乃木さんちの青葉くんはこんな感じである   作:ቻンቻンቺቻቺቻ

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82:始まる感じの決戦、もしくは砕く話。

 

 丸亀城天守閣の上、樹海化した世界を広く見渡せるそこに勇者装束を纏った四人の少女が集合した。

 

「友奈と千景も来たか。よし、全員……いや、四人揃ったな」

 

 群青の桔梗を模した装束の若葉が共に命を預け合う仲間を見回して頷く。守りにおいて最も頼りになる姫百合の仲間がいないのがやや不安を感じさせるが、自らがそれを補うと豪語したのだと内心で自らに喝をいれる。

 

「うわぁ。総攻撃って言うだけあって、すっごいたくさん攻めてきたね」

 

 淡い桃色の桜を模した装束の友奈が天守閣より見渡せる景色に蠢く敵の大群と手元のスマホに表示させたレーダー機能のあるマップを何度も交互に見る。「わー」と、状況の悪さを理解しているのか怪しい能天気な声を漏らしてはいるが、しかしながら実際は友奈なりに自身を含めた全員の緊張をほぐすために弛い態度をしていた。

 

「大型の進化体が五体、高速で接近してきているのが二体……あれらも進化体ですね、似たのを以前倒してます。それと、数え切れない通常個体……かなり厳しいけど想定の範囲内の戦力ではあります」

 

 白い紫羅欄花を模した装束の杏が冷静に敵勢力を分析し、仲間で情報を共有するために言葉を紡ぐ。今日この日を勝利するためにひたすら思考を繰り返し、どのような戦術を指揮するべきかと備え続けていた杏に、かつてないほどの大群で迫る化物を見た所で取り乱す余地は無かった。

 

「どれだけ敵がいたとしても……勝つわ。生きて帰る……絶対に……!」

 

 深紅の彼岸花を模した深紅の千景が昂る戦意のままに意気込む。胸中にて繰り返し想起される『生きて帰る』『ずっと幸せ』の二つの約束、千景の心はこの約束を果たしたいと願い、幸福を欲する漠然とした思いではなく、幸福になりたいという確固たる意思が心を奮起させる。

 

『千景。幸せの約束、叶えたいんだ。無事に帰ってきてね、約束だよ』

 

 そして、奮起した心が連鎖して今しがた交わした約束の声を思い出す。

 

「………ぅうぅ……」

 

 常ならばふやけてる等と揶揄される事の多いやわらかな表情ばかりを見せる顔、それの瞳に憂いを映しながらも強く真っ直ぐに視線を交わして微笑む『友達』が記憶から千景の脳裏を焦がす。

 

「あっ、ぐんちゃんがまたしぼんじゃった」

 

「この感じは青葉くんの"強烈なやらかし"が後を引いてる時のタマっち先輩と同じですね」

 

「なんだ。青葉め、またやらかしてたのか」

 

 いざ決戦、そんな空気が瞬時に弛む。化物の大群がこの一瞬にも距離を詰めて来ているのにも関わらず、四人の勇者達は日常と変わらない四人の少女のまま言葉を交わす。

 

「う~ん、あれはやらかしなのかなぁ。言葉通りの意味でいいのかロマンチックな深読みができる意味を持たせてた言葉だったのかでスゴく変わると思う」

 

 約束を守りたいのか幸せにしたいのか、どちらに比重をおいた言葉なのかは告げられた千景もその場にいた友奈にも真意は読めなかった。告げた本人の普段の行いのせいで言葉の真意が全然読み取れない珍現象が起こされていたのだ。

 

「……ほぅ」

 

「……フンス!」

 

 まさか、頭の中に剣と食事と遊ぶ事しか無さそうなあの人物の発言に色恋の意味がある訳が無い。と、誰もが否定しきれなかった。その人物の姉は興味深そうにしぼんでいる千景に視線を向け、文学少女がクライマックスを迎えている恋愛小説の続きを求めるように好奇心を滾らせる。

 実のところ、丸亀城の少女達は誰もがクラスメイト唯一の男子が千景を特別として接している事を察していた。それがどんな思いから特別扱いしているのかも少女達は共通の予測をしている。

 

(時に勉強を教わり、時に手作りのお菓子でお茶会……いつも目で追っていて、身が空いてる時は守るかのように側で侍り……その物理的な距離感は実の姉と同じくらい近くていつでも手を繋げるほど……これはキテる……)

「フンス……!!」

 

(『ちかげ』と、ひなたにだってしない呼び捨てだからな。どのような思いでそうしてるにせよ特別な存在なのだろう)

 

 以前からなんとなく程度ではあるがそんな気配はあったが、最近では何か大きな心境の変化があったのだろうかと感じる程度には行動の節々に解りやすい特別扱いが表れている男子。だからこそ、少女達は単純な思考しかしなさそうな男子が深読みできる意味があるかもしれない発言をした可能性を否定せずにいるのだ。

 

(どんな言葉を告げたのやら。まぁ、言われた本人が満更でもなさそうだからセクハラではないのだろうが……)

 

(『幸せにしたい』だなんて、一歩間違えたらプロポーズだよね)

 

「フンスフンス」

 

 赤い頬に手を当てながら足下に視線を向け続ける千景を見て三者三様の感想を抱く三人。示し合わずとも丸亀城の少女達はまずは見守るという方向性で纏まっており、渦中の二人の前では意識してこの話題を口にしないようにしているのだ。

 

「千景、気がそぞろのようだがそろそろ深呼吸でもして気持ちを切り替えてくれ」

 

 迫る大群、特に突出して真正面から地を疾走しながら高速で接近する人の形に似たバーテックスを睨みながら若葉が告げる。

 言われた通り素直に深呼吸を始める千景を見て杏も意識を切り替え、目視にて分析した敵勢力への対応策の説明を始める。

 

「敵の進化体は三方向に大きく別れて進行、正面からの二と一、左右にそれぞれ二。神樹様の結界の向こうから通常個体が絶え間なく広範囲に広がったまま進行。恐らくは進化体の対応するために私達を分散させる目論見だと思われます」

 

 どれかに戦力を集中して戦えば他の残された進化体が神樹へと進行してしまう。それを防ぐためには戦力を分散して複数の進化体に対して単独での戦闘をしなければならない。しかも、通常個体も数え切れない程にいるからそれの対応もしなければならないのだ。

 

「ほぅ、では私達はどうすればいい」

 

「敵の目論見に乗り、力を以て各個撃破します」

 

 敵も連携して戦う事は前回までの戦いで十分に思い知らされている。初見の進化体もいる中で相手が勝手に分散してくれた事は勇者達にとっても都合が良いことだと杏は説明した。

 

「今想定できる最悪の戦況は神樹様の付近で進化体が合流し、対応の難しい新たな連携で攻撃される事です。そうなれば対応策を見付けるまでに神樹様が攻撃されてしまいます」

 

「進化体が合流する前に倒せば良いんだね」

 

 杏が全員の顔を見回す。未だ頬に朱色が残る千景も含めて三人にしっかりと頷き返されたのを見て情報の共有に不備は無い事を確認した。

 

「若葉さん、友奈さん、千景さんはそれぞれ三方向に散って進化体のみに集中して下さい。私は真ん中から通常個体の殲滅と皆さんの援護をします」

 

「わかった、ならば私は正面の三体を担当しよう」

 

「何と戦うにしても私は攻撃力に乏しいから……頑丈だと解りきってるあの蠍型を引き付けてどちらかの合流を待つわ」

 

「じゃあ私は左に行くね。」

 

 正面からは疾走する二体と水球を携えた個体、左に天秤型と四本の角を携えた個体、右に蠍型の個体と大蛇のような個体。そして、背景が見えないほどに蠢く通常個体の大群。勇者達がそれぞれ請け負う相手を視界に収める。

 

「若葉さん、号令を」

 

 戦闘の指針は決まった。ならば後は死力を尽くして戦いきるだけ。

 指揮官がリーダーに開戦の号令を求める。

 

「皆も聞いている通り、近日中に大社の巫女と神官が儀式によって神樹の結界を強化するらしい。つまり、この戦いに勝利すればこれ以上化物どもが好き勝手に人類へ危害を与える事を防げる……しばしの休戦に反撃のための力を蓄える事ができる!」

 

 若葉が大きく息を吸い、空気が張り詰める。

 

「出し惜しみするな! 絶対に勝て! 生き残れ! 出陣だ!!」

 

『おぉーっ!!』

 

 多勢に無勢、更に敵は単独でも強力。それでも勇者達の戦意は折れず、士気高い鬨の声が樹海に響いた。

 

「大天狗!」

「酒呑童子!」

「玉藻の前!」

「雪女郎!」

 

 翼を背負う若葉、角を頭に掲げる友奈、尾飾りを腰に提げる千景、白い衣を纏う杏。出し惜しみ無し、開戦と同時に全力全開の切札で各自の標的へと攻撃を始める。

 攻撃範囲が大雑把だと評された雪女郎の力を用いた杏の攻撃が大量の通常個体を凪ぎ払った直後、勇者最速の機動力を持つ若葉が人の形を模した二体の個体に接敵した。

 

「うおおおぉっ!!」

 

 宙を一直線に貫いた最大加速からの一閃、並走していた二体が互いを蹴り合って無理矢理に横っ跳びして一撃必殺の剣を辛うじて回避する。

 

「化物風情が人の形を模して連携するか、毎度の事癪に障る奴らだ」

 

 忌々しさを隠さずに吐き捨てる若葉、左右に跳んだため若葉を挟む立ち位置になった人型の二体、一呼吸の空白の後に合図なんて行儀の良い物を経ずに激しい技の応酬による殺し合いが再開される。

 跳んで開いた距離を人型の二体が瞬時に詰めて若葉を挟み撃つ。対する若葉は嵐のような蹴りの連打を躱し、いなし、打ち払い、全てに対応する。

 

「鏡映しのような風貌、鏡映しの連携、実に安直だな! 精密に同じ技を繰り出すだけで二対一の優位性をまるで生かせてない!」

 

 片側だけを見てても反対側の攻撃を読み取れる稚拙な連携、ただ手数が二倍になっただけだと若葉は化物が人を真似て連携の真髄を理解してない姿を嘲る。

 若葉は技の応酬の片手間に脳裏でもしも勇者の力を発揮できる半身とともに戦場に立ってならばどんな連携をしただろうかと夢想する。きっと、人を真似ただけのこの化物達など瞬時に斬り伏せる事のできる圧倒的な強さを発揮できると確信した。

 

「稚拙、稚拙! 稚拙っ!! その蹴り技は友奈に劣り、その体術は青葉に劣り、その連携も我等に劣る! 貴様等より上等な人の技を識る私が負ける道理など無い!!」

 

 瞬間、人型二体の上半身に髪より細い直線が走り、回避の挙動を見せた人形二体の左腕と思われる部位が地に落ちた。

 花火のような"瞬間の剣技"にひっそりと混ぜられた風に梳かされる柳の如き"動くままの剣技"の斬撃。それが化物であるバーテックスの反応の隙間を通り抜け、躱そうとした時には既に斬られていたという不覚をとらせる。

 

「人の形を模し、対人の剣が効果的に通じるようになったのが貴様等の敗因だ」

 

 何事にも報いを、乃木の教え。

 

「青葉! お前の技で報いを与えたぞ!」

 

 半身への愛、敵への憎悪、勝利への義務感、様々な感情が複雑に混ざり合う叫びが樹海を震わせる。

 切断された人型の断面が若葉の身に降ろされた大天狗の力により激しく燃焼し、みるみるうちに炎が人型の全身を包んでいく。しかし、化物の本領と言うべきか苦しむ様子を一切見せずに二体の人型は動きを止めずに若葉への攻撃を続けようと動き続ける。

 

「貴様等には死に花咲かせる事も赦さん!」

 

 燃えさかる人型からの攻撃を受ける前に二度目の半身から盗んだ剣技が煌めく。人型の一体の残る四肢を分割し、胴さえも横一文字に斬り分けた。

 

 

「乃木さん、だいぶ張り切ってるわね」

 

 猪よりも真っ直ぐな敵への突撃をしてみせたリーダーを見た千景が呆れと賞賛が半々の呟きを溢す。そして、蠍型が空気を貫く音を鳴らしながら突いてきた尾針を躱しながらスレ違いざまに大鎌で尾の中程を撫でた。

 僅かに傷を付けれたものの、それだけでダメージは見受けられない。

 

「嫌になるほど頑丈ね……でも、今は別に倒すのが目的では無いわ。しばらく相手をして貰うわよ」

 

 言いながら、大蛇のような個体の体当たりを危なげなく躱す。

 

「蛇みたいな形のは前にも倒したけど、こんなに大きいのは初見だわ……」

 

 躱しながら、様子見のつもりで大鎌を振るって長い胴体を撫でる。刃が容易く大蛇型を断ち切り、前と後ろに切り分けた。

 前後に別たれた大蛇がそれぞれ再生して二体の大蛇型へと増える。そんな光景を見ていた千景が蠍型の薙ぎ払うように振るわれた尾を避けながら溜め息を吐いた。

 

「あの蛇型が更に発展した進化体といった所かしら……頑丈過ぎる相手と切断したら増える相手、どちらも私には相性が悪いようね」

 

 玉藻の前の力による狐火ならば再生させずに大蛇型を討伐できるかもしれないが、消費の激しい大技で無理矢理に倒してもその後の蠍型を引き付け続ける作戦か非常に苦しい物になると千景は予測。

 

「私からの攻撃は最低限にしてこの場を制さなければならない……まぁ、できなくもないかしら」

 

 形勢は不利、しかし、千景の心は前を向き続ける。負の心に引っ張られて悪夢に墜ちる気配は無し。

 

「さぁ、しばらくは踊ってあげるからかかってきなさい」

 

 千景の心を支えるのは『生きて帰る』と『ずっと幸せ』の二つの約束。そして、その先にあるはずの笑顔。

 千景は今この瞬間、自分の価値を仲間達と生還して幸せな笑顔になる事と定めたのだ。

 

 そうすれば、きっと『とても大切な友達』が側で見るだけで幸せになれる笑顔になってくれると思ったから。

 生きて、笑う。それで『とても大切な友達』が笑ってくれるなら、それは千景にとってとても素晴らしい価値がある。

 

 幻惑の小さな狐火で戦場を華やかに飾りながら千景は戦場でしなやかに舞う。

 

 

「勇者ぁぁぁぁ、パ──っ!?」

 

 植物組織が犇めく樹海の大地を駆け抜けて接敵した友奈が地を踏ん張り、二体並ぶ進化体をまとめて殴り飛ばすために飛び掛かろうとした時、四本の角を携えた進化体が角のような器官を伸ばして友奈のすぐ近くの地面に突き刺して激しい地震を発生させた。

 

「わばばばばばばばっ!? ゆ、揺れれれれ!?」

 

 地面が激しく揺れれば踏ん張れないのは当然の事、体勢を崩した友奈が地に手を着けて宙に浮かぶ二体の進化体を見上げる。

 以前にも討伐した天秤型、それが勇者達を苦しめた攻防一体の暴風を発生させようと回転を始めて刻一刻と勢いを強めていく。

 

「ええーとと、えええーととと……」

 

 振動のせいで震える声を漏らしながら焦る友奈。このまま天秤型が回転を強めれば肉弾戦を主とする友奈は暴風に煽られて接近が困難になってしまうのだ。

 近付いて殴る。自分にできる事であると同時に自分がやるべき事であるのはこれのみだと理解している友奈は焦りに空転しがちな思考で状況を打破する方法を探す。

 

(アンちゃんの援護……今は雪女郎の吹雪を使ってて風に弱いからダメっぽい。若葉ちゃんとぐんちゃんも戦い始めたばかりだからきっとまだこっちに来れない……そもそもぐんちゃんは私か若葉ちゃんの応援待ちだから尚更ダメ……どうしよう……!)

 

 状況を変える何かがないか、苦し紛れに周囲を見回した友奈が天啓じみた思い付きに至る。

 

(地面を揺らしてるこの角、あの進化体に繋がってる!)

 

 根拠は無いがやれる、できる! そう直感した友奈が揺れ動く地面を這って進み、地面に突き刺さる角のような器官に触れる場所まで移動する。

 

「せーのっ!!」

 

 気合いを籠めた掛け声を自分に、激しく振動する角のような器官を抱えるように掴んで瞬時に地面から引き抜く。

 角のような器官から両手へ、両手から友奈へと伝わる超振動。友奈の視界が掻き回されるように歪み、全身に苦痛を与え、食い縛る歯茎から出血し、鼻の両穴から血が流れ出る。

 

「勇者スイングぅぅぅぅぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 気合い。ただただ気合い。

 全てのダメージを気合いで呑み込んだ友奈が角のような器官を引っ張り、大本の進化体の体勢を強引に崩させて振り回す。

 友奈を台風の目に回転する四本角の個体、竜巻の如く自ら回転する天秤型、数回転でトップスピードに至った友奈の台風が天秤の竜巻と激しく衝突した。

 轟音、衝撃。暴風をものともしない超重量な進化体同士での衝突が衝撃波を発生させ、友奈の肌を震わせる。

 

「どーんな、もんだーーいっ!」

 

 吼える友奈。

 天秤型と四本角の個体がもんどり打ち、樹海の大地を抉りながら転がる。超硬度と超硬度の激しい衝突が二体の進化体に尋常ならざるダメージを与え、全身にひび割れを発生させる。

 直後、全身が弛緩して膝を着いた友奈が血液の混じる吐瀉物を吐き出した。

 

「……まだ、闘える。もう少しで、倒せる……!」

 

 口元から垂れる吐瀉物の残滓を拭う事すらせず、起き上がる二体の進化体を睨む友奈。今までの戦闘経験からそのひび割れた姿を全力で殴ればどちらも粉砕できるのは確実だと、大幅に消費した体力に喝を入れる。

 肉体の限界など知らないと奮い立ち続ける友奈の戦意、それを支えるのは脳裏に浮かび続けるクラスメイト達の笑顔。戦いを越えて何の心配をする事もない幸せな日常を掴みたい、自分が言い出しっぺの約束、『ずっと幸せ』を叶えてみせると魂が咆哮する。

 

「負けてなんて、いられないんだーーーーっ!!」

 

 立ち上がり、地を強く踏んで跳び上がる。拳を握り、大きく振りかぶって構える。

 脳裏に浮かび続ける笑顔達が閃光を放つ。光の奥、一際眩しく見えたのは出逢った頃は昏い瞳しか見せてくれなかった『友達』がふとした瞬間にだけするようになった幸福の瞳。こっそりと誰にも見られないように特定の相手にだけ向けるその瞳を友奈は知っている。

 偶然知ったその瞳その幸福を、友奈は応援したいと、更なる幸福を強く願っている。

 

 『友達たち』はきっともっと幸せになれる。

 だって今までも二人は幸せそうな瞳をしてた。

 穏やかな世界ならもっと幸せになれるはず。

 だから、邪魔をしないで。

 

「勇者パンチィィィィッ!!」

 

 飛び掛かった先、不気味な濃紫の煙を噴き出した四本角の個体を渾身の拳撃で右拳諸共粉々に粉砕する。

 

「オオオォォォォ──」

 

 ぶち撒けられながら消失していく四本角の個体の破片を突き抜けていく友奈。強敵の破壊、戦況を大きく変える一撃の成功に高揚する戦意のまま雄叫びを放つ。 

 雄叫び冷めやらぬまま破片が飛沫に消失していく宙で身を翻した友奈が次の破壊対象である天秤型を睨んだ。

 

「──ォォォァぁああああ゛!!」

 

 そして、雄叫びからそのまま境目なく悲痛な叫びを赤い滴の溢れる口から噴き出す。

 

 濃紫の煙を巻き込みながらまたも回転する天秤型、その奥に見えた仲間達。

 水球に囚われて微動だにしない若葉と蠍型の尾針に貫かれて宙吊りにされる千景の姿が友奈を激しく動揺させた。

 

 




 
 
 
 
 
 
 
若葉さん
勇者最高戦力は伊達じゃない、速攻で手柄首一つ。人の形をしている相手と相性が良すぎた。半身が花見で酔った時、幼馴染にさえも滅多に使わない『好き』って言葉を使った時にはもう『あっ』て思ってた。水の中でぷかぷか。

フンスフンス鼻息ちゃん
想定していた最悪は瀬戸大橋で戦った超大型+進化体複数+山程の星屑だったりした。でもそんな事なくてちょっと安心……できるわけ無いだろ!手加減してよ!大人気ない!

友奈ちゃん
樹海化した直後に真っ赤になってうずくまってたぐんちゃんを宥めてから集合場所に向かったからちょっと合流が遅れてた。攻撃する時に「勇者○○!!」って言えばなんか強くなる気がするけどそんな事叫ばなくても強いから二撃必殺した。直後に叫んだ。

千景ちゃん
反射的に『はい』っていったけどよく考えたらとんでもない事だったのかもしれなくて内心『ひょえ~~』ってなってたかもしれない。一撃必殺を避け続けるクソゲーに突入。ややあってお腹に穴開いて宙吊りぶらぶら。

総力戦バーテックス
双子!水瓶!牡羊!蠍!天秤!山羊!勇者にジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!!



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