ハリー·ポッターと不遜な悪童   作:麻婆牛乳

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最初はホグワーツの謎のキャラクターも出そうかと思ったけど止めました、分からない人も多いと思うので。



別れるのは寮だけではない

「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです」

「ご苦労様ハグリッド、ここからは私が引き受けます」

 

恐ろしくデカイ建物だ。やはり近くても城にしか見えない……むしろ城を学校にしたのか。

そうして門の入り口を見るとマクゴナガルが居るのが見えたので手を振ると、凄くビミョーな表情を浮かべていた。

その心中は『問題児が来てしまったか』、といった所だろうか。ケケケ。

 

「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会がまもなく始まりますが……大広間の席に着く前に、みなさんが入る寮を決めなくてはなりません」

 

入る寮だと?そんなもん先に決めておくモンじゃあないのか?といった疑問をぶつける前にマクゴナガルは続けた。

 

「寮の組み分けはとても大事な儀式です。ホグワーツにいる間、寮生が学校での皆さんの家族のようなものです。教室でも寮生と一緒に勉強し、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります。寮は4つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。それぞれ輝かしい歴史があって、偉大な魔女や魔法使いが卒業しました。ホグワーツにいる間、皆さんの良い行いは、自分の属する寮の得点になりますし、反対に規則に違反した時は寮の減点になります。学年末には、最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられます。どの寮に入るにしても、皆さん一人一人が寮にとって誇りとなるよう望みます」

 

凄まじく長かったが分かった、4つある寮に振り分ける為の儀式があるという事だ。それなら先に決めておかなかった理由も分かる。

 

「まもなく全校列席の前で組み分けの儀式が始まります。待っている間、できるだけ身なりを整えておきなさい。学校側の準備ができたら戻ってきますから、静かに待っていてください」

 

そう言い残してマクゴナガルは去っていき、それを見届けたハーマイオニーは口を開いた。

 

「どうやって組分けされるのかしら?」

 

至極全うな疑問だ。儀式と言うからにはある程度格式張った物を想像するが……

 

「ま、適性テストみたいなモンがあるんだろ。そうでなきゃあ脳ミソ覗かれて適性チェックとかするんじゃねえか?」

「……ゾッとするわね」

 

俺の声が聞こえた新入生は体を固めて緊張している様だ。ハーマイオニーは少し表情筋が痙攣していて面白い顔で何か呪詛みたいな物を早口で唱えていて愉快な事になっている。

そうして数分、なんかゴーストが通りかかったりしているのを物珍しそうに眺めていたらマクゴナガルが戻ってきた。

 

「さあ、一列になって、ついてきてください」

 

そう言われて列になってついていく、ちなみに俺の後ろがハーマイオニーだ。

大広間に辿り着くと非常に広大な広間に浮かぶ蝋燭、更に上には星空が広がり不思議な光景が広がっていた。

 

「本当の空に見えるように魔法がかけられているのよ。『ホグワーツの歴史』に書いてあったわ」

「ほーん……ホグワーツスゲーな……」

 

こんな魔法が出来るなら、家での生活も更に快適になるだろうか?などと考えながら上を向いてぼんやりしていると、突然歌が聞こえてきた。

歌が聞こえる方を見てみると、くたびれた帽子が何か動いている……いや、帽子が歌っているという事が分かった。突発的だったので聞いてなかったが、あるフレーズが頭のなかに残った。

 

グリフィンドールに行くならば

勇気ある者が住まう寮

勇猛果敢な騎士道で

他とは違うグリフィンドール

 

ハッフルパフに行くならば

君は正しく忠実で

忍耐強く真実で

苦労を苦労と思わない

 

古き賢きレイブンクロー

君に意欲があるならば

機知と学びの友人を

ここで必ず得るだろう

 

スリザリンではもしかして

君はまことの友を得る

どんな手段を使っても

目的遂げる狡猾さ

 

恐らくこれこそが、振り分けられる4つの寮の特徴だという事が分かった。

 

「アボット·ハンナ!」

 

自分で色々と考えている内に、誰かの名前が呼ばれた。恐らくその名前の女は椅子に座り、歌っていた帽子を被る。

 

「ハッフルパフ!」

 

帽子は叫び、歓声の上がる机に向かってハンナが歩き出す。成る程、被れば勝手に帽子が判別してくれるというのか。

 

「グレンジャー·ハーマイオニー!」

「……行ってくるわね」

 

数名の振り分けの後、ハーマイオニーが呼ばれて俺に声を掛けて帽子に向かう。

まああの勉強大好き娘の事だ、選ばれる寮は間違いなくレイブ──

 

「グリフィンドール!」

 

……ズッコケなかった俺を誰か誉めやがれ。

当の本人は嬉しそうにグリフィンドールの机へと向かっていった。

しかしさっきから在校生の視線を感じる。それも複数、俺の事を奇怪に思っているのだろう。

 

「ウィーズリー·ロナウド!」

 

呼ばれて帽子を手に取ったのはロンだ、随分ビビっているが……大丈夫かアイツ。

 

「ぅはあ!」

「ウワァ!」

「またウィーズリー家の子だな。君はもう、決まっておる。グリフィンドール!」

「……ふぅ……」

 

またもやグリフィンドールだ、俺はロンのコロコロ変わる表情を見てゲラゲラ笑った。

 

「ポッター·ハリー!」

 

暫くすると、ハリーの番が回ってきた。列車に居た時とは別人の様に暗い顔をしている。

それとは別にざわつく在校生。今の今までこんな事は無かった事を考えると、やはりハリーの知名度は相当な物なのか。

ハリーはゆっくりと帽子を被った。

 

「んん、難しい、こいつは難しい。勇気に溢れておる。頭も悪くない。才能もある。そして、自分の力を発揮したいと願っておる。さてどこに入れたものか」

「スリザリンはダメ。スリザリンはダメ」

「おぉ、スリザリンは嫌なのか。いいのかね?君は偉大になれる。その素質は十分に備わっておる。スリザリンに入れば、間違いなく偉大になる者への道が開けるのだが、嫌かね?」

「お願い、どうか、スリザリンじゃないところにして。スリザリンだけは!」

 

帽子にそう願う、というよりは神頼みに近くなってないか?ハリーよ。

帽子は納得した様に唸った。

 

「それでも嫌と言うなら……それならば、グリフィンドール!」

 

その瞬間、グリフィンドールの机から大歓声が上がった。割れるような拍手に抱き合う男達までいる始末だ。

それとは対照的なのがスリザリン、いやーな雰囲気を漂わせている。呪いでも掛けそうな……いや、呪いを掛けている様な状態だ。

 

「ショーペンハウアー·レネ!」

 

俺の番が来た、両手をポケットに突っ込みながら帽子の元へ向かう。先生方がめっちゃ見ている、クソ親父を知っているからか。在校生の方はというと静かだった、俺を注目して物音1つ立てなかった。

余談ではあるが、俺の組分け先はハリーとロンの予想はグリフィンドール、ハーマイオニーはレイブンクロー、そしてマクゴナガルと他の生徒達は全員スリザリンの予想を立てていた様だ。

帽子を右手で取り、左手でフードを取って広間を向くと悲鳴が上がった。

銀髪のオールバックにギラリと光るギザッ歯、紅い眼と色白な肌は吸血鬼を想起させる。

恐怖する生徒に向けてクックックと邪悪な笑みを撒き散らし、ドカリと椅子に座って帽子を被った。

 

「スリ……いや、これは……フム、狡猾ではあるがそれは楽しむ為、非常に学ぶ意欲が高く交友関係も築く気が大いにある。友人はグリフィンドールに行ったが……」

「………………」

「これは難しい、先程と同じ、いや、それ以上とも考えられる。4つの寮全てに適性があると言えよう……フム、フム、どうだ、君はどの寮に行きたいか希望はあるかね?」

 

足を組んでふんぞり返る。

 

「別にねぇな、しいて言うなら面白え奴等が居る所に入りてえ位だ」

「ほう、君の面白い生徒の基準は様々だが……少なくともハッフルパフではあるまい。レイブンクローも長い目で見れば違うと言えよう」

 

重厚な声が大広間に響き渡る。ハッフルパフとレイブンクローの机から肩の力が抜ける様に溜め息をつく声が聞こえた。

 

「勇気はある、しかし偉大な魔法使いになることを望んでおるな?であるなら……」

 

どうやら決まった様だ、帽子は息を大きく吸い込む様な動作をした後……

 

「スリザリン!」

 

大きな声が広間に響き渡った。歓声はなく、スリザリンの机からまばらな拍手が聞こえるのみ。それとは別に後ろから大きな拍手が聞こえた。一番偉そうなおっさんが大きな拍手をしていた。

帽子を脱ぎ、フードを被ってスリザリンの机へと向かう。その最中グリフィンドールの方を見てみると、ハリーとハーマイオニーが残念そうな顔をしている。ロンはこれまた複雑そうな面持ちで下を向いている。

 

「ケケケ、ま、それもいいだろ」

 

スリザリンの空いた椅子に着席する。隣には金髪の俺と同じ新入生が居た。

 

「君は……純血か?」

「純血?なんだそりゃあ?」

「魔法使いの家系か、という事だよ。その格好はとてもマグル生まれとは思えないけど」

 

俺は椅子を引かず、ふんぞり返って答える。

 

「少なくともクソ親父は魔法使いだ、俺は顔も知らんがね。おふくろも多分そうだな」

 

わざわざクソ親父の悪巧みに付き合う辺り、おふくろも魔法使い……いや、きっとホグワーツ卒業生の魔女だったのだろう。

男は満足そうに頷いた。

 

「それなら良いんだ、宜しくレネ」

「あー……ドラコだったか?まぁ宜しくな」

 

なんとなく覚えていた、コイツは帽子を被る寸前に「スリザリン!」と帽子が叫んだのが印象的だったので頭の片隅に残っていたのだ。

 

「なんだ、思ったより普通に話せるのね。心配して損したわ」

「アンタは……誰だったか?」

「ダフネ·グリーングラスよ、まあ新入生も多いから全員は覚えきれないわよね」

「ああダフネか、わりぃわりぃ」

 

金髪で長髪の女がダフネ、正面に座っていた。

 

「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会を始める前に、二言、三言、言わせていただきたい!」

 

そうして話している間に組分けの儀式が終わった様で、偉そうなおっさんが立ち上がって大声を出していた。

 

「では、いきますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこいしょい!以上!」

 

思わずコケそうになる。が、それよりも目の前に恐ろしい光景が広がっている。

肉だ、こんがり焼かれた七面鳥にスペアリブ、ラムチョップに至るまでがところ狭しと並んでいた。肉料理以外もあったが俺には肉以外眼中には無い。

 

「これは凄い……家でもここまで豪勢な料理は中々無かったな」

「見てるだけで胸焼けしそうだわ……」

「ヒャッハー!肉だぜぇ!」

 

ドラコとダフネが尻込みしている中、俺は七面鳥を引きちぎりスペアリブをおかずにラムチョップを平らげ、2人が唖然としている間に次々と胃の中に放り込んでいった。

 

「うめぇ、滅茶苦茶うめぇぞコレ!ドラコも食ってみろよ!スペアリブがマジでうめぇぞ!」

「あ、うん」

「じゃ、じゃあ私も……」

 

控え目に飯を頬張る2人に遠慮せず、俺は肉食獣と化して片っ端から肉をかっさらう。

そうして数分後、腹を満たして落ち着いた俺は、デザートを前にジュースを飲んでいた。

 

「ックー、満足だぜ」

「僕ももうお腹一杯だ」

「デザートは別腹よ」

 

ジュースを飲んでいる俺とドラコはドーナツとケーキを取り皿に取り分けるダフネをヤレヤレといった様子で眺めていた。

素晴らしい飯だ、魔法の為とは言ったがこの飯の為だけでも通う価値がある。

 

「そういえばレネって勘当されたのか?」

「あん?」

 

ドラコの突然の問いに疑問符を付けて返す。

 

「父親の顔を知らないんだろう?母親と一緒に逃げたとか、そういう事じゃないのか?」

「あぁ、別にそういう事じゃねぇよ。親父は俺が顔を覚えねぇ内にどっかで放浪してんだよ。しかもおふくろは4年前に失踪したきりで俺も行方は分からねぇな」

「4年前に失踪……まさか、君の母親はトルーディ·モルドナ=シュミット?」

「んあ?知ってんのか?」

 

ドラコは驚いた顔で話し続ける。

 

「父がホグワーツでスリザリンに居た頃の旧友と聞いたんだ。聡明な女性だったけど失踪したと聞いて探し回っていたんだ、随分前に捜索は打ち切っちゃったらしいけど……」

「そんじゃあおふくろは多分スリザリン出身なんだな、通りで組分けの時に教師から熱烈な視線を受けている訳だぜ」

「僕も別姓だったから気付かなかったよ」

 

意外な所で情報を入手した。どうやらおふくろはスリザリン出身らしい。ま、魔法使いに見付けられないなら向こうの世界で見付かる確率もかなり低い物だろう。

そうして歓迎会は終わり、幾つか注意点がおっさんから発せられていた。森に入らない事、廊下で魔法を使用しない事、クディッチについてのお知らせ……クディッチってなんだ?また後でドラコにでも聞いておこう。そして最後に、とても痛い死に方をしたくない奴は、四階右側の廊下に入らないようにする事。入ったら死ぬ廊下がある学校とは、と突っ込みを入れたくなったが。その後の校歌の歌詞が余りにも<アレ>だったので頭の中から吹っ飛んでいた。

 

「ふぅ……流石に疲れた、眠いぜ」

「僕もだ……まだ着かないのかな」

 

そうして俺達は監督生のジェマ·ファーレイとかいう女に連れられて廊下を歩いている。割りと全員ぐったりしている様に見える。

 

「着いたわよ、2週間で変わる合言葉で入り口が開くわ。今の合言葉は『偉大なる指導者』よ。覚えておいてね」

 

ジェマがそう言い終わると無骨な岩壁がどんどん広がり、人が通るには十分な大きさの入り口が出来上がっていた。

 

「面白え、合言葉か」

「クラッブとゴイルが忘れなければいいけど……まあ、僕には関係ないか」

 

中は石造りのひんやりした広間になっている。ここが所謂談話室で男子と女子で部屋が別れている。荷物は既に振り分けた部屋に運び込まれているという事が知らされた。

 

「明日の授業の時間割をしっかりと確認しておいてね。遅刻して減点、寮杯が取れなくなって責められても文句は言えないわよ」

「マクゴナガルも言ってたが、寮杯って結局なんなんだ?」

「寮対抗のポイント勝負さ。一番優秀な寮を争うんだけど、スリザリンは何年も連続で寮杯を獲得しているんだよ」

 

ドラコはそう言ってふんぞり返る。コイツはなんともガキ大将という様な性格をしている。

ジェマは離れていき、俺達は談話室を軽く眺めてから急いで寝室へと向かっていった。

 




「お願い、どうか、スリザリンじゃないところにして。スリザリンだけは!」
「アズカバン!」

↑これほんとすき

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