オフェリアさん、君が口を割らないから悪いんだよ 作:レモンの人
「すみませんでしたぁあああああああああ!!!」
いつものようにマイルームに戻ると、何故か勝手に入ってきていたオフェリアが土下座してきた。よく見ると…綺麗にラップして保存していたアレが食べられている。OK、理解した。8人分全部食ったんだな……じゃあ、死刑って事で。
「お前……食ったのか?」
「…あまりにも良い匂いしてて……紅茶と一緒に食べてしまいました……」
半泣きで謝ってくるオフェリアにいつもの雰囲気は無かった。
「じゃあオフェリアには罰を与えようか」
「私の尊厳が傷つかない範囲なら何でもしますから!」
「謝る気ゼロじゃねぇかテメェおらぁあああああ!!!」スパーン!
「あひぃっ!?」
藤丸の楽しいお料理コーナー
①バームクーヘンを作ろう
「さてと、バームクーヘンを作っていくぞ」
「プラスチックバットでフルスイングされたお尻がまだ痛い……」
「……」スッ
「分かったから釘バットはやめて!お尻千切れ飛んじゃう!」
「…バームクーヘンを作っていくぞ。使う食材はこれだ」
「とほほ…私のお小遣いが……」
●薄力粉…150g
●グラニュー糖…300g
●コーンスターチ…150g
●バター…300g
●卵…12個
●バニラビーンズ×1本(生の物)
「次に使う器具はこちら。こっちは俺が用意した」
●ボウル(25cm~30cm)×3
●泡立て器×2
●おたま ×1
●ゴムべら×1本
●包丁×1本
●まな板×1枚
●取り皿×3枚
●コンロ×1
●竹の棒またはステンレス棒(1.5m程度)×1本
●アルミホイル(25cm程度)×1本
「って、かなり使うのね」
「こうでもしないと美味くならないからな」
と、ここで何を嗅ぎ付けたのか…長尾さん・オルトリンデ・ヒルド・スルーズがやって来た。かたや飲む気満々、かたやつまみ食いする気満々の問題児しか居ないが……?
「ここで何やらお菓子を作ると聞きました。是非ご相伴に預かりたい」
「ここに行けば何かしら戴けるとオフェリア様から伺いまして」
「…」
「お願い!SM用の鞭は勘弁して──いっだぁああああああああああああ!!!」スパーン
「ふぅ、スッキリした……あ、4人は手伝ってくれるなら食わせてやるぞ」
「絶対お尻が裂けた……」
「では気を取り直して作っていくぞ」
手をしっかり殺菌消毒してから作業を開始した。
「ワルキューレ3人組はボウル3つにそれぞれ黄身、白身、薄力粉を入れてくれ。薄力粉はふるいにかけて半分の75g入れて。長尾さんはバニラビーンズを刻んで欲しい。俺はコーンスターチをふるいにかけ、150g用意するぞ」
「私は?」
「オフェリアは後で重要な仕事を任せるから待っていてくれ」
同じ作業を繰り返すのはワルキューレの得意分野。待たせた方がいいと判断したのは正解だった。オルトリンデとスルーズが機械的に卵を割っては黄身と白身を分け、ヒルドが薄力粉をふるいにかけていく。
長尾さんも綺麗に揃えてバニラビーンズを刻んでくれたおかげでいい感じに出来そうだ。
「OK、よく出来たな。次はアレコレやり取りしている間に常温になったバターを薄力粉の中に入れて泡立て器で混ぜていくぞ。長尾さん、頼まれてくれるか?」
「お任せを」
「混ぜている間にバニラビーンズと黄身を少しずつ入れていくぞ」
長尾さんが泡立て器でボウルの中を混ぜている間に俺はタイミングを見計らってバニラビーンズと黄身を少しずつ投入していく。これにより少しずつ中身の様子が変わっていくのが分かる。
「次はコーンスターチを投入して欲しい。これはヒルドに任せよう。」
同時に俺は結構めんどくさいメレンゲ作りに移る。白身を混ぜてメレンゲを作る……のだが、不純物が入るだけでメレンゲが出来にくくなる。慎重に素早くかき混ぜていく…で、泡がピンと立つようになればメレンゲはOK。向こうはテンポ良くコーンスターチが投入され、長尾さんも同じ速度でかき混ぜ続けている。生地がマヨネーズのような柔らかさになればいい。その前にメレンゲが出来上がったのですぐに指示を出す。
「次にグラニュー糖を3回に分けて投入して、混ぜ終わったら残りの薄力粉も投入するぞ……その辺はスルーズに任せた」
さらにかき混ぜ続けながらスルーズがタイミングよくグラニュー糖を投入していく。メレンゲが混ざり終わったタイミングで続けて薄力粉が投入される。
「おー……すごいですねぇ。あ、こちらは出来上がりました」
「よし、混ぜ合わせていくぞ。こっちのボウルに長尾さんのボウルの中を投入して欲しい」
ここで2つの生地が融合してバウムクーヘンのタネが融合召喚される。こっちはさっくり混ぜ合わせればいいのでテキパキと。その間に事前に指示した要項が終わったようだ。
「マスター、コンロの準備が終わりました。管制室にも申請を出してありますのでご安心を」
「火力も充分だよ!」
「OK、最高だ。オルトリンデにはこの竹の棒の中央にアルミ箔を巻く作業を頼もうかな」
「はい」
「アルミホイルの継ぎ目には糊として生地をほんの少し塗るんだ。後は炙っておけばすぐに接着する」
そしていよいよしんどい作業が始まる。
「オフェリア、軍手は装着したな」
「えぇ、大丈夫」
「じゃあいよいよ焼いていくぞ。生地は火のそばに置いておくと艶と柔らかさが出るからオススメだ」
その言葉にオフェリア以外のメンバーが拍手する。
「まずはアルミ箔の上にたっぷり生地をかけておくぞ。満遍なく、垂れないように塗布したらいよいよ焼き始める。オフェリア、回すの頼んだ」
「分かったわ。任せなさい!」
オフェリアは俺が用意した椅子に座ると竹棒を回し始めた。
「テンポ良く、垂れないように速く回すんだぞ」
「うん」
「生地が乾いたらこっちに持ってこい。生地をかけ直すから」
さぁ、地獄はここからだ。
「ふじまるぅ……もう手ぇ疲れたぁ……」
「まだ5層目だぞ。あと15層頑張れ!」
「ひぃ…!」
「お前が食ったバームクーヘンがどんなに苦労して作られた物かコレで分かったろ?」
「はぃぃ……」
オフェリアは5層目で半泣きになっていた。幾ら頑張っても時間がかかる。しかも早いペースで回し続けなければならない。オフェリア……お前はこの苦行を乗り越えて作ったバームクーヘンをたった十数分で平らげたんだぞ。
「らめぇええええええおててばかになりゅぅうううううう!!!」
「突然みさくら語になるのやめろや」
結局、オフェリアの精神は10層で壊れた。その後は仕方ないので俺が代わり、手早く生地を焼いていく。
「よし、みんな!生地をかけてくれ!」
「にゃー!」
「美味しくなーれ美味しくなーれ」
「ヒルド!なんか目が怖いからやめなさい!」
「(…美味しく焼き上がりますように)」
俺も昔聞いたスペインのラブソングを鼻歌交じりに歌いながら竹棒を回していく。ワルキューレ達には驚かれたが、しばらくすると真似して口ずさむようになっていた。因みに長尾さんは途中から酒を呷り始めたので休んでもらっている。オフェリアはまだ手首を抑えてベッドで悶えている。
「よーし、そろそろ出来上がりそうだ〜。よし!終わった!」
俺はそのタイミングで竹棒をまな板の上に移し、バームクーヘンの両端を切り落とす。こうする事でアルミ箔を滑らせるだけで簡単に抜ける。火の始末はオルトリンデがさっさとやってくれた上にスルーズも洗い物をしっかり洗ってくれたので安心だ。
「よー……っと!抜けた!」
ようやく形になったバームクーヘンにいつの間にかケロっとした顔でメンバーに戻ったオフェリアを含め全員で拍手した。全員で作ったバームクーヘンだ。結構時間がかかったが、満足のいく出来だろう。
「じゃあ……切っていくぞ」
「「お〜!!!」」
俺はアルミ箔をしっかり取り除くと、ざっくりと大きく8つに切り分けていく。見事な黄色と茶色の年輪が出来上がっている。美味しそうな匂いがこの料理をバームクーヘンだと伝えてくれる。
「それぞれ1輪分だぞ」
そして、それぞれに1輪分が貰えるように切り、残りは冷蔵庫に入れた。
「いいの?藤丸…」
「反省してくれたならいいさ」
全員にバームクーヘンが行き渡ると、一同にナイフとフォークを渡した。
「じゃあ、美味しいスイーツを味わって食べてくれよ!」
「「いただきます!!!」」
美味しい料理に舌鼓を打ち、その日は無事終えることが出来た。総勢6人で作ったバームクーヘンは美味しかった。それは別としてオフェリアは腱鞘炎になった。
マシュ「先輩!バームクーヘンを作っていると聞きま─」
ぐだ「あ、もう終わったぞ」
マシュ「」
マシュ、ありつけず……