天草洸輔は勇者である   作:こうが

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もう少しで100話行くという事実…(驚き)


六章 波乱の合宿開始!

「えっと〜?着替えよし…お土産用の袋よし…今日のおやつよし…大方準備は出来たかな」

 

合宿当日。早めに目を覚ました僕は昨日突然スマホに送られてきた、合宿概要を見つつ忘れ物は無いか、最終確認を行なっていた。

 

「差出人、不明とか怖すぎるからせめて書いてほしいな……ま、いいか」

 

軽い愚痴を吐きつつ、リュックの中の荷物を整理していく。三日間の合宿ということは、着替えやその他の荷物もかなり必要になる。それを見越しお母さんが物を用意してくれたのだ、本当に頭が上がらない、ありがとう、お母様。

 

しかし、昨日しっかり閉めたはずなのに、大きめバッグの方のファスナーが空いてるのはなんでなんだろか?お母さんが、中身の確認までしてくれたのかな?

 

(今、動いたような気が……気のせいか)

 

疑問を抱きながらも、整理している内にある事を思い出す。僕は机の方へと向かった。

 

「この二つは、絶対持ってかなきゃ…」

 

それは、二つの押し花。僕が勇者になってから、得た絆の証。これを持っているだけで、常に皆と一緒にいるような気持ちになる不思議でいて、大切な御守り。

 

「……友奈、来ないな。昨日は僕を起こすってあんなに張り切っていたのに」

 

そろそろ彼女が階段を駆け上がってくる音が聞こえてもおかしくないのだが……もしかしたら、まだ眠っているのかも知れない。合宿出る前に一回は、顔を合わせたかったのだが。

 

「僕も人の事言えないや。ちょっと離れるだけなのに……少し、寂しい」

 

自身の呟きに照れ臭くなった僕は自分の頭を乱暴に掻いた。こんな事、友奈に聞かれていたなら恥ずかしくて悶死する自信がある。

 

「さてと、もう一つのリュックも確認しとこう。こっちの方が大きいから……うわぁ!?動いたぁぁぁぁぁ!?!?」

 

荷物を詰める為に大きな方のバックに触れようとすると、独りでにもぞもぞとバックが動き出した。唐突の怪奇現象に、僕はぶるぶると震える。

 

何を隠そう、この僕、天草洸輔はお化けとか怪奇現象関係が超苦手なのだ!!

 

(なんて、何も無いところにドヤっている場合じゃ無い……)

 

未だにもぞもぞと蠢いている大きめお化けバッグに近づいていき、恐る恐る鞄の中身を確認した。すると、身を抱えながらバッグにピッタリと収まっている子と目があった。

 

「あっ、やっと気づいた」

「……」

「洸輔くん、おはよう!」

「…………バイバイ(満面の笑み)」

「えっ?ちょっ、ちょっと待って!閉めないで!?こ、洸」

 

中にいた不審者さんからの挨拶を遮り、無言でファスナーごと閉める。何やってんの?ねぇ、この子、何やってんの?もう、このまま閉じ込めてやろうかと思ったが鞄の中から、「出して〜!!」と悲痛な叫びが聞こえたので、出してあげる。

 

「……で、バッグの中で何やってたの」

「えへへ〜ごめんなさい。こうすれば驚く……というか、普通に起こすのも良いかと思ったんだけど。こっちの方が面白いかなって〜」

「うん、面白すぎたね、朝から大笑いだ(棒)」

「やっぱり!?じゃあ、成功だ!やったー!」

 

全くこの子は無邪気というかなんというか……頭を抱えながら、友奈を見つめる。しかし、友奈と顔を合わせられて少し嬉しくなっている自分もいるからなんというか、変な感じ。

 

「良い事も聞けちゃったし〜♪朝からいい気分だよぉ〜」

「良い事?」

 

僕が首を傾げると友奈はニヤっと悪い笑みを浮かべたと思ったら、急にキリッとした顔立ちで_________。

 

「コホン……『友奈の事、僕も言えないな。幼馴染とちょっと離れるだけなのに。少し、寂しい』」

「……」

「いやぁ〜ただ驚かせるだけの予定だったのに。まさかの収穫だったな〜♪洸輔くんが合宿行っちゃう前に良い事聞けちゃった〜♪」

「ーーーーーー!!!!!!(顔を両手で覆いながら悶絶中)」

 

早起きは三文の徳って言うけど、どこがなんだろう。

 

どーして、朝からコウナルノ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「酷い目にあった……朝から恥ずかしさで死にたくなるとは普通思わないだろ」

 

溜め息混じりに呟く。とりあえず、昨日送られてきたメールの内容にもあった合宿先まで行く為のバスが待機している場所まできた。

 

「あっ、あった。……神樹館貸し切り……本当、大赦って……」

 

今更、大赦の権力の強さに過剰反応しても意味ないのはわかっているのだが……貸し切りという文字を見て、口元を痙攣らせてしまった。

 

「あっ、鷲尾さん。おはよう」

「天草くん。お、おはようございます」

「もう来てたんだ、早いなぁ。園子は……」

「すぴ〜…すぴぃ〜…」

 

鷲尾さんの肩に園子が体を寄り添わせながら、気持ちよさそうに寝ている。相変わらず、マイペースだなぁ。左側に園子が座っていたので、鷲尾さんの右側の席に腰を掛けた。

 

「あれ?銀は?」

「それがまだ、来ていなくて。安定の遅刻、かしら…」

「安定?……まぁ、本来の集合時間までもう少し時間もあるし、大丈夫じゃない?」

 

そんな事を言ったが、集合時間までには銀は来なかった。その結果…

 

「遅い!銀、遅い!」

「すぴ〜…すぴぃ〜……」

「あ、あはは……(ひぃ、めっちゃ怒ってる!?)」

 

怒る人+眠る人+怯える人の三拍子揃った謎の状況が出来上がっていた。美森が怒った時もめちゃくちゃ怖かったけど……この時代から同等の迫力を持っていたのか。恐ろしい。

 

「まぁまぁ、鷲尾さん。一旦、落ち着こう?ね?」

「分かってます!分かってますけど……時間厳守とあれだけ…」

 

かなり怒ってるなぁ。でも、合宿前からこんなに気を張っていたら、疲れちゃいそう。よし、ここは彼女の気を緩めてあげよう。

 

「鷲尾さん鷲尾さん」

「なんです……っ!?」

「ふぇ〜」

 

(ふっ、かつて友奈を大笑いさせた僕の変顔の威力をくらいなさい!)

 

「……」

「は、はれ?」

 

無反応…だと。えっ、どうしよう。より怒らせちゃった感じ?無言、無言キツすぎないかな?は、早く、何か反応を示して、この顔維持するのめちゃくちゃきついし、精神的にキてるから!

 

「わ、わひおしゃん…?」

「っ、ふふふ…だ、ダメ…が、我慢できない…あ、天草くん…なんですか、その顔…」

「よかった〜無反応だったから焦ったよ〜」

「いきなりだったから固まってしまって…にしても、さっきの顔……ふふ」

 

さっきまで無反応だった鷲尾さんの表情が緩んだ。良い笑顔だなぁ…これで、少しは気を緩めてあげられたかな。

 

「よしよし、やっと笑ったね」

「えっ?」

「鷲尾さん、ここにいる間笑ってなかったでしょ?ずーっと気を張ってるみたいだったから笑わせて、少しでもリラックスしてあげられたらなぁ〜って」

「……」

「……もしかして迷惑、だった?」

「い、いえ!私を心配してくれたのは嬉しいです。ありがとうございます、天草くん」

 

ペコリと頭を下げる鷲尾さん。ほんと真面目だな…この子は。何かというと律儀だし。

 

「あ、それと、話す時は敬語じゃなくて大丈夫だよ。同い年だしさ」

「でも、まだ会ってそんなに経ってないし…」

「真面目だなぁ〜鷲尾さんは。気にしなくてもいいのに。そうだなぁ……じゃあ、はい」

「…?なんで、急に手を?」

「改めて、よろしくも込めた握手をと。ほら、鷲尾さん」

「え、えぇ!?」

 

僕の言葉に鷲尾さんは、困惑したような表情を浮かべる。少しの静寂の後、顔を赤くしながらも鷲尾さんは手を握ってくれた。

 

「……その、改めて、よろしく。天草くん」

「うん、よろしくね。鷲尾さん」

 

僕が笑顔を向けると、彼女も柔らかい表情で返してくれた。距離があった鷲尾さんと、少し近づけた気がした。この合宿でもっと仲良くなれるといい……。

 

「遅くなってごめ……おっと〜?随分良い雰囲気じゃないかぁ〜お二人さん?」

「ぎ、銀!?」

「いつの間に!?って、それより!銀、遅い!昨日あれだけ張り切っていたのに十分も遅刻じゃない!」

「いや、そこに関しては真面目に面目ない。でも〜私が遅れて案外よかったんじゃないのぉ?須美ぃ〜」

「そ、それはどういう意味よ」

「さぁ、どういう意味だろな〜?」

「っ!!ぎーんー!?」

 

銀と鷲尾さん。二人の微笑ましい(?)取っ組み合いが始まった。その声で起きたのか、目を擦りながら園子が起き上がった。

 

「う〜ん、お母さんここどこ〜?って…うひゃあ〜わっしーとみのさんどうしたの?こうくん〜?」

「うーん、僕にも何が何だか……」

「あ〜なるほど〜こうくんのせいだねぇ〜」

「えっ!?なんで!?」

 

よく分からないが、園子から理不尽な事を言われた。バスが動き始めても二人の取っ組み合いは終わらず、僕と園子はそれをニコニコしながら眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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讃州サンビーチと呼ばれる場所へ、僕、銀、園子、鷲尾さんの四人は向かった。そこで待っていたのは、身軽な服装に身を包んでいる女性の姿だった。

 

「貴方が、天草さんね」

「は、はい!はじめまして、ええと……」

「はじめまして、私は安芸と言います。大赦から勇者をサポートする監督役を、そして神樹館では彼女達の担任教師を務めているわ」

「は、はぁ…」

 

ピシッとしてて、礼儀正しい綺麗な人だ。でも、大赦の人間…って感じのしない人。仮面をつけてないからっていうのもあるのか?

 

「えと、なんて呼べば…」

「安芸先生でいいんじゃない?」

「だねぇ〜これからはこうくんにとっても先生みたいな感じになるし〜」

 

僕達のそんなやり取りは、安芸先生の咳払いで中断される。すると、安芸先生は僕の方をじっと見つめてきた、やがて口を開く。

 

「天草さん、訓練を始める前に一つ聞いてもいいかしら」

「なんでしょう?」

「あなたは、彼女達と一緒にこの勇者というお役目をやり抜く覚悟はある?」

「……もちろんです、僕も彼女達と同じく神樹様に選ばれた勇者ですから」

「そう……わかったわ」

 

僕の返答に、安芸先生は何かに安堵したような表情をしていた。突然の質問の意味も、表情の意味も僕には分からない。

 

「お役目が本格的に始まった事により、大赦は全面的に貴方達勇者をバックアップします。家庭の事や学校の事は心配せず頑張って!」

『はい!』

 

こうして、僕達、勇者の強化合宿が始まった_________。




次から、合宿編が本格スタートでございます!いやぁ、イチャイチャが止まらないなぁ……合宿はどうなることやら。


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