樹海とは神樹様が作り出した結界のようなものである。そこでは勇者とバーテックスのみしか存在しない。樹海での戦いが長引いてしまうと、現実世界にも影響が出てしまうらしい。だが1ヶ月前の戦闘では被害はなかったという。
倒すべきバーテックスはあと八体。
「久しぶりの戦闘だね!気合いが入るよー!!」
「友奈さんに負けないようにがんばります!」
お互いに声を掛け合い、気合いを入れる友奈と樹ちゃん。
「さて!さっさと片づけるわよー!!」
「私は後ろから援護しますね」
さっきまで部活動中にも関わらず寝ていた風先輩も目を覚ましたのか元気である。東郷さんは相変わらず冷静に戦闘態勢へと移っていた。
(僕もみんなに負けてられない!僕が最前線に出てみんなの負担を減らす!)
みんなそれぞれの準備を終え勇者部はバーテックスとの戦闘に移った。
「風先輩!僕が先に武器を投擲してバーテックスの動きを鈍らせます!」
「オッケーよ!じゃあ洸輔が初撃を当てたら……」
風先輩が皆に指示を出そうとした瞬間遠くにいたバーテックスが突然爆発しだした。
「え、洸輔?もう当てたの?」
「今のは、僕じゃないです!」
「ふん、まったくもって!ちょろいわね!」
声のする方を向くと、見知らぬ一人の少女がバーテックスの前に立っていた。
「あれは?」
「もしかして!新しい勇者!?」
赤い装束に両手には日本刀を持っている。
「くらいなさい!」
その少女の戦いは鮮やかだった。バーテックスが追い付けないスピードで、斬撃を与えていき一人で封印の儀をすませていく。
「すごいわね……あの子」
「は、はい」
「これで!終わりよ!!」
バーテックスから御霊が吐き出される。しかし御霊は動く前に赤い装束の少女に破壊された。少女はバーテックスを倒すと、ドヤ顔で僕達の方に向かってくる。
「ふん!揃いも揃って間抜け面しちゃって、それでも神樹様に選ばれた勇者かしら?」
「えっと……」
「なによ、チンチクリン?」
「チン……うぅ」
「いや、背丈だけ見ると君の方が小さいんじゃ?」
「ほっときなさいよ!!男勇者!!」
見たままのことを言ったはずなのに、怒られてしまった。(チンチクリン呼ばわりされた友奈は見るからに凹んでいる。いや背丈だけ以下略)
「気を取り直して!あたしは三好夏凜!大赦から派遣された完成型勇者よ!」
「完成型?」
「つまり、あんた達はもう用済みってわけ。はいお疲れさまでしたー」
「はい?」
言われた言葉の意味を、僕達は理解できなかった。
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新たな勇者である三好夏凜さんは、僕達の戦闘データを元にアップデートされた勇者システムを持って大赦の命令で僕達の援軍にやってきたらしい。
それと同時に三好さんは、讃州中学に転校してきたのだ。
「まさか僕達と同じクラスとはね、ね?三好さん?」
「たく、わざわざ編入生のふりまでしなきゃいけないだから本当に面倒よ」
「夏凜ちゃんすごいんですよ!試験全部満点だったらしいんですから!」
「ふん!あたしにかかればこんなもんよ」
と三好さんは、乏しい胸を張って(本人曰く成長中)そう答えた。
「オイ、今あんたすごい失礼なこと考えたでしょ?」
「ううん、別になにも!(鋭いな、この子)」
「ふん。まぁいいわ!私が来たからにはもう楽勝よ!残りのバーテックスなんて、けちょんけちょんにしてやるわ!」
「あ、風先輩!そいえば、夏凜ちゃん勇者部に入るっていってました!」
「そそ、それはあんた達の監視のために入るだけよ!勘違いしないでよね!」
友奈に笑顔でいわれ、三好さんは動揺して口調があからさまなツンデレっ娘になっていた。
(なんか可愛いな)
「まぁまぁ、とりあえず落ち着いてこの書類にサインを」
「わかったわよ……ってこれ入部届じゃない!!」
「おお、流れるようなノリツッコミさすがだよ!三好さん!」
「全然誉められてる感じがしないんだけど!?それ!」
「ナイスツッコミ」
「~~~!いい!?私の足を引っ張ることだけは許さないわよ!」
そういって三好さんは部室から出ていった。しかし、先ほど閉められたはずのドアが開き、顔を真っ赤にした三好さんが出てきた。
「バック忘れちゃった……」
「三好さんって可愛いね」
「は!?な、なななにいってんのよ!こいつは!」
「いや、ごめんなんかあれだけの決め台詞をいっておいて顔を真っ赤にして戻ってきたのが可愛いなぁって思ってつい」
「~~!と、とりあえずあんた!ちょっとついてきなさい!!」
「え!あ!ちょ、ちょっと!!」
そのまま三好さんに胸倉を掴まれ、ずるずると連れていかれる僕。部室から出る際に、友奈様と東郷様の目から光が消えていたのを目撃していた僕なのだった。(よくわからないけど多分謝らないと殺されるので、全力で謝ろうと思った)
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「な、なんすか、三好姉さん?ぼ、僕そんな金持ってないっすよ?」
「だから、カツアゲじゃないっての!!はぁ……単刀直入に言わせてもらうわ。あなた勇者をやめなさい」
「……理由は?一体なに?」
三好さんは僕に大赦から言われたことを伝えてくれた。天草洸輔の端末には精霊が宿っていないこと、本来予定されていた装束と違っていたことなども、三好さんが僕にやめろと言ったことの理由らしい。
「装束が予定されてたものと違ったっていうのはどういうこと?」
「本来、あんたの装束に予定されていたのは、あの四人の能力を一時的に展開して戦う。言ってしまえば、あの四人の劣化版になる予定だったらしいわ」
「あと精霊が宿っていないっていうのは?」
「そのままの意味よ。あなたの勇者システムには精霊がいないのよ。だからバリアが発生しない可能性があるの、つまり致命傷を受ければ即死もありえるってことよ」
「そう……か」
「さぁ今決めてちょうだい。やめるの?やめないの?」
「やめないよ。たとえどんなにみんなより危険な状態であったとしても、僕は大切な人たちを守るために勇者になったんだ。今さら逃げる気なんてないよ」
「……はぁー」
そう僕が答えると、三好さんは呆れたかのようなため息をもらした。
「わかったわ。大赦には勇者を続けるってことで、私から報告しといてあげる。でも忠告はしておく。あなたの勇者システムには謎が多い、何が起きてもあなた次第よ?」
「三好さんって実はやさしいよね」
「んな!?勘違いしないでよね!あたしはただあたし自身のためにうごいてるだけよ!!」
「なんにせよ。忠告ありがとね三好さん!それじゃあ部室に戻るとしようか」
お礼をいい僕が部室に戻ろうとすると、三好さんに呼び止められた。
「待ちなさい!もうひとつ用件があるわ、私と勝負しなさい!」
「……勝負?」
「ええ!あんたの力がどんなものなのか、気になってたからね。だからあたしがあんたの実力を、測ってあげるわ!」
僕を指差し堂々とそんなことをいう彼女を見て、くすっと僕は笑ってしまった。
さてというわけで7話でございました!次もオリジナル展開で話が進むと思いますので楽しみにしていてください!(感想をくださった方々には感謝を!)