今回のお話としては友奈ちゃんと洸輔くん。小六時代の二人の12月31日の様子を描いたものです。当日にあげようと思ったけど間に合いませんでした。申し訳ないです、でも書けたのでいまあげますのよ(ちょうど本編に小6の二人が揃ってるのでわすゆ編の番外編として投稿キリッ)
てな訳で、本編どうぞ!
今日は12月31日、所謂大晦日ってやつだ。幼馴染が買い出しを頼まれたらしいので、自分はその付き添いを今務めている。街の雰囲気ももう完全な年越しムードである。
「ありがとね、付き添ってもらっちゃって」
「お安い御用だよ、友奈一人じゃ色々と心配だしね」
「それ、どういう意味〜?」
「さぁさぁ、どういう意味でしょうね〜(ニヤニヤ)」
ぶーっと頰を膨らませる友奈。こんな事言ってるけど、本当は友奈を一人で行かせるのは心配だったので着いて行く事にしたのが本音である。まぁでもね、それは内緒という事で。
「そういえば、洸輔くんは大掃除終わった?」
「終わったよ。来年から中学生になるし、いつもより気合入れて頑張ったとも。そういう友奈はどうなのさ」
「私は後もうすこしって感じかな!なんかね〜片付けの最中に出てきたものが気になっちゃってさぁ」
「あるあるだね。片付けてる時、久しぶりに掘り起こした漫画とかを読んじゃったりとか」
「そうそう」と頰を掻きながら答える友奈。やけに楽しそうだけど、何かいい事でもあったんだろうか。
「なんかご機嫌だね、なんかいい事でも?」
「うん!今年の大晦日も洸輔くんとこうやって過ごせてるのが嬉しくて楽しいんだ〜!」
「……ずるいねぇ、友奈は」
友奈にそんな事を言われて、嬉しくないはずがない。まぁ、その反面、すこーし恥ずかしいのも確かなもんで。ついでに言うと、声のボリュームをもうちょい落としめでお願いしたいとこだ。
「よーし!それじゃあ買い出し済ませちゃおー!」
「はいよー、全く元気な事で」
少し呆れつつも、いつも通りな友奈の姿を見て緩んだ笑みが溢れた。どうやら僕も友奈と気持ちは一緒らしい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おー、珍しい。ここのお店は蕎麦をピックアップしてるんだ」
「なんとぉーつまり私達とは分かり合えないってやつだね?」
「嘆かわしきかな」と友奈。そんな言葉どこで覚えたのかしら、この子ったら。どうやら、このスーパーは年越し蕎麦を推しているらしい。いや、別に悪い事ではない。
僕自身は年越しくらいは蕎麦でもいいかなっと思うし。しかし、だ。真横には結城友奈という、うどんに関しては過激派の領域を逸脱している程の猛者がいる。
沢山並べられたそばとうどん。どちらも袋が山と積まれており、まさに年越しのメインに恥じないような置かれ方をされている。しかし、それよりも蕎麦がフォーカスされている事に納得がいってない様子の人が一人。
「むぅ、なんかもやっとするね」
「まぁでも、こういうのは人それぞれだから。年明けにもうどんを食べる機会がある事だし*1、たまには蕎麦でもいいんじゃ」
「洸輔くん?」
ゴゴゴと空中に文字が浮かんで見えるのは僕だけだろうか。僕だけなんだろうな……僕の肩に手を優しく置きつつ、友奈がこちらを見る。目コワ。
「洸輔くんのうどん愛は……そんなもの?」
「ッス、申し訳ないっす。今すぐうどん取ってきゃす!待っててください、友奈姐さん」
「分かればよろしい」
とびっきりの笑顔を向けてきた友奈を恐ろしく感じました。もうほんとこの子うどんの事になるとこれだから……。友奈姐さんの逆鱗にこれ以上触れないよう、爆速でうどんを回収に向かう。無事買い出しメモに書いてあった分のうどんをゲッツ。
「っと、人多いな…」
「確かに。まぁ時期も時期だし」
「家族連れも多いし、はぐれないようにしないと」
どこもかしこも賑わっている。家族連れは勿論、他にも色々なお客さんが楽しそうに買い物をしている。こういう賑やかで楽しい雰囲気は好きなので、この時期は割と好きである。まぁ、それはそれとして────。
「友奈、はい」
「ん?お〜洸輔くん、急に積極的だね〜?」
「茶化さないの。ほら、早くしないと手引っ込めちゃうよ」
「あー!ご、ごめんごめん!」
友奈と手を繋ぐ。考えてみると、友奈から手を繋いでもらった事はあれど、自分から彼女の手を握った事はなかった。
こうするのが当たり前……みたいに手を繋ごうとした自分を思い返し、少し顔を赤くする。こういうのが自然に出来る様になってるのって…だいぶ凄い事ではなかろうか。
「はは、顔赤くなってる〜」
「……うぅ、自分から握るの慣れてないんだから仕方ないじゃん」
「なら、これはどうかな〜?」
楽しそうに、友奈は手を握ったまま僕の方に身を寄せてくる。積極的にも程がある。いっつも思うが、この子は自分がどれだけ可愛いのか分かってないんじゃなかろうか。
周りからの視線が少し痛い。僕は慣れてるけど、慣れてない周りの人達の視線から察するにスーパーで突然イチャつきだす小学生バカップルコワ…みたいな事を思っていそうだ。
「……近すぎない?」
「えへへ、ごめんね。……でも、実は嬉しかったり?」
「まぁ…うん、そうだね。嬉しい、よ」
「やったー♪」
照れ臭くなって顔を逸らす自分とは対照的に、こちらを弄ぶかのような態度を崩さず、彼女は微笑んだ。
その笑顔にまたもや見惚れてしまう。今年中も似たようなやり取りが何度もあった気がするなと思い返す。
(……今年も、もう終わりか)
時間が過ぎるのとは早いものだと改めて実感する。友奈と二人でいる事が当たり前になっているせいか、今日もいつもと変わらない日だと感じそうになってしまう不思議。
(去年も、その前も、その更に前も)
いつだって一緒にいた。今もそうだ、恐らく僕と友奈の関係性は腐れ縁の幼馴染……ってだけでは当てはめられないものになってきているのではなかろうか。
(なんだっけ…友達以上、恋人未満ってやつ?)
どうあれだ、僕は友奈の傍にいられる。それだけで嬉しいから別に関係が今の状態から進展してもしなくても……構わない、筈だ。
(……って、何考えてるんだよ僕は)
いけないいけない。年の終わりとか、友奈がやたらと身を寄せてくる事も相まって謎に考え込んでしまった。今はそれよりも、買い出しという目的を果たさなくては。
「どうしたの?」
「ううん、なんでも。それよりほら急いで買い出し済ませよ?友奈のお母さん待ってると思うし、一応…僕の親も」
「そうだった!急がないと!あ…でも、もう少しこうしてたいな〜って思っちゃったり……チラッ」
「……どうせ今日はずっと一緒にいるんだから。友奈が望むなら、後でやってあげるよ」
「やったー!じゃあ、急ごう!」
「ちょ、急に早!」
これまた明るい笑顔を浮かべた友奈は、僕の手を引いた。小言を多少は言いたくなったものの、どこまでも楽しそうな顔をしている彼女を見て僕は言葉を呑み込んだ。
それどころか、楽しそうな彼女に釣られて微笑んでしまっていたという。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
買い出しを終えた後、今年も変わらず僕は友奈宅にお邪魔させていただいた。これが当たり前みたいになっているのには理由があり、僕と友奈の両親はとても仲が良く、年末にはどちらかの家に集まり、パーティー…って程じゃないけど、集まって食事をしたりとかするのが恒例となっている。
そんな恒例の食事も終わり、外も暗くなってきた頃。僕は友奈に連れられ、外を軽く散歩する事になった。この散歩も、若干恒例のようになってきている気はする。
「うーん!満腹満腹〜美味しかったぁ〜」
「つい、食べすぎちゃったな。これは正月太りには気をつけないと」
「ウッ…」
正月太りという言葉を聞いた瞬間、友奈の体がカチンと固まった。昔の事とか思い返したのかしら…。まぁ、その時は筋トレを教えて助けてあげるとしよう。
「友奈、寒くない?」
「ちょっと寒いかも……うぅ、さっきまでずっとあったかい部屋にいた影響かな〜」
両手を擦り合わせている友奈の左手を掴み、握る。一瞬、驚いたような表情を見せるが、すぐにいつもの可愛いらしい微笑みを彼女は浮かべた。
「あったかい……」
「よかった。後は、買い出しの時の約束、守らなくちゃね」
「…いいの?」
「ドーンとおいで、なんならさっきよりも密着してくれていいよ?」
「言ったね〜!よーし!」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、友奈は身を寄せてくる。「すりすり〜♪」と言いながら、じゃれ付いてくる彼女の姿はとても可愛いらしかった。
二人で、誰も歩いてない道を進む。彼女がどこへ向かおうとしているか、すでにわかっていた。
「やっぱり、ここだよね」
僕らにとって思い出の場所。鍛錬だったり、二人で砂浜に腰掛けてお話ししたり……ここに来るだけで、沢山の事を思い出す。
「私たちと言ったら!って感じしない?」
「するね、まぁでも友奈に吹っ飛ばされた記憶の方が強いかも」
「えー他にないのー?」
「あるよ〜?友奈に組み手でボコボコにされたりとか」
「それ、さっきとほとんど変わらないじゃん!」
シチュエーションはロマンチックそのものなのに、あまりにもやり取りがいつも通りだったせいか、僕と友奈は二人で顔を見合わせ笑い合った。
少しの間を置いてから、ぎこちない動きで友奈は握った手を絡ませてくる。
「…友奈?」
「ご、ごめん!……い、いやだったかな?」
「まさか、嫌じゃないよ。寧ろ…好き、かも」
「す、好き!?……そ、そっかぁ…好きなんだ。えへへ…」
先程よりも熱が伝わり、自身の手の指の隙間からも強く感じる。今僕と友奈は、所謂恋人繋ぎ………というやつをしている事になる。
(いつのまにか、戸惑いよりも嬉しさの方が先に来るようになってたな)
昔なら、恥じらいの方が先に来てしまって彼女の温度を感じる余裕なんてなかった。でも、今は違う。彼女の温度を感じられる事を、心の底から嬉しく感じている。
(いつも……この手が僕を引っ張っていってくれた)
小さい頃も、今も……そして、きっとこれからも────。
「来年から…中学生だね」
「だね。もしかして、不安?」
「逆かな。寧ろね、とっても楽しみなんだ!」
首を傾げる僕に対して、相変わらずの笑顔で彼女は言う。
「予感がするの。これから先、私は色んな経験をして、色んな人に出会って……かけがえのないものを見つけるんだ〜って予感が!」
真っ直ぐと透き通った瞳が、僕を捉える。嬉しそうに語る彼女の顔はどこまでもキラキラしていて…眩しかった。
「何となく、分かるよ。きっとこれまで以上に……僕らは色々な事と出会うはずだ。その中には楽しいことだけじゃなくて……辛いことも苦しい事も沢山あるんだと思う」
握っていた手に力が籠る。それに対して、友奈は優しく握り返してくれた。
「大丈夫!どんな時も、私が傍にいるから!辛い時も、苦しい時も、私が洸輔くんを支える!」
「それは心強いね……友奈が支えてくれるのなら、僕はなんでも出来る気がする」
「そ、そう?えへへ…そう言ってもらえるの、嬉しいなぁ」
にぱーっと優しい笑みを浮かべる友奈。そうだ、彼女がこうやって笑っていられるように……僕は────。
「君が、僕を支えてくれるのなら。僕は、何があっても友奈を守るよ。辛いこともからも、苦しいことからも、どんな事からも…友奈を……大切な人を守ってみせる。……約束だ」
「……うん!約束!」
あともう少しで、一年も終わるんだ。友奈も言った通り、これからはもっと色んなことに出会える気がする。その過程に何があろうと、僕らなら、きっと大丈夫。
「ずっと…一緒にいようね」
「あぁ、勿論だよ。これからも、僕らはずっと一緒だ」
「……それじゃあ、改めて!来年も…ううん、これから先もずっとよろしくね、洸輔くん」
「あぁ、これからもよろしく、友奈」
流石メインヒロイン枠の友奈ちゃんだ…強いな。てな訳で番外編でした。次回は本編の投稿を予定しているので、お楽しみに!