

 

 清澄のメンバーがここまで心配する理由は、ただ単に優希の手が落ちるからではない。防御そのものが下手なのだ。

 東場は圧倒的火力と速度でそれを気にさせない、いわば攻撃は最大の防御といった形を作る事が出来る。だが南場ではそれが出来ず、振り込む事も多々ある。

 

 だが、照はそんな優希の事を大丈夫、と言った。

 

 

 

「優希は確かに守るのが上手くない。だけどあの場面、苦手なりに必死になってる」

「確かにそこでそれ切るの!?っていうのは何度かあるけど、それでも何とかかわしてる。集中はしてるねー」

 

 南場で手が悪くても突っ込みがちの優希だが、現在は清澄のメンバーがモニター越しに見る限りでは、必死に守る事も考えながら打っている。

 その切り方に上手さはない。が、振り込んでいないという結果だけはついてきている。

 

「多分優希は総合的にマイナスの収支で終わる。だけど、先鋒としての役割はしっかりと果たしていると思う」

 

 南二局、現在優希はわずかにマイナス収支。

 ここから優希が和了出来る可能性が低い事を考えると、プラスで終わる事は難しいといえるだろう。

 

 それでも、照は優希の働きをしっかりと評価した。

 

 

 

「あれだけ必死になって自分の今出来る事をこなそうとして、後ろに繋ごうとしてるんだもん。燃えないわけが無いよね?」

「勿論ですね。優希のあの打ちっぷり、本当にすばらです!あんな姿を見て、やる気にならないわけがありません!」

 

 照の全体への問いかけに、煌が真っ先に当然だ、と声をあげる。

 淡も大きく頷き、咲も控えめではあるが小さく頷いた。

 

「優希と煌には、私含めた三人には無いがむしゃらさを持ってる。それは、団体戦では後ろに大きな勢いを作る、大切な物。メンバーを決める時には話さなかったけど、これも二人を前に置いた理由の一つだよ」

 

 照が優希と煌の二人を前に置いた理由の一つに、がむしゃらさという点がある。

 これは実力だけの物ではなく、例えマイナスの収支であろうと後ろに勢いを与える事がある。

 

 そしてそれは、収支ではマイナスでも総合的にはプラスの方向へ働く事だってあるのだ。

 

 

 

(どんな結果になろうとも。必死になって持ってきた優希のバトンを、私が絶対にすばらな流れで繋ぎます!)

 

 間もなく次鋒戦という所で、煌は今までに無いくらい燃えていた。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

『先鋒戦終了ッ!!決勝戦に相応しい、見事な試合でした!』

 

 長かった先鋒戦も終了。

 アナウンサーが少し興奮気味の声で実況する。

 

『まず一位抜けは風越、福路!後半戦やや点数を落としたものの、前半戦の圧倒的な収支で総合的にもかなりのプラスで終える事が出来ました!』

『後半戦の東場で崩れるかと思われたが、流石は主将。よく、持ちこたえたと思うよ』

 

 一位抜けは美穂子。

 

 後半戦は結構なマイナス収支ではあったものの最終的には一人抜け、二位に大きな差をつけ単独トップである。

 前半戦の独走は勿論の事、後半戦の崩れそうになりつつ踏ん張った所を藤田プロは評価した。

 

 

 

『二位抜けは龍門渕、井上!前半戦は何とか喰らいつき、後半は自分の流れに持ってくるかのような打ち筋。総合ではややマイナス収支ですが、十分健闘したと言えるのではないでしょうか』

『そうだな、後半戦は自分らしさという物が出ていたと思うよ。前半戦も、よく粘れていたんじゃないかな』

 

 二位抜けは純。

 

 総合ではややマイナスだが、それでも後半は上手く巻き返しを見せた。

 粘って粘って最後は自分の流れをつかんだ所は、純らしさが出ていたであると言える。

 

 

 

『三位抜けは清澄、片岡!前半戦は大きくマイナスではあるものの、後半戦は収支トップ!二位との差もわずかですし、何よりチームに勢いを最もつけた選手ではないでしょうか』

『おお、いい所に目をつけたな。今一番勢いに乗っている、またはこれから乗ってくるであろうチームは清澄だと思う。素人目でもわかるくらい、後半戦はチームを勇気付ける打ちっぷりだったな』

『優希だけに』

『えっ?』

『えっ?……ゴホッ、失礼しました』

 

 三位抜けは優希。

 

 後半戦の力強い打ちは、誰が見てもわかるくらい周りを熱くさせるものであった。

 それは実況出来る程度には打てる、多少かじった程度のアナウンサーでも感じ取れた物である。

 

 実況席ではくだらない会話が、そしてそれを聞いた会場全体の空気が若干凍りかけたというのは別の話。

 

 

 

『四位抜けは鶴賀学園、津山!放銃こそあまり無かったものの、この中では最もマイナス収支になってしまいました』

『うーん、悪くない打ち筋だとは思ったがな。この卓でツモ和了が多かったのがマイナスに響いたって感じだな』

 

 四位抜けは睦月。

 

 最初から最後まで粘り強い打ちこそ見せてはいたが、最終的には大きくマイナス。

 その内のほとんどが他家のツモ和了での失点だと言うのだから、中々に不運かもしれない。

 

 

 

「ありがとうございました!……おい、ちっこいの!最初は、本当に悪かった!」

 

 対局を終え、全員が挨拶をして退室しようとする場面。

 すぐには出ようとせず、純がまず優希に謝罪をと、話しかける。

 

 

 

「ほんとだじぇ!タコスおごれよ!」

「うっ……タコスの店なんて、俺全然詳しくねーぞ」

「じゃあ私がいい店知ってるから、現金だけくれよ!」

「俺が悪いっていう自覚は勿論してるが、何かお前めちゃくちゃ腹立つな!?」

 

 優希は純に対しタコスを要求する。

 だが純がタコスの店に詳しくないと知るや否や、速攻で現金を求める優希。

 

 その態度に、純は自分に非があると自覚しつつもどこか苛立ちを感じていた。

 

 

 

「あの……本当にごめんなさい!最初貴方が困っていたのに、助けてあげる事が出来なくて……!」

「じょ?何でお姉さんが謝る……って、ガチ泣きしてるじぇ!お姉さん、泣き止んでくださーい!!」

「何で先鋒の面子はこうも泣き虫ばかりなんだよ!?」

 

 最初の事に気づいてはいたものの、余裕が無く何も手を差し伸べる事が出来なかった事に美穂子は大きな責任を勝手に感じていた。

 そして、大泣き。優希も純も、この展開には慌てる事しか出来なかった。

 

 

 

「……うむ、いい対局だった」

 

 それを横目で見ながら、自身の結果には満足していないものの、対局そのものにはかなりやりごたえを感じていた睦月は一人、呟いた。

 

 

 

 清澄・92100(-7900)

 風越・137000(+37000)

 龍門渕・95800(-4200)

 鶴賀学園・75100(-24900)

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、皆さん!私が思ったよりも稼げなくて……!」

「何言ってるんですかキャプテン!十分すぎますよ、あの相手に!」

 

 風越の控え室に戻ってきた美穂子。

 まず最初に部員全員に対し謝罪をするが、それを風越メンバーは全員十分だ、と返す。

 

 風越メンバーもモニター越しから、先鋒戦はどの高校も実力者を出してきていると理解できたため、そしてその中でも十分すぎるほどプラス収支で返って来た美穂子相手に誰が責めようか。いや、そんな者はいない。

 

 

 

「……福路、後半戦のあのザマは何だ?」

「コーチ……!最初に周りを見る事が出来ていなかった、私の責任です」

 

 部員ならば、と付け加えるが。

 

 風越コーチ、久保貴子。彼女はとても厳しい事で有名である。

 いくら好成績でも、内容が悪ければそこをどんどん指摘していく。

 

「ふん、自覚しているだけマシか……まあ、自覚していなければあの後崩れていてもおかしくは無かったからな。よく持ちこたえた」

「コーチ……?」

 

 てっきり怒られるとばかり思っていた美穂子であったが、そうではなかった。

 

「後は後ろに頼れ。お前は十分頑張った」

「コーチ……!ありがとうございます!」

「今は私なんかに礼をする必要なんて無い。優勝して初めて、部員全員に礼を言うんだな」

 

 美穂子は全て自分で背負い込みがちであった。

 そうではなく頼れ、と久保コーチの指摘。

 

 

 

「染谷は?」

「もう会場に行きました!」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「あの……皆さん、申し訳ありません!」

「何言ってるんだー、むっきーは十分頑張ってただろー?」

「蒲原の言う通りだ。あの相手なら仕方ないさ、むしろ最低限のマイナスに抑えたならば十分だ」

 

 ここは鶴賀学園控え室。

 戻ってきたばかりの睦月はまず、自分の結果が悪かった事に対し謝罪。

 

 だが、鶴賀メンバーはそれを責めようとせず、むしろ十分頑張ったと睦月を称えた。

 

「ワハハ、かおりんが全部取り返してくれるからなー」

「ええっ!?」

「蒲原の言う事は気にしなくていい。とにかく、自分の納得できる対局が出来ればそれでいいよ」

「は、はいっ!」

「ワハハ、酷いなユミちんはー」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「かーっ!」

「どうしたの純君、不満そうだけど」

「そりゃそうだろ、あの結果じゃ」

 

 控え室に戻ってくるや否や、すぐにソファに倒れこむように座って大きなため息をもらしつつ不満げな言葉を漏らす純。

 

「確かに、純がマイナス収支とは珍しいですわね」

「まあ、あれは相手も強かったよ。二位だし、悪くは無いんじゃないかな?」

「確かに相手が強かったってのは認めるが……一位でバトンを回すつもりだったからな、満足するわけがねえ」

 

 純もしっかりと他の三人の実力というものは認めていた。

 だが、それと結果に関しては別。絶対に一位で帰ってくるという意気込みで挑みながら、それを達成する事が出来なかったのだ。

 

 

 

「でも、ま」

 

 悔しさ、それは当然感じていた。

 しかし、純が感じた物はそれだけではない。

 

 

 

「楽しかったわ。また、あいつらと打ちたいな」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 優希は対局を終え、一騒動の後に控え室へと足を運んでいた。

 だが、その足取りというものは軽くは無く、むしろ少し重みがあった。

 

 

 

(思うような結果を残せなかった……!)

 

 最終的には三位フィニッシュ。

 後半戦こそ稼ぎはしたものの、前半戦の失点が痛すぎた。総合でもマイナス収支で終わり、優希はその事実に少し落ち込んでいた。

 

 

 

「……あれ、優希?」

「ッ!」

 

 その時、控え室に向かおうとしていた優希の向かいからやってきたのは――――煌だ。

 次鋒戦がすぐに始まるため、会場に向かっていた煌とちょうど遭遇したのだ。

 

「煌せんぱぁい……!」

「え、ちょっと!?何で優希は泣いているんですか!?」

 

 視線が合ったと思えば、突然泣き出した優希に煌は困惑する。

 そして、何故泣いているのか色々と思考を張り巡らせていく。

 

 

 

「――――優希は十分頑張りました。泣く必要なんて、どこにも無いんですよ?」

「でもっ……!ひっぐ……」

 

 煌は優希が試合の内容に満足せず悔し涙を流していると思い尋ねてみた結果、それは的を射ていた。

 責められず優しい声をかけられ、逆に益々優希の涙は多く零れ落ちていく。

 

「優希の熱意は十分伝わりました。優希の打ちっぷり、とてもすばらでしたよ。だから泣かないで、胸を張ってください」

「うぅ……でも私、マイナス……」

「それはこれから皆で取り返していけばいいんです。それとも、私含め他のメンバーが、信用できませんか?」

「そんな事……あるわけないじぇ……」

 

 団体戦とはチーム全体で戦うから団体戦だ。

 誰かがマイナスになっても、皆で取り返して最終的に勝てばいい。それが団体戦だ。

 

 煌はその事を、優希に指摘する。

 そして優希も清澄のメンバーの事は心から信頼している。だからこその、煌の質問に対する否定だ。

 

 

 

「優希、右手をグーにしてください」

「え……?こ、こう……?」

 

 煌が何をするのか優希からはよくわからないが、言われた通りに右手をグーにする。

 そして煌も同じように右手をグーにする。

 

 

 

 ――――コツン。

 二人の間で、グータッチが交わされた。

 

 

 

「行って来ます!優希、応援頼みましたよ!」

 

 

 

 そして煌は会場に向かい、優希と別れた。

 

(煌先輩、お願いだじぇ……!点数、取り返してきて欲しいじょ……!頑張って来てください!)

 

 優希の目は赤みを帯びていたが、涙は止まっていた。

 そして心の中で、自分の失った点数を取り返してきて欲しいと強く願う。

 

 

 

(絶対、優希の分も……!私が取り返します……!)

 

 

 

 煌も強い思いを持ちながら、会場へと足を運ぶ。




今回のまとめ

先鋒戦終了、やはりキャプテンが一つ上手
優希だけに(ドヤ顔)
泣いてばっか

先鋒戦終了。団体戦は大好きなので、熱い展開を書きたいと常々思っています。
そしてキャラ心理も上手く書きたいなーと。団体戦は皆で戦うものですから、特に。

結構カットされてますが、むっきーは小さいのちょこちょこ和了ってますから!

あとクールで強キャラも魅力はありますが、がむしゃらなキャラってやっぱり惹かれるところありますよね。咲の中だったら、一番煌ががむしゃらかな?

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