本編スタートです!
「僕の、こと?」
「うん、男の子で唯一の勇者。本来は適正があったとしてもなれるはずがないのにも関わらず、君はなれた。何があったか……少し聞いていいかな?」
(隠したところで、乃木さんには隠し通せない気がするし話すべき、かな)
僕自身も気になっていたことを、乃木さんに聞いてみることにする。それが、彼女にとって辛いことだとわかっていても。
「えと、じゃあ、僕が自分のことを話したら、乃木さんのこと……君の勇者だった時のこと、聞いてもいいかな?」
「うん〜いいよぉ〜。じゃあ先に洸輔くん……いや、こうくんの方がいいかな?」
「え?」
「あだ名だよぉ〜私のことも、園子でいいからさ?」
先ほどわっしーって言っていたことから察するに彼女はそういうのを人につけるのが好きなのだろう。(そんな風に呼ばれたことないので少し恥ずかしかった
「えっと……じゃ、じゃあ、園子?」
「はは……どうして疑問系なのさ。面白いんだね、こうくんは」
「か、からかわないでよ」
「ごめんごめん。それじゃ本題に入ろうか」
「僕の、ことからだね」
僕は、自分が勇者になった経緯をすべて話した。すると彼女は、なにかを納得したかのように表情を変化させた。
「なるほどね〜」
「なるほど?園子……何かわかるの?」
「心当たりが、一個だけね」
「ほんと!?是非聞かせて!」
「おっけーだよー、こうくん。その前に、精霊がどんなものだったかを復習しておこうか〜」
僕が首をかしげるのを気にせず園子は話始める。神樹様にはあらゆる伝承…そのすべてが概念的なもので記録されている。稀に歴史上の人物や神話上の英雄達も精霊として顕現することもあるらしい。
「前にね、大赦の人達が話してたのを聞いたんだけど。こうくんが勇者になれたのは、英雄さんを憑依させることで勇者としての力を顕現させているんじゃないかって」
「憑依?」
「でも〜それって、本来は危険な事なんだとも言ってた」
「危険なこと?もしかして、なんかデメリット的な……」
「うん、そんな感じかも。もし、大赦の人達の推測通りに、憑依によって勇者の力を得ているんだとしたら、いつか、そう遠くない未来……こうくんはこうくんじゃなくなるかもしれない」
「………」
「なぜなら、人と人ならざるものは本来は交わることがない存在。それは憑依させている本人の半身を侵すようなものなんだって。ましてや勇者になれるはずがない男の子、それを繰り返せば、君は」
「大丈夫!」
「え…?」
園子が僕の方をみながら唖然としていた。僕は、続ける。
「あの人は、僕を選んだって言ってくれた。実際に七体のバーテックスが襲ってきたときには…僕に力を託すって言ってくれたし…僕自身もよくわかんないけど勇者になってるときに侵されてるって感じもないし!多分、そんなに悪いもんじゃないと思う!」
「……ふふ」
「えっちょ!?な、なんで、笑うの!?」
「いや〜ここまでいろいろ説明とかしたわりに、一瞬で否定されちゃったなぁ~って。そう考えたら、急に面白くなっちゃってさ〜」
「ひ、否定はしてないつもりだけど……」
「わかってるよぉ〜でも、こうくんがそう思っているのならそれが一番だとおもうなぁ」
そう言った時の園子の顔は笑顔だったと思う。包帯で隠されていたけどなんとなくわかった気がした。
「じゃあ、そろそろ私の番かな?」
「いいの?辛ければ無理に話さなくてもいいんだよ……?」
「ううん、私がこうくんに話してあげたいんだ。少し、長くなるかもだけど聞いてほしいな」
「わかった……」
「ありがとぉ〜さて、どこから話そうかな〜?」
園子は過去の思い出をいろいろ話してくれた。神樹館という場所で園子は勇者に選ばれて二人の友達と戦ったらしい。そしてその一人が…。
「鷲尾須美、それが、美森が園子と一緒に居たときの名前なんだね」
「うん、そうだよ。わっしーはね〜最後の戦いで記憶を失っちゃったんだ。両足もね、全部散華の影響だよ~」
「じゃあ、園子は何回満開をしたの?」
「ん〜かなりの回数したから、覚えてないよぉ~」
「……ごめん」
「いいよ~しょうがないもん」
次に話してくれたのは三ノ輪銀という少女のことだった。その子は二人のお姉さん的な存在で、いつも二人のことを勇気づけたりしてくれたらしい。でも…ある戦いで二人を庇って命を落としてしまったと…園子は語った。
「ホントに悔しかったなぁ…あの時は自分の力のなさを呪ったよぉ……」
「園子……」
「私とわっしーはミノさんのことがすごい好きだったんだ…だから失ったときはホントにつらかった…」
話を聞いていてわかったのは彼女がどれだけ二人の事が好きだったかということ…そして三人がどれだけ信頼しあっていたかということだ…。
(それなのに…こんな体になったせいで…園子は…)
拳を強く握りしめる。僕には過去のことで園子に言える言葉がない…。
「園子…」
「ん?何…かな?…こうくん?」
こちらを向いた園子の左目には涙が伝っていた。僕は園子を自分の胸へと抱き寄せた。
「今この時だけは我慢しなくてもいいんだよ…今は僕が傍にいるから…」
「……こうくん……ありがとう…」
そのあと、園子は僕の胸のなかでひとしきり泣いた。気づいたときには辺りは、すっかり暗くなっていた。
「かなり話し込んじゃったね……」
「そうだねー…それにしてもこうくんって結構大胆なんだね…今日会ったばかりの子を抱き締めるなんて」
「?…そうかな?」
「そうだよー…」
「園子様…そろそろ」
声をした方を見ると、昨日よりも倍の人数の大赦の人達がそこにはいた。
「時間…みたいだね…」
「そうだね~」
「…また会いにいってもいいかな?園子?」
「うん…いつでもおいでよ…」
園子とまた会う約束をして大赦の車に乗り込む。先ほど園子がいた場所を見るとそこにはもう誰もいなかった。
僕は、あの人から授かった叡智の結晶(眼鏡)を見つめる。
(あなたがどんな理由で僕を選んだかはわからない…でもあなたが託してくれたこの力を…僕は守りたいもののために使います!)
だからこそ…僕は供物だとしても…自分が自分じゃなくなったとしても諦めない。僕はそう強く誓った。
次は一旦番外編挟みます!そこでほのぼの成分補給してからシリアスに入りましょう!
それでは、また!