もし宮永照と大星淡がタイムリープしたら   作:どんタヌキ

2 / 27
正直、この流れを予想していた人はあまりいなかったのでは……?という感じの流れ。

確かに、原作魔改造と言われても過言ではない……かも。一応、原作沿いですが。


2,新入部員

 照と淡、二人が過去に戻るという超不思議現象が起きてから一年が経過する。

 

 照は高校一年生、自身の希望通り清澄高校に入学していた。母だけが、東京に向かった形になった。

 そして、当然の如く照は麻雀部に入部する。

 

 だが、しかし。

 

 

 

(いくらなんでも、部員が他にいないというのは予想外だった)

 

 照以外の部員が誰一人いないのだ。

 そしてそれは、おかしい事。いや、この麻雀が栄えてるご時勢で部員が誰一人いないというのもおかしいが、それとは違ったベクトルの意味でおかしな事が起きている。

 

(私の記憶が正しければ、三年生……今の私と同じ世代の選手が清澄にいたはず。名前は……何だっけ、覚えてないけど)

 

 そう、本来いたはずの清澄の部員すらいないのだ。

 

(やっぱりそのままの過去ではないな……うーん、こればかりは全く先が読めない。でも、別にそれで麻雀が打てなくなるわけじゃないし)

 

 部室に人がいなくても、他で麻雀を打てる所はいくらでもある。

 だけど、それとは別に照は思う事があった。

 

(……一人は、寂しい)

 

 

 

 この年、照は高校生の全国大会個人戦でチャンピオンとなる。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 照は私生活で以前と一つ大きく変えた事がある。

 連絡手段を持つ事。そう、つまりは携帯電話を所持するようになったのだ。

 

(ふふ、私でも電話とメールの仕方は覚えた……本当に、携帯電話って便利)

 

 ちなみにその他の機能は全く使いこなせていないわけだが。

 そして所持する事となった大きな理由としては、やはり。

 

 

 

(あ、電話。……淡からだ)

 

 同じく過去に戻ってきている淡との連絡を取るため、というのがある。

 現在は同じ高校にも通っているわけでもなく、中々会う機会というのも限られてくるためこうして会わずとも話が出来る手段を用いているのだ。

 

 ちなみに、携帯電話を持つように提案したのは淡の方からである。

 

 

 

「あ、テルー!この前の全国見てたよ!おめでとー!」

「うん、ありがとう」

「あ、でもテルなら当然って感じかな?」

「別に当然って事でも無いと思う。全国の上の方には、強い人もいたし」

(どう見ても圧勝だったんだけどなぁ……)

 

 全国決勝でも、結構な点差をつけて照は勝利している。

 それなのに謙遜的?な発言をする照に、淡は疑問を抱いてしまった。

 

「それにしても」

「うん?」

「団体に出れないのは勿体無いねー、しかも他に部員がいないって最初聞いた時には冗談かと思ったよ」

「うん、でも事実」

 

 清澄に他に部員がいないという事実は照だけではなく、当然淡にも衝撃を与えた。

 

「実は私が個人戦優勝した後に入部したいって人が殺到したんだけどね、私が対局したらみんな帰っちゃった」

「……」

 

 まあそうだろうな、と淡は察する。

 普通の打ち手が魔物、いや魔王級の実力を持つ照に麻雀をしたら、それはトラウマになってもおかしくは無い。いや、むしろトラウマになるのが普通か。

 

「用はそれだけ?」

「うん、おめでとうって言いたかっただけかなー。また今度、何かあったら連絡するね!テルも何かあったら連絡してね!」

「わかった」

 

 そして短い通話は終了し、携帯からはツー、ツーと無機質な音が流れる。

 

 

 

(……そういえば、ずっと淡と麻雀打ってないなあ)

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 場所は変わって、淡の家。勿論、長野県だ。

 

「……はー、結局どこの高校に行こうともテルはテルなんだなぁ」

 

 通話を終えた淡は誰に話すでもなく、独り言を呟く。

 環境が白糸台で無かろうと、結局は全国のトップに照はなったのだ。強さに、ブレは無い。

 

(テル……私の目標であり、超えなければならない存在)

 

 完全無欠の強さを誇る照であり、そしてそれは淡の憧れでもあり目標。

 だが、それはただの憧れではない。いずれ超えようとしている、超えなければならない壁。淡は、そう心に決めている。

 

(あの時、)

 

 インターハイ団体戦準決勝大将戦。

 今まで淡は照以外には負ける事は無いだろう、そう確信していた。だが、負けた。

 

(まあ、本当にたまたま色々と巡り合わせが悪くてあんな結果になった。うん、たまたま)

 

 淡の性格上、その敗北を素直に受け入れようとはしていない。

 しかし、心情は明らかに変化していた。

 

(……だけど、あんなたまたまが起きるって事は私の実力が足りてなかった。つまり――――そのたまたまが起きる可能性すら皆無になるくらい私が強くならなければならない)

 

 受け入れこそしていないものの、敗北は淡をいい方向へと変化させている。

 淡は本当にその改善の方向性が正解しているとは限らないが……自分を変えようとしていた。そして、今日も――――

 

 

 

「……ネトマでも打つかぁ」

 

 

 

 元気にネトマを打つ。

 全ては、最強になるための積み重ね。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 月日は流れ、更に一年が経過しようとしていた。

 つまり照が高校二年生、淡が中学三年生だ。

 

 そして、清澄高校麻雀部。ここでは照に憧れ入部希望をしようとする生徒が数多く存在していた。

 

 

 

「ツモ、500オール」

「ロン、2000の一本場は2300」

「ツモ、2000オールの二本場は2200オール」

「ロン、7700の三本場は8600」

 

 新入生歓迎会として、照は数多くの一年生と対局する。そして、その対局した生徒は皆逃げるように辞めていく。

 

「すいません、用事を思い出して……」

「もう麻雀なんて嫌だあああぁぁ!!」

 

 照は麻雀では手を抜けないタイプなのだ。

 その全力の照と対局した生徒のほぼ全てが、麻雀を嫌になったりトラウマになったり、とにかく恐怖したり。

 

 そんなこんなで、入部希望者はいつの間にか少数になってしまっている。

 そしてこの少数がいずれ0になってしまうのも、時間の問題だろう。

 

 

 

(はぁ、今年も駄目なのかな)

 

 最初たくさんの入部希望者を見たときはポーカーフェイスを崩さないまま心の中では歓喜していたのだが、結果としてこれだ。

 照は表情を変えないまま、心の中で落ち込んでいく。

 

 

 

 ――――だが、照はある新入生の顔を見て衝撃を受ける。

 

 

 

(あれ?この子、確か……何で、ここに?)

 

 その新入生は、照との対局の時間になった途端かなりの笑顔でこう発言した。

 

「チャンピオンである宮永照さんと早速歓迎会で打てるなんてすばらです!では早速、他の方々もお願いします」

 

 特徴的な口癖、二度も照と全国で対局しながらも心が折れないどころかずっと立ち向かってきた少女。

 新道寺の先鋒――――花田煌。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「はぁー……」

 

 煌は照との対局後、いじけて部室の隅にいた。

 その理由としては当然、実力差がありすぎたからだ。

 

 当然煌も勝てるだなんて微塵も思っていなかった。が、対局の中でチャンピオンを驚かせる位の何かをしたい、と思って打っていた。

 

 

 

「ここまでとは……本当に、チャンピオンの実力はすばらですね……」

 

 だが、何も出来なかった。煌は自分の力の無さを痛感させられる。

 

「えっと……」

「うわぁっ!?チャンピオン!?あ、あれ?他の新入生の皆さんは?」

「皆帰っちゃった。えっと、名前……何だっけ」

「あ、花田煌と言います。……帰っちゃったとは?」

 

 煌が隅っこでいじけている間に、あれだけいた入部希望者の新入生が誰一人いなくなってしまったのだ。煌を除いて、だが。

 

「うん、皆入りたくないって。きっと、麻雀が怖くなっちゃったんだろうね」

「麻雀が、怖く……」

 

 その台詞を聞いて、煌もわからなくは無い、と感じてしまった。

 あれだけの圧倒的実力。それに直に触れてしまったら、人によっては自信を失うというレベルでは済まされないという事をだ。

 

「えっと、花田さんは……」

「え?あ、煌でいいですよ!」

「……煌は、麻雀が怖くなったりした?もしそうだったら、私のせい。ごめんなさい」

 

 そう謝りながら、照は煌に対して深々と頭を下げた。

 

「ちょ……ちょっと、チャンピオン!頭を上げてくださいよ!」

「チャンピオンじゃなくて、私の事も照でいい」

「……照先輩っ!」

 

 大きな声を出しながら、煌は照に視線をしっかりと合わせる。

 

 勿論煌も、あの麻雀で恐怖を感じた事は否定は出来ない。

 だがそれ以上に感じている事がある。恐怖というマイナスの部分を圧倒的に越える、プラスの部分。

 

「全く持って、すばらですっ!」

「……え?」

「前々から照先輩の麻雀の強さには惚れ込んでいましたが、今日更にその気持ちが深まりました!いやあ、本当にすばら!」

 

 そして一息置き、煌は続けて言う。

 

「……実は私、本来なら九州にいるはずだったんですよ。親の仕事の都合で」

(九州……つまり、その本来というのは新道寺にいるはずだったという事なのかな)

 

 前は煌は確かに新道寺にいた、と照は改めて思い返す。

 だが今ここにいるという事は何かしらの出来事によって、九州に行かなかったという事になる。

 

「だけど私はこうして長野にいる。……親に無理言っちゃったんです、清澄に行きたいって」

「え?」

「去年の全国大会個人戦、見てました。そして私は……このチャンピオン、つまり照先輩のいる高校で麻雀がしたい、そう思ったんです」

 

 煌はテレビで全国大会で戦う照の姿を見て、憧れた。

 地元にいるこの人と一緒に麻雀がしたい、そう強く心に感じた。

 

「それを聞いた親は、一人暮らしを承諾してくれました。本当にすばらな両親です」

「……」

「あー、えっと、結局何を結論として言いたいかというとですね」

 

 煌は大きくスーハーと深呼吸をし、一息ついた後に大きな声で発言する。

 

「清澄高校一年、花田煌!この麻雀部に入部希望です!」

「えっと……その……」

 

 照は煌の勢いに押されたかのようにおろおろしてしまうが、そこはいくら照であろうと先輩。

 再度しっかりと煌に視線を向け、真剣な表情をして話す。

 

「私しかいない部だけど……本当にいいの?」

「問題などありません!むしろ照先輩と打てる時間がたくさん確保できる!すばらっ!」

「……私と麻雀すると、麻雀が嫌いになっちゃうかもしれないよ?手加減できないし……」

「心配いりません!遠慮なく飛ばしまくって構いません!私はめげない事だけが取り柄なんで!」

「……そっか」

 

 そんな煌の強い意志を受け止め、照はほんのわずかではあるが笑顔を見せる。

 

「ありがとう、煌」

「え?」

「ううん、何でもない。……ようこそ、麻雀部へ。これから、よろしくね」

「……はいっ!」

 

 

 

 ここに照に続いて二人目の部員、誕生する。

 

 

 

「……あ、そうだ」

「どうしました?」

 

 何かを思い出したかのように、照が発言する。

 

「さっき、煌はめげない事だけが取り柄って言ってたけど。それだけじゃないと思うよ?」

「……ありがとうございます?」

 

 何のことだか検討がつかない煌は疑問に思いながら感謝の言葉を述べる。

 ――――一方の発言した照の方はというと。

 

 

 

(今回の新入生で南場まで到達したのは煌の卓だけ。しかも、煌は飛ばなかった。照魔鏡で見ても、能力じゃなかったけど……この粘り強さは武器になる)

 

 頭の中で、煌を評価していた。

 

(白糸台の時は尭深も誠子も、そして淡も初めて私と打った時は飛んでいる。尭深と誠子は東場、淡は南場だったかな……記憶が微妙だけども)

 

 将来的に白糸台一軍になるメンバーですら、最初に打った時は散々な結果だ。

 だが、煌はそれらの面子よりも一歩上の段階まで粘る事には成功している。

 

 

 

(もしかしたら、かなりの伸びしろがあるかな)

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「へー、新道寺のね」

「うん、私もかなりびっくりした」

 

 現在、時刻は夜。

 照は家に帰ってから今日の出来事を淡に報告という形で、電話をしているのだ。

 

「何はともあれ、部員が増えてよかったじゃん!」

「うん、私も嬉しかった。しかも話によると煌の後輩が清澄に入りたいって。だから、これで部員がもう一人増える事も確定かな」

「って事は、私も入れば残り一人で団体戦に出れるね!」

「そうだね、あと一人。本当なら煌の後輩は二人いて、どっちとも清澄に入りたかったらしいけど……一人は、元々いた奈良に親の仕事の都合で今年いっぱいで帰ることになるって」

「ふーん」

 

 興味無さそうに淡は反応する。

 

 それとは別に、照も淡も残り一人、宛が。いや、それはただの願望かもしれない。

 だが、思い当たる節がある。照の妹、宮永咲だ。

 

 今回の煌が入部してくるという想定外があるように、やはり咲が清澄に入学してこない、あるいは入学しても部には入らないという可能性も十分にありえる。

 

 

 

「……来年入るといいね、テルの妹」

「うん」

 

 それから、しばらくの間お互い無言になる。

 ――――だが、その無言の空気をぶち壊す出来事が、突如として起こる。

 

 

 

「『淡、アンタいつまで電話してんの!?清澄行きたい行きたい言うのは勝手だけど、今のままじゃ到底無理』だああぁぁっ!わかってるって!勉強するから!」

「……?」

 

 いきなり電話越しに聞こえてきた怒鳴り声。それを聞いた照は困惑してしまう。

 少しの間が空いた後、再び淡から声が聞こえてきた。

 

「もしもし!?テル?」

「……今の声、淡のお母さん?」

「うん、そうだけど……テル、一つ聞いていい?」

 

 淡から照に対して一つの質問。それは淡が電話をしていて、最初からずっと抱いていた疑問。

 それをようやく、照に聞く。

 

 

 

「何でわざわざ家電にかけたのさ!?私の携帯にかければ部屋から電話出来たのに、居間で電話してるから家族に変な目で見られてるんだけど!?」

「気分」

「ああ……うん」

 

 テルの気分なら仕方ないか、そう理解してしまう自分が恐ろしいと感じた淡であった。

 

「逆に質問してもいい?」

 

 今度は照から淡に対し、質問を投げかける。

 最も、これは最初から抱いていた疑問というわけではなく、むしろ淡のお母さんの怒鳴り声から感じ取った疑問だ。

 

「淡、清澄の受験は大丈夫なの?」

「……私の中学三百年生の知識を持ってすれば余裕だって!」

「……大丈夫なの?」

「ちょっと……やばいかも」

 

 とりあえず補足すると、清澄は特別頭がいい高校というわけでは無い。かといって悪いわけでもないが。いわゆる、中堅高と呼ばれる所だ。

 そしてそれに対しやばいと発言する淡。照は、その事実から一つ察してしまう。

 

 

 

「淡ってそんなに勉強できなかったんだ」

「だって!あんなに面白くないものなんでわざわざやらなきゃいけないのさ!?」

「……淡」

「……はい?」

「ちゃんと勉強はしようね?」

「え?ちょっ」

 

 それだけ言って、照は一方的に電話を切った。

 

 

 

「……これは、やばいかもしれない」

 

 もしかしたら咲が清澄の麻雀部に入るよりも淡が清澄の麻雀部に入る可能性の方が低いのではないか。

 そんな事を、照は感じてしまった。




今回のまとめ

照は寂しがりや
淡強化フラグ
すばらっ!
淡はアホの子

久とまこはどこへ?って思う人もいるかもしれません。
それは、後々……

そして煌の後輩のうち一人が入る。……もう、ある程度予想できている人はできているのでは。
清澄の部員は6人(女子5人+京太郎)の予定です。ここまで書けば、もうわかるかな?

感想等は随時募集しています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。