それではどうぞ!
「後遺症…供物……勇者は絶対に死ねない…?」
「はい…。」
次の日の休み時間、僕と友奈と美森は風先輩に昨日聞いたことをすべて話した。
「事実…満開したあと私たちの体はおかしくなりました…身体機能の欠損したような状態です…。それが…体を供物として捧げるということだと…乃木園子は言っていました…」
「後遺症は治らない……」
風先輩が考え込むかのように顔を地面にむけると、意を決したかのように顔をあげた。
「それ…夏凜と樹には話した…?」
「いえ…先に風先輩に相談しようと思ってたので…」
「じゃあ…二人にはまだ話さないで…。確かなことがわかるまで…変に心配させたくないから…」
「……わかりました…」
すると、僕の頬に冷たいものが当たった。空を見上げると雨が降ってきていた。
「とりあえず話はここまで!ほらほら早くしないと風邪引いちゃうわよ!」
そう言った風先輩の声はいつも通りだったが…顔はいつもよりも元気がなかった。心なしか雨もいつもより冷たかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
放課後の部活に向かう際に先生と話し込んでいる風先輩が見えた。(僕は日直だったので友奈と美森には先にいってもらった)
「風先輩?どうかしたんですか?」
「あ、洸輔…ちょうどいいところにアタシ用事できちゃったから部活にはいけなさそうなの。みんなによろしく伝えといて」
「は、はい。」
「犬吠埼さん」
「あ、はい…それじゃ洸輔頼んだわよ。」
そう言った風先輩の顔はやはり暗かった。そんな風先輩を見て僕は自然と言葉を発していた。
「風先輩」
「ん…?どうしたの?」
「いつでも相談に乗りますよ!悩んだら相談!です!」
「…………ありがとうね…洸輔…」
風先輩と分かれた後、僕はすぐに勇者部へと向かった。
「こんにちはー…」
「洸輔くん!こんにちはー!」
『洸輔さん!よかったですー連絡なかったから心配で…』
「あんたねぇ!連絡くらい寄越しなさいよ!心ぱ………気になって仕方なかったじゃない!」
「こんちは、遅れてごめんね友奈。それと樹ちゃんと夏凜に関しては申し訳なかった。いろいろ立て込んでたもんで…心配してくれてありがとね…二人とも。それと…」
みんなに謝りまくる僕だがもう一人謝らなければいけない人物がいる。
「美森も…ごめんね。昨日は…」
「いいの…洸輔くんなら、あそこで動かないはずがないって私も思ったから。」
「ありがとう…美森。助かるよ」
美森やみんなには助けられてばかりだなと改めて思った。すると樹ちゃんが心配そうな顔で僕にスケッチブックを向けてきた。
『お姉ちゃんは…今日来ないんでしょうか?』
「あーその事何だけどね。今日風先輩は用事でお休みだよ。」
『そうなんですか…』
「それじゃ!私たちで風先輩の分も演劇の準備がんばろう!ね!東郷さん!」
「そうね。風先輩の分まで私達ががんばりましょう」
「ま、風なんていなくても余裕だって所見せてあげるわ!」
「みんなで準備頑張ろー!」
「「「『おー!』」」」
そのあと僕たちはみんなで協力しあいながら、準備を進めた。みんなでいると自然と心が温かくなる。キリがいいところで今日は解散になった。今は友奈や美森と一緒に帰っている途中だ。
(明日は風先輩も来て皆揃って準備がしたいな…)
そう考えていると、自分の携帯に着信がきた。メールの差出人を確認すると風先輩だった。
「二人とも!先に帰ってて!」
「どうしたの?洸輔くん?なんか忘れちゃった?」
「ううん。ちょっと急用ができた!二人ともまた明日ね!」
「ええ。また明日」
「じゃあねー!洸輔くん!また明日ー!」
二人と別れて風先輩が待っている海岸へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「風先輩!」
「あ、洸輔…ごめんね…わざわざ来てもらっちゃって…」
かなり急いで来てくれたのか洸輔は息を切らしていた。
「大丈夫です……それよりどうかしたんですか?」
「今日…聞いた後遺症のことについて…大赦に聞いてみたの…そうしたらね…これ」
「これは……」
アタシは三人から満開の後遺症のことについて聞いたあとすぐに大赦にメールを送った。それに対する大赦の反応は現在調査中という曖昧な返事だった。
「大赦は満開の代償のことを隠している…」
「……園…先代勇者の子は、それも大赦の人たちなりの優しさだって言ってました…。」
「乃木園子って子よね…?」
「はい…」
「アタシね…今頭のなかぐちゃぐちゃでどうしていいかわからなくなってるの…さっき呼び出されてたのだって…樹のことでだったし……」
「………」
樹の担任の先生に呼ばれたアタシは樹が音楽の授業でついていけてないということを聞いた。この前にはカラオケ好きの友達に誘われたけど自分が行くと気を使わせてしまうと断っていたし。
「アタシ……樹とどう接していいかわからなくなってきたの…」
前にみんなには許してもらったけど、アタシとしてはそう簡単には拭いきれなかった。なぜならアタシが巻き込まなければ…後輩達や大事な妹もこんなことにならなかったとどうしても考えてしまうのだ。
「……正直後遺症のことに関しては僕はなにも言えません…。」
「そう……よね…ごめ…」
「でも!」
アタシが謝ろうと言葉を発しようとすると洸輔に遮られた。
「言葉にしてみなきゃ伝わらないこともあるから…」
「っ…!」
「僕は…樹ちゃんに今の風先輩の気持ちを伝えて見た方がいいと思います。大丈夫ですよ!樹ちゃんは強いですから!」
すると洸輔はアタシの震える手を優しく握ってくれた。真っ直ぐ透き通った瞳でアタシを見つめながら言ってくれた。
「ありがとう…洸輔…少しスッキリしたわ…」
「それならよかったです。」
「それにしても洸輔の手ってこんなに温かったのね…」
「あ!ご、ごめんなさい!つい!」
「…まったくアタシまで惚れさせる気かしら……」
「え?何か言いましたか?」
「ううん!何でもない!」
そのあと洸輔と別れたアタシは家に向かった。帰ってすぐに夕飯の準備を済ませ、樹と一緒に夕飯を食べる。
「え…えっとさ!最近雨降ること多いわよね!な、なるべく折り畳み傘持参した方がいいと思うわ!」
ほんとは…後遺症のことを言いたい…。でも言えない…樹に両親を亡くしたときのような思いをしてほしくないと思ってしまう。
「あーえっと…そ、そろそろ演劇の練習もしなくちゃね!体育館のステージかりて!バーっと!」
すると樹の表情が少し曇った気がした。
「ん?どうしたの?……はっ!もしかして…アタシの脚本に不備が!?」
樹は首を横に振り、スケッチブックにペンを走らせる。そこに書かれていた言葉にアタシはなにも言えなくなった。
『私…台詞のある役できないね…』
「あ……そ…そうか…」
『だから、舞台裏の仕事がんばるね!』
「っ…。だ、大丈夫よ!声も文化祭までには、治るわよ!絶対!」
今のアタシにはこんな言葉しか樹に掛けてあげられなかった…。そのあとも結局話すことができなかった…。
アタシは鏡の中に映る後遺症で見えなくなってしまった目を見る。
(絶対治る……だって…みんな悪いことなんてしてないじゃない…)
そう考えていると、海岸で洸輔に言われた言葉を思い出す。
『言葉にしてみなきゃ伝わらないこともあるから…』
「アタシは……どうすれば……」
アタシは鏡を見ながらそのまま呆然としていた…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「大丈夫かな…風先輩…」
あんなことを言ったのは良いけど……正直僕も何が正しいのかなんてわからない…。自分が思ったことをあくまで言っただけ…それが他人にとって正しいとは限らない…。
(弱気になってる場合じゃない!僕がみんなを守る!そう誓ったのだから……あれ?)
その時僕の頭の中にノイズが走る。
「あれ……みんなって…誰だっけ?」
(……………は…?何を言ってるんだ僕は?みんなって勇者部のみんなじゃないか…)
「ま、いいか…ただのどわすれだよね…」
多少の異常を感じながらも僕は自宅へと向かった。
風先輩が苦悩する中…洸輔くんの体にも異常が…。これからどうしよう…とりあえずゆゆゆの完結目指してがんばります!
感想やお気に入り登録などもお待ちしております!