ではどうぞ!
「今日はこれで遊ぶわよー!!」
「相変わらず唐突ね……。てかその手に持ってんのって水鉄砲?」
「ええ!最近は演劇の準備ばっかだったしーせっかくの夏休みなんだから夏っぽいことしましょ!」
旅行が終わって少したった頃、演劇の準備のために集まったはずなのにも関わらずそれを責任者である部長自らぶち壊してくるあたりが、流石風先輩と言ったところだろう。
(でも…確かに楽しそうかも…)
内心は演劇の準備ばっかりという所に共感しているため、反論はしなかった(寧ろ遊びたい)
「いいですね!夏っぽいことやりましょう!みんなで遊べば絶対楽しいし!」
『部長が最初に切り出した辺りをツッコミたいところですが私も賛成です!!』
「あ、あたしはどっちでもいいわ!」
「僕は賛成です。気分転換って意味でもいいと思うし」
「でもやるにしても、どういうルールでやるんですか?」
「ふっふっふ…この遊びの天才!犬吠埼風様に落ち度はないわ!ちゃんと考えてきてあるわよ!」
美森が質問すると、風先輩(自称遊びの天才)はホワイトボードに何かを書き始めた。
「ルールとしては赤チームと青チームで分かれて3対3のチーム戦を行うわ。勝利条件は相手のチームを全滅させること。服装はみんな体操服を着用ね!」
『だから昨日みんなに体操服持ってきてってメールしたんだね…』
「ま、まぁそういうことね…。そして一人一つずつ的をあげるのでそれを体のどこかに付けてね。原則として常に晒されている所以外につけてたら反則負けにするわ」
「なるほど…それを濡らされたらアウトってことですか?」
「そう!その通り!やられた人は的を取って日陰に移動してね!」
「場所は?学校内でやると先生に怒られるわよ?」
「そこんとこも大丈夫よ!建物の中以外の場所は使用オッケーだって!」
風先輩のこういうときの行動力はすごいと思う…でもなぜそれをいつも出せないのかがよくわからない…。
「でも…ただやるだけじゃつまらないんじゃないの?なんか景品とかは?」
「そうだね~勝てば何かあるってすごくテンション上がるしね~!」
「ふふふ…。そこら辺も抜け目はないわよ…みんなこれを見てちょうだい…」
『「「「「こ…これは!」」」」』
風先輩が見せて来たのは、僕たち勇者部が愛してやまないうどんの名店かめやの夏限定うどんの無料券だった。
「勝ったチームには!これをプレゼントします!」
「本当でふか!?……じゅる…」
「ゆ、友奈……ヨダレでてるよ…じゅる…」
『洸輔さんも出てますよ?』
「で、でも風先輩!どこでこれを!?しかも三枚も!」
「前に依頼頼んできた人がお礼としてくれたのよ。それで使うなら今だと思ったのよ…」
「これは負けられませんね…。」
「とりあえずチームを決めましょ!グッとパーで分かれさせるわよ!せーの!」
『「「「「「グッとパーで分かれましょ!!」」」」」』
そしてうまい具合にチームは割れ、編成は以下の通りとなった。
赤チーム…僕、風先輩、夏凜。
青チーム…友奈、樹ちゃん、美森。
チームに分かれた瞬間お互いの間に火花が散る。
「友奈…美森…今回ばっかりは譲る訳にはいかない…君たちに本気で勝ちにいくよ…。」
「う…洸輔くんと争うのは嫌だけど…でも!私だって負けられない!全力で勝ちにいくよ!」
「その意気よ。友奈ちゃん…勝つためには…甘さを捨てなくちゃいけない時がある…それが!今なのだから!」
「樹…お姉ちゃんとしてあんたを敵に回すのは嫌だけど…これも運命…お互い手加減なしでいくわよ!」
『お姉ちゃん…私だって!負けないよ!』
「なに?この異様なテンションは…?」
「それじゃ着替えてこの中から自分の水鉄砲を選んだら…それぞれのチームの初期位置に着いてちょうだい!今から10分後にスタートするわ!」
そして…風先輩の掛け声と共に…仁義なき戦いの幕は開けたのだった……。
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レッドside
皆の準備が整い初期位置に着く。風先輩が僕と夏凜に最後の確認を取っている。
「準備はできてるわね……?二人とも?」
「はい!」
「もちろんよ!」
「さて…どう攻めるか…相手に東郷がいるのが厄介ね。」
「確かにね…東郷は勇者になっている時の武器が、狙撃銃だしね…あたしたちよりも射撃能力に長けているはずよね」
そう、それなのだ。勇者になっている際に遠距離の射撃武器を使っているのが美森だけ…つまりこの中でも射撃に関しては一番強いのだ…それを掻い潜ってどう倒すか…。それが僕たちのチームの最大の問題点となっている…。
「あ…もう10分経ちましたね…」
「始まったわね……いい?二人とも甘さを捨てなさい…。それがうどんへの近道よ…」
「わかってるわよ…さぁ!行きましょ!」
勝利をもぎ取るために、僕たち三人は青チームへと近づいていく。
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ブルーside
「もう時間になったね!うひゃー楽しみだなぁー!」
「ええ…あちら側の三人も動き始めたわ…」
『どうしましょう?』
私たちは、赤チームのみんなと逆方向の位置にいる。こういうリクリエーション的なのが久しぶりのためテンションが上がる。
「…友奈ちゃん……樹ちゃん…最初の作戦を伝えるわ…耳を貸して…」
「え?う、うん。」
『?』
そして…東郷さんの作戦を聞いた私たちは戦慄した。
「と、東郷さん!?それ…ホントにやるの!?み、みんなで楽しく水鉄砲を撃ち合うだけじゃダメ!?」
『遊びの領域を越えてます!?』
「何を言っているの!二人とも!もうすでにこれはただの遊びではないのよ!大事なもの(うどんの無料券)得るか得ないかの戦いなのよ!」
何故かテンションがおかしな方向へいっている東郷さんに唖然とする私。でも…確かに負けるわけにはいかない!私だって無料券ほしいもん!!
「うん…。そうだね東郷さん!私も本気で獲りにいくよ!」
『私もです!』
「二人とも…その意気よ!それじゃ樹ちゃんは私が言った通りにお願いね…。」
『了解です!』
(正直…この作戦気が引けるけど…うどんのために負けられない!)
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レッドside
「……全然攻めてこないわね…」
「…はい…美森のならこれくらいの距離でも狙ってきそうなのに…」
風先輩が持ってきた水鉄砲の種類は多様で、その中には狙撃銃があった。チラッと見た感じでは、美森は狙撃銃を持っていたためこのくらいの距離なら簡単に狙ってくるはずなのだが……。
「…あまりにも静かすぎる…」
「…考えても仕方ないわ…もう少し先に進みましょ」
「はい」「了解よ」
風先輩に促され、もう少し相手の陣地へと踏み込んでいく。すると先の方に人影が見える。
「あれは……?」
「もしかして…樹?」
そこには、怪我をしたのか足を押さえ込みながら座り込んでいる樹ちゃんの姿だった。
「まったく…見え透いた罠ね…」
「ほんとだね…あんなの普通に罠だってわか……………風先輩?」
横を見ると、風先輩が体をブルブルと震わせていた。
「樹が……けがを…早く手当てしにいかなきゃ…」
「ちょ!風先輩!?」
「何言ってんのよあんた!?甘さを捨てんじゃなかったの!?」
「でも……妹がけがしてるのよ…テアテシテアゲナイト…」
そのまま…錯乱した状態で風先輩は座り込んでいる樹ちゃんのもとへと向かっていく。
「……どう思う?…洸輔?」
「…正直罠だと思う…でもそれにしては無防備過ぎる気が…」
僕と夏凜は少し離れた位置から…樹ちゃんの出方を見ている。風先輩が樹ちゃんの元へとたどり着いた。
「樹!大丈夫?立てる?」
『ありがとう…お姉ちゃん…そして…さよなら…』
「…え……グハァ!!」
次の瞬間僕たちは恐ろしい光景を目にした…。風先輩が樹ちゃんが放った弾丸(水)によって的ごと体を撃ち抜かれたのだ。(スケッチブックの扱いがプロ級…)
「!!…ほら言わんこっちゃない!」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないよ!助けにいかないと!」
二人で風先輩の元に駆け寄る。僕は倒れた風先輩を抱き抱え夏凜が樹ちゃんの応戦をする。
「樹…あんたお姉ちゃんを騙して恥ずかしくないわけ!?」
『勝つためには仕方ないんです…』
「そうまでして勝ちたいのか!あんたたちは!」
「!?、夏凜!右だ!」
「っ…これは…東郷ね…」
「夏凜…一旦引こう…今の状況はまずい…立て直すこともできなくなる!」
「ええ…そうね…」
相手側の陣地から遠い自分達が最初にいた初期位置まで戻ってくると、風先輩が息絶え絶えと僕たちに話しかけてくる。
「……アタシは……負けたのね……」
「風先輩!」
「風!」
「…結局アタシは…甘さを捨てきれなかったのね……ごはぁ…」
「風先輩!これ以上しゃべらないで!」
「あはは…ごめんね……二人とも……後は…任せた…わ…ガクリ……」
その言葉を最後に風先輩の右腕は力なく落ちた。
「風せんぱーーーい!!」
「風ーーーーーーー!!」
相手のまさかのやり口に僕と夏凜は多少怒っていた。
「おのれ!青チーム!風の優しさに漬け込んであんな作戦を仕込んでくるなんて…!」
「仇は僕たちが取ります!風先輩!」
赤チーム…犬吠埼風脱落…残り二人……。
なんか長くなりそうなので前編と後編で分けることにしました。それにしてツッコミがいないってこんなに恐ろしいことなんですね(白目)
多分後編は本編が辛くなったら間に挟みます!
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