オフェリアさん、君が口を割らないから悪いんだよ 作:レモンの人
ガレス卿は不浄のギフトを得た。もうこれ以上汚れないようにと願ったからだ。だが彼女は連日の戦いで、とうに心が砕けていた。
愛すべき同胞たちを手にかけた事。
偽のものとはいえ騎士たちを、聖地の人々を手にかける日々。
その瞳の下にはミイラのごとき痣ができ、誰よりも美しいとされた白指は、戦闘のあとに行われる洗浄で見る影もなく炭化していた……
「ごめんなさい。ごめんなさい。わたしは、こちらを選んだのに」
「もう耐えられません。もう戦えません。どうか、どうか」
「愚かなわたしに、罰を与えてくださいませ」
ガレス卿はその身を貫かれながらもかの敵…リチャード1世を拘束した……それは彼を討ち取るのに絶好の好機だった。それを見たランスロットは動けなかった。ガレス卿の気持ちはわかるものの、二度も手にかける事は躊躇われた。モードレッドは激怒した。そんな犠牲を払わなくても倒してみせるとガレス卿を止めた。アグラヴェインは静かに腰の剣に手をかけた。自分の仕事だと把握したからだ。
しかし。その剣を振るったのはガウェインだった。ガウェインは最後に残った心ごと、自らの妹に別れを告げた。
そんな悲劇を迎えた彼女は今……
「わふぅ!」
元気に原っぱを駆け回っている。
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11:00 某特異点
「よしよし、いい子だ。もう一投行くぞ!そらっ!!!」
「わふぅ!」ダッ!
ここは小規模なとある特異点を攻略中に立ち寄った草原。新人のガレスちゃんを新しい職場に馴れさせる為に選んだ比較的難易度の低い地域である。敵も精々原生動物くらいで楽な内容だった。今は休憩中だが、フリスビーにどハマりしたガレスちゃんと遊びながらも旅に同行したオフェリアを適当に弄っていた。
「ガレス卿って仔犬みたいね。可愛いし、人懐っこいし」
「その点オフェリアは弄りやすくていいよな。汚れ仕事たっぷり経験したし」
「あんたのせいでしょうが!!!」
ハハハと笑いながらも俺はガレスちゃんがフリスビーを手に戻ってくる様子を確認した。そのまま手招きすると、彼女の最近気に入っている膝枕ナデナデを始める。相当な懐かれようで、座っている時に太腿を軽く叩くだけで寄ってくる。
「取ってきましたよマスター!」
「偉いぞ〜よしよし」
「えへへ〜…♪」
「なんかムカつくわね……」
「お前もナデナデするか?」
「……ナデナデすっごく気持ちいいですよぉ〜///」
「うぐ…じゃあ、お願いしよ─」
オフェリアも吸い込まれるように近づいていくが……
「あっ、マスター!お昼食べま─あっ」
「モルスァ!?」
ガレスちゃんが思い出したかのように飛び起き、その結果オフェリアの顎がガレスちゃんの頭にアッパーカットされる形となった。
顎にダメージを食らったオフェリアはそのままひっくり返って伸びた……
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13:00 円卓組専用部屋
「すげぇ……料理が出来るのか」
「これでも陛下の料理人でしたから」フンス
ガレスちゃんは意外にも料理が美味しい。それはオークニー諸島が肥沃な土地である事に由来すると俺は考える。そんな今日の料理はコロッケ・サラダ・コンソメスープ・ライ麦パン・ブルーベリージャムと結構多い。
「美味しい…すごいわね」
「ただ、この料理はご馳走だったんです。大抵は予算不足で雑穀パンと魚介スープくらいしか…いえ、パンすら出せない日もありました…陛下には申し訳ない気分でいっぱいです。もう少し食材が確保出来たら……」
結局、自給自足もままならないブリテン王国はランスロット卿の仲介で敵国フランスから食材を手に入れてやっと維持出来るくらい荒廃していた……やはり詰んでいたんだなというのがこの雑穀パンの味で理解出来た。白いパンに慣れた人にとってこのパンは辛い。何度も噛んで噛んで唾液と混ぜなければ甘みを感じられないのだ。
「じゃあ、せっかくだし今日はアルトリア達に料理を振る舞うとするか。オフェリア、食材買って来い」
「格上をパシリ扱い!?」
「雑魚に負けた時点でお前も雑魚ゾ」
15:00 円卓組専用キッチン
「マスターの料理も美味しそうですね!」
「今回は自重率100%だからな。」
俺とガレスちゃん(とオフェリア)は円卓組へとびっきり美味しい料理を作る為に厨房に立った。今日はビュッフェ形式にする事に決まり、俺は業務用の食材を使っている。ただ業務用と言っても美味しい物を厳選している。
「遠征した円卓組の帰還まであと2時間だ!気合い入れてくぞ!」
「おー!」
「待って……寸胴鍋運び過ぎて腰が壊れる…」
「しっかりしろ盛り付け担当!お前の感性に全てがかかってるんだぞ!」
「ビーフシチューが出来ました。お願いしますね♪」
「ひぃっ!!!」
俺とガレスちゃんで料理を作り、オフェリアが運搬&盛り付けする。円卓組が遠征から帰ってくるのもそう遠くない。急がなければせっかくのパーティーがちょっと残念になってしまう。
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17:00 円卓組 帰還
「いや〜、参った参った。かなり頑丈な敵だったな」
「ヴォーティガーンを思わせる凶悪な怪獣でした…我等が結束していなければ今頃敗北していた事でしょう」
円卓組はインド異聞帯の周回に出ていた。真理の卵を手に入れる為にマハーナーガを何度も討伐し続けた彼等は疲労と空腹で参っていた。
「食堂まで行くか?」
「遠過ぎて行けねぇや……」
「では私がポテトをマッシュ……」
「ガウェイン卿、ポテトはもう底をついたぞ」
「なんと……」
重い甲冑を引き摺り、そんな会話をしていると…いい匂いが漂ってきた。
「ん?ガレス卿…そういえば今日はガレス卿に休暇を与えた日でしたね。作ってくれているのでしょうか?」
「でも色んな匂いがしてるぜ?」
「お腹が…空きました……」
それぞれにフラフラと自身の部屋に入ると……
「お帰りなさい!陛下!先輩方!今日は特別にビュッフェを用意しました!どうぞ遠慮なく!」
「お疲れ、円卓のみんな。今日は俺とガレスちゃんでビュッフェを作ったから遠慮なく食えよ!」
「盛り付けたの私……」
「「おおおおおおおおおおお!?」」
豪華とは言えないものの、時間内に作られた多くの料理が深めのトレーに盛り付けられている。
「ポテトサラダに…グラタンに…一口ハンバーグまであるぞオイ!」
「その場でステーキまで焼いてくれるとは………!これは…日頃の行いが良かったおかげですか!?」
「ガレス卿、マスター…感謝する。我々を労ってこのような骨の折れる企画を…」
「気にすんな!今日は満腹になるまで楽しめ。明日からしばらくは疲れを取って欲しい」
「私の疲れは……?」
円卓の騎士達はアルトリアも含め、子供のようにはしゃいで自分のプレートに料理を盛り付けた。そのどれもを楽しげに味わいながら、ビュッフェを楽しんでいる。
「ガレス卿も食べなさい」
「いえ!私はまだ追加注文に備えて待機しなければ─」
「心配すんな。遠慮なく食いに行け」
「じゃあお言葉に甘えて行ってきまーす!」
「……オフェリアがその分頑張る」
「勘弁して」
こうして俺は景気良くステーキを焼いては円卓の騎士達に配り、酒を求めれば酒蔵の酒を躊躇無く開けた。
「ところで、最近憂いを帯びた顔をした御婦人を見ました」
「後日アプローチをかけてみましょう…」ポロロン
「おい日頃の行い」
「まぁまぁ、それよりモーさんともいっぱいお話ししたいです!」
「久しぶりの御馳走…これはおかわりです!」
「まだ若いですが美味しいワインです。陛下もいかがですか?」
酒が入ってからはカオスな空気になってきた。それでも、ある程度は節度を持って楽しくビュッフェを楽しんでくれた。大いに飲み、沢山食らった円卓の騎士達は無事こちらの用意した全ての食材を味わい尽くしてくれた。
「マスター、この御恩に報いる為…我等円卓の騎士団は喜んでこの剣を捧げましょう」
「全員剣を胸に構えなくていいから。周回の御礼だから!」
酔いのせいか変なスイッチが入っている彼等に苦笑しつつ…そういえば今日の収穫を貰っていない事に気付いた。
「そういえば、真理の卵はどれくらい手に入った?」
「「(ギクッ…)」」
ん?どうしたお前ら
「5時間以上駆け回ったんだ。せめて3つくらいあるだろ?」
「あ、あのですねマスター……」
「そ、その…」
「言いにくいのですが……」
一同目を泳がせている……おい、お前らまさか…
「陛下が空腹のあまり聖剣で卵を叩き割り全て食べてしまいました……」
ガレスちゃんは入手直後に宝具5、レベル80まで上げました。これからゆっくり育てて可愛がろうと思います。いずれはガウェインと背中を預けて戦わせられるようにしたいですね。オフェリア?ギックリ腰で倒れたよ