今回はわすゆ編からの新キャラでもあるあの子が活躍します。言っちゃえばオリキャラ回であります。(わすゆ編なのにわすゆ組が出てこない事になってしまい申し訳ない)
5限まである授業をなんとこさ、睡魔からの誘惑に耐え乗り切った。放課後、クラスメイト達が帰り支度をしている中で、机に突っ伏しながら考え事をする。
『お前は、自分の事を全然理解できてないぜ?最初から、な』
昨日の戦闘中にもう一人の自分から言われた言葉が、思い出される。異変のことについて、もっと考えるべきことがあるはずなのにこればかりが頭の中で何度も再生される。
「理解できてない……僕は、僕……だよな」
周りには聞こえないように小声で呟く。疑問は募るばかりで、解決した問題が少ない。ただ、時間だけがすぎているばかりな気がした。
しかし、焦るのも良くない。西暦ではその焦りが心の隙を生んで、大事な仲間達を傷つけてしまったのだから。
「でもなぁ……いって!?」
「さっきから話しかけてんのに何がでもなぁ〜だ、最近ちょっと可愛い女の子達に囲まれてるからって調子に乗るなよ〜?」
「えへへ〜」
デコピンを食らわされ、おでこを押さえる僕。友奈をまるで愛犬のように可愛がりながら、こちらに軽い非難を寄せてくる三枝。三枝の巧みな撫で方ににぱーっと微笑む幼馴染。「そうだそうだぁ!」や「あの三枝さんの言い方!まさか友奈ちゃん以外にも!?」などとすごい剣幕で僕を睨みながら、まるで反対運動をしている民衆の如く声を上げるごく一部分の男子達。
(ドウシテコウナッタ)
「どうしてこうなってるのかわからないのが、あんたの悪いとこだよ。少年」
「勝手に人の心の中読まないでよ、怖いから」
「洸輔くん!ドンマイだよ!」
「どこをどうとってのドンマイ!?」
怒涛のボケからのツッコミラッシュ。なんかちょっと面白くなってきたが、そんな時、教室の扉が開き担任の先生が入ってくる。同時にさっきまで騒がしかった教室は静かになると、帰りの会的なのが始まった。
いつも通りの流れで終わるはずが、担任のある発言から教室の雰囲気が先ほどとは違った騒がしさに包まれる。
理由としては、今日は来週行われるドッジボール大会の為に4.5.6年生の体育委員が体育館清掃を行うことになっていた。もちろん、このクラスからも出ることにはなっている。しかし、今日はその体育委員2人が休んでおり、欠員が出てしまったらしく、その代理をクラスの中から出したいそうだ。
だが、そんなことをいきなり言われた所で簡単に手が上がるわけもなく……。
「まぁ、そうなるわよね〜」
隣の席の三枝が呆れた声で呟いた。クラス中からも様々な文句が小声で聞こえてきており、軽い擦りつけ合いが始まっている始末である。先生も困り果てているようだ。
このままだと更に収拾がつかなくなるのは、目に見えている。無理矢理決めた所で、嫌な気分になる子も出てきてしまうだろう。そもそもこの帰りの会が伸びるの自体、皆んな嫌なはずだ。ならば、僕がするべきことは一つだ。
少し間を開けてから、静かに手をあげる。
「僕、やります」
「おお〜!天草、助かるよ!あともう一人、誰かいないか?」
先生が明るさを少し取り戻しつつ呼びかける。僕の隣では、三枝と友奈が何やら話し込んでいる。
「珍しいね、友奈ならすぐ上げるかと思ってたけど」
「私もできれば助けたいけど……今日お母さんと約束してる事があって……ごめんね」
「……しゃあないか」
「裕子ちゃん?」
「はーい、私もやります〜」
気怠そうな溜め息の後、謎のにやけ顔を僕に向けながら、三枝は静かに右手をピンと挙げた。
放課後のチャイムが鳴ったと同時に、教室からクラスメイト達がどんどん消えていく。それを伸びをしつつ見ていると、友奈が申し訳なさそうにこちらに来る。
「うぅ……なんか罪悪感」
「なんで友奈が罪悪感感じるのさ、ほら、元気出す」
軽く頭を撫でてあげると、友奈は嬉しそうににぱっと笑った。友奈と一緒に帰れなくはなってしまうのが惜しいが、この笑顔が見れたのでヨシ!としよう。
「まぁ〜たイチャついてるね。たく、毎度毎度よく飽きないわ」
「頭撫でてあげてるだけだけど……?」
「んー!その、?って顔絶妙にむかつくぅ!」
悶えながら、すごい目で僕らを見てくる三枝。なにやら、今日の三枝は変である。
「裕子ちゃんもごめんね!」
「気にしないでよ、天草は私がしっかり見ててあげるからさ」
「……ありがとう」
「おっ?もしや……少し嫉妬してます?」
「へっ!?いやぁ……あっ!そろそろ帰らなきゃだから!そ、それじゃ!」
「ほいよぉ〜そいじゃね〜」
僕と三枝に軽く手を振りながら、友奈が半ば逃げる形で教室を出て行く。ちなみに一連のやりとりを聞いて、少し嬉しいような恥ずかしいような、変な感情に襲われていた。
〜洸輔視点out〜
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〜三枝視点in〜
体育館前に呼び出された、いわゆる雑務(最近覚えた言葉)を押し付けられた生徒達。人数はそこそこいるし、そんなに長くはかからないであろう。私と天草は体育館倉庫内の掃除と大会で使うためのボールを整理すること。
「はぁ〜まさか天草との初デートが掃除デートとはねぇ」
「デートでは無いでしょ」
「あら、冷静。ちぇー、もっとあたふたするかと思ったのに」
と、そんなやり取りはどうでも良くて……私がわざわざやりたくもない雑務を引き受けた本当の目的に移らなくては。
「なぁ、天草」
「どしたの?改まって」
「なんかさ、あんた少し大人っぽくなったよね?」
「へっ、そうかな?」
首を傾げる察しの悪い男の子に向かって、無言で頷く。ここ数日、天草の事を見てきたがどこか変な落ち着きがあるように感じた。なんとなく、ただそう感じただけ。
それと、なんでかは分からないけど最近のこいつを見てるとすごい心配になった。だから、今その心配に感じる理由を探している。
「天草さ、なんでこれ引き受けたの?」
「話題思いっきり切り替わったね……そうだね、皆やりたくなさそうだったし、僕がやればいいかなって」
「……」
これだ、とすぐにわかった。次の言葉もすぐに出てくる。
「じゃあ…天草さ、その『皆』の中にあんたって入ってる?」
「……えっ?」
わからない、その表情を見るだけで天草が今そう感じている事がわかった。
「それってどういう」
「言葉のままの意味だよ」
「えと……」
「別にあんたを虐める為にやってるわけじゃないんだ。ただ、心配なんだよね」
「心、配?」
「うん、友奈もそうだけどさ。二人とも、いつも自分より他人でしょ?今日もそうだし、幼稚園の時も、小学校に入ってからもね」
二人は幼馴染であり、同時に似たもの同士でもあった。近くでずっと見てきたからわかる、友奈と洸輔は
「怖いんだよね、なんか二人を見てるとさ。いつかどこか遠くへ行っちゃいそうで」
何言ってんだろ、私とかあー、私って何気にいつも嫌な役割になること多いなぁとか考えながらも目は天草の方をしっかり向いている。伝えるべき事を伝えるまでは止める気はない。
「最近だと、あんたは友奈よりも酷いと思うよ。ずーっと何か考え込んでるし、何かと苦しそうだし。悩みがあるならさ、少しは相談してくれてもいいんじゃない?」
「それは……」
天草が何も言えずに下を向いている。その表情にはどこか後悔しているような感じにも見えた。あーもう、こんな事を突然言ってごめんと、さっさと謝りたい気持ちでいっぱいだ。
「まぁ、無理して抱え込んでることを全部話してってわけじゃなくてさ。たまには、愚痴や弱音を吐いてみなよ。あんたは、自分で自分を苦しめすぎ」
「そ、そんなこと」
「あるよ、あんまし友達なめんなよ~?ましてや、こっちは幼稚園からの付き合いなんだ。ちょっとの変化でもわかるっての」
さっきまでの真面目な表情から切り替え、笑ってみせる。同時に天草の頬がほやりと緩んだ。その表情に少しドキッとする自分がいた。
「ありがとう、三枝。なんか、元気出たよ」
「ど、どーいたしまして、さぁてそれじゃどんなお返しをしてもらおうかねぇ?」
「そういうこと言わなければ、素直に尊敬できるのに」
「そこは普通に尊敬しろよぉ〜」
いつも通りのやり取りが交わされると、自然と私達は笑い合った。そんな一幕があった後清掃活動は問題なく終了し、私と天草は珍しく二人で下校することになった。
「さっきは、なんかごめんな」
「なんで謝るのさ」
「いや、何があるかは知らないけど天草にも色々あるはずなのに一方的に言っちゃって」
割と罪悪感でいっぱいだ。心配して言ったとはいえ、一方的に言葉を浴びせてしまったのだから。
「謝るのはこっちの方だよ、なんというか心配ばかり掛けてたみたいだし……ごめんなさい」
「私はまぁいいけど、友奈にも言ってあげなよ。あの子もずっと心配してたからさ」
「あー……申し訳ない」
「だーかーら、私には言わなくていいっての」
流石にしつこく感じてきた、あれ?罪悪感ってなんだっけ?二人で盛り上がっていたら、いつの間にか家の前まで着いていた。まじで、家まで送りやがったな、こいつ。
「そんじゃあな、天草」
「……」
「天草?」
私の方をじっと見つめていたかと思ったら、急に決心したかのような表情になり、変な事を言い出した。
「三枝、君がいてくれてよかった」
「……急にどした?」
「あ、いや、なんか、こう……三枝から、すごい大切な事を教えてもらったような気がしたから改めてお礼と思ったんだけど、あれ?僕何したかったんだっけ?」
「ぷっ……」
キリッとした表情からすぐにおどおどとした表情に切り替わったのが、おかしくて吹き出す。本当、なんなんだろう、こいつ。面白すぎる。
「ちょっ!笑わなくても!」
「わ、笑うでしょ、こんなの!ははは!」
涙が出るくらいまで笑った、今日は普段使わない表情筋をよく使っているからか、疲れるけどどこか楽しかった。
「はー、おっかしいのぉ〜」
「っ〜!じゃ、じゃあ!僕はこれで!」
顔を真っ赤にしながら、天草が私に背を向け歩いていく。その背中を見ながら、無意識に言葉が出てくる。
「私も、あんたがそばに居てくれて嬉しいよ」
どんな意味が篭っている言葉なのかは、自分でもわからなかった。
〜三枝視点out〜
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〜天草視点in〜
三枝と別れた僕は、顔を真っ赤にしながら自宅への道を歩いていた。今思い返してもさっきのは恥ずかしかった、そりゃあ三枝も笑うよな。
苦笑いを浮かべながら、帰路を一人で歩いていく。そんな中で体育倉庫の中で聞いた三枝の言葉を思い返していた。
「友達なめんな、か。すごいな、三枝って」
素直に思った、中身は中学2年で年上の僕だけど三枝の方が全然大人っぽくてすごいと。
しかし、唯一三枝の言葉の中でどこかひっかかった一言があった。
『じゃあ…天草さ、その『皆』の中にあんたって入ってる?』
「『皆』の中……か」
帰り道、僕は何度もこの言葉に対する自分の答えを探したが満足なものは出なかった。
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日の光の届かない部屋の中に、カタカタという無機質な機械音だけが鳴り続ける。やがて、それが鳴り止むと一人の女性の深いため息が部屋に響いた。
「分からないことだらけね」
鷲尾須美達から安芸先生と呼び慕われている女性は、そうぼやきながらPCを見つめていた。
大赦内部では混乱が巻き起こっていた。その混乱の渦中にいるのが、天草洸輔という一人の少年。初の男性勇者であり、神樹様直々に援軍として送られてきた彼は現勇者はもちろん、大赦にとっても非常に頼もしい存在であることは確かである。
「しかし、先日の神託の内容……あれは」
混乱の火種となったのは、先日に届いた神託の内容だった。
『事と次第によっては、切り捨てる事も覚悟すべし』
「切り捨てる……何故?自らが送った増援なのに?」
現在大赦内部ではこの神託に対しての議論が上層部でなされているものの、満足な答えは出ていない。いや、そもそも出るはずがないのだ、何より天草洸輔という勇者に関する情報が少なすぎる。
何故、彼は私達に渡される前から勇者システムを?何故、勇者になれないはずの男性がなれている?何故、私達は彼という存在を知らなかった?何故、何故、何故?
何故、その言葉に縛られる。
「そもそも彼は本当に勇者、なのかしら?いや、もっと言うと彼は……」
次の言葉が出てくる前に、首を振って思考を切り替えた。そんな事はきっとないだろうと内心で繰り返す。
合宿のあの日、あんなに真っ直ぐな目で曇りのない言葉をつたえてくれた彼を疑うなんてどうかしている。
自分に言い聞かせるように、私は呟く。
「そうよ、彼は……あの子達と同じ勇者なんだから、私だけでも信じてあげなくちゃ……」
いかがでしたでしょうか?徐々に不穏さが増してきているわすゆ編、書いているこちらもドキドキであります。三枝ちゃんについてももう少し掘り下げたいと考えています。それでは、次回の投稿でお会いしましょう〜!