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バーテックスの大規模な戦闘から数日が経った。私達勇者部は、風先輩考案の勇者部大勝利パーティーを行うため準備をしていた。しかし夏凜ちゃんが来ていなかった。
「にぼっしーはどうしたわけ?」
「それが……わからないんですよ。メールしても返事がなくて……」
「授業がおわったらすぐ出ていっちゃうからね……」
『心配ですね……』
「僕…夏凜探してきますね!」
「私も!」
「あ、ちょっと二人共!」
洸輔くんと友奈ちゃんが勇者部の部室を出ていく。風先輩がそれを追おうとするが、私はそれを止めた。
「行かせてあげましょう?風先輩」
「東郷?」
「多分……あの二人にしか出来ないと思うんです」
『私もそんな気がします!』
「うん、ありがとう樹ちゃん。それより風先輩こそ大丈夫ですか?」
「え?」
ここ最近の風先輩はちょっとおかしい。行動の一つ一つに多少ぎこちなさが目立っている。
「な、なんでもないわ!大丈夫よ!」
『ホントに?』
「ほんとほんと!大丈夫だから!」
風先輩はぎこちない笑顔を浮かべた。悩みがあるのはなんとなくわかった気がした。
「なにかあったらいつでも相談してくださいね?」
「なんか東郷、雰囲気変わった?」
「そうでしょうか?多分、それはあの二人のお陰ですよ」
(あの二人には人を包み込む力がある。だからこそ、今の夏凜ちゃんにはあの二人が必要だ)
「さ、あの二人が夏凜ちゃんを連れてくる前に準備を済ませておきましょう」
私は、風先輩と樹ちゃんと一緒に準備を再開した。
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「ふ!はぁ!」
日課である素振りをやっているがいまいち気が乗らない。
「はぁ……」
ため息をつきながら、砂浜に寝っころがった。
(あたしは、なにもできなかった……)
あたし以外の満開したメンバーは、体のどこかに異常が起きているらしい。
(あたしは、みんなの助っ人にきたはずなのに……そのあたしが一番傷を負っていない)
あたしは、その情けなさと申し訳なさで部室に向かうことも内心、お見舞いに行くのだって辛かった。
(情けない……情けない!何が完成型勇者よ!)
あたしなんかよりも、勇者システムが不安定なはずの洸輔の方がよっぽど覚悟ができていた。あんなに怪我を負いながらも、彼は満開をしたのだ。
「夏凜ーーーーーー!!」
「夏凜ちゃーーーん!!」
あたしが、そんなことを考えていると洸輔と友奈が私の方に向かって走ってきた。
「どうしたのよ?二人で……」
「夏凜ちゃんを呼びにきたんだ!」
「呼びに?」
「今日は、みんなで部室に集まってパーティーする日だからね。夏凜もいなきゃはじまんないよ!」
二人が私に部活にきてほしいといってくれている。でもあたしは乗り気ではない。
「行かないわよ……あたしは」
「どうして?」
「あたしは元々……バーテックスを倒すためにやって来た。だから、もう部活にいく理由はないわ」
「理由?」
「あたしは…バーテックスを倒すために勇者部の助っ人として来た。でもそのバーテックスとの戦いは終わった。なら、あたしが勇者部にいる理由はもうない。大体もうバーテックスとの戦いは終わったんだから、もう勇者部なんて必要ないでしょ!」
あたしにとって、兄貴を越すことだけが勇者をやっていた最大の理由だった。でも、友奈や東郷、風に樹、そして、洸輔と過ごしていく内に、あたしの中にはそれとは違う思いがあったのだ。
(ただ、みんなの役に立ちたかった……」
でも、結果的にあたしはなにもしてない。だからもう、勇者部にはいけない。あたしが二人から目を反らすと洸輔が頭を撫でてきた。
「そんなことないよ?戦いがなくなったとしても、勇者部は勇者部だ」
「でも……」
「今までの理由が戦いのためだったのなら、これからは他の理由を持てばいいんんじゃないかな?だって、夏凜はここにいたいって顔してるし」
「でも!あたしは、戦うためにここにきて……その戦いが終わったからあたしには価値がなくて……部活にも居場所なんてなくて」
「そうかな?」
「え……?」
「戦いが終わったら居場所がなくなるなんてことはないと思うよ?そもそも居場所っていうのは、あるものじゃなくて作るものだと思うんだ。そして、夏凜はもう勇者部って居場所を作ってるじゃないかな?」
そう言った洸輔の顔を見ることができなかった。隣にいた友奈も、笑顔を向け言葉を掛けてくる。
「そうだよ!!何より夏凜ちゃんがいないと寂しいし、私や洸輔くん、それに勇者部のみんなだって夏凜ちゃんのこと大好きだからね!!」
「っ!?」
顔が熱くなった。目からも、なにか温かいものが流れた。
(まったく、あんた達二人には、一生勝てる気がしないわね……)
「そこまで、言われたら……行ってあげるわよ。勇者部」
「やったぁ!じゃあ早くいこう!」
「うん、みんなも待ってるからね」
「そうね、急ぎましょうか!」
「「……」」
「な、なによ……その、目は?」
「「さっきまで拗ねてたのにぃ?」」
「っ~~!うるさいわねぇ!!」
他愛もない会話をしながら、あたし達は部室へと向かった。
「とう!結城友奈!只今戻りました!!」
「同じく天草洸輔!戻りました!」
「お帰り。二人とも……って夏凜もいるじゃない」
「二人が、どうしても来てほしいって言うから……来てあげたのよ!」
「わー!お菓子がいっぱいだぁー!!」
「で、でも友奈……味覚がなくなっちゃったんじゃ…」
味覚障害……それが友奈が抱えてしまった満開の後遺症だ…。しかし友奈は気にした様子もなく先ほどあたしに向けた笑顔で言った。
「大丈夫ですよ!風先輩!食感で楽しめますから!」
「ごめんね…みんな……あたしが巻き込んだせいで…」
「心配しすぎですよ、風先輩。医者の人も一時的なものって言ってるんですから、大丈夫ですよ。」
『そうだよ!お姉ちゃん!』
「なので、これからは結城友奈!風先輩のごめんは聞きません!」
『わたしもです!』
「私も」
「もちろん。僕もです!」
「みんな…………ありがとう!!」
そうみんなに言われると、風は嬉しそうに笑った。
自分がどんなに辛くても、いち早く他人に手を差し伸べてその人を包み込んでしまう……それがあの二人の凄さ。
「そんなことより!早くパーティー始めましょう!もうお腹すいちゃって!」
「僕も、結構走ったからなぁ…疲れたぁ~」
「はい。友奈ちゃんに洸輔くんも、ぼた餅用意してあるわよ。」
「やったぁ!ありがとう!東郷さん!」
「感謝感謝だね。」
「よーしあたしもいっぱい食べるわよー!」
『あんまり食べ過ぎるとまた太っちゃうよ?』
「だ、大丈夫よ!樹!食べた分はしっかり動くから!」
「それって絶対動かないやつの言い訳よね?」
(ああ………そっか…あたしはここが好きなんだ…)
私は…知らず知らずの内にここが好きになっていたんだ…。
(だったら……あたしがここにいる理由はもうできてるわね。)
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パーティーが終わって、家に帰宅したあたしはそのままベッドに寝そべった。そこでいつかの休日に洸輔に言われたことを思い出す。
『少なくとも僕や勇者部のみんなは夏凜のことを仲間だと思ってるよ。』
(あたし……ホントにどうしたんだろ……最近あいつのことばっかり頭に浮かぶ。)
最近のあたしは、よく洸輔のことばっかり考えている。気恥ずかしくなり枕に顔を埋める。
「なんなのよ……この気持ちは……」
(こんなの…初めてだっての…)
あたしは、今まで感じたことのない感情を抱えながら眠りについた…。
なんか夏凛ちゃんメイン回多くね?って書いてて思ったけど可愛いからいいかって流しました。さて次からは旅行編に突入です!
お楽しみに!