オフェリアさん、君が口を割らないから悪いんだよ   作:レモンの人

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色々あって時間ができましたので久しぶりの投稿です。カイニス…お前素質がありそうだな(フラグ)


貝に酢

「ハッ、オレが簡単に秘密なんて吐くかよ」

 

サーヴァント捕縛術で以ってカイニスを鹵獲した俺は、下劣な笑みを浮かべながらメイヴから借りた鞭を弄った。うーんデジャヴ。

 

「言っとくが、鞭打ちなんざぁオレには効かないぜ。この無敵の体にはそんなぬるい拷問は通用しねぇぞ」

「知ってる。だから──」

 

良いタイミングで玉藻の前がカイニスに約束の呪術を浴びせ、用が済んだのでさっさと退出した。

 

「あ?何をした」

「まぁまぁ。後は俺のぬる〜い拷問を味わってもらうからな。せいぜい吠えてろ」

 

ちょうどよくモードレッドが七輪を運び、炭に火をつけた。長尾さんもやって来て背負った籠から食材を次々と取り出し、徳利の酒を飲みながら仕掛けるタイミングを待っていた。

 

「?」

 

?マークを浮かべてその様子を眺めるカイニスだったが、間もなく良い感じの炭火が出来、モードレッドと長尾さんはワクワクしながら用意したソレを並べ始めた。そう…

 

養殖場で育てたプリップリの大きな牡蠣を。

 

「じゃあ腹減ったし飯食うか」

「よっしゃあ!」

「待ってました!」

「ハァ?お前らのマスターは馬鹿なのか?」

 

カイニスの罵声は無視して早速料理を始めた。まずは網の上に牡蠣を並べて焼く!ただそれだけ。その間にカボスを搾り、バターを小さく切り、焼けるのを待つ。間もなく貝のエキスが煮え、貝特有の濃厚な香りが漂ってきた。

 

 

ぐぅ〜………

 

 

「…っ!?」

「ほらほらぁ、いい匂いがしてきただろぉ?」

「馬鹿な…!神霊であるこのオレが…腹を空かせる……だと…!?」

 

そう、玉藻の前がかけた呪術とは「腹が減ってくる」呪いである。神霊になった為に久しく忘れていた空腹感が、カイニスに容赦無く纏わり付き始めたのである。ついに……

 

 

パァン!………

 

 

と、牡蠣が開いた。こちらは事前に用意したバリケードが守ってくれたので無事だったが、元々露出面積の多いカイニスには容赦無く煮えたぎった汁が飛んだ。

 

「熱ッッァァァアアアアアア!?」

「おぉぉおおおお!遂に焼けたなマスター!」

「くーっ!早く食べたいですよマスター!」

「まぁまぁ、こう言う時は焦らずな」

 

ギャーギャー騒ぐ神霊はガン無視して俺達は牡蠣にそれぞれ入れたい調味料を入れ、再び七輪に戻す。俺はバター醤油、モードレッドはカボス、長尾さんは自分で調合した塩を入れた。カイニスはというと…容赦無く感じる空腹に苦しみながらもその様を見せ付けられていた。

 

「よーし、縮み始める前に回収してっと…」

 

軍手でしっかりと牡蠣を回収してから紙皿の上に牡蠣を乗せ、次の牡蠣も並べてから手を合わせた。

 

「「「いただきます!」」」

「!?」

 

そして目の前で食べる!それだけ。

 

「うめぇ…!この濃厚な牡蠣の味…ブリテンに居た頃を思い出すぜ!確か小さい頃に海に潜って食ったんだっけ?あれは旨かったぁ…」

「そういやイギリスも牡蠣が美味いんだってな。いつか観光に行くかな」

「んー!濃厚な牡蠣の味が酒に合う!あはははは!」

 

ひたすらに牡蠣を褒めちぎりながら牡蠣を喰らう。それがこの拷問の特徴である。

 

「クゥウウウウウウウウウウウウウウウ!やめろやめろやめろ!!!オレにこれ以上良い匂いを嗅がせるなぁぁあああああ!!!」

「ポン酢もうめぇな」

「カイニスだけに?あはははは!」

「オメェは笑い過ぎだ!」

「クソがぁああああああああああああ!!!」

「焼き牡蠣ってのはいいな。この塩気!このミルクみてぇな旨味!養殖した甲斐があったぜ!」

「貝だけに?」

「「「あっははははははは!!!」」」

「…ぅぅ」

 

空腹と牡蠣の美味そうな姿に流石の神霊もごっそりと理性を削られていた。それもそのはず、その呪いは急激にサーヴァントから魔力を消費させ、空腹として魔力欠乏状態を表現させているのだ。そしてカルデアからは現界できるギリギリの分量でエネルギーを供給し続ける…つまり、極限の飢餓状態にあるという訳だ。

 

「(食べたい…食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい!!!)」

「あ?なんだその目は、ん?食いたいってか?神霊の癖にクソザコ人間の飯が食いたいんだぁ〜?」

「……」

「じゃあ土下座してこんな事言えば食わせてやるよ」

 

そして彼女に屈辱的な言葉を話すようにと耳打ちしてから、改めて牡蠣に舌鼓を打った。これは拷問だ。贅を尽くした飯を食いながら敵から戦意を奪う作戦なのだ。

 

「にしてもうめぇな」

「貝毒が出ないように新しい飼料を用意したんだってな。おかげでノーリスクで食える。こいつぁ極楽だ」

「海のミルクと言われるだけはありますにゃあ…ひっく」

 

飲んで食べて騒いで贅を満喫する一方…カイニスは半泣きになっていた。今まで彼女も屈辱的な行為を受けた事が2度あった。だが、この拷問は人間だった過去を持つカイニスにとって最も屈辱的で原始的な苦痛だった。

 

「やだやだやだぁ…おれも食べたいよぉ……」

「あ?なんか言ったか?」

「…ハッ!?ち、ちげぇ!なんでもねぇよ…なんでも…な…い……」

 

喋るだけでエネルギーをごっそり持っていかれ、四肢の全てが上手く動かない程に弱り切ってしまったカイニスは唯一の拠り所であるちっぽけなプライドに縋って生きている状態だった。だが、それも長くないだろう。

 

「痩せ我慢はやめなって。な?俺もよ、ホントは食わせたいんだぜ?でもよ…そうやって反抗的な態度ばっか取ってるようじゃ食わせられねぇんだよ。な?分かるだろ?」

「ぅぅぅぅぅぅぅう!」

 

うわぁ…かーちゃんと同じレベルの畜生だぜアイツ…とか言う声が飛んできたがそれをスルーして俺は牡蠣の貝殻でカイニスの頬をツンツンと突いた。

 

「じゃあ、そろそろお開きにするかな。残念だ…お前もこっち側に来てくれると信じていたんだがね…」

 

そう冷酷に告げて牡蠣の貝殻を手で弄びながらバリケードの向こうに戻ろうとした時だった。

 

 

「…です……」

「あ?」

 

カイニスは涙をポロポロ流しながら残りの力を振り絞って叫んだ。

 

「“私はダニにも劣る神霊の面汚しです!どうかこんなゴミクズの私に人間様の温かい御飯を分けてください!お願いします!もう反抗もしません!忠実な雌犬になりますからどうか…どうかご慈悲をくださいぃいいいいいいいいいいいいい!!!“」

 

プライドをかなぐり捨て、絶叫するように屈辱的な言葉を叫んだ。後からくる後悔ですすり泣くカイニスだったが、ここまで心をへし折れば充分だろう。俺もちょっとやり過ぎたかなとは思っているが、北欧でやられた分はキッチリやり返した。うん、スッキリ(ゲス顔)

 

「よく言えました。さぁ、行け!たらふく食え!」

 

俺はカイニスを拘束していた縄を緩めた。その途端に彼女は這うように七輪の方に向かった。

 

「よっ、歓迎するぜ新人」

「よろしく〜♪」

 

そして、2人から牡蠣とスプーンを受け取ると、カイニスは一気にそれを口に放り込んだ。口の中が焼けるように熱くなるのを無視して牡蠣を咀嚼して…呑み込んだ。

 

「美味い……!」

「よーし、新人の為に牡蠣増量するぞ!どうせ人工埠頭管理のバイトサボってるオフェリアも連れて来い!」

「待ってました!」

「よし!あいつにまたイタズラ仕掛けるぞ!」

「……お前ら、クリプターへの扱いどうなってんだよ」

 

10分後、牡蠣祭りをやっていると聞いてバイトを中抜けし、ついでにバケツ一杯の牡蠣を手に駆けつけたオフェリアを交えて例の如く祭りを始めた。長尾さんイチオシの酒で酔っ払ったカイニスがベラベラ機密情報を漏らしてくれたおかげで労力の甲斐はあったと俺は牡蠣から出てきたエキスを飲みながら満足げに眺めていた。

 

 

余談だが、1時間後にバイトをサボった事がバレたオフェリアは休日返上で廊下掃除をする羽目になるのだった…。




マシュ「先輩!牡蠣が食べられると聞きました!」
ぐだ「いや…もう食べ終わったぞ。あ、貝の殻を加工して石鹸を作ったんだが、要る?」
マシュ「要らないです!」


※後日、石鹸はオフェリアを転ばせる為に再利用されました。
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