今回出てくる場所……Roof-topは雀荘から喫茶店になったって設定(アニメ版)らしいので、そっちを採用してます。
ただ自分はアニメは阿知賀しか見てないので、違和感があったら……そこは申し訳ない。
清澄の新入生、煌が入部して新星清澄高校麻雀部がスタートしてから数ヶ月がたった休日のある日。
時刻は午前、場所は淡家。
「チョコおいしい。あ、そこの計算間違ってる」
「うわああぁっ!数学なんて嫌いだあああっ!!」
そこには教材と格闘しながら心が折れそうになっている淡と、それを見ている照の姿があった。
「ってか、さっきからどんだけお菓子ばっか食ってるのさ!?」
「おいしくて止まらないからしょうがない。それに、ちゃんと勉強は教えているから問題は無い」
横でずっとチョコ菓子をばりばりと食べている照に対し思わず淡は突っ込みを入れてしまう。
今回照がこうして淡の家に訪れている理由としては。何としても清澄に来てもらうため、勉強を教えている。
だが、それはあくまで理由の一つであり他にも理由がある。
「ほら、午前しっかり勉強したら麻雀打てるんだから頑張れ」
「うう……わかってるって!それに言われなくても頑張ってるし!」
受験勉強の疲れが溜まってるだろうと思った照は息抜きとして淡に麻雀を打たないか、と提案を持ちかけたのだ。勿論、照が久々に淡と打ちたかったというのも理由の一つだが。
最も淡の私生活では麻雀で息抜きだらけであるのだが、それは照の知らない話。
「そういえば、過去に戻ってから淡とは一度も麻雀打ってなかったよね。どう、強くなった?」
「んー……どうだろ」
「?」
照は少し疑問を抱く。
てっきり、淡の事だから当然でしょ!とか、今ならテルにも負ける気がしないね!とか、大口を叩くとばかり思ってたからだ。
けれども、淡の口からは自信なさげな返答。
(……ま、淡が強くなったかどうかは後で打てばわかるか)
実力は語らずともこの後対局すればわかるからいいかな、と照は考えてそれ以上は特には言及しなかった。
「あ、またそこの計算間違ってるよ。板チョコおいしい」
「くそっ、この私の中学三百年生の頭脳を持ってしても……!数学って手ごわい」
「とりあえず突っ込ませてもらうと、それ中学三百年生どころか中学二年生の復習だからね?あ、このアーモンドチョコもおいしい」
「こっちもとりあえず突っ込ませてもらうけど、それ私の勉強の時に食べるためのお菓子だからね!?」
淡、勉強&照に悪戦苦闘中。
―――
時間は過ぎ、勉強を終えた淡とそれを見ていた照の両者はとりあえずどっか適当に飯でも食べようかと場所を探している。
「それにしてもさー」
「ん?」
「長野って東京に比べて店とか少ないよね、全く無いわけじゃないけど。東京だったらすぐに見つかるのに、長野だったら少し歩かないと見当たらなかったりするじゃん?」
「人口が桁違いだししょうがない。でも、長野だっていい店はいっぱいある」
「確かに!東京だと見かけないものが、意外と長野で見つかったりするんだよねー。逆も然りだけどさ」
東京と長野の比較といった、他愛も無い話で盛り上がる両者。
そんな会話を進めていくうちに、視界に入ってきた店が一つ。
「お、いい所に喫茶店があるじゃん!せっかくだし、ここでゆっくりしてからどこで打つか考えよ?」
「そうだね」
こうして、たまたま目に入った喫茶店――――Roof-top、元は雀荘だったこの店に二人は入っていく。
―――
「いらっしゃいませー」
照と淡、両者が店に入ってから早速聞こえてくるのは、どこか気の抜けた声だが特別客を不快にさせるわけでもない声。
「二名様でよろしかったでしょうか?」
「あ、後から一人追加って事も出来ます?」
「え、誰か来るの?」
てっきり二人のままかな、と思っていた淡は照に対し尋ねる。
「うん、せっかくだし煌も呼ぼうかなって」
「なるほど、そういう事ねー。そういえば私、その煌って人に会ったこと無いなあ」
「じゃあ、顔合わせって事でちょうどいいね。あと私は別にいいけど、煌にはちゃんと先輩なんだから敬語を使ってね」
「はいはい、わかりましたよーっと」
この喫茶店に煌も呼び三人で合流しようと照は考えていたのだ。
その方が麻雀を打つ面子も増えるし、せっかくだし淡に会わせてもいいかなと色々と理由はあるわけだが。
「じゃあ、三名様のご席にご案内しますねー」
店員が席に案内しようとしたその時、淡はある事に気がついた。
本来なら喫茶店にあるはずが無い物、それが置かれていて目に入ってきたのだ。
「……ここって麻雀できるの?」
そう、麻雀卓が置いてあったのだ。
置いてあるだけではなく実際に、打っている客もちらほらと見られる。
「出来ますよー、食事をしながらでも可能ですし、人数不足なら私などの店員に言ってくれれば人数合わせも出来ますよ」
「便利だね、ここ!食事しながら麻雀打てるって!」
「あ、ありがとうございますー」
淡のテンションの上がりっぷりに、思わず店員も一歩引いてしまう。
だが、店の事を素直に褒められているので店員も嬉しいのか笑顔になった。
「テンション上がるのはわかるけど、煌が来るまでは待とうね」
「ちぇー、わかったよ」
「じゃあ、三名様のご席でとりあえずはご案内しますね。麻雀が打ちたくなったら、店員の誰かにお申し付けください」
そういって店員は照と淡の二人を席に案内する。
だがそれとは別に、店員の頭の中では考えている事があった。
(……あの二人、どっかで見たことがある気がするんじゃけどなあ。特に赤髪の方は、絶対に見たことがある気がしようるが)
何じゃったかのぉ、とその店員は自分の記憶を掘り返すが思い浮かばなかった。
―――
「あと十分くらいで煌来れるって」
「……随分と早いね?」
「自転車飛ばしてくるってメールに書いてあった」
照が煌に連絡を取り、二人が予想していたよりも早くこちらに来れるという事がわかった。
「まだご飯食べてないって書いてたから、適当に飲み物だけ頼んで待ってよう」
「そうだねー、あー、私頭使いすぎたから甘い飲み物頼もうっと!」
こうして二人は煌の到着を飲み物だけ頼んで待つ。
―――
「いらっしゃいませー、って何だ、久か」
「……客に対してその対応は店員としてどうなの?まこ」
照と淡が店に入ってから数分後、別の客。竹井久が入店してきた。
店員、染谷まことは顔馴染みなのか。立場関係なく顔を合わせるや否やフレンドリーな口調で話す。
「今日は何しに来よったの?打ちに?」
「いやー、何も考えずにとりあえずって所かしらね。とりあえずご飯食べて、気分が乗ったらーって所かな」
久は目的も無しに、いや、食事をするという喫茶店を訪れた際に行う本来の目的は一応あるのだが。麻雀を打つかどうかは別に気分の問題らしい。
そんな久に、まこは一つ聞きたい事があった。
「なあ、あそこの客……」
「ん?お客さんがどうかした……!?」
先程のまこが見た事があるであろう客、照と淡の方を指差して久に聞こうとする。
だが、質問の内容を言う前に久は表情を変える。嘘でしょ!?と言わんばかりの驚いた顔に、だ。
「あの赤髪の方のお客さんって……もしかして、宮永照!?」
「……ああ!そうじゃ!私服じゃったからすぐに思い浮かばなかったけど、そうか、宮永照か」
ようやくまこも誰なのかを思い出し、理解する。
普段照が雑誌等に写っている時は基本制服なのだ。だから、理解が遅れたというのがある。
「……よく見たらあの金髪の子も見た事があるわね」
「やっぱりそうか?何じゃったかのう、思いだせん……」
だが淡の方はすぐには思い出せなかった。
両者とも、どこかで見た事はある、という共通認識はあるのだが。
そんな考え事を両者がしていたら、カラン、と店のドアが開く音が店内に響いた。
「いらっしゃいませー、ほら久、営業の邪魔じゃ。注文なら後で聞くから適当に座っちょれ」
「はいはい、相変わらず客使いの荒い店ねー」
そう言って久は離れた所にあった適当な開いた席に歩いていった。
「えっと……大丈夫ですか?」
「あ、申し訳ございません!お一人様でしょうか?」
「いや……二人が先に三人席取ってる場所ってありませんか?」
一人で訪れたこの客はお一人様ではなく、既に三人席を取っているはずの場所が無いか尋ねてきた。
そして店員であるまこは、現在そのような席は一つしかないのですぐに思い浮かぶ。
「了解です、こちらへどうぞー」
「ありがとうございます」
そしてその客を案内するまこ。
案内しながら、一つ考え事をしていた。
(……この客、チャンピオンの知り合いって事は麻雀強いんかな?)
そんな事を考えているまことは別に、離れた席に勝手に座った久も一つ、考え事をしていた。
(正直、特に麻雀を打ちに来たって訳ではないけど……何とかチャンピオンと打つ機会、作れないものかしらね?)
一人、静かに闘志を燃やす。
―――
「こちらになりますー」
「あ、煌随分来るの早かったね。おつかれ」
まこが照と淡の所の三人席に清澄高校麻雀部員である、花田煌を席に案内する。
「いえいえ!そこまで距離は離れてなかったので自転車使えば楽でしたよ」
「煌もお昼取ってなかったんだよね?待ってたから、一緒に食べよう」
「お気遣いすばらです!照先輩と、えっと、あなたが照先輩がいつも言ってた大星さ……ん?」
「……ん?どうしたの?」
淡の姿を目に捉えた途端、何故か驚いた表情を煌が浮かべたので淡もつられて疑問に思ってしまう。
「いや……大星ってどこかで聞いた事がある名前だなって思っていたんですよ」
「……んー?」
淡は自分でも大星という名字は珍しい、と思っているので聞いた事がある?という事に対して疑問を抱く。
他の大星というのも滅多にいないだろうし、自分自身は煌と出会った事も無いのだから。
だが、煌の次の問いでようやく名前を知っている理由がわかる。
「もしかしてですが……インターミドル二位の大星さん?雑誌で見かけた事があります」
「……あー、なるほど。そういう事ねー」
煌が淡を知った理由を聞いて、淡自身も理解する。
今年で中学三年生の淡はインターミドルに出場し、個人戦二位という結果を残した。
一位に比べたら記事の大きさ、ページ数共に少ないものの、一応取り上げられた事は取り上げられたのだ。
「淡、インターミドルに出てたの?」
「んー?まあ、一応ね」
過去では照は淡がインターミドルに出ていない事を知っていたし、だからこそ出場していた事に関して少し意外に感じていた。
そして、出場だけではなく別に意外と思っている事もあった。
(淡が二位……咲も出ていないであろう大会で、同世代で淡を超える人もいるんだ。全国は広いね)
全国二位、当然凄い事ではあるが淡が一位になっていない事を照は不思議に感じる。
勿論、麻雀というのは運の要素が強い競技だ。
だが、それとは別に生まれつき持っている能力。不思議な力というものが、この世には存在する。そして淡には、普通に打ってたら破る事は相当難しいであろう強力な能力を持っている。
そんな淡を深く知っている照だからこそ、淡の結果、そして淡を超える者が同世代で存在しているという事が、照にとって意外に感じていた事だ。
「でも、よく雑誌なんか見てたね、えっと……煌先輩?」
名前は照から聞いていたが、とりあえず初対面という事もあり淡は自信なさげに名前を尋ねる。
「ふふっ、花田でも煌でもどっちでもいいですよ。えっと、私の後輩がそのインターミドルに出場していたんですよ。だからその週の雑誌はしっかり買って、尚且つ記憶によく残っていたものですから」
「あれっ、もしかしてその後輩ってインターミドルチャンプの子?」
「え、何故それを!?」
「いやー、だってさ……」
まさか当てられる事はないだろうと思っていただけに、煌はその指摘に思わず動揺してしまう。
それに対し淡は当然だろ、と言わんばかりの表情で言葉を続けていく。
「雑誌を買うって事は載ってるかなー?って思って。で、載るためには少なくとも決勝、ベスト四には残っていなきゃいけない。で、チャンプも確か長野出身だったはずだから……何となく指摘したら、当たっちゃった感じですかねー?」
長野からは別に二人だけではなく数名の出場者がいるが、煌が雑誌を購入する。という事はつまり、その後輩が雑誌に載っている可能性が高いという事になるであろうと、淡は推測した。
そしてその考えは、見事的を射ていた。
「ま、次やったら絶対に負ける気はしないけどねー」
「おお!その意気込みや、とてもすばらですねぇ」
もう負けない、という台詞に煌も感心の言葉を述べる。
だが、それとは別に違和感を感じる者が一人いた。
(うーん……何か、違う)
同じく近くで話を聞いていた人物、照だ。
(確かに、言っている事は淡っぽいけど……何だろ)
台詞からは確かに、負ける事がほぼ無くて自信に満ち溢れている淡のものだ。
だがその分負けたら誰よりも悔しがり、リベンジの心に燃えるのもまた淡だ。そしてそれは、過去に戻ってきたばかりの時、阿知賀の大将に対する悔しさを前面に出していたのを照は横から見て、聞いていたため知っている。
(何か……さっぱりしてる)
二位、つまり負けたのにも関わらず思ったよりも悔しそうに見えない淡に、照は少し違和感を感じているのだ。
「そんな事よりテルー、おなかすいた!煌先輩も、すきましたよね!?」
「え?ああ、そうですね。近い距離とはいえ結構頑張って自転車をこいできたし、それに時間もちょうどいいという事もあっておなかはペコペコですね」
「……うん、そうだね。とりあえず、ご飯食べようか」
何だかんだ、三人とも腹がとてもすいていて煌が来て待つべき者も特に無くなったので、淡の一言に賛成する。
「実はもう煌先輩が来る前に決めてたんだー、私はオムライス!」
「お、オムライス、いいですねぇ。私は……そうですね、日替わり定食かパスタかで迷っているのですが……」
(……実はずっとカツ丼かサンドイッチで悩んでいる私がいる)
「うーん、ここはじゃあパスタにしますか!照先輩は?」
「えっと……」
カツ丼とサンドイッチ、甲乙つけがたくどちらにするか迷っている照。
そこに、照の選択を決定付ける声が突如として飛んできた。
「ずっと思ってたんだけど、カツ丼ってどうなの?わざわざ喫茶店で食べるもの?」
「うーん、確かにわざわざ食べるかって言われたら……ちょっと違う気もしますねぇ」
「カツ丼ならチェーン店で安くて量が多くておいしい奴食べればいいもんね!で、テルは何食べるの?」
(私のカツ丼が……否定された)
「……テル?」
「え?あ、じゃあ……ミックスサンドで」
その後輩二人の言葉は、メニューを決める一手となった。
(……テル、何で涙目?)
(照先輩、何でちょっと目に涙を浮かべているのでしょう?今のやりとりのどこかに、すばらくない事でもあったのでしょうか……?)
照、心に本当にわずかな、小さなものであるが傷を負う。
―――
「ごちそうさまっ!」
「ごちそうさまでした。すばらな味でしたね」
「ごちそうさまでした」
三人とも昼食の味には満足し、食事の最後の挨拶を終える。
「じゃあ、これからどうしよっか?」
「どうするも何も、すぐそこに卓があるなら打つしかないっしょ!?」
「賛成ですね、ミドル二位の大星さんと打てる事にこの花田煌、とてもワクワクしております」
照の促しに対し、そんなの決まっているだろうと言わんばかりに速攻で答える淡と、それに対し賛成する煌。
だが、少しばかり問題点もあった。
「面子が三人だからね、誰かを入れないと」
「あー、そういえば」
「そうですねぇ……」
そう、面子が足りない事だ。
そしてこの面子が足りないという問題点。三者によって捉え方が、いや、正しくは一対二か。違う捉え方をしているのだ。
(誰か、麻雀上手い人いないかなー……)
照からすると、それなりに打てる人物さえいればといった考え。照の考えるそれなりというのもかなりハードルが高いものだが、とりあえず面子が揃えばいいや程度の捉え方だ。
一方の淡と煌からすれば。
(面子を一人集める……簡単なようで、これは結構重大な任務だ)
(照先輩を相手にする……それは、並大抵の事じゃないですからね)
(かなりの実力を持っていないと、テル相手は厳しい。私のフォローにも限界があるし、何よりフォローするの面倒臭いし、つまんなくなる)
(麻雀一局でその人の人生変えかねないですからね……主に、悪い方向で)
(多少打てる程度は論外。間違いなく)
(ちょっと麻雀やってる程度の人はまず誘えませんね……間違いなく)
((ぶっ壊れる))
二人の考えはシンクロしていた。
照相手に打つというのも、実力がないと壊れかねないのだ。という事で、一般人を同卓に誘うにしても慎重にならなければならない。
そんな時だ。
偶然、店員であるまこが三人の席の所を通り過ぎる。
(そういえば、人数が足りなかったら店員が入ってくれるって言ってたっけ)
先程まこが言っていた事を照は思い出す。
そして、声をかけ――――
「すいません、ちょっと店員さん、人数足りないんで麻雀の卓に入ってもらえませ」
「うわあああ!?ほら、テル、店員さんは仕事が忙しいだろうし!」
「え、でもさっき」
「照先輩!私達で探せば大丈夫ですよ!わざわざ店員さんの力を借りなくても!」
「うん……?わかった」
まるでコントのようなやりとりに声をかけられたのかかけられなかったのかよくわからなかったまこは思わずポカンとしてしまう。
だが、その中でわかった事が一つあった。
この人達は、面子を探していると。
「えっと……よければ呼んできましょうか?それなりの打ち手で恐らく暇してるであろう人物、知ってますよ」
「え?あ、はい……」
まさかの逆提案に、今度は三人が少し固まってしまった。
三人から見たまこの表情は、どこかニヤリと笑みを浮かべていた。
―――
「あー、妹達に絡まれて一時間来るのが遅れるってどういう事よ……」
照達から少し離れた所にある席に座っていた人物、竹井久は後輩からのメールに思わず愚痴をこぼしていた。
(何だかこれじゃ私が一人で来た可哀想な高校生みたいじゃない)
社会人ならともかく、休日の昼の喫茶店にわざわざ一人で訪れる高校生の女子というのも中々いないだろう。
そんな視線を気にしてか、若干気落ちする久。
「で、何しに来たのよ、まこ。さっさと仕事に戻りなさいよ」
「いやいや、ぼっちの久にええ話を持ってきたんじゃけど」
「ぼっちじゃないっての。……いい話?」
馬鹿にしに来ただけならすぐにでも追い払おうと思っていたが、まこの話の持ちかけに思わず久は聞こうとする。
そして、それは久にとって本当にいい話であった。最初ここに来た時、照を見た時に望んでいた事だ。
「いやあ、チャンピオン達面子が足りんらしくてな。一人探しておるらしいぞ」
「……ふーん?」
その話を聞いた途端、気落ちしていた久のテンションは急上昇。
「……それを私に言うって事は当然、打ってもいいって事よね?」
「おう、華々しく散って来い」
「そうね、今の私でどれだけ……通用するかしらね。どこの席?」
「案内しちゃる」
―――
「お待たせしました、連れて来ましたよ」
「すみません、面子が足りないと聞いて。私も混ぜてもらってもいいかしら?」
まこが久を連れてきて、久が三人に対し確認を取る。
「えっと……」
「あ、自己紹介をしてなかったわね。私は竹井久、風越女子高校の二年生よ」
「あ、どうも。私は大星淡です。って、いや、そうじゃなくて……」
自己紹介も大事だが、それよりも大事な事があると淡は感じている。
「一応聞くけど、このボーっとしてる人が誰かわかってるよね?」
「淡、ひどい」
「ええ勿論、チャンピオンの宮永さんでしょ?」
さりげない毒舌で若干照を傷つけながら、淡は確認をする。
そして久は知っておきながらチャンピオンに挑む、という事を三人は理解した。
「ふーん……じゃ、もういいや。死んだら自己責任って事で」
「照先輩と打ったら死にかねない……否定はしません」
「ねえちょっと、淡も煌も酷くない?」
「ですが」
更にさりげない毒舌で結構な度合で照を傷つけながらも、煌は淡とは違いこの久という人物に期待感を持っていた。
「淡さん、この久さんなら相当なやり手のはずですよ」
「え、そうなの?」
「私の記憶が正しければ……風越という長野屈指の名門校、そこで一年生からレギュラーを取っていた人物。そして今年から風越の二年のダブルエースというすばらな実力者がいたはずです。その内の一人だったはず」
「ふーん、じゃあ期待しちゃっていいのかな?」
「ま、流石に私も宮永さん相手に勝てるだなんて思わないわよ。挑戦者のつもりで、気負い無くぶつからせてもらうわ」
そんな弱腰の台詞とは裏腹に、闘志をむき出しにする久。
そしてその気迫というものは、淡と煌は感じ取っていた。
(何が勝てるだなんて思わない、さ。勝つ気満々じゃん……!ま、気迫だけじゃどうにもならない世界ってのもあるんだけどねー)
(やはり風越のエースともなると風格がありますね。私も、挑戦者のつもりでっ……!)
一方の久も、照だけではなくこの二人にも注目する。
(宮永さんと一緒にいるって事は即ち、それなりに実力を持っていないと伴わないはず。つまり、この二人も強者かしらね。それにどこかでこの若干生意気な子、大星淡って聞いた事、あるいは見た事がある気がするのだけれど……何だったかしら)
そしてこれから四人で打つ者達を見ていた存在、まこも感じる所があった。
(大星淡、名前を聞いてやっと思い出したわい……全中二位か、そこにおる化け物は宮永照だけじゃないぞ、久。まあ、久ならわかっておるじゃろうけど)
「じゃあ、早速打とうか?よろしくね、淡、煌、竹井さん」
照の一言で、ついに対局が開幕する。
今回のまとめ
淡はアホの子(二度目)
淡はインターミドル二位(完全オリジナル要素)
カツ・ドゥーン
淡と煌、見事シンクロ
照、ちょくちょく心に傷を負う
久、ぼっち
久、風越(改造要素)
とりあえず、インターミドル一位は原作通り、あの人です。
あと結構重要な改造要素、久が清澄ではなく風越。これにより、元々いたキャラが団体戦から外されたり、また大幅なオーダー変更だったり、色々改造要素があります。
風越は結構強化されますね。それ以上に、清澄が強化されていますが……(笑)
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