天草洸輔は勇者である   作:こうが

110 / 115
お久しぶりです(超土下座)
と、とりあえず本編をどうぞ。諸々のことは後書きで語ってるので…



十三章 一つの真実 眠る力

『こうやって顔を合わせるのは、あっち(西暦)以来だっけな』

 

 不穏な雰囲気を纏った僕の分身がこちらに歩み寄る。声色は優しげだが、自分の瓜二つの顔に貼り付けられた胡散臭い笑顔がこちらの警戒心を高める。

 

『冷たいな、西暦での時みたいに仲良く話そうぜ』

 

 彼は飄々とした態度を崩さない。さっきまでの自分に対する畏怖の感情は一旦捨て、目の前の事に集中する。

 

「なんで…君がこっちにいるわけ?」

『ああ、お前が話してるのは()()()()じゃないぜ?結界内にはもう入れねぇし、何せ神樹からすりゃ俺は裏切り者ってやつだからな』

 

 本物の俺じゃない、きっと西暦の時と一緒だ。予兆はなく、僕がいる場所ならどこへでも現れる、そういう風に()()()()()()()

 

(話はしたい…けど、今の彼が突然襲ってこないとも言い切れない……まずは皆に連絡を)

 

『したら、イネスだっけ?あれの中にいる人間全員殺すが……それでもいいなら、好きなようにしろ。最も、お前がこういうのに滅法弱いのがわかっていってるんだがな』

 

 ヘラヘラした表情は消え、感情のなくなった瞳が苛烈な言葉と共にこちらを捉えた。その異様さに体が強張る、恐らく余分な行動を一つでも取れば……彼はここにいる人々を殺すだろう。

 

(……イネスの中にはまだ人が沢山いる。それにこの広場にもまだ)

 

「……わかった。でも、ここで連絡しなかったとしても僕が来なければ彼女達はきっとやってくるよ」

『だろうな、まぁ、それならそれでいい。俺としてはお前と少しでも話が出来ればそれでいい』

 

 そう言い、彼はまた怪しげに笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人目のない場所にあったベンチへと腰を掛けた。相手からこちらへと話を振ってくる。

 

『そういやぁ、これが2回目の時間跳躍だったかお前?ほんと苦労人だな』

「そんな事」

『ないわけない。ずっと戦いっぱなしだなんだろ?西暦の時なんか精神的にもボロボロだったしよぉ、勇者ってより使い捨ての道具みたいだ』

「…で、話って何」

 

 「あー怖い怖い」とヘラヘラした様子で彼は両手を上げる。気にする必要なんてない……筈なのに使()()()()()()()という言葉にやけに苛立った。そんなこと相手が気にするはずもなく、奴の口は動き続ける。

 

『じゃあ、本題と行こうか。内容としちゃ、お前についての話だ』

「僕の、事?それ君にメリットあるの?」

『メリットがあるないはどうでもいいのさ。この話をお前が聞く事に()()()()()んだからな』

 

 僕が聞く事に意味がある、その真意は分からない。だけどこれはチャンスでもある、僕について知れるのはいい事だ。もしかしたら、そこから今回の異変についても繋げられるかもしれない。

 

「いいよ、聞いてあげる」

『んじゃ、早速だが……お前、なんで自分が勇者になれているか知ってるか?』

「?、なんで今更そんなことを。分かってるでしょ、神樹様に選ばれたからだよ。勇者部の皆と同じように選ばれたから」

 

 今更確認しなくてもいい事。神樹様に選ばれたから、僕は勇者になれているし皆の為にと戦えた。

 

『選ばれた……ねぇ。なんとも聞こえのいい言葉じゃないか。あぁ、そうだな。お前は選ばれたんだ、()()()()()()()使()()()()()()()()ってやつにな』

 

 心底嬉しそうに、そして嘲笑うかのように彼は言う。言葉の意味が理解出来ずにいる僕に、彼は嬉々として話し続ける。

 

『一度でも変だと感じなかったのか?本来は純粋無垢な少女しか選ばれる事のない勇者に、男であるお前が選ばれた事を』

「……」

 

 疑問に思った事はあった。何故、僕がなれたのかと。でも、いつしかそんな疑問は消えていて、勇者として戦えている自分に疑問は持たなくなった。

 

 だって、そこにどんな理由があったとしても『勇者』になるという事は、大切な人達を守れる力を得たという事だ。それなら、無駄な疑問を抱く必要も無い、はず…だ。

 

『……そうだな、お前はそういう奴だ。だから、自分が()()()()()()()()()()()()だという事に気づけない』

「偽物?……僕が?」

『あぁ、そうだとも。なんせ、お前は』

 

 横にいる男の発言が合図だったのか。

 

「……ぅ、あ…ぁ」

 

 キーン、という音が響いたように感じた。それと同時に、自身の口から苦悶の声が漏れる。呼吸が上手く出来なくなる。苦しい、苦しい、苦しい……息が、うまく、でき、ない。

 

 これには覚えがある…バーテックスにトドメを刺そうとした時と銀達とイネスにおいて鎧のことや自分の事を深く話そうとした際に、襲ってきたモノと一緒。これは一体、何なのか。

 

『それ以上お前が聞く必要がないと。神樹が言ってるんだろうな、まぁ、にしても、やる事がえげつねーな』

「な、んで…そこで、神樹様が…」

『そりゃ…っておいおい。随分苦しそうじゃないか、ほら早くしないと話聞く前に死んじまうぞ?』

 

 横にいる男の呑気な声が聞こえてくるが、こちらはそれどころではない。もう意識が飛びそうだ、このまま、だと…まず

 

『跳ね除けられるだろ、完全とは言わなくとも。今のお前なら、出来るはずだ』

 

 意味が、わからない。跳ね除けられる?僕が?この痛みを?無理に決まっている、もしこの痛みが神樹様によって引き起こされているので有れば、人間の僕に止める術なんて。というよりも、何故神樹様が僕に対してこんな事を…?

 

(訳が、分からない)

 

 ぐちゃぐちゃになった考えを纏められずに、蹲る。そこに冷徹な声が響いた。

 

『いつまで目を背けているつもりだ、天草洸輔。いい加減受け入れろよ、お前はもう半分以上が()()()()()()()()()()()という事を』

 

 僕が、人間では、ない?何を言ってるんだ、こいつは。僕は歴とした人間だ、そりゃ勇者なんてとんでもない役割は与えられているけど……それは樹海や結界外の時だけの話、結界内であるこちらで僕が人間離れした行動を取った事なんて。

 

「…ぁ」

 

 こいつと話す前に起きた出来事、その時、自分が起こした行動を思い出す。遠く離れた風船、それを取るため人並み外れた跳躍力を見せた、それだけでなく、その後は何事もないようにストンと、地面に着地した。人間離れ……当てはまってしまっている。

 

いや、もっと前にも思い当たるものがある。道路に飛び出してしまった子ども、それを助けようとした時……一瞬だけ自分の足は…

 

「は…っ!?」

 

 ドクン、と心臓の音が鳴る。その心音が聞こえたと同時に、先程まで僕を苦しめていたものは消えた。自分が何をしたのかも分からない。

 

『ほぉ……自覚させただけでこれか。なるほど、相当「魂」に染み込み始めてるんだな。精霊の力が』

「説明……して」

『あ?』

「だから、説明して!…なんなんだよ、何がどうなってるのさ…」

 

 息が上がり、少し顔が青ざめてしまっている。そんな僕をみた男は、ニタァと、また気持ちの悪い笑みを浮かべる。

 

『嬉しいねぇ、お前の方からそう言ってくれて。ついでにいい感じに顔が歪んでくれた、これなら話し甲斐もあるってもんだ』

 

 本当に嬉しそうに男は笑う。こちらは、自分自身に対する畏怖の感情を抑えるので手一杯だ。深呼吸をし、少し落ち着く。

 

『そうさなぁ、まず勇者適正値ってやつに触れよう。勇者という存在になる為には、これが必要不可欠。一応、男にも適正値「自体」は存在する…だが、どいつもこいつも微量、いやそれ以下の適正値しか持ち合わせていない』

 

 そもそも神樹が認めない限りは女でも勇者にはなれねぇけどな、ともう一人の僕は言う。

 

『んで、勇者という存在は女にしかなれないものだ。だが……こーんな所に男の癖して、異常な程高い勇者適正値を持った奴がいた。そして、そいつはなんてこった!同じく異常、いや規格外の適正値を叩き出した結城友奈の側にいる男ではないか!』

 

 仰々しい素振りをいちいち挟みながら、男は語る。

 

『最初は神樹もそれがどうした程度だったんだろうが…ある時、神樹の考えは変わった、奴は結城友奈という存在がこれから重要になる事を予感したんだ。なんの前触れもなくな、まぁ予知ともいえなくもない』

 

 友奈が…重要。聞き返したくなる言葉ではあったが、それ以上に続きが気になったので、言葉を呑み込む。

 

『この予感に意味がないはずがないと感じた神樹は…なら、これを利用しない手はないと、一つの考えに至った。結城友奈という勇者は神樹にとって簡単に失われてはいけないモノだ。ならば、そんな彼女の最も近くにいる男を()として扱ったらどうかと』

「…盾?」

『あぁ、まぁ、盾と言えば聞こえはいいが… 言ってしまえばただの肉壁、体のいい防衛装置としてな。結城友奈もそうだが、勇者部の奴等は中々粒揃いだからな、恐らくあいつらの守備も兼ねていたんだろうな』

 

 『ま、どうでもいいが』と男は鼻で笑う。ぼくは、だまって、かれのはなしをきいていた。

 

『お前は神樹に勇者として選ばれたのではなく本物を生かすための「道具」に選ばれたのさ。だから勇者に変身も出来るし、神の使いである奴等とも戦えているってわけ…だが』

「ねぇ…」

『あ、どした?まだ、続きがあるんだが』

「あ、いや…その」

 

 質問、気になった事、そんなの山程ある。どの話も突拍子もなくて、相手が自分を惑わそうとしているようにしか感じない。だが、何よりも…。

 

「さっきから…『誰』の話を、しているの?なんか、知らないことばっかで…混乱、してきたんだけど」

 

 必死に、一つの真実から目を逸らすようにそんな言葉を口にした。まだ、自分の体のことや、彼の事など聞きたい事はあるから急がなくてはならないのに。

 

『……は?』

 

 間の抜けた反応、僕が突然何を言い出したのか分からず少し男は停止する。しかし、すぐ、その表情は変わる。

 

『はっ、はは…アハハハハハ!』

 

 嘲笑、男は肩を震わせながら楽しそうに笑う。

 

「何が、おかしいの」

『はー…悪い、つい、な。てめぇの焦りよう見たら楽しくなっちまってよ』

 

 歪な笑顔を浮かべながらも、その目は一切笑っていない。鋭くこちらに向けられている視線、それは僕を糾弾しているようにも見えた。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『滑稽だな。自分自身が存在だけじゃなく行動、形、在り方、全てがイレギュラーであることは、お前が一番よく分かっているはずだが?』

 

 分かるわけがない、分かりたくもない。自分がイレギュラー…それは良く言われてきた事だ。それはいい。ただ……

 

「僕が、道具っていうのは…嘘だ。嘘に決まってるよ、だって僕は勇者……そう、皆を守る勇者だ」

『だから、勇者じゃないんだよ。偽物、道具だって言ってるだろ』

「うるさい……お前の事の言うことなんか信じられるものか」

『俺を信じる、信じないなんかどうでもいいさ。問題はお前がどう思うかなんだからな』

 

 見透かされている。そういえば、彼は僕から生まれた存在なんだっけ…なら、僕が今、何を思っているのか、何を考えているのか、何を怖がっているのか、分かるのか?

 

『自分「だけ」が作られた存在であるという真実が。そんなに怖いのか』

 

 分からない、これは怖がっているのか?もう何もかもが分からない。全てが分からない。

 

『そうやって蹲っても無駄だ。お前はあの日、神樹からの満開拒否を跳ね除けた時点でこうなる運命だったんだからな』

 

 満開拒否……あぁ、そうか、あれは端末の不具合なんかじゃなかったんだ。覚えている、あの全身を握りつぶされたかのような痛み。まるで誰かにそれ以上先は行かせないと言われているようなモノを。

 

『あくまで盾として配置した偽物だからな、お前は。それが「本物」と同じ事をしようとするなんて。そんなこと、神サマが許すと思うか?』

 

 許さない、だろう。ああ、きっと許さない。そうか、少し繋がった。あの時全身に走った痛みと、さっきの痛み……あれは同じ存在から引き起こされたものなんだ。

 

『お前が今使っている力が馴染まないのも、神樹が原因さ。そのシステムは前までのお前を助けるシステムじゃなくて、お前を縛り付ける為のシステムなんだからな』

「縛り…付ける?』

『そう、これ以上お前を野放しにさせない為の……首輪みたいなもんだ。そうだな、実質今のお前は神樹の飼い犬ってとこだ』

 

 飼い、犬。その表現は間違ってないような気がしてしまった。今の僕は神樹という主人によって手綱を握られた飼い犬。でも…でも、僕は…。

 

『おっと、好きでこうなったんじゃないって言葉は言いっこなしだ。お前はもうそんな事を言えるような立場にいないんだから』

 

 無知は罪なり、とはよく言ったものだ。つまり、僕は行き過ぎてしまったのだ。こうなりたくてなったんじゃない…などと言い訳なんて出来ない所まで。

 

『自分は神樹サマから選ばれた勇者と思い込み、主人に歯向かっただけじゃなく…過去に行き、本来は死亡したはずの勇者達を生存させ歴史を改変した。ここまでの事をやっておいて、今更知らなかったなんてのは都合良過ぎだろ?』

 

 でも、本当に知らなかった。知る機会もなかった。いつも必死で、守りたいモノ為に…僕は、力を振るっただけ。

 

『お得意の誰かを守る為、だろ?ハッ!その結果自分を追い詰めてちゃ、意味ないだろうに。本当壊れてるよ、お前。だいたい…お前の体がそうなったのも……っと、潮時か』

 

 彼の言葉に合わせて、世界から音が消えた。虚な目を正面に向けると、広場で過ごしていた人達の動きが停止していた。

 

『来たぜ、守りたいモノってやつが』

 

 指の刺された方向へ視線を向ける。その先には、こちらに駆け寄ってくる三人の少女の姿が見えた。

 

「いた〜!こうく〜ん!探したんよー!」

「急いで、お役目が……天草くん?」

「ちょっ、大丈夫かよ!?顔真っ青じゃんか!」

 

 こちらへと語り掛けてくれる三人。スマホを取り出すと、通知が何件も来ていた為三人がどれだけ探してくれたのかが分かる。三人の声が聞けたお陰で、少し落ち着きを取り戻す。

 

「皆、ごめん…早く戻るって言ったのに…」

「そんな事、気にするなって。とりあえず無事でよかったよ……所で、そこの人は、洸輔の知り合い?」

「どう見ても、友達…って感じではないよね〜?そもそも、なんで私達以外の人がこの中で動けているの?」

 

 三人が僕を守るように奴の前に立ち塞がる。園子が少しドスの効いた声で彼に質問を飛ばす。

 

『そう、身構えるなよ。どうせ、そろそろ樹海化するんだ。戦いやらなんやらはそこで楽しむとしようぜ?』

「…つまり、貴方は」

『あぁ、お前さんらの敵って事でいい。なんだっけ?お前らが呼んでいた、仮面野郎って奴?二人いる内の一人が、俺だよ』

 

 その言葉と共に、彼は深く被ったフードを取る。顕になったその顔を見て三人は固まった。

 

「えっ…」

「そ、その顔!」

「こ…こう、くん?」

『驚くのも無理ないよな。ま、そこら辺の事はそいつに聞くといい……そいつが、話せるかは知らんがな』

「ま、待てっ!」

 

 静止の声は世界が塗り変わっていく事で掻き消される。視界が光に覆われている最中、視線の先にいる男は呟いた。

 

『さぁ、楽しもう。本来の歴史にはない、()()()()()ってやつを』




今回の出来事を少しまとめさせていただきました。

あこゆ時空では男の子にも勇者適正値は存在します、そういうオリ設定です(今更)しかし、それは適正値というには余りにも低すぎる為、適正値は存在しても、男性の中には勇者になれる人はいないとされているわけです(そもそも適正値を持っていた所で神樹に認められなければならないわけですが…)例外で天草くんは高い勇者適正値を元から持っていたのであります。

ある時、神樹ことロリコンクソウッドはこれから少し先の未来、『結城友奈』という少女が重要な存在になることを予感するのです。

そこで高い勇者適正値を持った天草くんを利用する事にした事で、天草くんは勇者に変身できたという訳ですね。しかし、困った事に神樹が彼を勇者にした目的が不純も不純というわけで……みたいな感じですね。他にも細かい謎は残ってますがそこは追々……ま、あくまで闇草くんが言ってるだけなんでね!読者の皆は、天草くんみたいに彼の言った言葉を全て鵜呑みにし過ぎちゃダメだぜ!キリッ


さて、改めてですが投稿が遅れまして申し訳ありません。大満開の章もも始まった事によりモチベが戻ってきており、続きはそう遠くならないんじゃないかな〜って……お、おお、思ってます(震え声)。次回は、遅れないよう努力いたしますので何卒応援の程をよろしくお願いします(土下座)


天草洸輔は勇者である 次回!第十四章『完成品』か番外編『デートに危険はつきもの…?』のどちらかを更新します!お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。