ハリー·ポッターと不遜な悪童   作:麻婆牛乳

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映画のスネイプ先生の、作業をする直前に袖をクイッ、クイッって引く動作が大好き。
アレって後で知ったけど、役者さんのアドリブという話を聞いてびっくりした。



煽り立てて魔法薬

 

「やあ、おはよう」

「おう、眠れたか?」

「ボチボチね、クラッブとゴイルのいびきも気にならない程にはよく寝たよ」

「キシシ、そうかよ」

 

寝室は俺とドラコ、そしてクラッブとゴイルが同じになっていた。俺は一足先に起きてガリオン金貨でコイントスしながら読書をしており、後からドラコが起きてきた。クラッブとゴイルはまだいびきをかいて眠っている。

因みにクラッブとゴイルはドラコの子分の様で、ドラコにずっとついて回っていたが特に俺は気にしていなかった。

 

「シャワー浴びてこいよ、そろそろ準備しねえと朝飯食いっぱぐれるぜ」

「ああ、そうするさ」

 

そうしてドラコは子分を起こしに掛かる。それを見届けて俺は談話室へと向かった。

 

 

 

「このクラスでは杖を振り回すような馬鹿げた事はやらん。そこでこれでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管の中を這い巡る液体の繊細な力。心を惑わせ感覚を狂わせる魔力」

 

偶然にも、初めての授業はグリフィンドールとの合同で一番興味がある魔法薬学だった。教師のスネイプはゆっくりと生徒達の間を歩いている。

 

「諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。我輩が教えるのは名声を瓶詰めにし栄光を醸造し死にさえ蓋をする方法である。ただし我輩がこれまでに教えて来たウスノロたちより諸君がまだましであればの話だが」

 

感じの悪い教師だ、しかし魔法薬に関しては詳しそうだ……勿論、その胡散臭い見た目と怪しい薬のイメージがマッチしたからだが。

 

「ポッター!」

 

急に指名され、体をびくりと震わせるハリー。

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じた物を加えると何になるか?」

 

ハリーは苦々しい表情を浮かべ、口を開く。

 

「……わかりません」

「チッチッチ──有名なだけではどうにもならんらしい」

 

ハーマイオニーが手を上げているが、明らかに無視されている。どうやらスネイプはグリフィンドールを明らかに敵視しているらしい。隣でドラコが何故かクスクスと笑っている。

 

「──ほう」

 

代わりに俺が手を上げると生徒達はざわめき、スネイプは僅かに眉を上げて声を発した。

 

「ショーペンハウアー、分かるのかね?」

「アスフォデルの球根と粉末と煎じたニガヨモギは更にカノコソウの根と催眠豆の汁を使えば<生ける屍の水薬>っつう強力な睡眠薬になる。ついでにアスフォデルの球根の粉末は<生ける屍の水薬>に対する解毒剤にも使用される、一種のユリの球根だ」

 

そう言い切ると僅かに目を見開いたスネイプ。しかし、またハリーに向き直った。

 

「ポッターにもう1つ聞こう。ベゾアール石を見つけて来いと言われたらどこを探すかね?」

「わかりません」

「クラスに来る前に教科書を開いてみようとは思わなかったわけだな。ポッター、え?」

 

どちらかといえばグリフィンドールよりもハリー自身を嫌っている節があるスネイプは、ちらりとこちらを向いたので手を再び上げた。

 

「ベゾアール石はヤギの胃から採取できる石。正確にはヤギの胃で長時間掛けて塩分や草の栄養分やらの成分が凝縮して出来る胃石だな、どのヤギからも取れる訳じゃねえから貴重なシロモノだ。さっきの<生ける屍の水薬>も含めて色々な解毒剤に使用されるってな」

 

そう言ってポケットからベゾアール石の入った小瓶を取り出し、右手で弄くり回す。

ベゾアールという種のヤギが命名の元、というこの石は俺には茶色くて汚ならしい石にしか見えないのだが。

 

「ふむ……ポッター、モンクスフードとウルフベーンとの違いは何だね?」

「分かりません」

「……モンクスフードとウルフベーンはどっちもトリカブト……いや、こっちじゃアコナイトと言うのが一般的か。これまた基本的には水と栄養素を吸った塊根を乾燥した物を使うな」

 

ハリーの方を見ず、スネイプは俺を見続けていたので手を上げずに答える。すると、スネイプは表情を変えずに頷いた。

 

「態度は最悪だが只の木偶の坊ではない様だ。スリザリンに5点与える」

 

そう言ってスネイプは踵を返す、俺の回りにはポカンと口を開けている生徒が何人も居た。勿論、ドラコもその1人だった。

 

「レネって勉強出来たんだ……」

「どういう意味だよ、そりゃあ」

「い、いいや、他意は無いよ」

 

俺は薄く笑みを浮かべ、スネイプの授業を真剣に聞き入る体勢に入る。

スネイプは俺達に向き直って言った。

 

「さて、始めに諸君らが取り掛かる最初の魔法薬は<おできを治す薬>だ。38ページを開き各自用意した鍋を使用して取り掛かりたまえ」

 

<おできを治す薬>、最初の魔法薬としては少々危ねえシロモノではなかっただろうか。それこそミスれば鍋すらオシャカにしてしまう程の。

特に起こしやすいミスを思い出しながら教科書を見ずに用意された蛇の牙を取り、よくすりつぶして計量後に鍋へ投入。高温で10秒キッカリ熱した後醸造する──

 

「よく教科書も見ずに出来るね」

「へっ、ミスさえ注意すりゃあそんな難しいモンじゃあねえよ」

 

俺とペアのドラコにそう言い、醸造の待ち時間で周りを見ると漸く蛇の牙を取り始める生徒達が溢れかえっていた。

 

「まあ、この薬は任せてくれや」

「分かったよ、じゃあ僕はグリフィンドールの間抜け面でも眺めて暇を潰すさ」

「いや実技見て勉強しろよ」

 

まだまだ待ち時間はある、ドラコの開いたままの<おできを治す薬>のページを目にやる。

 

「ん?ありゃ?」

「どうしたんだい?間違えたのか?」

 

教科書を見てみると、ある一点に違和感がある事に気が付いた。ヤマアラシの針を入れた後に鍋をかき混ぜるのだが、そのかき混ぜ方が書いていない。魔法薬は製造段階でよく混ざらないと効能が落ち、混ぜすぎると空気と反応しダメになる物もあるのだ。

 

「……ケケケ、意地の悪い教師だぜ」

「ん?どういう事だい?」

 

スネイプの顔を見てみるが、こちらの声は聞こえていた筈なのに知らん顔をしている。どうやら教科書に不備がある事を知っている様だ。

醸造を終え、角ナメクジを入れた後に火から鍋を下ろす。ヤマアラシの針を2本加え、おたまをゆっくりと鍋の中に入れた。

 

「……1……2……3……4……5……」

「随分そこは慎重にやるんだね」

「まぁな……」

 

時計回りに内側から外側へ5回かき混ぜ、慎重におたまを抜いて直ぐ様杖を取り出す。

 

「いくぜ……ほっ」

「………………」

 

俺は鍋に向けて杖を振り、なんだかんだ言いつつ俺の作業をじいっと見ていたドラコは息を呑んで鍋を見つめる。すると……

 

「……何か変な煙出てないか?まさか爆発とかしないだろうね?」

「何言ってんだバカヤロウ、教科書を見ろ」

 

鍋からはピンクの煙が立ち、粗熱の取れた<おできを治す薬>が出来上がっていた。流石に初めての魔法薬ともなると喜びもひとしおだ。

取り敢えずもっと冷めるまでは瓶詰めが出来ないので周りを見ると、ちらほらと醸造が終わり角ナメクジを入れる生徒が現れた所だった。

 

「キシシ……楽しみだなぁ」

「…………?」

 

ジロジロと他の生徒を集中して眺め、杖を手にしながら含み笑いを漏らす。その間スネイプは俺の鍋を確認し、何やら頷いていた。

しかしその瞬間、俺はある男に杖を向けた。

 

「フリペンドッ!」

 

バシッ!っと音を立てて男はヤマアラシの針を地面に落とす。教室中の生徒が驚愕し、スネイプが顔を怒りに滲ませて俺を見た。

 

「大馬鹿者!何をしているッ!」

 

俺は隣で憤慨するスネイプを無視し、笑って両手を大きく広げ魔法を受けた男に歩み寄る。

 

「いーっけない子だなぁネビル君!ヤマアラシの針は鍋を火から外して入れないとなぁ!」

「……何だと?」

 

スネイプはネビルの鍋を確認する。その間にも俺は大手を振って喋り続けた。

 

「あのまま針を入れていたら鍋をブッ壊して中身が飛散、教室や他の奴等、そもそもネビル君がおできまみれになってタ·イ·ヘ·ンな事になってたぜ?よーく気を付けてくれよ?」

「え……え?」

 

ネビル·ロングボトムはポカンと口を開けて俺を見つめていた。鍋を確認したスネイプは無表情に戻って口を開いた。

 

「よく気が付いたものだ、未然に防いだのでレネ·ショーペンハウアーに10点。ネビル·ロングボトム、貴様は10点減点だ、反省するがいい」

「まーまースネイプ先生、未遂だからいいじゃあないですか!許してあげましょうよ!」

「……よかろう、減点は取り消す。但しロングボトムには反省文を書かせる。羊皮紙2枚に纏め来週月曜日迄に提出する様に」

 

そう言ってスネイプは元の位置へ戻り、スリザリン生達はクスクスと笑った。

 

「やるなぁレネ、痛快過ぎてスカッとするよ」

「なぁに、丁度覚えた魔法を実践で使うタイミングを探していただけさ」

 

結局、薬を作ることに成功したのは俺とハーマイオニーの居るペアだけだった。それにも関わらず、ハーマイオニーは授業が終わるまで苦い表情を浮かべていた。

 

 

 

「頼みがある」

 

授業終了後、そそくさと部屋を後にする他の生徒達を尻目に、俺はスネイプに話し掛ける。

 

「……先程も言ったが貴様は態度が悪い、減点されたいのか?」

「そりゃあすまねえ。だが敬語なんて煽りにしか使ったことが無くてな、誠意がねぇから先生にも使わない方がいいと思ってな」

 

スネイプは目頭を押さえ、ふぅ、と大きく溜め息を吐いて俺を見た。

 

「……用件はなんだ」

「なあに簡単な話だ、薬を作る練習をしたいから1人で魔法薬を作る許可をくれ。勿論材料は自分で全部用意するからよ」

 

スネイプは口元に手を当てて唸り、聞き取りづらい小声を発する。

 

「……貴様は1人生だ。場数を踏んでいるならまだしも今日初めて魔法薬を作った素人に許可を出すわけにはいかん」

「そう言わずにどうにかしてくれよ先生サマ。とにかく色々と作ってみたいんだよ」

「……分かった、条件を出そう」

 

スネイプは俺に面倒そうな顔を向けて言った。

 

「ウィゲンウェルド薬、忘れ薬、強化薬。この3つを我輩の前で教科書を見ずに完璧に作り上げたまえ。空いた時間にテストをしてやろう」

 

ウィゲンウェルド薬、ウィゲン樹の樹液を元に出来る薬で、傷薬としてはまあまあだが特筆すべきはその即効性、小さな擦り傷切り傷程度なら使った瞬間に傷が消えてなくなる薬だ。

忘れ薬、これはこっちじゃポピュラーな物らしいが作り方次第で物事を忘れる期間が前後する繊細な魔法薬だ。

そして強化薬、その名の通り身体を強化する薬だが1年生が手を出す様な薬ではない。何せ作った後に1ヶ月間熟成しなきゃあならんのだ。

 

「オーケー、忘れ薬の効能は3時間前と強化薬のテストは最後で熟成を始めたら許可をくれ。それくらいならいいだろう?」

「忘れ薬の効能までコントロールする気か?」

「テスト、なんだろ?そんくらいやってやるさ……ケヒヒヒヒッ!」

 

数日後にテストを行うとの約束を交わし、俺も魔法薬の教室を高笑いしながら出ていった。

次は確か、妖精の呪文学とかいう授業だ。

 

 

 

 

 

こうしてレネが教室を出る数分前、大股で歩くハーマイオニーとその後ろをついていくハリー、ロンが廊下で話し込んでいた。

 

「何よアイツ!完全に私達を笑い物に仕立てあげて弄んで!ちょっとでも気を許した私がバカみたいじゃない!」

 

ハーマイオニーは大いに怒り、廊下をズンズンと踏み鳴らして歩いている。

 

「でもレネのお陰で僕とネビルは減点されずに済んだんだよ、彼は助けてくれたんだ」

「うーん……」

 

反論したのはハリーだった。因みにロンはどちらの言い分が正しいのか分からないので腕を組んで唸っている。

 

「でもネビルは反省文を書かされる羽目になっているのよ!?彼が可哀想よ!」

「いいや、スネイプの様子からするとレネが止めなければネビルは本当におできまみれになっていたのかもしれないよ」

「それはそうなんだけど……態度がね」

 

ロンはレネの態度を思い出す。明らかにネビルを小バカにしており、わざとらしい身振り手振りは見事なまでに腹立たしかった。

 

「兎に角アイツを許す気は無いわ。もし貴方達がレネを擁護するなら容赦はしないから!」

「勘弁してよハーマイオニー、同じ寮生で争う事はないじゃないか……」

 

そんな項垂れたロンの言葉に返答せず、ハーマイオニーは次の教室へと向かっていった。

 

「ハリー、どうする?」

「……うん、あんまり機嫌を逆撫でしたくはないからハーマイオニーに全面的に合わせよう。多分レネなら多少暴言を吐かれた位で気にはしないだろうしね」

「うーん、確かにそれが無難かなあ」

 

こうしてロンとハリーもハーマイオニーの後を追って小走りで変身学の教室へと向かった。

 

 





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