眠らずのぼっち   作:コーラ味

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何度か書き直しました。
誤字脱字多いかも。

今気づいた、邂逅編なのに邂逅してない?



第7話

後日談。という語り始めで良いのか解らないが、正確にはその日で終わった話なので(のち)の日の(はなし)とは言い難い。まぁせっかくなので使わせてもらおう。

兎にも角にも後日談となるが、結局迅悠一はあの戦闘の直後上層部に直行し、玉狛支部に所属したらしい近界民(ネイバー)の正式加入を認めさせた。

代わりに(ブラック)トリガー「風刃」を差し出して。これで、俺以外のA級ソロ隊員の誕生だ。

 

本部長派たる嵐山隊は忍田さんが庇いお咎めなし。俺もまた迅さんに唆された、ということで処罰等は見送られた。しかし、これからはある程度監視がつくことだろう。客観的にも玉狛派として扱われるだろうし。俺の心情的には消極的な本部長派なのだが。

ぶっちゃけ人型近界民(ネイバー)とかどうでも良い。重要なのはその個人が危険思想を持っているかどうかだ。それを迅さんが保障していると言うのだ。異論は無い。

 

正直、迅さんの手腕には賞賛しかない。あの厳格な城戸司令から譲歩を得られるとは。交渉の基本にして究極を見た。曰く「優位に立って主導権を握る」、全くもって同意である。

 

「で、比企谷。何か申し開きは?」

「申し開きも何も、この書類に何か不備でも?」

 

こうして虐げられる立場になってよく分かる。これが交渉(物理)。

 

「『希望する職業、サラリーマン。

希望する職場、適所。

希望する理由、特になし』

君はあれか、こうやって書いたらカッコいいとか思っちゃう痛いやつか」

「格好良い?…とは、特に思いませんが。思いつかなかったんですよ。悩んだんですがね」

「なお重症だな」

 

つまらん答えだ。平塚先生は不機嫌そうに言った。変わっていない俺に、何かしらの期待をしていたのだろう。奉仕部での刺激が俺の感性、思想に影響を与えないのではないかと。

 

ある日の放課後。俺は職場見学の希望記入用紙、それを巡りこうしてまたお説教をいただいていた。例によって雑用を任されながら、したり顔で語る。

 

「人は早々変わりませんよ」

「ならば変わるまで諭すだけだ」

 

諦めるつもりはないと不敵に微笑む平塚先生に見惚れてしまった。

ちっ、見事にカウンターを食らったぜい。

 

「しかし意外だな。ボーダーにそのまま就職するのかと思っていたよ。てっきり内定を貰っているものかと」

「妹の学費分稼げたら辞めますよ。そもそも生活費の為にボーダーになったんで」

「君の分は?」

「スカラシップとって、後はバイトでも」

「まぁ君の成績なら問題ないか。大学は行くつもりか」

「一応」

 

成績学年一位とまではいかないものの、全科目にて5番目までに入っている。これも日頃の勉強の賜物。最近の企業では高卒で働けるところは限定されてしまうからね。全く世知辛い。

 

「あぁー!居た!」

 

突然聞こえてきた由比ヶ浜の声。そういえばもう部活の時間を過ぎていたな。次いで後から雪ノ下もやって来る。

 

「貴方が遅いから探してのよ、由比ヶ浜さんが」

「そういうお前も来てるじゃねぇか」

「…偶々、暇だったからよ」

「まじ大変だったんだからね!他の友達に聞いても大体「え、誰?」だし、知ってる人でも「あぁ、あの」って言葉濁すだけで何も教えてくれなかったんだから!」

「なんで怒られてんだ俺」

 

そんな名前を言ってはいけない例のあの人みたいな扱いだったのかよ。

 

「普通に連絡くれよ。放送で」

「そこまでおおごとにすることでもないし!?」

「ここで携帯電話という発想が無いあたり、使い慣れていないのね」

 

作業も終盤に差し掛かり、平塚先生からお許しをもらったので、彼女らに連れられ部室に向かう。が、教室を出る直前に呼び止められた。

 

「言い忘れていたが、今回の職場見学は3人1組のグループを編成してもらう。しかし今年からボーダーへの見学者のみ、団体での参加を計画している。去年も希望者が殺到して諸々大変だったからな。

ボーダーとしても、これを機会に我が校からも隊員を募りたいらしく色々と計画しているそうだぞ?」

「はぁ、知りませんでした」

「つまり君から何か希望がなければ見学先はボーダーに決まる可能性が高いということだ」

「ま、そん時はそん時でいいっすよ」

 

我が総武高校に所属するボーダー隊員は俺くらいだ。C級隊員が数人居そうだが、流石にそこまで把握していない。学校自体ボーダーから離れているというのもあり、ボーダーという組織に対し他の高校に比べ無知な部分がある。そんな中クラスのぼっちが実はボーダーだったなんて知られたら少し騒がれるかもな。

どうしたもんかと悩んでいると直ぐに奉仕部に着く。と、由比ヶ浜がこちらを向いてもじもじとしだした。

 

「なんだ」

「え、えーと!ほら、ケータイおしえて?べ、別に深い意味はないし!あの、部活のこととか連絡するのに便利だし、ね?」

「あいあい」

 

由比ヶ浜に請われ、俺はポケットに入っていたスマホを差し出した。

持ってるはいいがアプリ等も殆ど入れていないし、学校でも本を読んでいるので使わない。

 

「あ、あたしが打つんだ。…え、普通に連絡先沢山入ってる!?東さん、加古さん…こ、これって女性の名前だよね?ヒッキー!」

「ボーダーだボーダー。防衛任務とかでシフト一緒になるんだよ」

 

だからそんな顔近づけんな。

ソロの俺は穴埋めとしてもよく使われ、B級下位のみのシフトの際援護支援として入ったり、狙撃手(スナイパー)の居ない部隊がシフトの時に呼ばれたりと防衛任務で人と接する機会は多い。

お陰で連絡先はそこそこ知っている。というより無理矢理交換させられた。ボーダーって強引な人多いっすよね。

 

「最初に出てきた東さんってのが元A級1位部隊を率いてた人でな。狙撃手(スナイパー)として弟子入りしたんだ。加古さんもその関係で知り合った」

「えーきゅう?」

「訓練生がC級、主力隊員がB級、精鋭がA級。その中で1番ってこは、つまり1番強い部隊だったってこと」

「へぇーすごいね!」

「それで、貴方の階級は?」

「A級番外」

「…番外、なんてあるの?」

「ボーダーってのは基本部隊で活動するもんだからな。俺は部隊に所属してないからランクも何も無い」

「精鋭であることを感心するべきか、ここでもぼっちであることを呆れるべきか。悩ましいところね」

 

ほっとけ、そう吐き捨てながら由比ヶ浜からケータイを返してもらう。真新しい連絡先として「☆♡ゆい♡☆」なる名前が入っていた。冗談抜きでやめてほしい。つーか、この短時間でよくこんな飾り付け出来たな。

 

唐突に、扉がノックされる。どうぞ、という部長の返事が聞こえたのか、すぐに扉がスライドされ中に入ってきたのは。

あのイケメン野郎だ。

 

「奉仕部ってここで合ってるかな?平塚先生から紹介されてね、いやー中々サッカー部から抜けさせて貰えなくて」

「それで、本題は何かしら?葉山隼人君」

 

暖かな声音を突き刺すように、氷の女王が視線をやる。ある程度その態度を予想していたのか、そいつはケータイを取り出し、画面を何故か俺に見せてきた。同時に左右に女子2人が寄る。疑問を抱いているのは俺だけか。

 

「最近、クラスでチェーンメールが流行っててね。クラスの雰囲気が悪くなってるんだ。けど、犯人探しがしたいんじゃない。チェーンメールを止めたいだけたんだ。頼めるかな?」

 

言いながら見せられるのは「戸部はヤンキー。大和は三股。大岡はラフプレー」といった内容。由比ヶ浜もまた迷惑していたらしく、仕切りに頷いていた。てかお前知ってるなら今見る必要無かっただろ。

 

「成る程、つまり自体の収集を図りたいと」

「そういうこと」

「なら犯人を探しましょう」

「あぁ、たの…え?どうしてそうなるのかな?」

 

動揺をするりと抜け、雪ノ下はつらつらと喋り出す。

 

「チェーンメール。あれは人の最も醜い部分から生まれた最低の産物。止めたいのなら、その大元を隅々まで焼き尽くさないと駄目よ。加減なしに、躊躇なくね。ソースは私」

「実際にあったんだ…」

 

用意に想像できる。こいつがターゲットにされ、ものの数日で根絶やしにされるところまで。

 

「チェーンメールが出回りだしたのはいつ?」

「先週くらいからかな」

「先週、ってーと職場見学の話があったな」

 

それで諸々あった為よく記憶している。すると由比ヶ浜が「それだ!」とずびっと指を指してきた。

 

「ほら、3人1組って言ってたじゃん?こういうのって、誰と行ったかってけっこー大事だし、後々の関係に響くから」

「そんなもんか?」

 

高々その程度で響くような貧弱な関係は要らねえ、という個人の意見は捨て置き。由比ヶ浜の意見通りだとすると、犯人は見えてくる。

依頼人含めこいつらは4人でつるんでいる。だから職場見学の時にハブられるのが嫌だ。辻褄は合う、依頼人は認めたくないないらしいが。

3人を貶める記事をどうにかして欲しくて来たというのに、出た結論は3人のうち誰かが犯人だということ。これ以上ないダメージだろう。

 

 

「あいつらがそんな…。けど…」

「特定する必要は無い」

 

俺の言葉に、3人が此方を見る。目線が何故かと問うてくるため、少々もったいぶって答えてやる。

 

「茶髪。お前多分3人と話してる時に「ボーダーに興味無い」って言っただろ」

「ち、茶髪って…。あ、あぁ。前の昼休みに一緒に食べてる時、戸部に見学先を聞かれて、外資系がいいなって答えたよ。ボーダーはどうかって聞かれた時も、別にいいかなって」

「それ諦めてボーダーに行け」

「…そうか!」

 

その手があった!と喜ぶ能天気。どゆこと?と頭にクエスチョンマークを浮かべている由比ヶ浜に、雪ノ下が優しく教える。

 

「希望者の多いボーダーは特別に団体での見学をすることになっているわ。だからそこを選べば、誰か1人だけ弾かれることも無くなるわね。つまり、チェーンメールをする必要もまた無くなる」

 

雪ノ下は複雑そうだ。犯人を見つけ弾劾することが最善の手段と思っていた為、それ以外の方法を許容しにくいのだろう。確かに今後また何かしらあったときを考えるとそれが一番だ。

 

「犯人は見つからず迷宮入り。そんなその場しのぎは持たない。だから、ちと四人で話し合ったらどうだ?今、すぐ」

「比企、たにくん。そうだな、行ってくるよ、ありがとう!」

「おう、二度と来んなよ」

「ははっ、手厳しいな!」

 

依頼人はいつもの笑みを浮かべながら、部屋を出て行った。…発音的にあいつ俺の名前ちゃんと解ってて言ってやがるな?まぁ知ってたが。

病的なまでに平等に固執するあれが、俺の名だけ頑なに呼ばない。釈然としないが客観的には良い傾向だろう。釈然としないが。

ふと視線を感じた。雪ノ下と由比ヶ浜が此方をじっと見つめて、何やらこそこそ話している。

 

「…ね、ゆきのん。ヒッキーと隼人くんて、なんか、ちょっと微妙に仲良さげじゃない?どーゆー関係なのかな」

「さぁ。私は興味無いわね」

「でもでも、ヒッキーちょっと笑ってたじゃん。ゆきのんも見てたでしょ」

「ええ、まぁ」

 

「聞こえてるぞ。特定の人物が聞いたら鼻血だしそうなこと言うな、別にあいつとは仲良くねぇよ。つか前嫌いだって言っただろうが」

 

特定の人物とは勿論あーしさんもよく一緒にいるメガネ女子の類の女子のことだ。あそこらへんは何に食いつくかわからない。

 

 

「雪ノ下。お前の主義とは違う解決手段を俺は提示した。何か不満はあるか?」

「…いいえ。依頼人の要望に添えるか、といった点で貴方の意見は私に比べて優っていた。その後また出回るようなら探すしかないけれど」

「ま、大丈夫だろ」

 

こうして依頼は速攻で片付いた。楽でいいな、今度からもこれくらいのばかりなら尚良いんだが。

 

 

こうしてチェーンメール事件は無事迷宮入りを果たした。戸部たち3人は奴が居らずとも楽しそうに駄弁っているところを見かけるようになり、クラスの空気も回復したようだ。

そして案の定と言うべきか。俺の見学先はボーダーになった。余り物のため数合わせというべきか、そもそも「適所」と記述したのは俺の為文句は言わない。

 

 

いや最早そんな事はどうでもいい。それより今の俺にはやらねばならないことがある。たった今できた。

 

「で、小町。このファッキンクソヤローは誰だ?返答次第ではこの店は血に染まるぜ」

「きもいよお兄ちゃん。まじきもい」

「うん。ヒッキーきもい」

「気持ち悪いわね」

 

放課後のファミレス。下校途中だった俺は前を歩く2人の中学生を発見した。その内1人は可憐な美少女中学生で、もう1人は正直芋っぽさの抜けない男子中学生だ。まぁそれだけなら只のカップルだなーで終わるのだが、そうは問屋が卸さない。

何故なら美少女中学生の方は、愛する我が妹だったからだ。

 

俺はすぐさまトリオン体に換装、は流石にしなかったが。完全に狙撃手(スナイパー)としてのスイッチが入り、尾行を開始した。

相手の動向を観察し、読唇術で会話を盗み聞きする。

特に恋仲と言うわけではなさそうだ。死人が出るような事はまだ無いようだ。俺としても良かった、こんな所では死体の処分にも困るしな。

 

そうして俺は、2人がファミレスに入った所を見計らい、俺もまた入店したのだ。

すると、ほんの1時間ほど前に別れた由比ヶ浜と雪ノ下、そして最近俺を名前で呼んでくる戸塚が勉強会を開いていた。別段見て見ぬ振りで良かったのだが、由比ヶ浜が俺に気づいてしまい気まずそうに手招きをしたので。

 

俺は、ため息をつきながら小町の肩を叩き、計6人でテーブルに着くことにしたのだった。

 

「は、初めまして、川崎大志っす。比企谷さんとは塾が同じで、ねぇちゃんが皆さんと同じ総武高の2年っす。名前は、川崎沙希って言うんすけど、知ってますか?」

「あぁ!川崎さんでしょ!ちょっとこわい系の」

「誰だそれ」

「く・ら・す・め・い・と!!」

「それでねー、そのおねぇさんが、最近不良化しちゃったらしくて。最近じゃ朝5時くらいまで帰らないんだって!」

「あそ」

 

俺も防衛任務の時は大体それぐらいになる時も多い。が、それはサイドエフェクトのせいで眠れないってだけの話であり、常人ならばそんな生活サイクルでは体が持たないだろう。

まぁ、男の家で寝ているのであれば話は別だが。これを言うのはナンセンスなので口は閉じておく。

 

「ご両親は何も言わないのかな?」

「うち、共働きで。弟と妹もいて忙しくてなんも言わないんす」

「家庭の事情、ね」

 

一瞬目を閉じた雪ノ下はすぐに見開き、凛とした表情で言葉を紡ぐ。

やはりこうなったか。

 

「承ったわ川崎大志君。奉仕部として、彼女の更生に手を貸すしましょう」

 

 

case1.アニマルセラピー

 

「彼女の心優しい部分を引き出すため、猫を拾うように仕向けるわ」

 

「川崎大志から連絡が来たぞ。…川崎沙希は猫アレルギーだと」

 

失敗。

 

case2.ティーチャーズレッスン

 

「ある程度距離のある大人、先生に頼んだらどうかな」

 

「平塚先生に頼んだが、ありゃ駄目だな。結婚云々を言われて逆に諭されてる」

 

失敗。

 

case3.ボーイミーツガール

 

「女の子が変わると言えば、こ、恋でしょ!隼人君、お願い!」

 

「なんか、俺フラれちゃったみたい」

 

「…っ!……っ!」

 

「ヒッキーが見た事ないくらい笑ってる!?」

 

「し、失礼だよ八幡?」

 

「…」

 

「っぐ!?て、てめぇ蹴りやがったな。フラれたからって八つ当たりか?餓鬼じゃねぇんだ、ぞ!」

 

「っつ!?君こそ、子供みたいな真似するなよ!」

 

「…隼人君がこんなことするの初めて見た。ヒッキーもムキになってる…。ね、ゆきのん」

 

「…」

 

失敗。

 

 

作戦は悉く上手くいかず頭を抱えていると、小町から連絡が来た。なんでも、川崎沙希宛にバイト先を名乗るエンジェルなんとかという妙な店から電話が来たと言う。

 

「で、この街でエンジェルと名前のつく店で、朝方まで営業しているのは2店舗しかないらしい」

「それの1つがここ、メイド喫茶『えんじぇる』というわけね」

 

俺、雪ノ下、由比ヶ浜、戸塚の4人はメイド喫茶に来ていた。

今更だがメイド喫茶に男女で入るのってこう、抵抗が。別に無いな。しかし不慣れなのも事実。

 

「だから不本意ながらこの手のプロフェッショナルを呼んだ」

「それって…」

 

唐突に音もなく背後に忍びよるだれか。振り向きながら蹴りを仕掛け…。

 

「ってお前か。驚かせんな」

「それ我の台詞ぅぅ!?は、八幡?何故ゆえ攻撃モーションを!?」

「いや、お前が気配殺すからてっきり敵かと」

「お主実は世紀末出身か!?」

 

「…成る程、材木座君ね。確かにこういったことに精通していそうね」

「ゆ、ゆきのんの目が怖い…」

 

「黙ってついて来い!メイドさんにちやほやしてもらえるぞ?」

「ほう…」

 

ちやほやか。悪くない、悪くないな。いや俺は別にどうでも良いが、仕事だからしょうがないな。初めて仕事が楽しいと思った瞬間である。

が、前進しようとした瞬間に右腕を引っ張られつんのめる。誰だよエデンへの道を阻むのは。

 

「お、お前ら」

 

振り向くと、袖を摘む由比ヶ浜とその後ろから睨む雪ノ下。あり、なんか不機嫌?

 

「なーんかやな感じ」

「別に貴方の性癖なんてこれっぽっちも一切興味無いのけれど、変態谷君。貴方、メイドという文化の由来とか知っているのかしら。オリジナルも知らずに自分の下世話な欲望で汚すのはナンセンスよ」

「だってよ材木座」

「私はあ・な・た・に言ってるのよ」

 

一文字ごとに雪ノ下の白魚のような指で突かれる。だが言い訳をさせて欲しい。男なら誰しも一度くらい可愛いメイドさんにちやほやされたいだろ?そもそもメイド好き=変態という等式には異を唱えよう。

そして俺は逆転の芽を見つけた。

 

「そういうお前だってメイドに詳しいわけじゃないだろ?」

「…だからなんだというの?」

「ほれ」

 

メイド喫茶の看板の、下部分を指差す。『女性客歓迎!メイド服着られます!』の文字を。

 

「お前らも着て、メイドになればそんな偏見も無くなるさ」

「本性を見せたわね、変態」

「おいおいメイド服を着ることが変態になるってのか?そいつは流石に失礼だぜ?」

「…そうね。言いすぎたわ」

「謝罪はいらん。代わりに、な?」

「わ、解ったわ」

 

謝礼の代わりに着替えを要求する。なんか本格的に変態にジョブチェンジしそう。仕方ない、いつになく殊勝なこいつが悪い。ちょっと俯いて照れてる様子が可愛い。

 

 

「お、お待たせしました、ご主人さま?」

 

入店して少し時間が空き、制服からおしゃれなメイド服?に着替えた由比ヶ浜。うーん、普段見慣れない格好をしているせいか落ち着かなずに裾を握っているところとかグッドです。それでいて時折くれる流し目がまた。

 

「わぁ、由比ヶ浜さんすっごく可愛い!」

「そ、そうかな?ありがと、さいちゃん」

「うーむ中々に乙な…」

「あ、中二(ちゅーに)の感想はいいから」

「ほむん!?」

 

いつのまにか目の前に来ていた由比ヶ浜が、潤んだ瞳を俺に向ける。

メイド服も相まってまるでいけないことでもしているようだ。背徳感でご飯3杯はいける。

 

「ど、かなヒッキー、似合ってる?」

「…あー」

 

がりがりと頭をかく。いかんせんこういったことに縁が無い。

純粋に褒めるか、茶化して濁すか。どちらかの反応が大体の人の回答だろう。ならば俺はこの2つ両方をとる!

 

「…ニアッテルゼ、チョーカワイイヨ!」

「何で片言だし!?」

「駄目だよ八幡、こういう時はきちんと言わなくちゃ」

「…あぁ、似合ってるよ」

「そ、そうかな?…ありがと」

 

なぜか真正面から言えず顔を逸らしてしまう。それでもしっかり聞こえたようで、えへへと笑う少女の声が聞こえた。いやまさか戸塚から怒られるとは。実は戸塚が一番男らしい?無いな。

 

「わぁー!ゆきのんやっば、めっちゃ似合ってるじゃん!」

「ありがとう、由比ヶ浜さん」

 

ふと声が聞こえ、振り向く。まぁ予想はしていたが、そんな(童貞)の妄想なんぞは全く役に立たず、雪ノ下雪乃のメイド服姿は俺の網膜に焼き付いた。姿勢や立ち振る舞いから育ちの良さがはっきり解り、ともすれば本物のメイドさんと言っても通用するだろう。

だが、ふと俺は由比ヶ浜も美しく感じた。容姿の話ではない。いや、容姿も確かに良いが、それ以上に雪ノ下を褒める彼女からは一切の欺瞞を感じないのだ。普通自分と同等以上の優れた同性を見かけた場合、真っ先にくるのは嫉妬或いは敗北感だろう。そんな人間をごまんと見てきたから言える。

綺麗なものを綺麗というその素直な感性こそ、最も美しい。

 

そんな二人が並んでいる。俺は呆然と見入ってしまった。

 

「ね、ヒッキー!ゆきのんちょー可愛いよね!」

「そうだな」

 

気の利いた言葉も思い浮かばず口が勝手に動いていた。こんな体たらくでは小町に叱られてしまう。だが雪ノ下は、こんな称賛ともつかないただの同意に何故か動揺していた。

 

「…んっん!貴方からの称賛なんて一片の価値もないけれど、無下にするのも勿体無いし、しょうがないから受け取っておくわ。えぇ、しょうがなくよ」

「はいはい」

「その適当な返事は何?せっかく私が褒められてあげたというのに」

 

褒められてあげた、というパワーワードよ。

 

「…まぁ良いわ。それより、店員のシフト表を調べたけれど川崎さんの名前は記載されていなかったわ。自宅に電話がかかってきたことを考えると偽名の線も無い。つまり」

「ここでは無かったと…。おかしい、我の勘が外れるとは。普段ツンツンしている女子がこう言ったところでデレを見せるのはお約束ではないか!?」

「お前の個人的な趣味だろ。じゃ、次は…」

 

高層ビル、その最上階。

 

 

 

午後10時前、これから夜本番とも言える時間帯。俺にとっても此処からが自分の時間となる。人々が眠りにつき、街が静かになる。

いつもなら曲でも流しながら勉強するか、ボーダーで狙撃訓練でもしているところだ。今日は違った。ちらりと、腕時計を覗く。これも普段はつけてなどいない。社会人ならば母から借りてきたのだ。

壊したらぶっ殺すとのこと。あの母ありにしてこの子あり、ということか。

 

ホテル最上階のバー。そこのドレスコードを突破するために、である。壁に寄りかかり2人を待つ。そこかしこが煌びやかで目がちかちかしてきた。

 

「お、お待たせ」

 

声をかけられ目を向けると、美女2人が此方を注視している。着ているドレスかそれともバーの雰囲気がそうさせるのか、下手すれば年上と錯覚してしまう程妖艶な魅力があった。

 

「…意外って言うと失礼だろうが、良く似合ってるな」

「そ、そーお?ふふ、ありがと!」

「それで良いのね、由比ヶ浜さん」

「雪ノ下もな」

「…えぇ、ありがとう」

「だよねー、ゆきのんヤバイよね!この服もゆきのんから借りたんだけどさ、他にもたくさんあったんだよ!びっくりじゃない?」

「まぁ、こいつならあり得るだろ」

「…調べたの?」

「調べるも何も、雪ノ下建設はボーダーのスポンサーだろ」

 

雪ノ下雪乃の父は県議会に所属し、且つ建設会社の社長らしい。名前などは聞いたことがあるくらい有名である。

 

「…まぁ、所詮は親の功績よ。私自身が何か成したわけではないわ」

「当たり前だな。親の罪が子の罪にならないのと同じくらい当たり前だ。だが、世間はそう見ちゃくれない」

 

少し剣呑な声音を出してしまった。由比ヶ浜の息を呑む声か聞こえ、さて、と空気を入れ替える。

 

「揃ったし行くか。あぁ、戸塚と材木座は服が無いそうだ」

「そう。そういう貴方はあったのね。こうして見ると、やさぐれた会社員みたいだわ。とても高校生には見えないわね」

「う、うん。元々ヒッキーってすごく大人っぽいから」

「褒め言葉として受け取っとく。種明かしすると親父の形見なんだ。お袋からも言われたよ、「死に腐った目とか父にそっくり」ってな」

「「え?」」

 

形見、のところで反応される。何か問われる前に自分から軽く打ち明ける。

 

「四年前の大規模侵攻の時にな。もう吹っ切れたよ、大丈夫だ」

「…その、配慮が足りなかったわ」

「ご、ごめんヒッキー」

「要らないって。それより、行くか」

 

また沈んでしまった空気を戻すべく、エスコートをする。詳しくは知らないが、ある程度は調べてきた。

猫背を直して若干顎をひく。そしてここにいるのは当たり前って顔をする。ポーカーフェイスは得意である。ポーカーも時折諏訪隊に混ぜもらってやったりする。あの人何かと賭け事好きだし。麻雀とか。

 

受付を通りエレベーターにて最上階に跳ぶ。扉が開くと同時にピアノ弾く音が聞こえてきた。上品な音色と、落ち着いた雰囲気のお店。

お客さんもまた静か時間を楽しんでいる。そして…。

 

動揺を全て隠し、そのまま平然と歩く。案内人を待ちカウンターをと頼む。若い女性のバーテンダー、恐らく目当ての人物がいたためだ。由比ヶ浜を見ると小さく頷く。

 

「空いていますか?」

「ええ、どうぞ」

 

一言声を掛け、円滑に会話を進める。先に2人を、と思ったら既に席を決めていた。真ん中を空けて座っている。え、ここにしろって?

 

「…失礼」

 

他の先に座るわけにも行かず、渋々腰を下ろす。そして一言。

 

「バーボン。ロックで」

 

男なら言ってみたい台詞だ。初っ端からだときついかも知れないが、バーに来ると決まってからずっと期待していた。

 

「比企谷君」

「あー、済まん。最初はシンプルなハイボールでも「比企谷君」…もしかしてカクテルが良かったか?オーケー、ジントニックを「八幡君」…」

「…ゆきのん顔紅いよ」

「酔ったせいよ」

 

今席ついたばかりやろがい。だがクラスメイトの声を聞いてハッとした川崎が、此方を見た。

 

「雪ノ下、由比ヶ浜…っ。てことは、…もしかして比企谷?」

「なんで俺だけ疑問系なんだよ。いや知ってる方が驚きだが」

「そっか。バレちゃったか…」

 

言いながら川崎はグラスを拭く。慣れた様子から、決して短くない時間ここで働いていたのだろう。コトリと、目の前にジンジャエールが置かれる。ま、何も頼まないのは不自然だしな。

 

「で、こんなとこまでデートってわけ?」

「誤解ね、私たちは貴方に会いに来ただけよ。そんな下世話なつもりは「さっき名前で呼んでたようだけど?」…噛んだだけよ」

 

バッチリ聞かれていたようで、雪ノ下は目の前のグラスに集中しだした。仕方なく俺が話し掛ける。

 

「お前の弟、俺の妹に相談したんだよ。姉の朝帰りを止めて欲しいって。で、俺達にお鉢が回ってきた。最近周囲が煩かっただろ?」

「へぇ、だからか。…分かった、大志には私から言っておくから。色々迷惑掛けたようで悪いけど、もう関わんないで」

 

やはり取り付く島もない。が、こっちには大義名分がある。

 

「あと少しで午後十時だ、学生のバイトじゃここまで。どうした川崎、帰り支度はしないのか?何なら俺が手伝ってやるぜ」

「…お生憎様。今面倒な客にナンパされててね。あんたらが帰ったら直ぐにお暇するさ」

「そりゃ難儀だな。同情するぜその客とやらには。なんせこんな愛想のねぇバーテンダーじゃ、()がれた酒も不味くなる」

 

酒、と称してジンジャエールを煽る。ちっ格好つかねぇな。だが、 挑発は成功、川崎がぎろりと俺を睨んだ。

 

「なんかヒッキー口悪くなってない?」

「お酒の席だからキザにやってるのよ。さっきも色んな種類を連呼してたし、きっとそういう年頃なのね」

 

聞こえてる聞こえてる。冷静に分析すんのやめろ。

 

「あのさ、川崎さん。そりゃお金が必要なのは分かるけど」

「由比ヶ浜。恐らくお前の「必要」とは深刻さが違う」

「…なに、あんた」

「高2になりゃ色々言われるようになんだろ。進級然り、進学然り」

「そういうことね」

 

納得した雪ノ下。謎と呼べるほどの事でもない。年齢を偽るなんてリスクを背負って金を稼ぐんだ、遊ぶ為ではない。加えて弟妹の多い家庭環境となれば長男である俺には一瞬で理解できた。

 

「…だから何?あんたらが私の金用意してくれるっての?そんな義理は要らない、帰って」

「いい加減に…」

「雪ノ下さぁ、あんたの父親県議会委員なんでしょ?あんたに言われる筋合いないんじゃない?」

 

カランとグラスが倒れる。幸い中身は空だったようだ。家族、こいつのウィークポイントの一つだ。いやはや良く初撃でついたもんだ。偶然だろうけど。

 

「ゆきのん…っ!」

「ごめんなさい、グラスを倒してしまったわ」

「あ、あぁ。別に」

 

気圧されたのか、川崎もそれ以上追及しない。場を改めた方がいいな。

 

「取り敢えず、今日はもう帰るぞ。由比ヶ浜、雪ノ下を送ってってくれ。着替えも置いてあるんだろ。俺はもう少しここにいる。代金は払っとく」

「…解った」

「気をつかわないで。私は別に」

「いいから。ほら、今日は休め」

 

強引に場をきる。2人がエレベーターに乗ったのを見てまた席に座る。川崎が背を向けたまま喋り出した。

 

「…正直意外だね。あんたがこういうことするのって」

「そうみえるか」

「だってあんた。他人とか一番どうでもいいって思ってるでしょ」

「ま、そうだな。そんな俺を見かねて平塚先生がボランティア部に所属させてきてな。その部活動の一環、つーことだ」

「…色々腑に落ちたよ、人選とか。先生らしい」

「曰く俺は一番の問題児らしい」

 

「そうか、きみは学校ではそんな事をしているのか。興味深いね」

 

唐突に男に話し掛けられた。

隣、座っても?と問われ、一拍遅れてええと答える。最初に扉が開いた時、確かに眼があった。俺は気づいた。だがまさかA級といえど影の薄い一隊員に気づくとは。

 

「奇遇だね、比企谷くん。まさかこんな所で会うとは」

「唐沢さん」

 

唐沢克己。ボーダー上層部の一人である。

外務、営業を一手に引き受ける超敏腕部長。分かり易く言えば、ボーダーの外交官となるか。

交渉ごとのプロフェッショナル。少なくとも、俺の知る中で彼より優れた交渉人は居ない。なにせ、政府や外国とまで関わって尚ボーダーがボーダーとして、つまり国に吸収されずにいるのは彼の尽力あってのものが大きい。

 

バケモノのなかの、バケモノだ。

 

「ここはお気に入りの一つでね。お得意さんと良く来るんだよ」

「確かに、良いバーですね」

「お、分かるかい?」

 

きみは未成年の筈だけどな、なんて笑う唐沢さんに、引き攣った笑みを返す。川崎は常連さんとクラスメイトの意外過ぎる繋がりに驚いていた。

 

「なんだっけ、バーボンのロックを彼に」

「は、はい」

「冗談。自分は飲めませんよ、まぁ飲みたくはありますが」

「ははは。なら、またの機会だね」

「ええ、きちんと成人してからですね」

 

やばいな。最初から聞いてたぞ、なんて釘を刺された。

ボーダーの沽券に響くとして、A級隊員の不祥事なんてデマでも流したくないだろう。首を振って分かってると必死にアピールする。

 

「うん、やはりきみは優秀だ。イレギュラーゲートの件と言い、実は少し前からきみには目をつけていたんだ」

「ラッドの事なら迅さんが解決したではないですか」

「その一日前に、東くんから提言があったのを忘れてないさ。彼のサイドエフェクトなら、解決しないことは無いだろうとね。だが、きみもまた独自の路線から答えに至った。彼より、一日早く」

 

これがどれだけのことなのか、私は履き違えたりはしない。

そう言う唐沢さんに、逆に俺がこの人の優秀さを実感する。まさかその事を覚えているとは。そんな些細な事に注視するとは。

功績を残したものだけでなく、その影に埋もれたものの価値をきちんと見出す。常人なら見落とすことだ。

 

「それ以前からも気になっていたんだよ」

「はぁ」

「東くんからきみをA級に上げては、という議題があった時に一通り調べてみたんだ。きみの家庭、学歴、その他性格諸々。勿論サイドエフェクトも」

「まぁ当たり前ですね」

 

精鋭ともなればラボにてボーダーでも一定の権威がある。精鋭、最高戦力となるのだ。危険な思想、何かしらの裏切りが無いか探るのは当然といえる。

 

「結果、きみは正隊員より外務官(わたし)寄りと感じたのさ」

 

戦士というより兵士。戦闘員というより工作員。言われるとしっくり来る。

 

「どうだい、私の部署に来ないかい?歓迎するよ」

 

正直、驚きで声も出なかった。まさかここまで俺を買っている(・・・・・)人間がこの世に居るとは。何より俺自身それを嬉しく感じていることに、驚きだ。カリスマと呼ぶには少々弱い。それはどちらかというと忍田本部長の方が持っているだろう。

 

「今後更にボーダーが大きくなると考えると、僕の方にも人手が欲しくてね。今すぐ移籍どうこうという話ではない。ちょっとした進路相談さ、一つの選択肢と考えておいてくれ」

 

多分この人は、俺がボーダーに猜疑心を抱いていることも理解している。その上で手元に置きたいというのもあるのだろう。打算の混じった提案だからこそ称賛に嘘を感じさせない。

確かに波長が合っている気がする。

 

「…」

「ふむ、性急すぎたようだ。日を改めよう。ではまた」

「はい。お疲れ様でした」

 

失礼、会釈をしてカウンターを去る唐沢さん。去り際すら心得ている。勝てる気がしない。唐沢さんがエレベーターに乗り、扉が閉じるのを確認しふぅっ、と息を吐く。

驚愕と恐怖の入り混じった戦慄が身体を蝕んでいた。ふと気づくと、川崎が目を白黒させている。

 

「…なんだよ?」

「い、いや。別に何でも、ない」

「あーうん、突然悪かったな」

 

明らかにびびってる。ただのクラスメイトの深夜バイト止めに来ただけって話が気がつけば重苦しい雰囲気になっていた。

 

「ひ、比企谷って、ボーダーだったんだ」

「そうだよ。で、あの人は外務部長さま。超上の上司だ」

「そんな人に直々にスカウトされるって、相当じゃない?」

「…さぁな。精々使えそうだからツバつけとこ、てだけだろうし」

「それ充分凄いことだと思うけど」

 

それが良いことかは判らないがな。駄目だ、俺自身混乱している。そもそも高校を卒業したらボーダーは辞めるつもりだった。

あの人が俺の何を買っているのかはわからない。何か裏があるだろうか。…考えがまとまらない。やめだ、やめ。

さっさと目的を果たして、今日はもう帰ろう。

 

「なぁ川崎。スカラシップ制度って知ってるか?」

 

 

 

話は端折るが、無事問題は解決した。川崎の成績ならスカラシップも余裕だろう。バイトも辞めたみたいで学校に遅れてくる事も無くなった。

 

川崎大志からお礼の電話を貰った。ありがとうございました、と。

礼は要らんから妹に近付くな、って言ったがそれはそれらしい。

よし殺すか。

暗殺計画を立てながら優雅にコーヒーを飲んでいると、小町が後ろから抱きついてきた。

 

「おにーいちゃん!」

「…なんだ」

「べっつにぃ、ただ嬉しくって。お兄ちゃん、最近周りのことよく見るようになったじゃん?」

「あ?」

 

じゃれつく小町を片手であやしながら少し懐古する。

平塚先生に部活に入れらてから今日まで、急に忙しい日々を送っていた。この何週間の出来事は目まぐるしく、去年の平穏など嘘の様だ。

その過程で、俺にも変化があったようだ。こと比企谷八幡に関しては、俺より小町の方がよく知っている。その小町が言うならそうなんだろう。

 

「それに、お菓子の人とも会えてたらしいし」

「…ああ」

 

小町の言うお菓子の人とは、一年前の事故で挨拶に来た人の事だろう。つまり、犬の飼い主さんだ。やはり、由比ヶ浜だったか。さて如何したもんか。

 

「結衣さんみたいに可愛い人と知り合えるなら骨の一、二本安いもんだよねぇ」

「そりゃお前の骨じゃねぇもん、なっ」

「わっ!ちょっ、お兄ちゃん!?もう、やめてよね」

 

お返しとして髪をくしゃくしゃにしてやるが、言葉とは裏腹に頬を緩ませ頭を差し出す妹。彼女曰く、俺は少し変わったらしい。

 

確かに最近一つ新たな発見があった。

俺は、メイド好きらしい。

 




恐らく次で三雲君達と会えます。
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