もし宮永照と大星淡がタイムリープしたら   作:どんタヌキ

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更新相当遅れて申し訳ないです。
ようやく副将戦。中堅戦、長かったなあ……って今になって思う。




23,不気味な始まり、副将戦開始

 対局の時間までまだ多少余裕がある時間帯ではあるが、既に副将の四人は席についていた。

 だが、言葉を発しようとする者は一人もいない。対局前に会話のあった中堅戦とは全く逆のような展開である。

 

 今まで対局してきた選手達はしっかりと余裕を持てていた、とまでは言わない。だが、後半になるに連れて空気が重くなってくるのも事実。

 この点差で自分はどう打てばいい、というのがより明確に見えてくる段階だ。そして徐々に周りでフォローが出来なくなってくるので自身で必ず何とかしなければならない、というプレッシャーも増してくる。

 

 そのプレッシャーの中、自分にも勝ち、当然相手にも勝って初めて最後の大将にいい流れでバトンを繋ぐ事が出来る、という事になるであろう。

 そして間もなく――――副将戦が始まろうとしている。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「ただいま」

「お帰りなさいだじぇ!」

「お疲れ様でした。あの稼ぎっぷり、本当にすばらです!」

 

 ガチャ、と音を立てようやく照が控え室へと帰還する。

 

「……あれ、淡は?」

「淡ならそこに……あれ?さっきまでいたのに」

「淡さんに何か用事でもあるのですか?」

「いや、まあ……うん、用事だね」

 

 部屋に戻ったら真っ先に照は淡を探そうとしていたのだが、戻ってきたはずの淡の姿が何故か消えた。

 優希も煌も先ほどまでいたはずの淡が視界から消え、不思議そうな表情を見せる。

 

 

 

「あっ、あそこに……何してるんだじょ?」

「ちょ、ちょっとー!?見つけなくて良かったのに!?」

「じょ?」

「あーわーいー?」

「たーいむ!!タイムを要求する!助けて!すとっぷ!」

「……はて、流れが全く読めないのですが」

 

 淡は隅に隠れていたのだが、それを優希が見つけてしまう。

 とりあえずまだ命を失いたくない淡としては、必死に照を止めようとする。

 

「残念ながらタイム制度は認められないんだよね、という事で」

「ちょっとおおお!?」

「……あー、そういう事ですか」

「いつもの事だじょ」

 

 照が淡に制裁を加えるという、実は清澄内では見慣れたいつもの光景を優希と煌は見てため息混じりに納得する。

 

「しかし、淡さんは全く動揺していないというか、いつも通りというか……」

「緊張している淡というのも想像できないじぇ」

 

 まだ試合を終えておらず普通ならば緊張感に押し潰されそうになっていてもおかしくはないのだが、淡は普段と何も変わらない。

 人によっては緊張感が足りないとマイナスの面を指摘される事もあるかもしれないが、淡ならばむしろその状態が良いと周りに思わせる物がある。いつも通りを望まれているのだ。

 

 

 

「あ、副将戦が始まる」

「サキー!がんばれー!」

 

 副将戦が始まる直前、悪ふざけを終え部員全員が咲の活躍を見守るためモニターに目を向ける。

 願うは、咲の健闘だ。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 既に場決めを終え、副将の前半戦東一局がスタートする。

 東家が咲、南家が未春、西家が桃子、北家が透華だ。

 

 タンッ、とそれぞれが牌を捨てる音が静かにその場に響く。

 中堅戦とは違い、とても静かな始まり方だ。

 

 

 

(龍門渕さんはデータがあるからどんな打ち手か何となく把握は出来てるけど……他の二校は全然掴みきれていない)

 

 未春は他の打ち手の様子を見つつゆっくりと、手を進める。

 

 透華に関しては二年生、ここ最近の牌譜や映像もあるためどんなタイプかは頭に入っている。

 だが桃子に関してはこの大会の予選数試合程度でほぼ掴みきれていない状態、咲に至ってはノーデータだ。

 

(あ、張った……リーチかけて3900、他に聴牌の気配もまだ無いし裏期待してやるのもありかな)

 

 十一巡目にタンピンの綺麗な形、だがこの場ではそこまで出る気配も無さそうな三、六筒の待ちで未春は聴牌する。

 このリーチで相手が降りるならそれはそれで良し、和了れるならなお良しといった意識だ。

 

 

 

「リーチ!」

 

 未春のリーチ宣言。

 桃子は安牌を切り、透華へと回ってくる。

 

 

 

(……ふむ)

 

 透華もここで聴牌。

 役は断幺九のみ、リーチしてロン和了2600点の手。

 

 聴牌の形を取る際に切る牌は幸い未春に対しては安牌、後はリーチをかけるか否かの判断である。

 

 

 

(……ここは)

 

 リーチ宣言をせずに、安牌の九萬切り。

 

(もう少し手が高めなら追っかけても良かったのかもしれませんが、この手で無理をする必要なんてありませんわ。勢いだけで突っ走るのは凡策でしてよ!)

 

 安牌切りなので思わず追っかけたくなる場面ではあるが、ここはその先の事を考え無理をせずにダマの形を取る。

 いざという時に、聴牌を崩し降りられるように。衣が持ってきた流れを引き継ぐために勢いのまま打ちそうな所ではあるが、透華は冷静だった。

 

 

 

「ノーテンです」

「聴牌です」

「ノーテンっす」

「聴牌ですわ」

 

 結局そのまま流局、聴牌していたのは未春と透華。

 点棒をそれぞれ受け取り、咲が聴牌していなかったため親が流れる。

 

 

 

(東横さんはしっかり降り、宮永さんも……親だけど勝負はしてこなかったのね。流石に一局じゃ、そこまで打ち方がわかる事もないか)

(宮永照の妹ってだけで相当な注目度……どんな打ち手かと思いましたがまだ姉のような派手さは無いですわね。ま、どんな相手であろうと私の麻雀を貫くだけですわ!)

 

 まだそれぞれの特徴を掴みきれていないまま、東二局へと進んで行く。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「ふぅむ……」

「どうしました、藤田プロ?」

 

 既に東三局までが終了した現在。

 実況席にいる藤田プロは小さく声を漏らす。

 

 

 

「いや、静かだなと思ってな。いい見方をすれば冷静、悪い見方をすれば地味というべきか」

「あの中堅戦の後だから地味に見えるのでしょうかね?」

「龍門渕と吉留はそれがスタイルというべきか、上手い事堅実に打てている感じはある。宮永咲、東横はまだ……わからないな」

 

 透華と未春は堅実なのが持ち味、故に今の所はスムーズに自分の麻雀が打てている。

 だが、咲と桃子の麻雀のスタイルというのは周りにまだ知られていない。

 

(堅実が持ち味というよりかは、まだ何かを隠し持っているかのような……引っかかるな)

 

 両方とも一年生という事で流れのまま勢い良く打ってくるかと思いきや、そんな事も無く。

 だからと言って持ち味を全て出しているようにも見えない、不気味さだけがこの場にはあった。

 

 

 

「誰かがワンアクション起こせば一気に何かが起きるかもしれないな、この場は」

「今の所は静かですが……今後の展開には注目したい所ですね。おっと、東四局も流局、親流れです」

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 南一局、親は咲。

 本当にここまでは静かな対局、流局や小さな和了しか起きていない。

 

 透華、未春の二人はまだ一年生二人のプレイスタイルを掴みきれていない。

 そのまま南場に突入し、点数変動もほぼ無し。一位の清澄に追いつきたい二位、三位の二人としてはそろそろ大きく動くべきだと考える。

 

 

 

(……タンピン一盃口ドラ1。良手ですわ)

 

 透華は八巡目という中々早い段階でダマで7700点の手を張る。

 透華のスタイル――――デジタル打ちというのは状況にもよるが、普通ならこの手であまりリーチをかける事は無い。何故ならリーチをかけてもロンなら8000点、ツモや一発、裏ドラ等がつかないと跳満まで伸びる事は無いからだ。

 

 

 

(リーチをかけるべきか、否か……トップとの差は約二万点ほど、焦るべき場面ではない、確実に和了っておきたいと考えるならばダマが優先されるべき場面……ですが)

 

 ただ、この場においては――――リーチをかけるべき、と透華は判断する。

 

(この互いが様子見みたいな場、そろそろ終わってもよろしいのではなくて?大きいのを和了って、火をつけるべき場面……というより、何より目立ってナンボですわ!)

 

 そろそろ再び火をつけるべき、と透華は考える。

 そしてこの静かな場に痺れを切らしていた、という点もあった。堅実なデジタル打ちではあるが、とにかく目立ちたがり屋でもある透華。勝負をかけるならば、ここであると。

 

 

 

「リーチですわ!」

 

 力強く透華のリーチ宣言。

 咲は特に動揺もせず安牌切り。

 

 

 

(普段そこまでリーチをかける事の無い龍門渕さんがかけてきた……かなり怖い場面かも。流したいけど……まだ手が出来ていないし、他家がどうにかは……してくれなさそうだしなぁ)

 

 未春はまだ二向聴、何となくではあるが高い気配を感じたここの場面では、無理すべきではないと判断。

 だが他家からもまだ聴牌の気配は漂ってこないため、お手上げといった状態。とりあえず、安牌を切る。

 

 続く桃子も安牌切り、そのまま透華へと回ってくる。

 

 

 

「――――ッ!来ましたわ、ツモ!メンタンピン一盃口ドラ1……裏1!4000、8000の一本場は4100、8100ですわ!」

 

 見事一発ツモ、更には裏まで乗り跳満どころか倍満まで点数を上げる事に成功する。

 トップにいる咲は親被り。これにより点差を縮めるどころか、一気に龍門渕をトップに浮上する。

 

 

 

(――――よしっ、大成功ですわ!今の私は最高に目立っていますわ!且つチームもトップに浮上、このまま点差を広げに行きますわよ!)

 

 だが、再び大きな熱をもたらした故に――――ある事、いや者を見失いかけている事にまだ周囲は気づいてはいなかった。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「しっ、流石透華だぜ!」

「うむ、とーかは衣にトップの座を奪ってくるって言っていたからな。当然だ!」

 

 透華の倍満ツモにより、龍門渕の控え室はかなり盛り上がる。

 優勝候補筆頭に挙げられながら、ここまで苦戦してきた龍門渕。まだ一時的にではあるかもしれないが、トップに浮上したのだから盛り上がっても当然だろう。

 

 

 

「流石透華だね。あー、だめだ。ボク緊張してきちゃった……」

「いつも通り打てば、大丈夫」

「ともきーの言う通りだな。てか、このまま行けばもっと稼げるんじゃね?風越がそこそこだが、透華の実力なら大丈夫だろ……って、衣?」

 

 先ほどまでは喜んでいた衣であったが、突然難しい表情になったので純は思わず呼んでしまう。

 

 

 

「……む?」

「どうしたんだ?」

「いや、不気味に感じてな……」

「まあ、俺も今までの静けさから正直不気味には思ってたよ。だけど、今の透華ならそのまま押し切れるんじゃないか?流れも悪くはねえ」

 

 衣は透華が大きいのを和了ってもなお、不気味な物を感じ取っていた。

 それは純もなのだが、透華なら実力でいけるだろうと判断する。

 

 

 

「……衣もそうは願ってはいるが。あのチャンプの妹……トップを許したのにも関わらず、表情一つ変えない」

「……そう言われると、怖いな」

「一年生なのに冷静すぎるっていうか……」

「……何か隠してる?」

 

 トップを許しても、咲の表情は変化する事は無かった。

 智紀が最後に発言した言葉、何かを隠してる。これまでの冷静さから、周囲にそう思われても無理は無かった。

 

 

 

「まだ、力は感じていない。だが、出そうで出ない……そんなもどかしさがある」

「それは、やっぱり隠してるって事なの?……ボクは見てる限りでは全くわからないなぁ」

「……衣にも詳しくはわからない」

 

 後半に向けて隠しているのか、それとも出せないのか。その判断までは衣は出来なかった。

 ただ結論を纏めるとすると、皆が口にする言葉――――不気味の一言に尽きる。

 

 

 

「まあ、じゅんの言うようにこのままとーかが押し切る事もある。そして、衣達はそうなるように応援するだけだ!」

「ま、そーだな。もっと点を稼いでくれるように応援するか」

「そうだね、点差を広げてくれたらボクも大将で打ちやすいし」

「……頑張って」

 

 それでも見ているメンバーはとにかく透華を応援し続ける。

 龍門渕の勝利を願って。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 南二局、親は未春。

 

(……うぅ、まずいよ、トップから落ちちゃった……)

 

 咲は内心、泣きそうであった。

 せっかくトップにいたのにも関わらず、再び落ちてしまったのだから。

 

 

 

(緊張がほぐれたと思ったけど……いざこの場所に来たら、全然そんな事は無かったよぉ……皆はこんな場所で打っていたの?)

 

 とにかく咲は緊張して、頭が真っ白であった。

 心臓がバクバク言いながら、周りをかわしていくのが精一杯で。とても自分の麻雀を打っているとは言えなかった。

 

 それでもまだ振り込みは無いと言う所は、高い麻雀センスから来るものであろう。

 

 

 

(駄目だ……この局も槓材が来る感じじゃない、地に足が着いていないというか、とにかく自分のやりたい事が出来ていない……)

 

 早い段階から気配でこの局は駄目、というのを何度も察知していた。

 いつもの来ている時の感触をまだ咲はつかめていないのだ。察知しているという点で他の雀士とは一線を越えているのだが、駄目な状況ばかりでは意味が無い。

 

 

 

(この場も厳しいかな……だったら無理しないで、チームの点数減らさないようにする事を優先したほうがいいよね)

 

 咲は場を見ながら手を完全には崩さず、無理をしない程度に牌を切っていく。

 確実に安牌ではないが、河を見る限りでは恐らく通るだろうといった程度の牌だ。

 

 

 

(……あれ?)

 

 だが、咲は全ては見えていなかった。

 そしてその事に切ってから気づく。これは何かおかしいと。

 

 

 

「それロンっすよ、リーチ一発ドラ1、5200っす」

「……え?貴方、いつリーチをかけましたの!?」

「ちゃんとかけてるっすよ、ほら」

(……私も見えてなかった、何で!?)

 

 透華が振り込んだわけではないが、リーチ宣言を聞いていなかったというのはおかしいと思い桃子に突っかかる。

 だが、桃子はしっかりとリーチをしていたというのだ。

 

 未春も口には出さなかったが、おかしいという事は感じていた。

 そしてその疑問を対面の透華も感じていたのだ。つまり同じ疑問、リーチしている所を見えていなかったという事になる。

 

 

 

(一体何が……?鶴賀の副将、今まで動きが無いかと思いきやここで動いてきたという事ですの!?)

(……本当に見えていないとするならば、自分の麻雀を打つ事も出来なくなる。もう一度しっかり確かめないと……だけど見えなくなるだなんて事、ありえるの?)

 

 この一つの和了により、周囲の警戒は強くなる。

 ただの5200点のロン和了ならばここまで強くは警戒はしなかっただろう。だが、ここまで異質な物を感じるとなると――――警戒せずには要られない。

 

 

 

(……ようやく消えられたっすか、場が静かすぎて逆に消えにくかったっすが……あの倍満が効いたっすよ)

 

 一方、実際に和了った桃子は倍満を和了した透華に感謝しつつそんな事を考える。

 

 桃子は極端に影が薄い。それは生まれつきの体質だった。

 そしてそれが麻雀にそのまま影響し――――他者から自分の捨て牌が見えなくなる、そんなオカルトじみた事まで出来るのだ。

 

 ただそれは、他者が自分を認識しなくなるまである程度時間がかかる物ではあるが。

 

 

 

(南三局、親番なのは大きいっすね。周りがまだ動揺している内にここで出来るだけ点を稼いで……差を縮めるっす!)

 

 見えない、という事は麻雀において大きすぎる利点だ。

 例えば見えないので振り込まない、故に相手のチョンボが起きる事もある。更には今のようにリーチをしても周りからはわからない。

 

 鳴きを入れたら流石に他家にばれる為その点の縛りはあるが、それでもプラスに働く力の方がかなり多い。

 

 

 

 だが、桃子はわかっていなかった。

 確かに、今の和了は周りを動揺させるのには大きな和了だったであろう。

 

 しかし、全てがそうとは限らない。

 

(……ふうっ、チームには悪いけど……今の振り込みで、落ち着けた。自分を取り戻せたかな)

 

 

 

 対面の振り込んだ人物――――咲はむしろ、目が覚めた。

 

 

 

(……ッ!?なっ、この感じ……衣にも負けないほどの圧力……まさか今の振り込みで目を覚ましたという事ですの!?)

 

 咲以外の三人の中で唯一、透華だけが気づいていた。

 桃子も確かにかなりの脅威ではあるが、明らかにそれを上回るような者がここに存在していたという事に。

 

 

 

 もうすぐ前半戦が終了しようとしている副将戦で、静かだった一年勢が目を覚まし動こうとしていた。




今回のまとめ

魔 王 降 臨
龍門渕、一位浮上
モモ、ステルス化

何だこの異質な対局……(唖然)
咲さんがずっと表情を変えなかったのは冷静というより緊張で顔の筋肉が固まっていただけです。
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