では本編スタートです!
「目を覚ますがいい、天草洸輔よ」
ここはどこだろうか?誰かが僕を呼んでいる?でも僕はこの声の主に覚えがない。
「それに関してはしょうがないだろう。貴公が当方の声に聞き覚えがないのは当たり前のことだ。貴公と干渉したのはこれが初めてだからな」
そういうと、聞き覚えのない声と共に足音が近づいてきた。そこには低めの声とは裏腹に穏やかで優しい表情をした男が立っていた。
「あなたは、一体誰なんですか?」
「申し遅れた。我が名は◼◼◼◼」
一瞬ノイズがはいり、彼の名前を聞くことができなかった。しかし彼はそのまま話を続ける。
「貴公はなぜ自分が、勇者としての力に目覚めたと思う?」
「なぜ、それをあなたが?」
「それは当方が貴公を選んだからだ」
「えっ?それは、どういう?」
「む、時間のようだ。力は自由に貸せるようだが本人と干渉するのは相当困難らしい」
「す、すいません。言っていることがよくわからないんですが」
「安心するといい。今はわからなくともいずれわかる。
貴公ならば、グラムの力を引き出し禍を引き起こす者(ベルヴェルグ)を扱うこともできると当方は信じている」
「ま、待ってください!あなたは!」
次の瞬間、突然僕の意識は闇へと落ちた。
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「……ま、待って!!」
「うわぁ!ど、どうしたの?洸輔くん?」
「あれ、ここ……あ、友奈、おはよう。今日も起こしに来てくれたんだ」
目を覚ますと友奈がいた。そこには先ほどの男性の姿はなく変わらない自分の部屋があるだけだった。
(今のは夢?でも、一体……あの人は?)
夢の中で起きた出来事に、僕は頭の中が整理できず軽く混乱していた。
「大丈夫?」
「!?」
いつの間にか友奈の顔がめちゃくちゃ近くに来ていた。女の子特有のいい匂いが、僕の嗅覚を刺激してくる。
「ゆ、友奈ちょっと近いよ……」
「あ!ご、ごめんなさい!」
「……」
「……」
僕と友奈は二人で赤面し、お互いに無言になってしまった。このままでは話が進まないと思い、友奈に気になったことを質問した。
「そ、そいえば何で友奈がここに?今日学校じゃないから起こしにくる必要もないだろうし……」
「え?洸輔くん覚えてないの?」
「?」
「洸輔くん、昨日夏凜ちゃんと勝負するって言ってたから」
「あ!」
そうだ、昨日三好さんに勝負を挑まれた僕はそれを受け「明日海の砂浜の所で待ってるわ!」と、どや顔で言われたことをすっかり忘れていたのだ!
「そ、そうだった〜!!!友奈!準備するからちょっと外出てて」
「わかった!待ってるね!」
友奈には外に出てもらい、着替えをはじめた。そんななか僕は夢の中で彼が言っていた言葉について考えていた。
「それは、当方が貴公を選んだからだ」
(あれは、どういう意味だったんだろう?)
いくら考えても、それらしい答えはでなかった。
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「洸輔くん、つれてきたよ~!」
「遅い!何してたのよ」
「ご、ごめん、寝坊した」
約束した場所に着くと案の定、夏凜が顔を真っ赤にして怒っていた。
(すごい剣幕だぁ、後ろに化身が見える)
「まぁいいわ。ほら、これ持ちなさい」
「っと、木刀?」
「ルールは簡単よ。もしこれが本当の戦闘だった場合、喰らったら致命傷だなって思った一撃を相手にやられたと思ったら「まいった」って言いなさい、言った方の負けになるわ」
「なるほどぉ」
「念のため、審判として友奈を呼んだわ」
「審判なら私に任せて!!」
分かりやすくそして、非常にスタンダードな勝負だ。審判として友奈を呼んだ辺りも、三好さんの優しさが出ている。
「わかった!じゃあ始めよう!」
「お!やってるわねー」
「丁度始まる頃だと思ってましたぁ」
「二人とも、怪我のないようにね」
「あ、みんなーおはよー!!」
「ちょ!なんであんた達がいるわけ!?」
声のする方をみると、風先輩と樹ちゃんそして東郷さんがいた。
「なに、ちょっとしたギャラリーみたいなものよ。気にせず続けなさい」
「ふん、まぁいいわ見てなさい。私がこいつを倒すところを」
「僕だって、やるからには全力でやらせてもらうよ!」
そして、僕と三好さんはお互いに木刀を構える。
「それじゃ~始め!!」
友奈の掛け声と共に、戦いの火蓋が切られた。
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初太刀はお互いにぶつかり合った。そこからお互いに引かず鍔迫り合いが続く。
「ぐっ!?あ、あんた結構、力あるのね」
「まぁね、鍛えてるから」
自信ありげな表情をこちらへと向けてくる。でも、一太刀喰らってわかった。力量と、実戦能力はあたしの方が上だ。
(あたしの方が実力は上!武器を使えないようにしてしまえば、勝てる)
次の行動を決め、すぐ行動に移す。洸輔の木刀を右手に持っている方の木刀で弾き飛ばす!
「くっ!」
「もらった、覚悟!」
勝利を確信し、振り上げた両刀を振り下ろす。もはや勝負は決まったも同然だった。
しかし、振り上げた木刀は、洸輔に軽やかな動きで受けながされた。
(嘘!?)
「武器がなくなれば、僕が弱くなると思ったかい?それは悪手だよ、っと!」
「な、何よその動き!?」
まるで流れる水のような動きで振り下ろされた両刀を受け流す。勝利の一手を潰されたあたしは、体勢を崩す。
「っ、そう簡単に勝たせるもんですか!」
「ちょ、ま」
「せええええい!」
体勢が崩れたのを、利用し右足で洸輔の顔面に目掛け足蹴りを繰り出す。思いも知らない所からの攻撃が飛び、驚いた表情を洸輔は浮かべていたがすぐに表情が変わる。
「あっぶなぃ!」
こちらでも捉えられない動きで即座に蹴りは防がれる。一度仕切り直すため、お互いに距離をとった。
「なかなかやるじゃない、あんた」
「ううん、夏凜のほうがすごいよ……正直ビビってるもん」
「ふーん……実はさ、あんたのこと武器がなくなったら、何もできない木偶の坊だと思ってたのよね」
「そう見えてたか……まぁ、あれかな。武器がなくなったくらいで戦えなくなっているようじゃ、自分の守りたいモノも守れないからね」
「……あんたが勇者をやめないって言った理由わかってきたわ」
あたしが一人で納得していると、洸輔が心配そうな顔であたしを見つめていた。
「夏凜?」
「さぁ、続けましょう!決着が着くまで!」
「……うんっ!」
あたしたちはお互いに全力を尽くした。あたしの中には、なぜか満足感があった。
「これ、いつまで続くのかしら?」
「二人ともすごいです(感動)」
「なんか私たちギャラリーにすらなってない気が……」
風たちのぼやき声が聞こえた気がした.。
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「はぁーあんた……ホントに、やるわね」
「夏凜こそ……はぁ……強かったよ」
僕と夏凜は、二人で力無く砂浜に寝っころがった。あれから一進一退の攻防が続いたものの、決着がつかず審判である友奈が「もう眠いので!引き分け!」といって勝負は幕を閉じた。
「所で、あんた。途中からあたしのこと名前で呼んでたわよ」
「あっ!!」
そういえばそうだった興奮していたとはいえ、夏凜と呼んでしまった。怒られると思い僕は身構えるが。
「身構えなくてもいいわよ。別に」
「え?」
「これからあたしのことは夏凜でいいわ。あたしもあんたのこと……名前で呼ぶから」
「っ!?う、うん、わかったよ!夏凜!!」
「ふふ、なに嬉しそうにしてんのよ?ホント変な奴ね。あんた」
そういった夏凜の顔は女の子らしくてすごく可愛かった。
まぁその間他の勇者部の面々は神妙な顔で僕達を見ていたのだが……
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夏凜との勝負のあと、僕は風先輩に今朝見た夢について相談していた。
「なるほどね、その夢が自分が勇者になったのとなにか関係があるんじゃないかと思った訳か」
「はい。あれをただの夢とはどうしても思えなくて……」
「変だとは思ってたのよ。本来勇者は無垢な少女しかなれない存在で、例え男の子で適正があったとしてもなれるものじゃないって聞いていたから」
(だから初陣の時に風先輩は僕を見て一瞬止まってたのか)
「わかったわ!洸輔。大赦に頼んで端末を調べてもらいましょう!」
「ありがとうございます、風先輩!」
「洸輔こそしっかり相談してくれてありがとね。勇者部五ヶ条をしっかり守っている証拠ね!!」
「なんか、風先輩が初めて頼もしく見えます!」
「ええ!?いつも頼もしいでしょ!?」
(これであの男の人の言葉の意味がわかるといいんだけど)
僕は帰路でもその事をずっと考えていた。
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家に帰って来てから、ずっと今日のことを考えている。
(なんで、名前で呼んでいいなんて言っちゃったんだろう?)
今日のあたしは、なんか変だった。あいつを見ると胸の奥がざわざわしてきて。
「あーもう!なんかもやもやするーーー!!」
(どうしちゃったんだろ?あたし……)
「明日も、話せるかな……?」
その日の夜は、胸がざわついて中々寝付けなかった。
さて今回は洸輔くんの謎がさらに深まった回ですね!これからもっとあきらかになっていくと思います!(夏凛ちゃんかわいい)
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