乃木さんちの青葉くんはこんな感じである   作:ቻンቻンቺቻቺቻ

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15:大社に行く感じの二人、もしくは恋ばなの話

 抜糸を済ませてから鍛練を休んでいた鈍りをようやく取り戻したと思えてきたのは既に太陽が元気良く働く季節になる頃だった。この嫌になってくる暑さに僕が一月ほど休んでいたのだから太陽も少し位休んでも良いんじゃないかと口にしてみた結果、「なんだよ、夏の青葉も結局変じゃないか」と球子に言われてしまった。

 

「んー?大社の偉い人が会いたいって?」

 

「はい」

 

 幼馴染曰く、怪我が完治して落ち着いたであろうから、直接会って刃物男の事件への協力のお礼が言いたいとの事。こちらの都合に合わせて連絡をくれれば迎えを寄越してくれるらしい。

 

「んー、すごくどうでもいい」

 

「でしょうねぇ」

 

 休んでいる間に少し硬くなっていた関節も今では元に戻っている。幼馴染に長袖のシャツ越しに背中を押して貰って両膝に鼻先を埋める。暑い季節でも長袖なのは下手な刺青よりも怖い事になってる僕の体を隠す為なのである。

 

「めんどうだから行かないって返事したら怒られるかな?」

 

「どうでしょう?凄く熱心に会いたがってたから残念がられるとは思いますけど」

 

「そっかぁ」

 

 あの事件は僕の中では既に終わった過去の事なのだ、今になってお礼がどうのとかで会いたいと言われても戸惑うしかない。更に言えば大社の偉い人達は僕が"清い心"だの"献身"だので頑張ったと勘違いしているらしいので会話が噛み合う自信が無いし、ただ幼馴染が大切だったとわざわざ訂正するのも面倒に思う。

 

「でもなぁ」

 

 面倒ではあるが、よくよく考えれば僕がこうして姉と幼馴染と一緒に生活して一緒の教室で勉強できているのは大社の人達のお蔭なのだ。僕はまだ、そのお礼を言うことができていない。お礼は、言うべきだ。気付いたからには僕もお礼を言いたくなってきた。

 お礼は言うべき、その大社の偉い人とやらも同じ気持ちになっているのだろうか、このムズムズした気持ちは長く味わいたいモノではないだろう。

 

「ひなちゃん」

 

「はい」

 

「会ってみるよ」

 

「そうですか」

 

 そんな訳でこの会話をした次の日曜日には大社の偉い人達が集う建物に訪れていた。

 迎えに寄越された黒塗りの高級車に「んー?」と首を傾げ、幼馴染と乗り込んだ車内から外が見えなくなってる造りに「んん?」となり、走り出した車が静かに右に左に何度も曲がってどこを走ってるかの予想すらできなくった辺りで「あっ、映画で見た穏便な拉致だ」と背筋に嫌なものを感じたが、ようやく停まった車のドアが開いた先が神社的な建物だったので左袖の中にある物を使う機会ではないと思い至り安堵した。

 

「此方でお待ち下さい」

 

 やけに丁寧な物腰の巫女装束のお姉さんに幼馴染と共に上品な和室に案内されて待つこと数分、出されたお茶を啜りながら幼馴染とのんびりしていると、神官装束を着た白髪混じりの男三人が朗らかな笑みを浮かべながら入室してきた。

 

「ほほぅ、この少年が噂の若武者か」

「四国の居合に携わる者には姉弟揃って中々有名らしいな」

「儂は居合の関係でチラと顔だけ見た事があったが男前が増しておる」

 

 なんだこの元気な爺さん達は、開口一番に若武者だなんだのと言われても反応に困ってしまう。どうしたものかと隣に行儀良く座る幼馴染を見るとなにやら自慢気に微笑んでいた。

 

「ほっほ、若武者殿が呆気にとられておる。」

「そりゃあ挨拶前に騒がれたらこうもなろうて」

「然り、挨拶が遅れたな。儂は──」

 

 古風でややこしい名前なので覚えきれなかった。三人合わせてお爺三羽烏でいいや。一人は梟みたいな笑い声してるけど。

 

「さて若武者殿、此度の事件について四国の未来を担う巫女への献身実に見事だった」

「んー、献身とかそー言うのじゃないんだけど」

 

「ふむ?報告ではその身総てを使い其処に座る巫女の上里を護り通したと聞いておる。まこと清い心の持ち主よな、稀に見る真の男子よ」

「清い心とかでもなくてさ」

 

「謙遜されるな、その行いはこの四国の、更に言えばこの日の本の未来を左右したやもしれぬのだ」

「んー……うん」

 

 お爺三羽烏のマシンガンのような話には口下手な僕では着いていけそうにない、もう言われるがままでいいや。幼馴染が色々と諦めた僕を見て自慢気な顔のまま嬉しそうに笑っていたからそれで良いと思う。

 褒められ過ぎて居心地が悪い時間がしばらく続いた後、ようやくお爺三羽烏が落ち着いてきた頃を見計らって僕にとっての本題を切り出す。

 

「──ってな訳で、丸亀城に置いてくれてありがとうって事をそう決めてくれた人に伝えたいんだよね」

 

「ほっほぅ、若武者殿は義理堅くもあるようだ」

「それは会議により決まった我ら大社の総意であることだ」

「次の集まりにて我等から皆に伝えておこう」

 

 不安だ、この三人はこう言っているがなんだか不安だ。偉い人達らしいけど僕から見たら神官装束を着ただけのお喋り好きなお爺さん達にしか見えないからだろうか。まぁ、言うべき事は言っておいたのでこれでいい気がする。多分。

 

「話題は代わるがな若武者殿よ」

 

 むず痒い呼び方に未だに慣れないが訂正するのも面倒なので視線で話の先を促す。そもそも何故若武者なのか、"若"は姉の文字だろうに……青武者と言われるよりはマシかもしれない。

 

「この先も勇者と巫女に献身を続けるならば此度の様な苦難があるやもしれぬ、どうだ、禊の後に巫女達に厄払いの祝詞を上げて貰っては?」

「ほっほ、名案であるな」

「如何かね?」

 

 正直、凄くどうでもいい。しかし、なにやら期待に満ちた視線のお爺三羽烏の好意を無下にするのもばつが悪い気がするし、きっと幸運を祈って貰うことそのものは決して悪いことでは無いはずだ。眼で幼馴染に意見を求めてみても微笑みながら頷いていたので良い事なのだろう。

 

「上里さん、若武者殿の禊の準備を頼めるか?」

 

 了承の意を伝えるとすぐにお爺三羽烏の一人が幼馴染にそう言い、幼馴染が上機嫌に部屋から退出していく。

 

「支度の間に我等老人どもの世間話に付き合ってくれるか?なに、すぐに支度も終わるであろう」

 

「はい」

 

 言われるがままにして茶を啜っていればそれで良いだろう。そう思ったのだが何やら空気が変わった気がする。

 

「ところで若武者殿は意中の相手はおられるか?」

「んー?……んん?」

 

「ほほっ、丸亀城には年の頃の近い愛らしい娘子がおるからな、そういうこともあるのでは?」

「……ん?」

 

 何が悲しくて爺さん三人と"恋ばな"ってやつをしなければならないのか。地獄じゃないか。

 

「そーいうのは無いかなぁ」

 

「ふむ、ならば若武者殿の好みの娘子はどのような者かね?」

「儂の孫が今この場にて巫女をしているのだがな、もしや気が合うやもしれぬ。会ってはみぬか?気立ての良い料理上手だ」

「ほっほほ、年上が好みならこの部屋まで案内した巫女が私の姪でな、丁寧な物腰な娘子は苦手か?」

 

──なんだ、これは。誰か助けて。

 

 ぐいぐいと食らい付くように"恋ばな" を弾ませようとしてくるお爺三羽烏。最初の好々爺な雰囲気とは違い、獲物を狙う野良猫のような雰囲気に軽く引いてしまう。

 

「ふむふむ、年下が好みならば末の孫が若武者殿の二つ下でな、明るい性格の器量良しだ」

「ほほっ、どれか好きな娘子を持っていくといい」

 

「んー、いらないかなぁ」

 

 勘弁してほしい。切実にそう思う。

 

「ふむ?何故か?若武者殿は娘子には興味は無いのかね」

 

「初対面の人から何か貰ってはいけませんって若姉さんと約束してるから」

 

 姉の教えは絶対なのである。以前知らないおじさんにうどんを奢るから着いておいでと言われた時に必死の顔をした姉に止められてそう約束したのだ。直後にあのおじさんは警察官に呼び止められて連れていかれていた。

 

「姉……勇者をしておられる風雲児の方か」

「約束事ならば仕方あるまい」

「ほっほ、約束を律儀に守るのも清い心の証明よな」

 

 姉の名に引き下がるお爺三羽烏、勇者の肩書きはそんなに強いのか。此処にはいない姉にまた僕は護られたようだ。

 

「支度が整いました」

 

 恐らくは盛り上がりに一区切りついたタイミングで幼馴染が戻ってきた。時間としてはそれほど長くはなかったが、この瞬間をどれだけ待ち望んだか。

 部屋を出るときに見たお爺三羽烏の顔はホクホクとした笑顔だった。

 

 

 ─────

 

 

「ふーん、コレが噂の凄腕くんか」

 

 僕の噂はどんなルートでどんな話が出回って居るのだろうか、少なくとも目の前に立つ栗毛を三つ編みに纏めた薄いそばかすの女の子は同じ巫女である幼馴染から何かしらの話を聞いていたのだろう。

 

「想像したより小さいね」

 

「なんと」

 

 白い装束を着たこの女の子は安芸真鈴と名乗り、「親しみ易いね」と手を差し伸べてきた。僕もそれに応じて手を伸ばし握手する。

 

「うわー、凄くゴツゴツしてる」

 

「鍛練の証だよ」

 

「青葉ちゃんの毎日の頑張りの結果です」

 

「どんな感じなの?私も触る~」

 

 幼馴染が用意してくれた白装束に着替えた僕が幼馴染と真鈴に連れられて板張りの廊下を歩いていると突如幼さの目立つ明るい声が横からかけられる。振り向くと僕よりも頭一つ半ほど小柄な女の子が僕の手に細い手を伸ばしていた。

 

「んー?」

 

「うわっ、すっげぇゴツゴツ。とーちゃんの手みたい」

 

 マイペースな性格とはきっとこの女の子の事を指すのだろう。僕の手のひらを両手の親指でグニグニと面白そうに押す姿に遠慮の欠片も見えない。

 

「にーちゃんが双子勇者の弟なんだろ?とーちゃんから聞いてる。ホントに腕無いんだな、痛くないのか?」

 

「ん、痛いのはもう無いよ」

 

「あっ、とーちゃんはにーちゃんの先生してるんだ」

 

「鷲尾先生の娘さんですよ」

 

「なんと」

 

 似て無さ過ぎるだろう、お互いの共通点が髪と瞳の色しかない。

 意外な事実に愕然としながらも先導してくれる真鈴のうしろを幼馴染に寄り添われて鷲尾に手のひらをグニグニされながら歩く。なんだこの訳の解らない状況は、大社の全ては訳が解らない空間なのか。

 

「そういえば禊って言ってたけどさ」

 

「なんですか?」

 

「何をどうすればいいのさ?」

 

 僕に神道における作法や所作の知識は初詣では手を打ち鳴らしてお辞儀をしましょうといった程度の物しか無いのだ。ややこしいアレソレがあるならば今の内に覚えておきたい。

 

「難しい事は無いよ。この先に滝のある川が流れていてね、そこで滝に打たれれば良いんだよ」

 

「めっちゃ冷たいぞ」

 

「まじか」

 

 真鈴の言葉にテレビのドキュメンタリー番組で見た滝行やバラエティ番組の罰ゲームのワンシーンが脳裏をよぎる。ああいうのを一度やってみたいと思っていたのだ。

 

「楽しそうだね、ワクワクしてきた」

 

「そういう反応かー、男の子なら皆そうなのかな?」

 

「青葉ちゃんはポジティブですから」

 

「うへへ、ぐにぐにぃ」

 

 いい加減離して欲しい、歩きにくいのだ。

 歩きにくいまま少し進むと廊下の壁が無くなって自然の景色に囲まれた渡り廊下の様になり、進む先から水音が聞こえてきた。

 そのまま真鈴に先導されて辿り着いた先には広い幅で落ちてくる滝と膝ほどの深さでながれる透明な川、よく整備されているのか覗き込んだ川底は平たく均されていていて川の流れに足を取られなければ転んで怪我をする事も無さそうだ。

 

「真鈴さん、ひなたさん、その男子が例の禊させて祝詞を上げろって男子なの?」

 

 川沿いに鷲尾と並んでしゃがんで川底を覗き込んでいると、背後から覚えの無い声が聞こえてきたので振り返る。数人の白装束を纏った女の子達が今しがた僕達が通ってきた廊下から此方に進んできていた。

 

「はい、みなさん宜しくお願いします」

 

「ふ~ん、コレが最大戦力って噂の勇者の弟さんねぇ。なんだか小さいし抜けてる顔してるね」

 

「なんと」

 

「まぁまぁ、偉ぶったりツンケンしてるよりは親しみ易くて良いじゃない」

 

 真鈴にフォローされるが小さいと言われた事へのフォローが無かった。実際同年代では小さい方なので仕方無いのだが切ないモノがある。

 

「手はゴツゴツしてるよ、とーちゃんみたいな手だ」

 

 鷲尾に至ってはフォローですらない。そんなにゴツゴツが気に入ったのか。

 

「それじゃ皆集まったし始めようか」

 

「青葉ちゃんは私達と一緒に滝に少しの間打たれるだけですので緊張しなくても大丈夫ですよ」

 

 こうして真鈴の合図で始まった禊なのだかテレビで笑って見ていたのとは違い、想像していたより中々に過酷なモノだった。頭上から降り注ぐ大量の水で呼吸がし難いし、水温もかなり低くて体が冷える。巫女の女の子達はこれを季節問わずに日常的にこなしているのかと思うと幼馴染の我慢強さには脱帽の思いだ。

 滝の落ちる音に混ざって微かに聞こえていた巫女の女の子達の何かを唱える声が途絶えた後に「もう良いですよ」と幼馴染の声が聞こえた。

 顔に流れる水を手で拭いながら滝からでる。

 

「んわっ!」

 

 僕にはかなり刺激が強い光景だった。

 白装束が水に濡れて女の子達の肌に貼り付いて透けている。この場に全員の女の子達が裸同然の姿でうろうろと周りを歩いているのだ。

 堪らず、再度滝に突入して眼を瞑る。

 

「青葉ちゃん?終わりですよ」

 

「いやいやいや、まずいでしょコレは」

 

「何がですか青葉ちゃん?」

 

 至近距離で見てしまった幼馴染の裸同然の姿に頬が熱くなる。一緒にお風呂に入っていた頃とは違う膨らんだ胸と括れていた腰が目蓋の裏にこべりついて剥がれ落ちず、得体の知れない罪悪感と羞恥心が胸中で爆発しそうだ。

 

「夏とはいえ長く体を冷やすと風邪を引いてしまいますよ」

 

「そうだけどさぁ……」

 

「どうしたって言うんですか?」

 

「……皆ほとんど裸じゃん、恥ずかしいよ」

 

 瞬間、滝の音の中にいてもその場に静寂が広がったのが感覚的に解った。

 

「あ~~、普段女子しかいないからそういうの考えて無かったわ。ってか誰も気付かなかったのね」

 

「……青葉ちゃんがそういう事言うんですね」

 

 複数の悲鳴に混ざる真鈴の「あちゃー」と言う声と幼馴染のどこか呆れた風な声。

 

「あはははは、にーちゃんもちんちん丸見えだな」

 

 まじかよ。

 

「とーちゃんよりちっちぇな」

 

 うるせぇ、大人と比べるな。

 気を取り直して滝の中から手を伸ばす。手で股間を隠すべきか迷ったが眼を閉じたまま幼馴染に手を引かれて歩いてすぐにでもこの場を去りたい感情が上回ったからだ。

 

「ひなちゃん、お願い」

 

「…………」

 

 暫しの無言の後に繋がれた手に違和感、幼馴染の手はこんな感じだったろうか?いつもよりも強目にしっかりと握られた手の違和感は冷えた手先の感覚が鈍っているからだろうか?

 

「んー?これ、ひなちゃん?」

 

 閉じた瞳の暗がりを手を引かれながら歩み、握られた手を痛めないように少しだけ力を入れてふにふにと揉んでみる。感じる手の大きさがやはりいつもより大きい。

 

「わわっ、くすぐったいよ。繋いですぐに解るもんなんだね」

 

「真鈴ちゃんかぁ」

 

「ちょっとしたイタズラのつもりだったけど見抜くの早すぎ。そこ、一歩先に川縁の段差があるから気を付けて」

 

 手に感じていた違和感の正体に至った事により手のひらに集中していた意識が平常に戻る、先程とは違う静寂が辺りに満ちていた。

 背中に、フワリと暖かくて柔らかい何かが寄り添った。

 

──あぁ、裸同然ならば傷痕も見えてしまうか。

 

 誰かの目には、特に幼馴染には見せないように立ち回っていたがとうとう見せてしまったらしい。よりによって冷えた体に赤く浮き出た目立つ状態で晒してしまった。背中の熱は、幼馴染か。

 

「ごめんなさい」

 

 背中越しに耳元で囁く幼馴染の泣きそうな声、これだから隠していたかったのだ。僕は幼馴染の悲しい声を聞くためにあの凶刃を受けた訳では無い。

 

「……泣かないでよ」

 

「ごめんなさい」

 

 完全に落ち込みきった幼馴染にどう声を掛けたものか。傷は勲章?誇り?いや、幼馴染は誰かの痛みに胸を張る女の子ではない。もう痛みはない?いや、そんな事は解りきっている、痛みを想像して落ち込んでる訳でもないだろう。

 

「ひなちゃん」

 

「…………」

 

「僕はひなちゃんの笑顔が大切だから頑張れたんだ、だから、泣かないでよ」

 

 考えても解らないから、ただありのままに僕の気持ちを伝えた。

 

「…………それでも、今だけは……少ししたら、きっと平気ですから」

 

「そっかぁ」

 

 少しだけなら、仕方無い。

 背中に柔らかくしがみつく幼馴染の両手の震えと、肩に感じる雫の熱さが辛いけど、僕も耐えよう。幼馴染の涙の原因は、僕なのだから。

 

 

 ─────

 

 

 あの後、本当に少しの間だけ震えていた幼馴染が落ち着いて「ありがとう」ともう一度言ってくれた後に再び手を引かれた先で別の白装束に着替えを済ませ、いつもの微笑みに戻っていた幼馴染と真鈴とついでに鷲尾に案内された場所は厳かな雰囲気の社殿だった。

 

「私達が祝詞を唱える間、青葉ちゃんはここに座って安らいだ気持ちでいてくれればいいですよ」

 

「んー?安らいだ、気持ち?」

 

「これも難しいことは何もないよ、何も考えなければいいんだから」

 

「それなら得意だよ」

 

「それはそれでどうなの?」

 

 こうして始まった厄払いの祝詞、幼馴染を含めた数人の巫女達が古めかしく難しい言葉遣いで平坦かつ朗々と音を紡いでいく。正直、何を言ってるのかさっぱり解らない。解らないので、言われた通り考える事を放棄して無心になった。

 

「青葉ちゃん、終わりましたよ」

 

 終わりはすぐだった、というか寝てた。

 

「この抜けっぷり、マジっぽい時と温度差激しすぎるでしょ」

 

「青葉ちゃんはこれで良いんです。これが青葉ちゃんですから」

 

「あーー、ハイハイ。ごちそーさん」

 

 これで禊と厄払いは終わりらしい、途中で寝ていたのだがそれでいいのだろうか。「着替えてさっきの部屋で待ってて下さい」と、幼馴染に促されたのでそうする事にしよう。

 隻腕になってほぼ一年、着替えなどの毎日の動作に時間が掛かることもなくすぐに普段着に着替えて部屋に戻ればお爺三羽烏の一人が待ち構えていた。

 

「ほっほ、どうでしたかな若武者殿よ」

 

「んー、照れた」

 

「ふむ?」

 

 思い返せば中々に破廉恥な体験だった。裸寸前の女の子達に囲まれていたのだ、子供の内にそういうのはよろしくないと思う。

 少しの間首を傾げていたが「んんっ」と咳払いして懐から見覚えのある板状の物を取り出した。

 

「スマホ?若姉さん達と同じ形だね」

 

「その通りですな、歳のせいか先程渡すのをウッカリ忘れておりましたわ」

 

 梟笑いの爺さん烏が言うには以前の刃物男の騒ぎで壊してしまった携帯電話の代わりらしい。大社特製のこのスマホはかなり頑丈に造ったらしく、ちょっとやそっとでは壊れないとのこと。それにしても微妙に重い。

 

「以前の物は懐に忍ばせて刃物を受けるのに使ったとききましてな、ほっほっほ、裏に鉄板を仕込ませましたわ。存分に活用してやってくだされ」

 

「……うん、ありがとう」

 

 もう一度アレをやれと言うのかこの爺さんは、造った人も真に受けて鉄板仕込むとか大社にはズレてる人しかいないのか。スマホはありがたく使わせて貰うけどこの微妙な重さは余計だと思う。

 

「ほっほっほぅ……それで、話は変わるが禊をするに巫女の娘子達と会った中に好みの娘子はおられたか?」

 

「……そんな事考えてる暇なんて無かったよ」

 

 どれだけ"恋ばな"が好きなんだよこの爺さんは。もう、疲れた、帰りたい。

 短くも長く感じたこの時間は、幼馴染が呼びに来るまで続いた。

 




 
 
 
 
 
 
 
青葉くん
君の笑顔が大切だから頑張れたんだ(他の女の子の手を握りながら)全体的にちっちぇ。禊して祝詞上げられてスマホ貰った(鉄板入り)見られるより見る方が恥ずかしかった純情……元々パンツを恥じらう位には純情。でも一瞬で幼馴染の全身を記憶してしまった、勉強は覚えない癖にな!破廉恥な事に罪悪感と羞恥心。鷲尾ちゃんに会った、似てねぇ。ブーメランたくさん投げた。

ひなたちゃん
幼馴染の為に精一杯祝詞を上げるよ!途中で幼馴染の頑張りの結果残ったモノを見てしょんぼり、幼馴染の泣かないでよぅとの声にも応えられない位しょんぼり。背中を借りました。幼馴染の頑張りを知っている、本気の顔も抜けた顔も等しく幼馴染である。幼馴染の待ってる部屋に行くと偉い人と恋ばなしてた、仲良さそうでニッコリ。

安芸さん
サバサバ系巫女姉さん、千景ちゃんと同い年。巫女仲間の自慢の幼馴染にご対面、抜けた雰囲気と身長差で凄く年下に感じた結果裸寸前を見られても余り取り乱さなかった。手を引いた時に透けて見えた体が戦場帰りのソレ、ある意味間違ってない。反応したら傷付けてしまうかもと動揺を飲み込みきる優しい姉御。お前ら仲良いのはかまわないけど私の手を離してからイチャつけよ。

鷲尾ちゃん
The明るいマイペース。とーちゃんと似てない。とーちゃんと風呂に入ってたから色々見ても動揺無し。とーちゃんとは余り会えて無いけど優しいお姉さん達が一杯だから寂しくない。にーちゃんまた遊びに来ないかな?

巫女の女の子達
普段のお務めとは別のお務めが増えた、夏とはいえ冷たいねん。静寂の後にキャーキャー言ってまた静寂、あぁコイツ厄払い位してやらなヤバそうやん、頑張るかってなる結局は優しい女の子達。目の前でドラマっぽい事された。

お爺三羽烏
妖怪ウチの娘子連れてけ爺。恋ばな大好き、乙女かな?ジジイです。青葉くんにスマホ上げた、活用してね!

────

鷲尾ちゃんの発言に必須タグが必要がどうか迷ったのですがR-15タグを追加する事にしました。

丁寧な誤字報告ありがとうございます、毎話助かっています。
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