オフェリアさん、君が口を割らないから悪いんだよ 作:レモンの人
「い、いや…2部6章ネタバレになるから……ぐはっ!」
「キャハハハハ!!!バーカ!」
今日も朝麻婆豆腐を終えて食堂を出てみると、自称トリスタンの妖精騎士が男子職員をヒールで踏んで虐めていた。それにしても…全く靡く事なくこの道我が道と言うが如くの振る舞いを続けているあたり中々いい性格をしている。名前は……えーっと、なんだっけ?
「そこまでにしておけよ。バンバンジー」
「ちげぇよ!それは蒸し鶏に芝麻醤みたいなゴマのソースをかけた四川料理だろぉ!?」
ちゃんと真名で注意した筈だったが、何故か癇癪を起こしてしまった。その隙に男子職員は脱兎の如く逃げ出しており、間接的に助けられたようだった。が、それ以上に自称トリスタンの真名が思い出せない事が1番の問題だった。
「え?違った?えーっと…赤パンジー?」
「ちげぇよ!それは『思い出』が花言葉のスミレ科スミレ属の赤い花だろぉ!?」
「ん?おかしいなぁ…名前なんだっけか。バンシィ・ノルン?」
「ちげぇよ!それはユニコーンガンダム2号機のマイナーアップデート機だろぉ!?お前ちゃんとサーヴァントの名前覚えてねぇのかよ!?」
「なんでそんな詳しいんだよ!?」
癇癪を起こして激しく足踏みする自称トリスタンはマジギレしているようだが、呪詛返しの護符を所持しているので問題は無い。安心して真名当てに集中できる。しかし…喉の奥から出かかっているので出てこないという不快感は半端なかった。
「あ〜、さてはお前!」
「ハッ、ようやく思い出したのかよ。言ってみろよ」
「クランシーだろ!」
「ちげぇよ!それはバイオ7で劇中のネット配信番組『スーワ・ゲーターズ』でカメラマンやってた奴だろぉ!?」
「違ったかー、チクショウ」
「それはこっちのセリフだよ!ちゃんと言えるまで引くに引けなくなっちまったじゃねーか!どうしてくれんだよ!」
そっちの事情は知らないが、自称トリスタンは律儀にノッてくれるあたり根はモードレッドと同じくいい子らしい。
「あ!分かった!確か…バ?から始まるんだっけ?」
「そうだろ!?なんでそこが覚えられないんだよ!」
「で…確かバルザック的な名前が」
「ちげぇよ!それは19世紀のフランスを代表する小説家オノレ・ド・バルザックだろぉ!?」
なんでそこまで詳しいんだ…というツッコミは更なるカオスを生み出すのでギリギリ喉の奥で押し留めた。
「頭だけは合ってるから思いついただけ言ってみろよぉ!」
「バ…バー…」
「よし、いいぞ!いい線来てる!」
「パールハーバー」
「ちげぇよ!それはアメリカ合衆国のハワイ州オアフ島にある入り江だろぉ!?しかも頭がパになってるじゃねぇかよオイ!」
「(さっきからなんでそんな詳しいのか誰かツッコミ入れてくれよ!)」
フーッ…フーッ…と荒い息をしながらツッコミを入れてくる自称トリスタン。これで掴みかからないあたりまだ理性が残っているらしい。
「バー…までは合ってるんだよな?」
「聞くなよ。せめて自分で考える努力をしろよ」
「なに偉ぶってんだよバーバパパ」
「ちげぇよ!それはフランスの絵本作家アネット・チゾンとアメリカの絵本作家タラス・テイラー夫妻が描いた絵本のキャラクターだろぉ!?」
「違うのか……」
「いいか?最後に1回だけチャンスをくれてやる。間違ったらブッ殺す」
流石に我慢できなくなったのかラストチャンスと言ってきた。そろそろ当てないと危ないと思っていたところなのでここで当てていきたい。
「最後のチャンスだから大ヒントをくれてやる!“バーヴァン”だ。あと数文字入れたら答えになるぞ!言えよ!答えろよ!?」
「バーヴァン…!」
「さぁ、言ってみろ!“赤いカカト”のぉ?」
「…バーバンク!」
「ちげぇよ!それはアメリカ合衆国カリフォルニア州ロサンゼルス郡の都市だろぉ!?もぉやだぁああああああああ!!!」
そして何故かこっちに襲い掛かる事なく泣きながらどこかへ逃げて行った。最後まで名前が分からなかったが一体なんて名前だったか。
「わかんねぇ……」
「どうしました?我が夫よ」
「あ、モルガン」
その後ろ姿を見送っていると、食堂からモルガンが出てきた。確かさっきまでムキになってアルトリアと大食い競争をしていたようだったが…苦しそうに腹をさすっている様子から負けたらしい。
「まさか…あの子を泣かせたのですか?」
「ご、誤解だって!妖精騎士トリスタンの真名が出てこなかったんだよ!」
「全く…我が娘の名前を忘れるとは情けない」
「悪いって…で、なんて名前だっけ?」
「バンバンジーです。間違えないように」ドヤァ
「だよなぁ!」
※モルガン様はバンバンジー大食い競争のためゲシュタルト崩壊しております。実際はちゃんと覚えていますのでご安心ください。
今回は2部6章があまりに美しかったので真名は明かさないようにしました。トリ子はウチの中では妙に雑学が多いツッコミ役で第2のオフェリアになり得るような気がします。