天草洸輔は勇者である   作:こうが

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第十四章 完成品

「—————っ」

 

 どうにも足に力が入らない。いや、違う、体全体に力が入らなかった。

 

 目の前に見える樹木生い茂る世界。その世界の風景は、今の僕には不快感のようなものしか与えなかった。

 

「僕は……」

 

 広場での会話を脳内で再生する。作り物、偽物、肉壁。神樹の……飼い犬。

 

(だから……なんだってっー!!)

 

 ああ、そうさ、だからなんだ。僕はこうして僕としてここにいるじゃないか。今までと変わらず、居続けているじゃないか。

 

 怖がるな。今は、目の前のことに集中しろ。そうだ、今は勇者として役目を。右手に握られた端末を持ち、いつも通り変身を。

 

(でも、この端末は……僕を縛り付ける為の)

 

 違う、違う、違う、違う……僕は、()()()()()()()()、作り物なんかじゃな—————。

 

「洸輔っ!おい、大丈夫なのか!?」

「ぇ……」

 

 銀の声が聞こえた。瞬間、先ほどまで朦朧としていた意識が戻ってくる。取り繕っているだけと言えばそれまでだが先程よりはマシだった。

 

「あり、がとう……銀。少し、落ち着いた」

「それなら良かった。ま…目の前の状況はあんまり良いとは言えない感じだけどな」

 

 銀の視線の先には、バイザーによって素顔の隠された存在が一人と、地面を泳ぐようにこちらへと移動してくるバーテックスがいた。

 

「アイツ…っ!!」

 

 手に自然と力が篭る。この怒りに意味があるのか……そんなモノは知らない。ただ、この込み上げてくるモノを抑え込める程の余裕が今の自分にはなかった。

 

 勇者システムを起動し、鎧を身に纏う。兜を展開し、視界がクリアになる。いつも以上に重く感じるのは、きっと気のせい……だと思いたい。

 

 そこに偵察に向かっていたらしい園子と鷲尾さんが戻ってくる。僕を見るや否や二人はこちらに駆け寄ってくる。

 

「こうくん〜良かった〜!落ち着いたんだね」

「うん。心配してくれてありがとう、園子」

「いいんよ〜私達仲間だもん。助けるのは当たり前だよ〜。ね、わっしー?」

「そう、ね。……でも、天草くん一つ聞いてもいいかしら?」

 

 鷲尾さんの声がする。何かに警戒しているような声が僕を呼び止める。

 

「わ、わっしー…?」

「分かってるの。今は、目の前のことを優先しなきゃいけないって。でも……今、見たことを有耶無耶にはできない」

 

 それはきっと仮面の下に隠された奴の顔が僕と同じだったことを指しているのだろう。当たり前の反応だ、僕も同じ立場ならきっと———。

 

「天草くん、話して。貴方と、彼は一体どういう関係なの?」

「……彼は、僕の————っ……」

「答えて、くれないのね」

「ごめん……また、何も……言えなくて」

 

 続きを言うことが出来ない。さっきと同じように……また、跳ね返そうとしたが、無理だった。以前よりも強制力が強くなっている気がする。

 

 ただ、その場には静寂だけが流れた。皆に真実を伝えられない事が、ここまで苦しいことなんて。

 

(最悪の気分だよ……クソッ)

 

 何を言われても、疑われても、もう何も言えない。彼女達が僕を疑うのは当たり————。

 

「ううん、何かしらの理由があるのは、あなたの表情で分かるから……あの仮面も話せるかはわからないって……どういう意味かは分からないけど言っていたし」

 

 膝をついた僕に対し、鷲尾さんが優しく手を差し伸べてくれる。一瞬固まるが……ぎこちないながらも、その手を握った。

 

「鷲尾、さん……」

「そんな顔をしないで、天草くん。大丈夫、私だって貴方を執拗に疑いたい訳じゃないから。今まで過ごした貴方を信頼しているからこそ、聞くべきだと思った。ただ、それだけなの」

 

 そう言った鷲尾さんは優しく微笑む。そんな彼女の僕を握ってくれていた手は少し震えていた。

 

(そりゃ……怖い、よね……)

 

 なのに、彼女は手を差し伸べてくれた。信頼しているからと言ってくれた。何も言えない、こんな僕を。

 

「あり、がとう……こんな僕を信じようとしてくれて…」

「こらこら、こんなとか言うなよ。須美はそんな事を言われる為に、さっきの質問をしたんじゃないんだから」

 

 「ありがとな、須美」と鷲尾さんに伝えた後、銀は僕の方を見る。

 

「園子もさっき言ってたろ。私達にとって、洸輔は友達だし、仲間なんだからさ……信じたり助けたりするのは当たり前だよ。気になることが一つや二つあるくらいで、私達がお前を信じなくなるわけなんかないじゃんか。だよね、リーダー?」

 

 ドンっと鎧の背中を叩いてそうはにかむ銀。その視線の先には、優しい笑みを浮かべている園子がいる。

 

「二人の言葉通りだよ〜こうくん。私も同じ気持ち……信じたいからこそ、疑う時もある。でも、それ以上に今まで一緒に過ごしたこうくんの事を信じたいし助けたいんだ、私達」

 

 信じたいからこそ疑う。言葉にしてみると簡単だけど、実際にやろうとすると中々難しい事。分からない事が多いのは僕だけじゃ無いんだ。鷲尾さんも、銀も、園子もそうだ。そんな中でも、彼女達はそれを乗り越えて僕を信じようとしてくれている。

 

(だったら…その気持ちに応えなくちゃ)

 

「話せる時が来たら絶対に伝える。だから、今は行動で示すよ。皆からの信頼を裏切らない為に」

 

 拳を強く握る。気になることは多いけど、今は下を向いてちゃいけない。頬を叩き、正面を向く。自然とさっきまで重く感じていた鎧の重みが消えた気がした。

 

「奴の相手は僕に任せて。今度は、逃がさないから」

「そのつもりだよ〜その代わり、あっちの大きいのは私達に任せて〜」

「私らの相手は、あのイカっぽい奴だな!洸輔も元気になったことだし、いくとするかー!」

「銀〜?油断は禁物、よ?」

「わ、分かってるって……はは、須美もいつも通りで安心した」

 

 三人と共に動き出す。鷲尾さん達はバーテックス、僕は仮面に標的を定める。今度こそ、逃しはしない。

 

 

 

〜洸輔視点out〜

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

〜須美視点in〜

 

 

 地面を這いながら神樹様を目指す化け物の姿を確認し、いつもと同じように前衛は二人に任せ、私は後方支援に徹する。

 

「あいつを神樹様の所には勿論、洸輔のとこにも行かせないようにすれば良いんだよね?リーダー」

「うん、あの黒い奴はこうくんにお任せして。私達がアイツを追い返しちゃおう!二人とも」

 

 そのっちの言葉に対し、私と銀は強く頷く。銀が武器を構え、相手を見据える。それに続くように私も弓を────。

 

「あのね、わっしー」

「どうしたの、そのっち?」

 

 そのっちは私の目を真っ直ぐと見ている。そして、間を置いてから決心したかのように口を開いた。

 

「さっきは、ありがとうね」

「……ううん、気にしないで。そのっちには、いつもリーダーとして頑張ってもらってるんだから」

 

 言葉の意味を聞かずとも理解し、そう返す。その言葉を聞くと、そのっちはにぱっと明るい笑顔を浮かべた。

 

「えへへ…わっしーと心が通じ合えて嬉しいなぁ〜♪」

「ふふ、何それ」

「話はまとまった?二人とも」

「まとまったよ〜ごめんね、ミノさん。待たせちゃって」

「別にいいよ、二人に必要な事ぽかったしね。さーてと、そんじゃ、相手も近くなってきた事だし…」

「うん……行こう!ミノさん、わっしー!」

 

 各々が自らの役割を果たす為に動き出した。先行していた天草くんが黒仮面を引き連れ、少し離れた位置で戦闘が開始される。

 

「天草くんを信じるのよ…須美」

 

 自分に言い聞かせ、相手はイカ?に似たような形をしたバーテックスへと武器を構える。天草くんが相手してくれている仮面の男だけ……大丈夫、彼ならやってくれる。でも────。

 

(……なんなのかしら、この胸騒ぎは)

 

 

 

 

 

 

 

〜須美視点out〜

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

〜洸輔視点in〜

 

 

(あっちも、始まったみたいだね…)

 

 少し離れた距離からの戦闘音を聞き、理解する。相手は魚座を冠するバーテックス。地面を泳ぐように移動する少々厄介な奴だ。

 

(大丈夫、あの三人なら……問題は)

 

 白銀の剣と漆黒の剣、二つの剣がぶつかり合う。樹海と呼ばれる異空間、殺意の感じれないもう一人の自分からの剣撃を捌き続ける。

 

『余所見してる余裕あんのかよ?』

「ッ!うおお!」

「っと!やけに気合入ってるな」

 

 自身の咆哮とは裏腹に…相手は余裕だった。相手のバイザーが開かれ見たくもないにやけ面が視界に入ってくる。

 

「うるせぇ、黙って、()()に、やられろよ」

『おお、こわ。俺は何も悪いことしてないってのにねぇ』

 

 言葉が言い終わるよりも速く、速く。未だ慣れない力を振るう。以前よりもマシになったとはいえ、完全じゃない。まだ、何かが足りないのは自覚している。

 

 加えて、目の前の男から広場で『真実』を聞いた辺りから頭痛が止まらない。自分という存在に、嫌気が差している節さえある。

 

(それでもっ!)

 

 それでも止まらない。三人が…… ()を頼ってくれたんだ。止まるわけにはいかない。例えこの身を犠牲にしようとも、僕は彼女達の力になるんだ

 

『反吐が出るな。また、そうやって他人の為だけに動くのか。お前は』

 

 勢いよく両刃の剣が弾かれた。その衝撃が右肩に伝わる。思った以上の力で反撃された事で、僕は弾き飛ばされた。

 

 僕が着ているこの鎧、これの正式名称…とかそういう詳しい事は分からないけど。防御力に関しては、今までの勇者服(?)の中でもトップクラスだということを自覚している。しかし、その鎧でさえも威力を殺しきれなかった。

 

「っ———!」

 

 すぐに体勢を立て直し、地面に着地する。轟音が鳴り響く。それは()()が一歩を踏み込んだ音。少し乱暴ではあるが相手の懐に向かって飛び蹴りを放つ。

 

「甘ぇッ!!」

 

 今まではとったことのない戦法。内心そんな戦法を取った自分に驚きつつも、それが相手にとっても意外な一手だった事が反応から分かると口元が吊り上がる。

 

 咆哮しながら、敵に対し一直線に飛んだ。ほぼ人の形をした弾丸にも等しい。不意の飛び蹴りが相手に命中する。

 

『へぇ…面白ぇ』

 

 心の底から嬉しそうな声が仮面の中から聞こえる。直後、こちらの飛び蹴りによって奴の体は宙を舞う。が、すぐにその姿が消えた。

 

(……来るっ!!)

 

 体が勝手に動く。頭より先に、体が身の危険を感じ取って勝手に動いている。まるで自分の体じゃないみたい……少し怖いけど、でも、そのお陰で────。

 

(ははっ……マジか)

 

 皮肉げな笑みを浮かべる。その笑みは姿が見えない敵からの攻撃をほぼ直感だけで防いでいる自分に対してのもの。

 

(……今までだったら出来なかった事が、出来る様になってる?)

 

 なんとなくだけど……お前の体が半分以上人間ではない、その言葉の意味が理解できてしまった気がする。

 

『面白いぞ、お前!急にどうした!?()()()()()()!?』

「……知るかよ、んな事。僕は、僕はただ…あの子達からの信頼に応えたい!それだけだ!」

 

 真実を伝えられない今、僕が出来る事はこれしかない。ならば馴染んでないだとか体が上手く動かないなんて……そんな弱音、言ってられない。

 

『つまらない回答だが……まぁ、確かに、お前らしいな』

「お褒めに預かり…光栄だよッ!!」

 

 言葉を返しながら、次の一撃……両手で握った全力の横薙ぎを振るう。紅い稲妻を纏いながら振われたその一撃は、仮面の男を吹っ飛ばした。

 

『ッ!…やべ』

「もう、逃さないッ!」

 

 好機を見逃さない。空中で体勢を立てなおそうとする仮面の正面へと即座に移動。狙いは、ガラ空きになっている胴体。

 

 赤雷が自身の右手部分に収束する。腰を思いっきり捻り、力を貯め……それを一気に解き放つ。

 

(僕は……偽物でも、道具なんかでもない!)

 

「友奈直伝!勇者ァ!パンチッ!!!」

 

 ガラ空きになった胴体目掛けて、赤雷を纏った拳をぶつける。爆音が響いた瞬間、仮面の体は地面へと一直線に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勇者パンチをもろに食らった事、そして地面に思い切り叩きつけられた影響か。仮面はすぐに起き上がる様子がなかった。油断はせずに、仮面に対して両刃の剣を突き立てる。

 

「終わりだよ、さぁ洗いざらい吐くんだ。君が何を知ってるのか」

『随分強がるじゃないか。本当は不安で仕方ない癖によ』

「……黙れ」

『怒るなって。だがまぁ、やるじゃないか。驚いたよ、あんな精神状態から、よくもまあそこまで持ち直したもんだ』

 

 半分が割れている仮面から見える横顔には余裕がある。追い詰められているのは相手の方の筈なのに、余裕は崩れない。

 

『お前は知ってるよな。本来の歴史には、こんな時期に鷲尾須美達がバーテックスと戦う事なんてなかったって』

「知ってるよ……もしかして、君の言ってた未知の展開ってやつと関係してるの?」

『珍しく頭が冴えてるな、あぁ、そうだとも。今回はその前祝いみたいなもんさ。()()()()()()()()()()()()からな、折角なんででしゃばらせて貰った』

 

 次…次というがもし、僕の想像通りなら……それは────。

 

『あぁ、三ノ輪銀が命を落とす戦いだよ。それをさ、もっと面白くしてやろうと思ってるんだがどう思』

 

 胸ぐらを掴む。怒りが頂点に達し、兜が展開されたと同時に奴の目を睨む。

 

「ニヤついた面で人の死を語るんじゃねぇよ。お前が何をやろうとしてるのかは知らない。だけど、今は僕がいる。僕がいる限り、そんな事は絶対にさせない。銀も……僕が救ってみせる」

『大口叩くのは結構だけどよ、それ…多分無理だぜ?』

「………は?」

 

 間抜けな声が出る。平然とした顔で答えるそいつの表情には嘲笑も侮蔑もない、ただ本当の事を言ってるだけだが?と言いたげな表情をしている。

 

「無理って…何。何が無理なんだよ!」

『お前の主人である神樹様が許さないんだよ。西暦でお前があいつらを救えたのは制約が無かったからだ。だけど……今のお前はどうだ?』

 

 彼の言葉を聞き思い返すのは、この時代に来てから、僕を苦しめてる謎の強制力のようなもの。同時にこの世界に飛ばされた際に、受け取ったメールの内容……あれは、そういう事、なのか。

 

『例え、その時が来たとしてもお前は満足に動けない筈だ。忘れたか?神樹の飼い犬。手綱を握られてるんだよ、お前は』

「だと…しても、なんで?なんで助けちゃダメ、なの…?」

『単純な話だろ、歴史を変える事は本来やってはならない事だ。例え望まない結果や出来事が起きたとしても、それを捻じ曲げれば先の事がもっと捻じ曲がる。最悪、もっと結果が酷くなる可能性だってあるのさ。あーあ、乃木若葉だって、お前さえいなきゃあんな事はしなかっただろうになぁ……そりゃ、可能性があるなら手を伸ばしちまうよなぁ?』

 

 そいつはまた笑う。何度も見たその笑み、それは僕という紛い物をとことんまで嘲笑うかのような表情だった。

 

『さて、この話から考えるに……だ。この時代に異変を起こした最大の要因、それは……何だと思う?』

「まさ、か────」

 

 ぐらっと視界が歪む。若葉がその選択を取った際に決定打となった人物。過去に行き、歴史を変えた人物。

 

 やめろ、答えるな…答えちゃダメだ…答えちゃ、ダメなのに。

 

「異変の原因って……僕、なの?」

『大正解!!』

 

 本当に、心の底から嬉しそうにそいつは笑う。胸ぐらを掴んでいた手から力が抜ける。

 

「うそ、うそうそ…うそだって…そんな、そんなこと…そんなことある訳!」

『あぁ、確かに。全部がそうって訳じゃあねぇよ?けどさ、俺を見ろって。誰が…俺を、生み出したんだったっけ?なぁ、答えてくれよ、相棒』

 

 彼を、生み出した、存在……そんなの、一人しかいない。

 

「……僕、だ────」

『そうそう!なんであれ、その事実は変わらないよな?この時代で暴れている俺を作り出してくれたのは、他でもないお前だよ』

 

 もう、訳が、分からなかった。自分の存在の事も、こいつの事も、何もかも。もう考えたくなかった。段々と意識が虚になってゆく。

 

『そういえば、大事な事を忘れてた。お前があの世界で生み出したのは、俺だけじゃないんだぜ?もう一人、いるんだよ』

「え…?」

 

 ドスッと生々しい音が聞こえる。一瞬、何が起きたのか分からなかった。気づいたら、冷たい何かが着ていた鎧を貫いて、僕の腹を抉っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【その通りだ。あぁ、感謝しているとも。本当にありがとう……天草洸輔。君のお陰で、私は生まれた】

 

(なに、これ?なにこれ……痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!)

 

 さっきまで消えかけていた思考が、痛いという感覚だけに塗り替えられる。

 

「ガッ……アァァァァァ!!!」

【?、随分痛がる演技が上手だな?】

 

 更に抉られる、体の中のものを全部かき混ぜられてるみたい。そんな感覚に襲われる。もはや苦悶の声すら上げられず、手から剣がこぼれ落ちた。

 

【まさか、本当にまだ痛いのか?……だとしたら、申し訳ない。てっきり、もう気づいてるのかとばかり】

 

 勢いよく槍のようなモノを引っこ抜かれる。同時に体から力が一気に抜けた。もういっそ意識が飛んで欲しかった、無駄に意識が残っているせいで痛みを感じ続けなければならない。

 

【まだ中途半端なのか。ふむ、君の言っていた事は本当という事かな】

『……おい、『完成品』。突然出てきて、俺の獲物を横取りするなっての』

【……ほざくな、人形風情が。貴様如きが私の行動に意見するな】

 

 一人は闇の僕……そして、もう一人は、完成品と呼ばれている仮面を付けた長身の男。体が言うことを聞かずに蹲る僕の元に、長めの銀髪を靡かせながら彼は近づいてきた。

 

「…誰、だ…?」

【会ったじゃないか。西暦の世界で】

「……は、ぐっ、…し、知らない…よ」

【酷いな、覚えていないとは。私は、君につけられたこの傷を忘れた事などこの300年の間に一度もなかったのに。あぁ、君にとっては一ヶ月前とちょっと前……くらいの事だったか】

 

 その言葉を聞いた瞬間、脳裏によぎったのは西暦での最後の戦いでの事。黒で塗り潰された自分と同じ形をした異形の怪物。

 

「…あの、時の…?」

【思い出してくれて光栄だ。しかし、あの時の私のままではないとも。なんせ、あの時の私は生まれたてだったのだから……おや?】

 

 完成品の言葉が止まる。

 

【致命傷を即座に回復は不可能……しかし、確実に肉体が再生しようとしている。ふむ、どこまでも中途半端ということか】

 

 声が聞こえるが、何を言ってるのかまでは今の僕には分からない。体を起こそうにも、いう事が聞かない。

 

【ここで君を始末するのは簡単だが……天の神は君が心の底から苦しむ事を望んでいる。故に、今は生かそう。私自身も生みの親をそう簡単には殺したくないのでね】

『……また会おうぜ、相棒。次が来る時には復活しててくれよ?そうしないと楽しめないからな』

 

 完成品ともう一人の僕はそう言い残すと、姿を消した。そこには血にまみれた体で倒れ伏せる僕だけが残される。

 

 虚な意識まま、思考を巡らせる。

 

(僕の、せい?)

 

 さっきもう一人の自分が言っていた言葉。あの言葉が真実だとしたら、僕は……自分を許せない。

 

(どう、して……?)

 

 もう、自分の事が分からなかった。何を信じていいのかも。

 

(僕って……なんなの?)

 

 駆け寄ってくる3人の少女の姿が見えた。バーテックスとの戦いを終えたのだろう。そして、あいつらも消えた事で鎮火の儀も始まった。

 

(銀、鷲尾さん、園子……ごめん、なさい。本当に…ごめん、なさい)

 

 意識がなくなるまでの間、ずっと僕は彼女達に謝り続けていた。




えっ!?また新キャラ!おいおいおい、増えすぎだろ……って作者がなってます(白目

てか、天草くんまた腹に穴空いたの…?(戦慄)

次回のタイトルは未定です!(血涙
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