もし宮永照と大星淡がタイムリープしたら   作:どんタヌキ

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たくさんの評価、本当にありがとうございます。
正直な所、最初はここまでの高評価を頂けるとは思ってもおらず。今では読者の皆様の評価や感想等、お気に入りの数というのは、自分の自信へと繋がっています。

今後も質のいい、楽しい作品を作り上げれるよう頑張ります!
では、クライマックス。大将戦を、どうぞ。


27,圧力~大将戦開始~

「ただいま」

「おかえりなさい!咲さん、試合お疲れさまです……って、おや?」

 

 控え室へと戻ってきた照がドアを開けると同時に声をかけ、それに気づいた煌がまず最初に返事をする。

 そしてそこには試合を終えた咲もおり、更には今まで控え室にはいなかった京太郎もついてきた。

 

 

 

「さっき会ったから、私が連れて来た。本当は試合に出る選手とそうじゃない人でメリハリをつけるべきなのかなって思ったけど、大将戦だしどうせならいいかなって」

「ふむ、そういう事ですか……」

 

 控え室には実際に試合をしている者のみを入れるべきだと照は考えていたが、先ほど出会って最後くらいはいいか、という気持ちで京太郎を連れて来た。

 煌としても部長の照が決めた事なら、と反対する理由は特に無いので了承する。

 

 

 

 煌も優希も咲の様子というのは本当に心配していた事であるが、会った時の表情を見て二人とも内心よかった、とほっとした感情を持っていた。

 部長であり姉である照と、咲の隣にいる京太郎が上手く何とかやってくれたのだろうと予想をつける。

 

 

 

「咲ちゃん、お疲れだじぇ!こっちきて淡の応援するじょ」

「う、うん……!」

「京太郎もせっかく来たなら見やすい場所に来るべきだじぇ、こっちに来るじょ!」

「おお、サンキュー優希」

 

 一年生は優希の声かけにより一番モニターが見やすいソファに仲良く座り、じっと見つめる。

 間もなく、大将戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 ――――大将戦前半戦、東一局。

 東家が淡、南家が華菜、西家が一、北家がゆみといった場。

 

 それぞれが牌を手にし、今までとはまた違った独特の緊張感が襲ってくるこの会場で、皆引き締まった表情を浮かべつつ配牌に目を向ける。

 

(ふぅ……あー、何だか地に足が着いていない感じ。結構緊張感は解けたと思ったけど、これが大将戦って奴なんだね)

 

 良くも悪くも無い、平凡な自身の手を見ながら一は自分の現在の様子を決して冷静とは言えない頭で振り返る。

 会場入りした時と、始まってからとはまた違う独特の感触を一は感じていた。

 

 

 

(……む、好配牌か。まだ始まったばかりではあるが、自分は様子を見ながら堂々と……といった事が出来るほど、今の点数に余裕は無い。だったら……最初であろうと、強く通すだけ)

 

 一とは違い、ゆみは比較的落ち着いていた。

 チームの現在の点数を見て、やるべき事をしっかりと理解し、卓に向かう事が出来ている。

 

 

 

「ポン」

(……ん)

 

 二巡目、淡の捨てた白をゆみは鳴く。

 淡はその様子をしっかり目で追いつつ、自身の呼吸を整える。

 

 

 

「ポン!」

 

 四巡目、華菜が捨てた発をゆみが鳴き、場の空気が変わる。

 役満の可能性がある、それでなくても結構な火力が予想されるゆみの手。

 

 

 

 ――――だが、それでもぶれずに自分の勢いを信じ、押していく者がいた。

 

 

 

「リーチ!」

 

 五巡目、華菜は九筒を捨てて力強くリーチ宣言。

 その勢いにゆみも一も、淡ですら驚く。

 

 

 

(今の所、私の流れが来てる!確かに役満は怖いけど、怖気づいてチャンスを逃したらそれこそ勝てる物も勝てなくなるし!)

 

 堂々とリーチをかけた華菜にも、当然恐怖というものは存在する。

 だが、怖がって前を向かない事でチャンスを潰すくらいなら、高いリスクを負ってでも自分を貫く。

 

 これが華菜の弱点でもあるが、強さの大部分でもある。

 

 ゆみは安牌でもスジでもなく、ど真ん中をツモ切りで突っ張る。そこに引く意識は見当たらない。

 一、淡は一発阻止の安牌切り。しっかりと防御に目を向けつつ打っていく。

 

 

 

「――――ほら来たッ!!一発高め三色ッ!!リーチ一発ツモ平和三色赤1……裏1ッ!4000、8000!」

 

 華菜は最高の引きを見せる。

 一番高い所を一発で持ってくるに留まらず、裏まで乗せてくる。最高の先制パンチ――――倍満ツモ和了だ。

 

 

 

(……来なかったか。だが自分の今日の運、というのは悪くないように感じる。まだまだ、ここでは終わらない……!)

 

 ゆみも実は、この早い段階で既に張っていたのだ。

 白単騎のかなり和了にくい強引な手ではあったが、役牌2、混一色、小三元と跳満まで伸びた良手。

 

 和了こそ出来なかったものの、自身の流れは悪くないとゆみは振り返った。

 

 

 

(……いけるッ、今日の華菜ちゃんは絶好調だ!既に龍門渕との点差は1万弱、このまま逆転――――)

 

 ――――そんな事を考えていた華菜だが、その思考はとある事により止められる事となる。

 

 

 

「……ふーん、なるほどね、そんな感じか。いーじゃんいーじゃん、すっごい楽しめそうで」

 

 上家にいる淡が突如笑ったかと思いきや、話し始めたのだ。

 

「いーよ、倍満くらい……くれてやる……!」

(ッ……!?)

(えっ……!?大星さん、そんな……!衣にも負けないほどのレベル……!?)

 

 そう言いながら、淡は華菜に点棒を手渡す。

 

 

 

(……?清澄の一年生、よくわかんない奴だな)

 

 生意気な口調に少しムッとした華菜ではあったが、特に気にする事も無く点棒を受け取る。

 

 ――――だが、この時華菜だけが気づいていなかった。

 一とゆみは、先ほどまでは倍満を和了った華菜の勢いというものにかなりの警戒を向けていた。だが、それすらかき消されるほどの。

 

 

 

 淡からはわかる者からはわかる、相当なレベルの強者しか出せないような、圧力が放たれていた。

 

 

 

 こうして、大将戦の前半戦はスタートしていく。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

「……いきなり倍満ツモですか。風越の池田さんは、かなりすばらな調子のようですね」

 

 東一局を終え、その様子を見ていた清澄のメンバー。

 煌はまず、和了した華菜の状態について指摘する。

 

 

 

「鶴賀の大将もいきなり強引な攻めだったじょ、そして聴牌まで漕ぎ着けてたじぇ!」

「……初心者の俺ですら開始早々和了への執念を感じたな。流石は決勝まで来る実力のあるチームの大将って事なのか」

 

 優希と京太郎は、和了こそ出来なかったものの敵であるゆみの打ち方について感心していた。

 手の進め方だけではなく、画面越しからもわかる静かな気迫を感じていたのだ。

 

 

 

「淡は大丈夫なのか?いつもの絶対安全圏も無かったじょ」

 

 その一局の中で優希が心配していたのは、淡の能力の一つである絶対安全圏が展開されていなかった事。

 普段ならいつも使っているイメージがあったので、少し不安を持っていた。

 

 

 

「……私からは、わざと使っていなかったように見えた」

「じょ?それってどういう事だじぇ?」

「何て説明すればいいんだろ、えっと……見る事に徹していた、って言えばいいのかな?」

 

 咲はそれを不調等ではなく、場を見る事に徹していたと感じ取っていた。

 つまり使えなかったのではなく、あえて使わなかったように咲からは見えていたという事だ。

 

 

 

(……咲の言う通り、淡は見る事に徹していたように私からも見えた。それこそ私の照魔鏡……ほどではないと思うけど、意図としては似ているような)

 

 照も咲の意見に心の中で賛同する。

 相手の性質を全て読み取る照魔鏡ほどの強力な能力といった訳ではないが、目や肌で感じる範囲で淡は他のプレイヤーの性質を見極めようとしていたのではないかと照からは見えた。

 

 

 

(ただ、普段ではあんな打ち方はしないから驚きはしたけど……冷静そうに見えるから、大丈夫かな。しっかりとスイッチも入れたみたいだし)

 

 照はそんな淡の普段見せない姿に驚きこそしたものの、心配はしていなかった。

 冷静さも感じ取れたし、これから攻めるぞ、といった気の強さも見られたのだから。

 

 

 

 そして、東二局へと進んで行く。

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

(……手が重いな。調子がいいと感じた時は、いつも自然に良手が寄ってくるものなのだが)

 

 ゆみの配牌は悪く、五向聴。

 一番最初に調子が良いと感じたときにはあまり悪い手が来る事は無かったために、残念がる。

 

 

 

(……五向聴か。手も……空気も重く感じる。というより、これは……いや、まだ仮定でしかないけど)

 

 一は目でチラッと淡を見つつ、手と空気の重さについて色々な考えを立てていた。

 衣と普段から何度も麻雀を打っている一はこういった独特の圧力には敏感であり、察知能力も高い。

 

 そして一つの仮定を立て、それを頭に入れつつ麻雀を打っていく。

 

 

 

(んー、配牌が悪い。まあ、今日の流れならすぐ良ツモで持ってくるし!)

 

 華菜は特別難しい事は考えず、自分のやりたいように打っていく。

 

 

 

(……さて、けっこー厄介そうなのもいそうだけど。二人は何か感じ取ったみたいだね、特に龍門渕の方はずっとこっちを気にしてる感じー)

 

 淡は東一局を見て思った素直な感想として、中々に手強い相手というのは感じていた。

 

(風越は高火力良ツモっぽいし、いつも以上に調子良さげっぽいし。鶴賀はその場の状況に応じつつトリッキーに打ってきそうでめんどくさそーだし、龍門渕は素直なデジタルだけど他家を見る目はすっごい優れてそうかなー)

 

 大会前に映像や牌譜等で事前に手に入れていた情報、更に今の一局で実際に肌で感じた感触。

 それを踏まえて、淡は他の選手のある程度の特徴、調子というものは見極めていた。

 

 

 

(東一局には使わなかった絶対安全圏を使っただけで龍門渕はすっごいこっち見てくる。凄いね、一発目で独特の違和感を受けるなんて中々出来ないと思うけど。ま、絶対安全圏に関しては見極める事が出来たからどうしたって話なんだけど!)

 

 そして淡は一の観察力というものに素直に感心していた。

 絶対安全圏という一度も見た事が無い者が受けたならばその違和感すら感じ取る事が難しい能力を、一発目で何かを感じ取るという所まで察知したのだ。

 

 だが、それでも淡は余計な心配事というものはしていない。

 

 自身の能力を誰よりもわかっている淡は、絶対安全圏がいかに強力な物なのかを把握している。

 わかった所で簡単にどうにかできるような物ではない。照ですら、その絶対安全圏という能力だけで言えば破る事が出来ない物なのだから。

 

 

 

(っと、張った。いいね、私も今日はツモ運とかよさそー!……ここは普通ならリーチして7700点まで伸ばすのがセオリーだろうけど、もう少し周りも見たいし、ダマでいくかな)

 

 六巡目、淡はタンピンドラ1の綺麗な手で聴牌する。

 順位は最下位、点数を伸ばすためにもリーチをかけるのが最善手とも思えるような手ではあるが、それでも淡はリーチをかけようとはしなかった。

 

 

 

「リーチッ!」

 

 八巡目、リーチの宣言がかかる。

 

(やっぱり今日は引ける!このまま……トップも持って行くし!)

 

 かけたのは華菜。

 五向聴といった全くよくない配牌から、このスピードでリーチまで漕ぎ着けたのだ。

 

 

 

「ふっふーん、だったら私もリーチだよっ!」

 

 一とゆみが安牌を捨てた後、リーチ宣言をしたのは今までダマで通していた淡。

 互いにリーチといった状況の、駆け引きも無いガチ勝負へと持っていく。

 

 

 

(ツモ切りリーチ……清澄、さてはずっと張ってたな!?)

 

 華菜は手を変える事無くすぐにリーチをかけた淡を見て、そんな判断をする。

 

(いや、追っかけられたからといって不利、という訳でもないし。このガチ勝負……何としても勝つッ!)

 

 ここで負けるわけには行かないと、華菜は手に力をこめて牌を一つ、手に持つ。

 

 

 

(……ッ、来ない!)

 

 だが、一発ツモならず。

 悔しさを持ちながら、その牌を華菜はツモ切りする。

 

 

 

「――――それロンッ!リーチ一発平和断幺九ドラ1……裏1ッ!12000とリーチ棒いただきまーすっと!」

「ッ!」

 

 不運にも、華菜はその捨てた牌が一発で淡に刺さる。

 更に裏まで乗り、点数は跳満まで伸びた。

 

 

 

(……悔しいけど、この失点はしょうがない。後ろを振り向いた結果の失敗じゃない、だったらまた前を向いてリベンジするだけだし!)

 

 だが、華菜は後ろを一度も振り向く事無く前だけを見る。

 やられたなら、やり返せばいい。それだけの事である。

 

 

 

(……いやー、危なかった!何なのあのイケダって人、すっごいイケてんじゃん!危うく負ける所だったしー!)

 

 むしろ驚いていたのは淡の方だった。

 

 今の東二局、淡と華菜はガチ勝負といった展開でギリギリ淡が競り勝った。

 だが、そのガチ勝負にまで持ち込まれたという事自体で賞賛物なのだ。

 

 絶対安全圏という配牌時点での圧倒的なハンデがあるため、追い込むという事がそもそも難しい部分である。

 

(いやいやいや、全力出せば余裕が出来るだろうとは思ってたけど、意外とそんな事もないかもねー。けっこー、手強いよっ!)

 

 舐めていた、という訳では無いが全力を出せば簡単に何とかなるとは心の中で思っていた淡。だが、そんな事は無かったと考えを改める。

 全力でも苦戦する、そう思わせる周囲であった。

 

 

 

(……ま、それでも負けるとは微塵も思っちゃいないんだけどねー)

 

 

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 ――――東三局、親は一。

 

(また五向聴……やっぱり、大星さんの何らかの力?他家の配牌を悪くする……先ほども立てた仮定、正しいという前提で打たないといけないかもしれない)

 

 この二回目の能力を受けた感触で、一は完全ではないがある程度の見切りをつけていた。

 そしてそれは、ほぼ正解に近いものである。

 

 

 

(ただ、仮にそうだったとして対策を立てれる……というような感じの能力でもない。ボク自身特別な力は持っていないし、和了までは本当に遠い。……皆が作ってくれたリードがあるとはいえ、和了無しで守りきるのは多分無理だ)

 

 シンプル且つ強力な淡の能力に、一は正直かなり厳しいといった考えを持つ。

 破る方法が見つからないのだ。かといって、何も出来なければ優勝というのはほぼ不可能になってしまうため、何かをしなければならないのだが。

 

(でも、池田さんは何故あの早い段階で聴牌出来た?悪い配牌からよっぽどの良ツモだったのかそれとも……能力は一人にしか使えない?だからトップのボクだけに能力を使った?)

 

 しかし、全体に能力が発動されているのならばあの華菜の聴牌速度は何だったのか?と、また色々と一は考え込む。

 

(……いや、多分一人にしか使えないって事は無いかな。加治木さんも大星さんに何らかの反応してたし、何よりあの圧力の強さは軽々と全体に能力を使えてもおかしくは無いはず。仮に個人にでも全体にでも使えるとするならば、大星さん自身が一番和了しやすい全体への能力の発動をするに決まっている)

 

 もし仮に個人にも全体にも使えるとしても、他に和了させず淡が一番和了に近くなるように全体に能力を使用する。

 一はきっとそうだと、ここでも一つの推測論を立てた。

 

 

 

(だとしたら考えられるのは池田さんが能力を無効化する何かの力を持っていたのか、たまたまついていたのか……多分後者かな)

 

 そして一は、最初に南を切っていく。

 

 

 

(また手が重いか……この場を支配しているかのような圧力と、何らかの関係性でもあるのか?……いや、まだわからんか)

 

 ゆみの配牌も同じように悪く、それに伴い色々推測こそするものの、一のようにこの早い段階で考えを纏める事は出来ていなかった。

 

 

 

(流れ的には今、清澄と風越に来てる。悪いから我慢、いずれ必ず来るチャンスを待て……という悠長な事は出来るわけが無い。かなりの点数の差があるんだ、どこかで動いていかなければならないだろうが……)

 

 東一局は調子が良いと感じこそしたが、現状では流れが来ず厳しさすらゆみは感じてきていた。

 思い切らなければならない、そんな事を考えつつゆみは九萬切り。

 

 

 

(……さーて)

 

 淡にとっての一巡目。――――聴牌していた。

 

(出し惜しみをする気も無いし、前半戦に使う事で後半戦には完全に情報がばれちゃうだろーけど。ま、こっちもばれた所でどーこーできる能力じゃないし)

 

 淡のもう一つの能力、ダブリー。

 つまり、任意で配牌の時点で聴牌が出来るといったものだ。

 

 一度ならともかく、短い時間帯で何度も使えば流石に周りも気づいてしまう。

 更に言えば、以前淡がこの状態からあえて手変えをするといった応用も、モニター越しに見られているため他校にばれて休憩時間には情報が完全に行き渡る。

 

 だが別に、淡は隠そうという気持ちは持ち合わせてはいなかった。

 これも知られたからといって、簡単に打ち破れる能力ではないのだから。

 

 

 

(……まー、二つの能力を組み合わせて使ったとしても、絶対無敵!って訳ではないんだよねー)

 

 それでも一見打ち破る事など不可能とも思えなくも無い能力ではあるが、実際に能力を使用している淡自身が危惧している事柄もあった。

 

 淡のダブリーというのは任意で配牌時から聴牌というのも異常な事ではあるが、その後の和了にも法則性がある。

 最後のカドの直前でカンをして、そしてそれを超えた直後に和了る。逆に言えば、それまでは出和了りはともかくとして、ツモ和了は出来ないという事になる。

 

 一番早いツモ和了で十巡目。賽の目によって最後のカドが遠い場合は、それよりももっと遅い巡目になってしまう。

 

 

 

(今回の賽の目は3。ツモれるのは十二巡目、結構いい目ではあるけど、んー……)

 

 淡のダブリーは意外と和了速度は速くなかったりする。最も、出和了りは可能であり、周りは五向聴以下のスタートなので絶対的優位ではあるのだが。

 

 それでも淡が現在悩んでいたのは、先ほどの華菜が見せた驚異的な聴牌速度を見せられたからだ。

 もし先ほどのような引きを再びするような事があれば、下手すれば競り負ける可能性も無くは無いのだ。

 

 

 

(……ま、いいや。それに、私のダブリーは和了る和了らないだけじゃない、色々な意味を含んでる)

 

 淡のダブリーというのは色々な意味を持つ、それは淡自身が一番理解していた。

 何度も任意で出来る、という点がポイントなのだ。もしこれを何度もやられたら、相手からすれば嫌でしょうがない。

 

 精神的ダメージを蓄積させ、相手は惑い、それを何度も受けていれば下手すれば精神が壊れていく。

 それは非常に強力な武器であった。

 

 

 

(あはっ、やっばいなー、私ってこんなに性格悪かったっけ?普通に対抗してくるならそれはそれですっごい面白くて対戦し甲斐があるし、壊れたらはいさよならバイバイーって感じで)

 

 普段の淡というのは昔に比べ生意気さというのは多少は薄れ、周りに気も遣えるような性格へと良い変化を見せてきている。

 だが麻雀の部内戦とも違う、公式戦での淡の獰猛さというのは昔よりもかなり増していた。

 

 油断慢心といったものが無くなり、全力で叩き潰す事だけを考えている今の淡は甘さが無い。

 自分の麻雀を貫いた上で、相手が壊れたならそれは知ったこっちゃ無い。

 

 

 

(ッ!?先ほど以上の……!?清澄の大星、思っていた以上に化物だったという事なのか……!?)

(何……!?この嫌な感じ、まだ何か力を隠し持って……!?)

(ッ、これ、清澄か!?)

 

 周りに更なる圧力が淡によってかかっていく。

 先ほどは気づく事が出来なかった華菜ですら、何かよくわからないけどヤバい、というものを本能で感じていた。

 

 

 

「じゃ、開始早々悪いけどリーチ……こっからはもう、私が全てを支配させてもらうよ」

 

 淡、北切りのダブリー宣言。

 千点棒を出しつつ、言葉でも威圧をかけていく。

 

 

 

 色々な物を背負ってきて前だけを向いていた者達ですら、思わず一歩下がりたくなってしまいそうなこの場。

 東三局をもって、場の空気は一変した。




今回のまとめ

池田ァ!開幕倍満ツモォ!
一、驚異的な観察眼
淡、ガチる

池田ファンの皆様、待たせたな。

……まあ、池田はブーストかかったら本気で強キャラだと思ってます。
あの驚異的な速度と火力は能力持ちのキャラと当たっても中々止められないと思いますわ。

一は独自設定なんですけど、衣とずっと麻雀を打っていて気配に敏感になっていたり、元々マジシャンなので色々と細かい事が得意そうだなーって思ったりでこんな感じになってます。原作だと、正攻法で素で中々強いってイメージですけどね。

淡は……うん、原作以上に容赦ない模様。
一応主人公です、ラスボス違います(重要)

個人的には、原作の咲さんが言うような「麻雀を一緒に楽しもうよ!」というのとは淡は違うかなーと。どれだけ私生活で良い子になっても、本気の対局中はとにかく自分中心ってイメージ。
こういったキャラを主人公にするのって難しさもありますが、変な意味で楽しさもあるんですけどね。

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