オフェリアさん、君が口を割らないから悪いんだよ   作:レモンの人

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どぜう鍋の作り方が時代劇の放送中に流れた時は衝撃でした。
昔、江戸時代は軽い氷河期で火鉢が近くに置かれていたらしいです。






どぜう鍋、そのまま入れるか裂いて入れるか

「やっと手に入ったぜ…お栄さんが使っていた火鉢!」

 

お栄さん(葛飾北斎の娘)が借金の返済の為に放出した火鉢がオークションに出品されていたので、高い買い物ではあったが無事に買い取る事が出来た。

 

「さってと…使ってみますかね」

 

早速、セットで購入した黒炭と備長炭を入れて火を点けると……これはまた暖かい。暖を取るには充分な温もりが伝わって来た。ストーブとはまた違う暖かさと言うものだ。

 

「あったか〜……よし、早速アレをやるとするか!」

 

思ったが吉日。薬缶に水を入れて即席のコンロを取り付けたソコヘセットした。これで蒸気によって湿度が保たれるので乾燥を防ぐことが出来る。うん、時代劇のセットだなこれは。

と、感心しているとインターホンが鳴った。モニターで顔を覗くと…

 

「ごめんください」

「うおっ!?」

 

至近距離でマジキチスマイルを披露した長尾さんが待っていた。

 

 

********************

 

部屋に入ってきた長尾さんは片手に桶、片手に徳利と瓢箪水筒3つを持っていた。これも時代劇にありそうなセットだ。

 

「おぉ〜、七輪とはまた風情がありますねぇ。早速、熱燗で一杯やりませんか?」

「OK、徳利は?」

「勿論、用意していますとも。あ、それともう1つ…藤丸にコレの調理を頼みたいのです」

 

そこで、長尾さんは桶の蓋を開けた。中に入っていたのは……

 

「ドジョウか!丸々と太ってて美味そうだ。使っていい酒はあるか?」

「どうぞこちらのお酒を。桶も調理用の物ですので」

 

まずはドジョウの入った桶にたっぷりとお酒を注いで蓋をして30分待つ。こうすると最初は暴れているドジョウが酒をたっぷり吸う事で麻酔が効いて動かなくなる。

 

 

「では、熱燗とどぜう鍋が同時に出来上がる形に致しましょう。それまでは……」

「一杯やるか」

 

 

30分後……蓋を開けると、アレほどに暴れていたドジョウはすっかり伸びてしまっていた。麻酔にかかったように動けなくなった彼等を今度は浅めの鉄鍋に移動する。

 

「よし、いい感じに酔っ払ってくれた」

「越後の米で作ったお酒…ドジョウも気に入ってくれたようですね。あはははは」

 

続けて、すき焼き用に甘辛く仕立てた割下を注いでからコンロに移動。炭火でよーく煮立てる。ちゃんと火が通れば出来上がりだ。

 

「ネギ刻んでくるわ」

「では私はお酒を補充してきます」

 

まだまだ居座る気のようで、長尾さんはパタパタと忙しなく出て行った。その間に薬味を用意した。ネギ、山椒、七味唐辛子でお好みに味つければ出来上がりになる。

 

「うん、夕飯に備えて炊いた米も艶が出て美味そうだ」

「藤丸、申し訳ありません。お客が増えてしまいました」

「藤丸!私を無視して酒盛りしないでよね」

「はいはい、そろそろ出来るから長尾さんは熱燗頼むわ」

「了解です」

 

長尾さんは七輪で温めていた薬缶に徳利を入れて熱燗を作っていた。しっかり45℃くらいまで温度の上がった湯の中に徳利を入れ、大体2〜3分温めれば完成だ。

 

「あちっ!……よっ、と」

 

間もなく、長尾さんの熱燗が完成。卓袱台に出来たての熱燗が置かれる。同時に鍋も出来上がったようで火鉢から引き揚げ、鍋敷きの上に鍋を置いて蓋を開けた。

 

「なにこれ?」

「ドジョウ」

「えぇ!?あのコリドラスみたいな魚食べられるの!?」

「まぁまぁ、酒の肴だから」

 

最後にたっぷりネギをかけて完成だ。人数分の箸と小皿、どぜう鍋をよそう為のおたま、炊きたてのご飯を人数分用意して、俺たちは手を合わせた。

 

「「いただきます」」

 

完成したどぜう鍋は少し割下が濃すぎたが、美味しく仕上がった。山椒をかけるとこれはまたピリッとして美味しく戴ける。ご飯との相性も良い。

 

「熱燗美味し〜♡」

「オフェリア、キャラ壊れてるぞ」

「今更じゃない?」

「まぁそれもそうか!どぜう鍋もっと食うか?」

「食べる!結構美味しいわ」

「美味美味、お酒も進みますねぇ。お塩も舐めたいのですが…」

「フランス産の岩塩ならあるが?」

「構いませんよ。やはり、酒には塩!堪りませんにゃあ〜…」

 

グツグツ煮える薬缶が湯気を立て、数人で鍋を囲って酒を飲むというのもまたいいものだ。

 

********************

 

「いやぁ、旦那が新しい持ち主なら安心ってものサ。どれ、鍋を食ってる姿を描いてやるよ」

 

3日後、お栄さんが遊びに来た。曰く、リフォーム前の大掃除で避難してきたらしい。ただ、当たり前のようにゴミをホイホイ捨てるのはやめていただきたい!

 

「俺は墨以下の価値もないから描かん方がいいぞ」

「そんなこたぁ無いぜ?旦那を描いた絵は一定層に需要があるんだ。どうだい?取引しないかい?売れた絵をおれと旦那で7:3の分け前で分け合う…悪くない話じゃねぇだろ?」

「売れなかった場合はどうなる?」

「……あははは」

「おい」




オフェ「ところで、私の出番無くない?」
ぐだ「出番が欲しいか?」
オフェ「当たり前でしょ?……って藤丸!?なんでグツグツ煮えたおでん持ってるの!?やめて…!やめアッツゥウウウウ!?」


当時から1人鍋をする文化があったそうです。また、ドジョウはどぜう汁としてファストフード扱いを受けていたそうですね。
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