乃木さんちの青葉くんはこんな感じである 作:ቻンቻンቺቻቺቻ
姉を投げ飛ばし、腕を噛みちぎられ、血濡れで転がり、幼馴染が責め立てられ、腕を焼いて、痛みに絶叫する。
あの日の夜を追体験した。
日曜日の丸亀城、毎週この日は世間一般と同じく勇者の学業と鍛練もお休みで、皆それぞれが思い思いに身体を休めて羽を伸ばしている。例外として鍛練が日常と化している姉だけが朝早くから敷地内を元気よく走り込んでいた。
本来なら僕も姉の横に並んで体力の限り走り込んでいたのだが、「さぁ、今日も鍛練……いや、今日はもう少し寝ていろ」と早朝に起こしにきた姉から言いつけに見せかけた懇願をされて二度寝をしていた。寝惚け眼で見送った姉の振り向きながら眉尻を下げた後ろ姿が妙に記憶に残っている。
「そりゃあ若姉さんもあんな顔するよね」
二度寝故の遅めの朝食、お椀に注がれた味噌汁の凪いだ水面に映る僕の眼の下にはいつもよりも濃い隈が浮き出ていた。理由は勿論というべきか寝不足で、先日の悪ふざけの結果千景に怪我をさせてしまっていた事が今になっても喉に刺さった小骨のようにつっかえていて、一人でいるとそればかりを考えて布団で横になると更に悶々として寝付きが悪くなってしまっているのだ。
更に言えば少しずつ取り戻してきた体力を萎えさせないように姉との早朝鍛練もこなしていたので睡眠時間が大幅に減り、とどめに夢見の悪さの寝苦しさがまとめて隈に表れてしまったのだろう。
「僕ってこんなだったっけ」
姉と居合道において切磋琢磨しあって互いの上達を喜んで、体を休めている時は幼馴染とも一緒にのほほんとお茶を啜りながら些細なことで笑い合う、そんななんて事無い日常を特に深く物事を考えずに生きていたはずだ。だけど病室でこれからの自分を定めた時から姉の助けになる事を考えても出ない答えにやきもきし、その上心配掛けてばかりなのを情けなく感じ、幼馴染の笑顔を考えても出ない妙案に自分の居合しかない薄っぺらさに苛立ちさえ感じる。ましてやその居合も隻腕になった今、かつての腕前は水泡に帰した。
挙げ句の果てに悪ふざけでクラスメイトの女の子に怪我をさせて、その事についてどうしたいのかどうするのかの答えを探すどころか、何を求めようとしているのかその問いさえ解らずに延々と思考を堂々巡りさせている。
啜る味噌汁がどうにも生ぬるく感じた。
「おはようございます、青葉さん。」
僕の他にも丸亀城に常駐する大社の職員数人が遅めの朝食を摂っている食堂に聞き慣れた女の子の穏やかな声が通る。杏の声だ。
「おはよう杏ちゃん。今日は遅めの朝食なんだね」
「ちょっと夜更かしちゃって」
緩慢な動作で両手に持っていたトレイを置いて長机の正面に座る杏。普段からフワリとした雰囲気で機敏ではない印象の杏だが、今日は殊更動きに精細を欠いているように見える。
「お揃いだね」
自分の目元に指を当てる。僕程でもないが杏の目元にも薄く隈が浮かんでいた。杏の穏やかに整った顔立ちに影を落とすその模様が杏の儚げな雰囲気を悪い意味で後押ししていた。
「……目立っちゃうかな?」
「わりと」
白い紙に墨を一滴落とせばその黒点に注目してしまうのと同様に、他のクラスメイト達と同様に整った顔立ちの杏に浮き出たそれはどうにも目を引いてしまう。
「タマっちに見られたらまたお小言いわれちゃうかな。そんなの読んでるから興奮して眠れなくるんだ!って」
「興奮って、エッチな本でも読んでるの?」
「エッチじゃありません、大人の恋愛描写です」
大人の恋愛描写とはいかなるものか、少なくとも球子には刺激が強いらしい。
「エッチかどうかはまぁ良いとして、眠れなくなるほど面白いの?」
「それは、もう!昨日は続きが気になって読み進めてたらいつの間にか空が白んでた位で」
「徹夜じゃないか、体壊すよ」
「勇者ならこの程度平気です」
ホントに?勇者ってすごい。
「でも、こんなに時間を忘れて読み進めた作品は久しぶりで……どんな風に面白いかと言うと──」
「うん?……うん」
聞いてもないのにフンスフンスと鼻息を鳴らして本の内容を語り始めた杏の声をBGMに、だし巻き玉子の最後の一切れを口に放り込む。鰹節の風味と混ぜられた胡麻のアクセントが良い具合にマッチしている。
「──で、最初は互いに無関心だったはずの二人が数々のトラブルを乗り越えて意識していくようになって──」
「へぇ」
一番最初に教室で会った時の杏は深窓の令嬢のような見た目や怯えた小動物のような仕草で触れれば折れてしまう弱々しい印象を抱いていたが、このように特定分野での暴走を見る限り杏もまた勇者になるだけのバイタリティに溢れていたのだと解る。
ふと逸らした視線に杏のペカーと効果音の着きそうな笑顔と対照的な曇天が窓越しに見えた。少しだけ視線が捕らわれるもののヒートアップする杏の話に引き剥がされる。
「──ここからが更に良い所で!互いを認め合ってから改めて自己紹介し合うシーンの言葉での殴り合いがとてもコミカルな盛り上がり方に──」
「うんうん」
やや適当な相槌を意に介さず生き生きと語る様は幼馴染が姉を誉め殺ししている姿に通ずるものがある。そんな杏の姿を食事を終えて退出する職員が苦笑して見ていた。
「──クライマックスにはお互いに涙を流しながら首にナイフを突き付け合ってのキスシーンが──」
「ほう」
大人の恋愛描写ってのはバイオレンスなのか。
「──と、こんな感じに面白いんです」
「そーなんだ、すごいね」
語り始めてから大体十五分、僕が二杯目の食後のお茶を堪能している頃に満足気に締め括る杏。長くはない時間の中で要点をかいつまんで解りやすくかつ面白くダイジェスト風に纏めきった杏にその作品への深いリスペクトと良いものを共有したいという熱意を感じた。感じたが、ストーリーの全編を解りやすく語られてしまった僕はその本を薦められても読むことは無いだろう。
「ふぅ、喋り過ぎちゃった」
「好きなモノに饒舌になるのはあるあるだね」
完全に冷めきっているであろう味噌汁を音もなく啜る杏はいつの間にか朝食を完食していた。あれだけ喋りながらこのペースで一食平らげるのは一種の才能かもしれない。
「青葉くんが聞き上手なのもあるかも、本の事でもこんなに喋ったのは久しぶりだから」
「タマっち相手に喋ったりしないの?」
「タマっちは完全にアウトドア派だから余り……少し濃い描写の話をすると拒絶反応があるみたいで」
あんな適当な相槌で聞き上手扱いされるのに疑問を感じたが、普段杏が語る相手に適正が無かっただけの話らしい。
「私ばっかり喋っちゃいましたし今度は青葉くんのお話を聞きますよ。今思えばこうして二人で話すのも新鮮だから何かお話を聞いてみたいです」
「確かにいつもはタマっちとか他の誰かがいるのがほとんどだけど……そんな話すネタなんて──」
無いよ。と、言い掛けてふと思う。
目の前にいる女の子はあくまでも彼女自身の体験ではないが文字で記された物語で色んな心の機微を知りそれについて多くを考える女の子で、彼女自身の聡明さは読書量に比例した知識量を余すことなく活用できる柔軟な思考を持っている事などの普段の言動から窺える。
そんな杏ならもしかしたら僕のここ最近の悶々とした思考の抜け道を探せるのかもしれない。
「──いや、ちょっと聞いて欲しい事があるんだ」
「はい、なんでも聞きますよ」
そう笑顔で言葉を待つ杏に、自分でも整理しきれない千景に関する考え事を適切だと思う言葉を探しながら吐露してみる。
「実はここ最近千景ちゃんの事ばかりを考えててさ」
「はい……はい?……はい!詳しくお願いします。それは何時から」
「タマっちとふざけて遊んで千景ちゃんに怪我をさせちゃった日からだね。それから一人でいる時とかにはその時の事ばかり考えちゃうんだ」
「追いかけて頭を撫でた日ですね、しっかり覚えてます」
なんだろう、齟齬は無いはずなのに別の話をしている感じがする。
全身から光を放ちそうなテンションになってる杏の貪欲さを感じる視線に続きを促される。
「だけどさ、何をどうしたいとかそういう明確な何かを考えてる訳じゃなくて……あの時の事が頭から離れないって感じで」
「私もあの場面は眼に焼き付いてます、青葉くんがすごい真面目な顔で手を伸ばしてて……」
「寝る前とかも延々とあの時の事を考えちゃうからなかなか寝付けなくてさ」
「夜も眠れないほどの思い…………ぃぃ」
理知的な緑の瞳に蓋をして天井を仰ぎ思考に耽る杏。暫しの無言の後にカッと眼を見開いた。
「それで、青葉くんはどうしたいんですか?」
「……わからないんだ。そもそも、なんでこんなにもあの時の事が頭から離れないかも解らないし……どうすればこのモヤモヤは晴れるのかな?」
繰り返し何度も思い出したあの日の出来事が、こうして話してる今も頭の中で再生される。それが何故なのか解らないのだ。
思いのままに並べた言葉は不確定なものばかりでこんな話では聞く側の杏もどう反応するか困ってしまうだろうなと思いつつ手元の湯呑みを呷る。最後の一口分だけ
残っていたお茶の渋みが喉を通り過ぎた。
「なるほど、解りました」
「えっ?」
「全部は解らないけど青葉くんがすべき事が解りました」
解ってしまったらしい。これだけの情報で本人よりも理解が深まるとは目の前にいる女の子は僕が思っているよりも深い知性をその頭に宿しているのかもしれない。
「是非とも教えて欲しいな」
「勿論です。青葉くんはまずそのモヤモヤがどんな感情からくるものかをしっかり自覚するべきです」
「どんな、感情」
杏は何かしらの根拠が有ってそう力強く断言しているのだろう。いつに無く強気な姿勢が根拠を聞かずともそのまま説得力となり出口の見えない思考を加速させる。
そもそも何故僕はモヤモヤしているのか、女の子に怪我をさせて後悔している?それはあるがしっくりこない。悲しい?悲しいのは巻き添えで怪我した千景のほうだ、違う。怒り?自分の感情を見失ってる自分の不様に怒りが沸くけどそうじゃない、違う。まさか喜び?そんな訳無いだろう馬鹿か僕は……いや、馬鹿だからこの有り様なんだろう。
「答えはでませんか?なら違うアプローチで行きましょう」
しばらく無言を続けた僕に期待の眼差しで杏が助け船をくれる。第二の案まであるのは流石と言うべきなんだろう。
「青葉くんにとって千景さんはどんな人ですか?」
杏の提案する思考の切り口は、僕が今まで考えた事の無い新しいモノだった。僕にとっての千景とはなんなのか。
「クラスメイト?」
「それだけではなく色んな方向からみてみましょう!」
鼻息を荒らげる杏を前に思考のままに口を回す。
「女の子?」
「そうですね、どんな?」
「忘れがちだけどひとつ年上の上級生」
「それだけ距離感が近いんです、他には?」
「落ち着いてるお姉さん的な?」
「もっと他の角度からも!」
「笑う所余り見ないね」
「それは、笑顔を見たいという事ですか?」
「かもしれない」
「YES!そこから少し拡げましょう!それは何故ですか!」
なにやらテンションの上り坂を加速し始めた杏に不可視の圧力を感じ、椅子ごと少し身を引いてより思考を回す。最近の堂々巡りの出口が近づく気配を感じた。
笑顔を見たい理由。笑顔──僕にはもう一人笑顔を求める相手がいる。幼馴染だ。
幼馴染のひなたの場合は僕の軽挙の果てに不要な自責を与えて泣かせてしまったのでそれを打ち消して余りある位に笑顔になって欲しかったからだ。
もしかして、千景も?
「あの時の千景ちゃんは泣いて無かった」
「本人はケロリとしてましたね」
なにか、惜しい所まで思考が動いている気がする。
あの時の千景は全然平気な顔をしていて、怪我に気づかれなければ千景はきっと何食わぬ顔で怪我を放置していただろうし、球を当てた僕や一緒に悪ふざけをしていた球子に対しても表面上では何の含む所があるようには見えなかった。
千景の様子がああだった、こうだった、だからこのモヤモヤを感じている。ではなく、根本的に僕自身が感じた僕の心の問題?
すぐそばに感じる答えの気配に触れる為に、あと少しだけでも僕の鈍い頭脳を突き動かす刺激が欲しい。
「僕に何かが足りなかった?」
「それは行動ですか?例えば抱き締めるとか!抱えて運んであげるとか!」
違う、千景は触れられる事に拒否感を持っている様子だったし、何かをして欲しい様子も見せなかった。千景の為に何かをするではなく僕自身の行動と心の在り方──心からの行動?
「僕、わかっちゃったよ」
「!」
堂々巡りを脱した思考に心が浮き上がる清々しさを感じながら、たどり着いた答えに何故最初からこれができなかったのかと自分の未熟を恥じる気持ちが沸いてくる。
「善は急げって言うし、今すぐこの心を伝えてくるよ」
「今すぐ!?青葉くんは情熱的なんだね!……うん、溢れる情熱は抑えられるものじゃないし、良いと思うよ!応援してます!」
答えにたどり着けた僕より或いはテンションの高い杏が机越しに僕の右手を柔らかい両手で握り、僕も答えに至るまでの手がかりを与え続けてくれた杏の手を感謝の気持ちを込めて握り返す。
モヤモヤがしぼんで一欠片分だけが残った。きっとこの思いを伝えたら綺麗さっぱり無くなるのだろうか。
「ありがとう、杏ちゃん。杏ちゃんは恩人だ、この報いは絶対に返すよ」
「その心を成就させるのが一番のお礼です。だから、頑張って!」
「うん!行ってくる!」
杏の両手の包みからそっと抜け出して忘れないように食器の載っていたトレイをカウンターに置いて走り出す。カウンター越しに食器を洗っていた年嵩の女性職員が泡だらけの親指を立てていた。
背中越しに「Yes!Yes!Foooo!」と遂にテンションのおかしくなった杏の声を聞いた気がした。
逸る気持ちのままに食堂を飛び出して走る。さっきは僕の心を縛りかけた曇天に欠片も心が引きずり込まれない。僕はテンション次第で恐怖感を無視できる程度に便利な精神性らしい。
気付いてみれば本当に簡単な事だった。これは人として当たり前の事で、今の今まで頭から抜け落ちていた自分は人として男子としてどうしようもなく未熟なのを自覚する。
「あっ、青葉ー。あんず見なかったかー?」
「食堂でおかしくなってるよー!」
すれ違う球子に言葉だけ残して加速する。目指す先は寄宿舎の一室、千景の部屋。
居合は精神の在り方の鍛練、これ程までに未熟な僕は今まで打ち込んでいた鍛練が全然身に付いていなかったのかもしれない。これからはもっと深くもっと強く鍛練に打ち込むべきなのだろう。
寄宿舎が見えてきた頃、同じく寄宿舎に向かう朝の鍛練を終えたらしきジャージ姿の姉がタオル片手に歩いてる横を追い抜く。
「青葉、調子良くなったのか?何をそんなに急いでいる?」
掛けられた声に少し振り向けば様子を窺う顔の姉が三歩後ろを追走していた。
「調子は精神的に絶好調だよ」
「そうか」
「急いでいるのは、この思いを伝えたいから!」
「そうか、わからん。詳しく頼む」
「この思いを、千景ちゃんに伝えたいんだ!」
「そうか……ん?待て、そういうことなのか?」
背後に続いていた軽い足音が止まる。
改めて口にしたからか更に溢れてくる強い思いが僕の足を早める。衰えていたはずの体力が今この瞬間だけ全て戻ってきているのではないかと思えるほど体が軽い。
「青葉!そうなのか?本当にそうなのか!?」
再び追いかけてきた足音は遠い。
飛び込んだ寄宿舎の中を駆けて千景の部屋に繋がる扉の前で立ち止まり呼び鈴を鳴らす。ここまで走ってきて不在なら笑い話だが、幸い呼び鈴の音に反応する気配を感じたので徒労にはならないだろう。
「青葉だよ。千景ちゃん、話があるんだ」
扉一枚挟んだ先にまできた気配に簡潔に要件を伝える。
少し離れた場所で姉が立ち止まり、オロオロとこちらの様子を伺っていた。
「…………」
数秒の沈黙の先に控え目に開かれた扉の先で怪訝な顔をした千景と目が合った。
「何……かしら?」
「今すぐに、伝えたい事があるんだ」
ゆっくりと全開になった扉の先、玄関のに直立する千景と目を合わせたまま一度深呼吸する。ここまで走ってきたからか跳ね上がる心臓を落ち着かせて荒れた呼吸を整える。
「……えぇと?」
「千景ちゃん……」
僕が言葉に若干の間を作ってしまった事でらしくもなく緊張しているのが千景に伝わったのか、怪訝な表情と困惑の表情が千景の表面で入り交じる。
意を決して、言葉を続けた。
「この前は怪我させちゃって御免なさい!」
「…………え?……あ、うん。」
僕の見つけた答え、それは僕がまだあの時の事を千景に謝っていなかったという事、謝罪の気持ちを伝えて無かった事だった。
悪いと思ったら謝る。例え許されなくてもその行為は大切な事で、人としてやらなければいけない当然の事でもある。僕にはそれが今までできていなかった。
最後に残ってた一欠片のモヤモヤが軽くなるのを感じる。
「ホントは怪我に気付いた時にこうするべきだったんだろうけど、僕もあたふたして今になっちゃったよ。ごめんね」
「……大した事ではないと……言ったと思うのだけど」
「それでも、僕が悪い事をしたと思ったから謝りたかったんだ」
僕が思って、僕が行動した。何もおかしくはない。
例え千景が大事に捉えなくても僕にとっては大事だったのだ。
「……乃木君、あなた実は……頑固者なのかしら?」
「どうだろう?」
千景がハァと息を吐く。千景に溜め息を吐かれたのは初めてかもしれない。
「まぁいいわ、その謝罪を受け取って……許すわ。なあなあにしたら……しつこく気にしそうだもの」
「ありがとう」
許されるとか許されないとかの結果は余り考えてなかったが、許すの一言が僕のどこかに残った最後の軽い欠片を消し飛ばした。自然と頬が上がるのを感じる。
「……要件は……それだけ?」
「うん、謝りたいと気づいたら居ても立ってもいられなくてね。用事はこれだけだよ」
「……何て言うか、乃木君の事が少しだけ……解った気がするわ」
「僕ほど単純な奴はそうはいないさ」
そうなのかしら?と曖昧に笑う千景。曖昧でも笑顔は笑顔、珍しいものを見た気がする。
「それじゃあ明日教室で。休日に騒がせてごめんね」
「気にしなくて……そうね、許すわ。また……明日」
閉まる扉の先に千景を見送り、やりきった清々しい気持ちで自室に向かって踵を返す。
振り向いた先で姉が両手足を床に着けて項垂れていた。
「どうしたの若姉さん。鍛練しすぎて疲れた?部屋まで背負う?」
「浮わついた想像をして少し恥ずかしくなっただけだ、問題無い」
杏の意外なバイタリティを知り、千景と少しだけ話せて、姉はパンツに恥じらわない癖に自分の想像に羞恥して膝を着くと知った、そんな秋の休日。
青葉くん
悪いと思ったら謝りましょう、気づくのが遅かった、それだけの話。浮ついた感情とかわからないけどクラスメイトは皆可愛いよねとは思ってる、そんなコトより居合をしよう。空が怖い?テンション上がったらそんなの忘れた、青葉くんまっしぐら。
杏ちゃん
ほぼ徹夜のテンション、元々病弱っ娘なのに大丈夫?大丈夫じゃない、テンションが治まりかけて息切れしてるところをタマっちに保護されました。クラスメイトの黒一点と噛み合うようで全く噛み合ってない。翌日きちんと謝れたと報告された、うん……よかったね!
千景ちゃん
穏やかな日曜日に突然の来客、やって来たのは自分ルールボーイ。自分ルールに従い謝りに来たよ!扉越しに気配を察知されてる、怖い。ふと"また明日"って慣れない語感を口にしてた、もしかしたら初めて言ったかも知れないね。
若葉さん
そんな素振り今まで欠片も見せなかった双子の弟が青春し始めたと思ったら勘違いだった。ついつい離れた場所で見守ってしまう心配性なお姉さん。
年嵩の女性職員
おさんどんさん。次の仕込みしたいからはよ皿下げろと思ってたら甘酸っぱそうなのが始まった、Foooo!聞き耳たてるしかねぇなぁ!。
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今更ですが後書きの駄文は文章を考えて頭が茹った作者があれこれ表現できなかった未熟を晒してるだけの本文にはなんら関係の無いものです。