お前は、何故勇者になれている?
『選ばれたから、だ』
誰に?
『精霊さん、いや、英霊と言ったほうが分かりやすい、その人達にだ』
本当に?
『どういう意味?』
少しは疑わなかったのか?あまりに都合が良すぎると
『都合が良すぎる?何が?』
ああ、だからお前はダメなんだ
『ダメ?何が、何がダメなんだ?』
見てみろ、
『何が……!?』
さっきまで感覚なんてなかったはずなのに、体には激痛が走り始める。まるで、何か途方もない大きな力に飲み込まれているような感覚。
視線を少し横へ移すと、手は竜の形に変化しており鱗のようなものが体から生えてきている。背中にも謎の痛覚を感じる、おそらく何かが生えてきている。止まらず、止まらず、止まらず、ただ溢れる。
謎の痛覚に絶叫する。
『あ、あああああああああああああああ!!!!!!』
時間の問題だ。お前が己という存在は■■によって作られた■りの■■と自覚する日がな。その時、お前は、正真正銘■■では■■■■。
だが、まぁ、■■次第で何かが変わるかもしれないがな。
「……」
目を開く。起き上がり体中を軽くペタペタと触る。どこにもおかしなところはない。
「夢……だよね、はは、中々リアルな夢、だな」
途切れ途切れに言葉を吐く。汗が止まらなかった、夏でもないのに気持ち悪いくらいに噴き出してくる。
外からは鳥のさえずりが聞こえてくる。目覚まし時計も甲高い音を上げながら朝だと主張してくる、喧しいとそれを半分殴るようにとめた。
「あ、そういえば、今日は友奈に朝の鍛錬に誘われてたんだった」
すぐ思考を切り替え幼なじみとの約束を果たしに、僕は家の前にある砂浜向かったのだった。
鍛錬をしている間も、夢の中で見た光景が頭から離れなかった。
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学校の教室、帰りの会的なものが終わりさっきまで静かだった教室に騒がしさが戻ってくる、皆元気そうだ。
「にしても、今日も早い帰りか……まぁ、楽でいいけど〜」
ぼちぼちと帰り支度をする。どうやら、この前に続けて今日も早い帰りらしくクラスメイト達は浮き足だっていた。
「おい、おいこら、色男」
「なんだよ、三枝……てか、その呼び方やめて」
ボーッとしている所に、三枝のチョップが炸裂し中断をくらう。
「朝から、友奈とあんたの距離がちょっとぎこちない気がするんだけど、……ふふ、面白!」
「あのねぇ、誰のせいでこうなったと思ってるんだよ?」
「おそらく、私のせい」
「恐らくじゃないだろ、確実にお前のせいじゃないか!」
「怒鳴らないでってば〜にしても、よくこんなに騒いでんのに寝てられるよねぇ?友奈は」
「朝も早かったからね、疲れてると思うし帰るギリギリまでは寝かせてあげたい……って、言ったそばから」
ほえ〜っと、変な声を上げながら三枝が友奈の頭をつんつんと触る。友奈さんは僕の後ろの席でぐっすり眠っていた。
朝から、僕の鍛錬に付き合ってくれたから、仕方ないとも言える。(尚、いつも以上に組み手では、ボコボコにされた)
この前の出来事から、いつも通りといえばいつも通りの友奈なんだが、地味に拗ね気味な気がする。困る、すごい困る、昔から友奈に拗ねられるとどんな顔をしていいか分からなくなる。
「全く……僕の苦労ももう少し考えてくれよ」
「悪かったって。どうなるか気になったんだよー」
「どうなるかって気になった?何がさ」
「んー、色々と?」
「なんで疑問形なんだよ、てか、僕らを実験台みたいに使うのはやめてくれって」
「それは嫌」
「即答!?ほんと、なんなのさ……」
はぁ、と盛大な溜息が自分の口から出た。
「でも、ほら、天草クン。まだ最終兵器が残ってるんじゃない?」
「その言い方癪だな……別に、ご機嫌取りに使うんじゃない。そもそも、友奈とは一緒に行こうって約束してたんだ」
そう言って僕は鞄の中から、目の前の悪魔から受け取ったジェラートの無料券を取り出す。
「流石だねぇ〜一級フラグ建築士の天草くん?この前は見知らぬ美少女達と、そして今日は愛する彼女と!って奴ですな?」
「か、彼女!?ち、違うって、僕と友奈はそういう関係じゃ…」
三枝の言葉に、激しく動揺して弁明すると彼女は腹を抱えて笑いだした。
「ぷ、あはは!!そんなに動揺しなくてもいいじゃん、ぷぷおっかしいのぉ〜」
「っー!三枝が突然、変なこと言うからだろ!?」
「ふぅ…ひぃ……これだから、天草は面白いぃ(笑)」
お前は、どこの地球外生命体だと突っ込みたい気持ちを抑える。すると、三枝は腹を押さえながら時計を見て言った。
「さぁーて、私も帰るかねぇ〜もっとからかいたかったんだけど」
「もう、堪忍してくれ……」
「ふふっ、それじゃ、放課後も頑張ってねぇ〜天草クン?」
「元はと言えばお前のせいってこと、忘れるなよ?」
「へいへいっと、そいじゃな、天草。友奈にもよろしく言っていて」
「はいよ、また明日……っと、そうだ、三枝」
「ん?どした?」
「弓道、頑張れよ。応援してる」
僕の言葉に三枝は一瞬固まる、がすぐにいつも通りのにやけ面に戻ると「ほいほい、応援ありがと」と気の抜けた返事をしながら、三枝は教室から出て行った。
「むにゃ……あれ?もう学校終わったぁ…?」
「あ、友奈起きた」
「洸輔くんおはよ〜」
「おはよ、ほら、学校も終わったし帰るよ〜友奈さーん?」
ふにゃふにゃな表情で、こちらを見つめている友奈。そんな彼女の頬を軽くぺしぺしと叩きつつ問いかける。
「友奈、この後用事ある?」
「ん〜、特に無いと思うなぁ〜」
「じゃあ、付き合ってもらっていいかな?」
「……ふぇ?」
僕の言葉に、まだ眠たそうな眼差しを僕に向けながら友奈は首を傾げた。その仕草を、見て可愛いと素直に感じた。
とりあえず、友奈には色々と言わなくちゃならないこともあるから今日一緒に出かけるのが最適だろう。主に3人のことについてとか、それとぉ合宿のこととか……。
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というわけで、二度目の大橋inイネスへとやってきました。なんというか、短いスパンでこんなにイネスにお世話になるとは思っていなかった。
「何度見てもでかいなぁ、イネス」
「あはは、そうだねぇ〜」
「あ、あのー友奈さん、その、棒読みなんですがぁ……僕、なんか悪いことしましたか?」
「……」
僕の言葉に友奈さんはジト目を向けてくる。何故かは知らないここに来るまでも、すごーく拗ね気味な雰囲気をだだ漏らさせていた。
「付き合ってって言ったから、期待したのに……」
「う、うん?付き合ってって言うのは、ほら一緒にアイスを食べに行こうって約束の事で(所で、期待ってなんに対しての期待?)」
「そ、そんなの知ってたもん!」
ぷくーっと顔を膨らませた友奈に軽く怒られてしまう。また、怒らせることをしてしまったようだ……女の子って難しい。
「……ふんだ、洸輔くんの馬鹿」
「ば、馬鹿(泣)……っと、ちょい待ち友奈」
一人でイネスに入っていこうとする友奈の手を反射的に掴む。
「友奈はイネス初めてでしょ?一人で行って中ではぐれたりしたら危ないんだし、ここは、手を繋いでいこう?」
「っ……相変わらずだなぁ」
「どういうこと?」
「別に〜なんでもないよー!それじゃ、ジェラート屋さんまでの道案内は洸輔くんに任せるね〜!」
そう言った友奈の顔はどこか楽しげだった。さっきまでの膨れっ面はどこへ行ってしまったのかと思うほど、にこーっと笑っていた。その笑顔に、見惚れてしまう……寝顔といい笑顔といい小学生友奈の破壊力すごい(確信)
「ほい、こちらがそのジェラート屋さんでございます」
「へぇ〜!すごい!色んな味がある〜!!」
嬉しそうにピョンピョン跳ねている友奈をどうどうと諫める。
「友奈はどの味にする?」
「私はやっぱり苺かな!大好きな味だし!うどん味があれば別だけど」
「う、うどん味……え、えと、じゃあ僕は〜チョコかな」
友奈の謎発言に驚きながらも、この前の祝勝会の際に僕を震え上がらせたチョコ味を選択する。三枝からもらった無料券を使い、ジェラートを購入した僕達は、席へとついた。
「はむっ……うーん!おいひぃ〜♪」
「やっぱりうまいなぁ〜チョコ味サイコー」
お互いにジェラートの味を楽しむ、さて、いつ話を切り出そうか……まずは、あの3人のことについて弁明しなきゃならないしその次には合宿のことを…
「なるほどぉ〜洸輔くんはここであの子達とイチャイチャしてたんだぁ〜」
「ゴフッ……え、ええとぉ、友奈さん、それについて僕から弁明というか言い訳というか」
「いいよ、聞いてあげる♪」
やばい、やばいよ、目の奥に何か究極の闇みたいなものが見える。ハイライトが消えてるのか、これ?これは言葉を選ばなくちゃいけない。
そうして、僕は勇者としての関係性を除きつつ友奈に彼女達の関係を上手く説明した。まぁ、恐らくだけど勇者のことはこの前みたいに口封じ的なものがされているから喋れないんだろうが。
第一として彼女達とは友達であるということ、あくまでジェラートを一緒に食べていただけで、デートとかそういう部類ではございませんって事などなんとか逆鱗に触れないよう説明をした。そんな中で友奈の瞳に色が戻ってくる。
「なんだぁ〜そういうことなら最初から言ってくれればよかったのに」
「いや、言おうとしたけど友奈が話を聞いてくれなかったのが悪…」
「なぁにぃ?」
「はぃ、僕が悪いですぅ、すいませんでしたぁ!」
半分涙目になりつつ、チョコ味のジェラートを口へと運ぶ。うん、おいしい、現実は甘くないけどジェラートは甘いなぁ……すいません、今のは忘れて。
「洸輔くん、今面白くないこと考えてるでしょ?」
「えっ、何それひどい」
心を読まれただけでなく、一蹴された。うん、単純に泣きそう。
「にしても、友達かぁ〜」
「うん、友達」
「友達同士って気軽にあーんって、しあうものなのかなぁ?しかも、男の子と女の子が」
「……す、すると思うよ、うん」
「じゃあ、はい、あーん!」
そう言って、友奈は自分のアイスをすくいとり僕の方へ向けてきた。
「えと、急にどう」
「あーん!」
「……わ、わかりましたから!あーん…」
少し気恥ずかしくなりながらも、苺味をいただく。というか友奈さん、もう少し音量を下げて……周りの人達がめっちゃ見てる。
「じゃあ、次は私に!」
「はぁ〜わかったよ、はい、あーん」
「ん…んー!おいしい〜」
友奈が幸せそうに笑みを浮かべている。相当、チョコ味にご満悦のようだ、その笑みを見れてこちらも嬉しくなる。そうだ、もう一個友奈には報告しなきゃならない事があったっけ。
「後…友奈。もう一つ話があって」
「?」
「実は、僕次の三連休でとある合宿に参加しなきゃいけなくなって」
「えー!てことは、三日間も洸輔くんに会えないの!?」
「ま、まぁ、そういうことになるのかな?」
「三連休は洸輔くんと一緒に遊びたかったのになぁ……」
しゅんと残念そうに縮こまる友奈。てゆーか、なんか照れ臭い……友奈の発言に少し頬が熱くなる。
「あれ?でも、洸輔くんってなんか習い事やってたっけ?」
「あ、ああ、その合宿っていうのは……えーと、なんていうか、そ、そう!ボランティア活動的なやつで」
「ボランティア?」
「そうそう!親が、勧めてきたやつなんだ〜」
「そうなんだ、むー言ってくれれば私も一緒に参加したのにぃ」
「ま、まぁ…その、男手が必要って話だったから」
神樹館組の3人と一緒に、勇者の為の強化合宿へ!なんて言えるはずもなく、その場で思いついた言い訳でなんとか取り繕う。すると、友奈が納得しつつもなにかうーっと呻きながら何かを考え込んでいる。
「?友奈、どったの?」
「じゃあさ、三連休の会えない間、いつでもいいから必ず一回は私に電話してもらってもいい?」
「えっ?な、なんで?」
「なんで、って……その」
僕の質問に友奈は、視線を僕から逸らし頬を染めながら呟いた。
「一日に、一回は洸輔くんの声が聞きたいから……」
「っ!?あ、ああ、そ、そういうこと……ね。わ、わかった、一日一回、ね」
「っ〜〜!ジェラート、溶けちゃうと困るし、急いで食べよ?」
「う、うん、そうだね」
そういう事ねといいつつ理解が全く、出来なかった。その後は、お互いに顔を直視できずジェラートとの睨めっこで時間が過ぎていったのだった。
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フードコートでジェラートを味わった後も、イネスで色々回って過ごしている内に夕方になっていた。帰れなくなっては困る為、僕らは、帰りの電車に乗っていた。
乗って少し経った辺りで、友奈はすやすやと眠ってしまったが。
「すぅ……すぅ…」
「ぐっすりだなぁ、まぁそりゃそっか。あんなにはしゃいでたもんね」
教室でもあんなに寝てたのになぁ。まぁ、帰りの電車で寝てしまうほど疲れたんだろう。最初は大丈夫か不安だったけど、なんだかんだで拗ね気味だった雰囲気も徐々に消えていって安心した。
(懐かしいな、友奈とずっと一緒だったんだよね。いつも)
こうやって過ごしていると、この時代の事をよく思い出す。こんな事があったなぁと。すると、横にいた友奈の顔が僕の肩にころんと乗っかってきた。
「んん……」
「全く、困った幼馴染みだ」
自然と笑みが漏れる。友奈の方に視線を向けるとすゆすやと心地良さそうに寝ていた。
(ありがとう、友奈。君がいつも通りでいてくれるから、怖くても僕は頑張れる)
胸の内で友奈にお礼を言いながら、今朝見た夢の事を考えつつ視線を自分の腕の方へと移した。
(合宿……頑張らなくちゃ。きっと、何か掴める筈だ。ああ、そうさ、分からない事が多くても、やらなくちゃならないんだ)
拳を強く握りしめ、僕はそう胸の内で呟いた。
全く、終始イチャイチャしおって。不穏な雰囲気なんて吹っ飛ばせそうじゃないか!
とりあえず、まだまだ休みが伸びそうなので頑張って投稿します(^O^)