天草洸輔は勇者である   作:こうが

109 / 115
タイトル詐欺(小声)


十二章 平穏を壊す者

「てなわけで!やってきたぞぉ〜イネース!」

『イェーイ!』

 

車の中でのテンションを吹っ飛ばすかのように、両手を天高く振り上げる園子、銀、僕の三人。

 

「相変わらずの騒がしさね……はぁ、三人とも、元気なのはいいけど他のお客さんに迷惑をかけないようにね?」

「……」

「どうしたの?」

「いや、今の言い方お母さんみたいだなって思って」

 

息子や娘を優しく見守りつつ、注意するべき時はしっかりするお母さんのオーラを鷲尾さんから感じた。四国よ、これが母性だ。

 

「まぁ、なんてたって須美は私と園子のお母さんでもあるからな」

「私がいつ二人の母親になったのよ」

「あ、そっか。今は洸輔のお母さんでもあるもんな」

「そういう事じゃなくて!」

「……えと、あ、す、須美お母様?」

「天草くん!?無理に銀の悪ノリにのらなくていいから!」

 

鷲尾さんがあたふたしながら、的確にツッコミを入れていく。なんとなくだけど、園子と銀が鷲尾さんを弄っている理由がわかった気がする。この子、反応が面白い。

 

「そんな冷たい事言わないでよぉ〜わっしーママ〜」

「そのっちもノらないの。全くもう……ほら、まずはお昼ご飯を済ませましょう?」

 

優しい表情、大人びた立ち振る舞い、そして僕らを諭すような言葉。いやこれはまさしく

 

『須美ママ〜!』

「三人で声を揃えて人のことママ呼ばわりしない!」

 

とは言っているものの、僕達を先導しフードコートへと向かう鷲尾さんの後ろ姿は紛うことなきママであったとさ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

〜園子の夢〜♪
         

 

「そのっち、私……アイドルになる覚悟を決めたわ!」

 

『おお!(銀&園子ボイス)』

 

「勿論、そのっち、銀も一緒よ!……はっ!でも、天草くんが」

 

「心配無用!!」

 

「その声はこうくん!って、何その格好可愛い!」

 

「僕……ううん今の私は天草洸輔じゃない!この場においては、みんなと一緒に一人のアイドルとしてステージに立つ……天野結(あまのゆい)よ!」

 

「私達と一緒にステージに立つ為に……そこまでするなんて、ロックだな!洸……いや、結!」

 

「役者は揃ったわ!皆、行くわよ!」

 

こうして、私達四人のアイドルによって行われたライブは勇者的な盛り上がりを見せ、幕を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ていう夢を見たんよ〜♪」

「くぁwせdrftgyふじこlp!?」

「ねぇそのっち、お客さんはいっぱい入ってた?」

「そこ気にするとかロックだな!洸輔はこれ飲んで落ち着け」

 

場所はフードコート。現在、園子が今朝見た夢の内容を皆で聞いている所である。衝撃的な内容を聞いて、喉にうどんが詰まりかけたが銀から手渡された水によって難を逃れた。命の恩人感謝永遠に。

 

「いやぁ〜みんな可愛かったなぁ〜♡特にこうくんが新鮮でね〜」

「お主の夢に出てきた僕の皮を被った新キャラは何?天野結って誰?」

 

夢の内容的に考えて、僕は三人のP的ポジの筈なのに夢の中の僕は何をやってるんだ。天野結って……ノリノリじゃないか。

 

「こうくんの女装バージョンかな〜天野結は多分……芸名的な?」

「知らない所で、人を辱めるのやめてぇ!」

「辱めてないよ〜こうくんも容姿を見たら絶対可愛いって言うと思うし。よーし、少し待ってて」

 

自身ありげに園子が鞄の中からスケッチブックとペンを取り出して、絵を描き始める……●ズーが持ってる鞄並みに魔法の鞄してるじゃないか、その鞄。

 

「こんな感じだよ〜」

「あら、可愛らしい」

「ほんとだ!これ、実際に洸輔が着ても似合いそうじゃない?(ニヤニヤ)」

「ウェ!?い、嫌だよ、ただでさえ気にしてるのに…のに…」

 

僕に電流走る。スケッチブックに描かれていた夢の中での僕の姿……黒髪ロングポニテで、服装は白ワンピ……ふむふむ。

 

「園子」

「ん〜?」

「認めよう、確かにこれは可愛い」

「でしょー?」

 

女装がどうのこうのはともかくとして、この容姿を思いついた園子と彼女の夢の中の僕には賞賛を送るべきである。

 

よくぞこのような素晴らしい容姿で現れてくれた、ナイス天野結。そして、ポニテ最高。

 

「じゃあ女装」

「しません、女装はしません絶対に」

「絶対似合うと思うんだけどな〜。ねぇ〜二人も興味あるよね?」

「まぁ……少し興味はあるかも」

「さっきは私達が恥ずかしい想いしたし、今度は洸輔の番って意味でも……」

「だぁぁぁ!ほ、ほらぁ、そんなことより皆うどんが伸びちゃうよ!急いで食べよ!?」

 

僕の言葉を聞いた途端に、三人の意識が一斉にうどんに向いた。美味しいだけじゃなくて僕のことを救ってくれるなんて、本当大好きうどん。

 

(にしても、女装ねぇ……天野結、黒髪ロングポニテ、白ワンピ……興味がないと言ったら嘘に)

 

「じゃあ、やってみる?女装」

「人の心を読まないで!?」

 

満面の笑みでうどんを啜る園子。改めて、この子の恐ろしさを痛感した瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、本屋さんへと移動した僕達四人。品揃えがかなりよろしいのか、本の量が近場にある書店の倍以上ある。流石イネスと言っておこう。

 

「洸輔〜欲しいの決まった?」

「うん、僕はこの押し花図鑑かな。そういう銀は?」

「私は絵本だよ、弟達が喜んでくれるかなって思って」

 

照れ臭そうに頬を掻きながらニコッと笑う銀。銀の新たな一面を見て少し嬉しかった。

 

「僕、銀のそういう所好きだよ」

「は、はぁ!?おおお、お前何言って!?」

「普段男勝りだけど、時に見せる姉としての一面がいいなって思って」

「わざわざ解説しなくていいから!はぁ〜……」

 

両手をあたふたさせながら動揺している。別に何か変なことを言ったつもりはなかったんだけど。

 

「ふふん、いい雰囲気だね〜ミノさん」

「園子!?須美も!いたなら早めに声掛けてくれよ!」

「あんな雰囲気じゃ積極的に入っていけないわよ……」

「それは……うん、確かに」

 

意気消沈としている銀の肩に優しく手を乗せる鷲尾さん。なんかあったのだろうか?

 

「僕と銀は欲しいの決まったけど、二人は?」

「私はこれにしたんよぉ〜♪」

 

ニコニコしながら、園子が見せてくれたのはなんかよくわからない猫やらニワトリが楽しそうに踊っている様子が描かれている絵本だった。

 

「……これは?」

「なんすか?園子さん」

「可愛いでしょ〜?この猫さん、サンチョに似てるからついつい手に取っちゃたんよ〜」

「な、なるほど?え、えーと……鷲尾さんはどんな本に?」

「私はこれ!日本の軍艦超全集!あらゆる戦艦の記録……勇姿が記された究極の一冊!お気に入りのページとしては、この翔鶴型航空母艦の二番艦である瑞鶴について触れ以下略」

 

丁寧に説明してくれた鷲尾さんを見て、自分は失敗してしまったよと園子と銀にアイコンタクトで伝える。そうだ、聞くまでもなかったっけ……(チーン)

 

「す、須美ってそういうのめちゃくちゃ詳しいよな」

「ええ!私の夢は、歴史学者さんだから」

「夢まで真面目だ……」

「三人は、何か夢はあるの?」

 

突然の質問、急な事に驚いていると横にいた園子が声をあげた。

 

「私は小説家とかかな〜、時々サイトに投稿したりしてるし」

「あー、なんか分かるかも」

「独特な感性を持ってるものね」

 

三人の視線が園子の持っている本に向く。もはや理解をする事こそが大罪な気がする。そう、園子様の感性は園子様だけのものだ(?)

 

「二人にも私の小説に登場させたいなぁ〜優しく頼れるミノさんに、真面目で時々面白いわっしー」

「と、時々面白い?」

「つまんないよりいーじゃん!てか、洸輔は?」

「あーこうくんはもう小説に登場してるんよ〜」

 

園子に呼ばれなくて拗ねていたら、もう登場しているのか。一体どんなキャラで

 

「昨日投稿したんだけど、女装大好きな男の子で〜……」

「どうしてだよぉぉぉぉぉ!!!」

 

何故よりによってそっちなのか。愕然とする僕に向かって、鷲尾さんと銀が南無三と言いたげな表情でこちらを見ている。そろそろ、泣くぞ?

 

「えーと……では、銀の夢は?」

「幼稚園の頃は皆や家族を守る美少女戦士になりたい!って思ってたかな?」

「分かるわ!お国を守る正義の味方!憧れるわよね!」

 

なるほど、この時点で国防仮面になる流れは組まれていたのか……と納得しつつ、銀に疑問を投げ掛ける。

 

「じゃあ、今の銀の夢は?」

「えっ……あー、その、えーとぉ」

 

質問に対して、銀は顔を赤くしながらもじもじとしている。

 

「なんで、照れるのぉ〜?」

「今の夢は……そのさ、か、家族っていいもんだから……普通に家庭を持つのってアリかなって思ってて……えと、あー、つまり、お、お嫁さん……かな?」

「……」

『お、、おおおお!!』

 

瞬間、園子と鷲尾さんが銀に抱きつく。

 

「み、ミノさんならすぐに叶うよー!!」

「えぇ、ええ!白無垢がとても楽しみだわ!」

「きゅ、急になんだよ〜くっつくなって〜……って、洸輔はなんで固まってるんだよ」

「いや……その、すごい素敵な夢だなってさ。そんなに長い時間一緒に過ごしてきたわけじゃないけど、自信を持って言えるよ。銀、君はきっと素敵なお嫁さんになる」

 

本心だった。心の底から……銀の夢を素敵だと感じた。同時に忘れていた……いや、背けてきた彼女のこれから先に起こる運命を想い胸が締め付けられる。

 

(銀……君は)

 

「ううう……うがしゃー!!」

「ぎ、銀!?お、落ち着……背中イタァ!!」

 

一人で考え込んでいた所に銀の拳が炸裂ぅ!もはや、どこぞのテリーさん並みの拳なんだが?

 

「こうくん、流石だねぇ〜(ニマニマ)」

「慣れつつあるわね……では、天草くんには銀を宥める役を任せつつ、夢についても聞いてしまいましょう」

「仕事が多い!?んー、そう言われても……夢、なんて考えた事なかったな」

 

目の前のことに精一杯で、将来の事なんて考えたこともなかった。少し、羨ましい……この3人にはそれぞれなりたいものがある。

 

僕にはなりたいものはない……けど、胸の中に秘めているものはある。

 

「大切な人達がいる場所を守りたい……今の僕の夢はそれ、かな」

「こうくんらしいね〜」

「ええ、天草くんらしい真っ直ぐな夢だと思うわ」

「だな、なんつーの?こういう時の洸輔は同年代って感じしないよな」

「ほ、褒められてる……のかな」

 

急に気恥ずかしくなり、頰を掻く。こう、僕の周りの女の子達は真顔できっちり褒めてくれるからこういう場面での反応には毎回困るな。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

数時間後、本屋を出てからも色々な場所を回った僕達は帰る前にとフードコートへ再度寄り、ジェラートを購入。

 

帰宅しなければならない時間なので、園子が迎えの車を頼んでくれた、と、いうわけで今は車のある場所まで移動中である。

 

「にしても、園子だけずるくない?なんでそんなに盛ってもらってるの?」

「えへへ〜ラッキーだったんよ〜」

「流石……乃木家の力」

「私達は普通盛りなのになぁ……」

 

よく分からないが、園子だけが多くジェラートを盛られていた。これは……乃木家パワーというのだろうか。てか、ジェラートモウタベオワチャタヨ。

 

「にしても、いや〜今日は遊んだ遊んだ!」

「また、皆で集まりたいな〜」

「警戒態勢復活までもう少し日があるし、あと一回くらいなら皆で集まれそうね」

「その時はこうくんには天野結ちゃんに変身してもらわないとねぇ〜」

「その時は欠席してもよろしいでしょうか?」

「ククク、どの口がそれを言ってるのかな?」

 

まるで悪徳業者のような笑みを浮かべながら、園子が肩を掴んでくる。やめて!これ以上僕の純情を弄ばないで!

 

「そのっち、調子に乗らない」

「えへへ〜ごめんなさーい……っ?あれ〜?こうくん、図鑑は?」

「え、図鑑ならここに…あれ?」

 

おかしい、購入したはずの本が手元から無くなっている。やけに軽いなと思ったら……。

 

「あー、ごめん、置いてきちゃったみたい……」

「まじ?場所とか覚えてるか?もし、覚えてないようだったら私達も探すの協力するけど」

 

銀の言葉に園子と須美も頷いている。優しさに癒されつつも、失くした場所には覚えがある為、三人には先に車の方へと向かってもらい、僕は来た道を戻ることになった。

 

イネスへと戻っている最中にふと思う。状況は状況だけど……こうして彼女達と『平穏』な日常を過ごせて嬉しいと。

 

(守らなくちゃな、あの子達の日常を)

 

考え込んでいると、イネスの前にある広場を通り掛かった辺りで小学一年生くらいの男の子が泣いているのを発見。周りにはその友達らしき、子達もいる。

 

三人を待たせているのは承知の上……しかし、この場面は勇者部の一員として見過ごせなかった。

 

そうだ、僕があの子を助けないと

 

「君、どうしたの?」

「風船が……飛んでちゃって」

 

男の子が指を差した先には、風船がふわふわと浮いている。

 

「ちょっと待っててね、お兄ちゃんが取ってくるから」

「ぇ……でも」

 

言いたい事は分かっている。あんな高さ、届かない。小さな子供でも分かる事、そう思うのが普通の場面だ。でも……人間ではない()()()()()

 

「……すぅ、よっ!」

 

一瞬の出来事。足に力を込め……跳躍する。さっきまで目では捉えられるものの、遠くにあった風船が今は目の前にある。どうやら、届いたようだ。風船を回収し、コンクリートの地面に向かって落ちていく。

 

そのまま何事もなかったかのように、着地する。少し足がビリビリするものの、気にする程のものでもない。

 

「はい、もう離さないようにね」

「……あ、ありがとう!」

 

最初は不思議そうな顔をしていたものの、風船が戻ってきた事に喜ぶ子供達。それを見て、自然と笑顔になる。

 

「お兄ちゃんすごい!」

「今のどうやったの!?」

「体、強いんだね!」

「すごい動き〜!()()()()()()()()()!」

「……えっ?」

 

子供達の中からあがったその言葉を聞いた瞬間、体全身に寒気が走る。()()()()()()()

 

勇者に変身してもいないのに……なんであんな力が出せた?いや、そもそも、何故あんな力が出せた事に疑問を持たず行動していた?どうして、出来るという確信を持っていた?

 

内から込み上げる疑問と畏怖の感情を抑え、なんとか笑顔を作って子供達と別れた。

 

その場に、一人立ち尽くす。三人を待たせているから……急がなくてはならない。けど、体が動かなかった。

 

「もう、足痺れてない……どうなってるんだ、僕の体」

 

先程の一連の行動を行なっていた時の僕は明らかにおかしかった。疑問を持つまで……僕は自分のした行動を当たり前のことだと思っていたのだ。

 

「一体……何が」

「へぇ〜、思ったよりも()()()()()()()みたいだな」

 

背後からの発せられる声を聞いた瞬間、体が強張る。勘弁してくれよ、なんでだ、ここは結界内……彼がここに出て来れるはずが。

 

「言った筈だ。俺はお前の影、お前がいる限り俺はどこにだって現れるってな」

 

ああ、最悪だ……こんな形で三人との平穏で楽しい時間を壊されるなんて思っていなかった。半ば諦めるように、振り向く。

 

「よう、『相棒』……折角だ、少し話でもしようぜ?」

 

視線の先には、もう一人の(天草洸輔)が口を三日月型に吊り上げ、下卑た笑みを浮かべて立っていた。




不穏不穏不穏!怪しい感じ満点〜。最初は割と明るめ!後半は……だいたいそんな感じ〜の十二章!でした!楽しんでいただけたなら、幸いです!女装した天草くん、いや天野結……いつか番外編で登場させなきゃ(使命感)


天草洸輔は勇者である 次回『一つの真実 眠る力』お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。