天草洸輔は勇者である   作:こうが

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今回は犬吠埼姉妹に焦点を当てました!

あと前回にのわゆ編の序章みたいなの書くみたいなこと言いましたが…それは次の回にすることにしました!ご了承ください!

それではどうぞ!


31話 とある日にて

『雨と温度と匂い』

 

 

「うひゃ~ホントに降ってきた~」

 

 失敗した……朝の天気予報で雨が降るって言ってけど、買い物に行った帰りにまさか降ってくるとは。

 

 近場のコンビニに避難できたが間に合わず……お陰で服はびしょ濡れ。なんという不幸か……日頃の行いはいい筈だけど。

 

「たく~タイミング悪すぎだっての……」

「あれ?風先輩?」

 

 ぶつくさと文句を言っていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「洸輔?どうしたのよ、こんなところで?」

「まぁ、ちょっとした買い物です。それより、風先輩…びしょ濡れですけど大丈夫ですか?」

「あ、ああ、大丈夫大丈夫!こんなのへい……へっくしゅ!」

 

 強がったのはいいがやっぱり寒かったらしく、くしゃみが出た。

 

「やっぱり寒いんじゃないですか。駄目ですよ?無理しちゃ」

「あっ、ちょっ」

 

 冷えた体に何かを羽織られる。触れてみると先ほどまで洸輔の着ていた上着だった。

 

「濡れてるって事は傘も持ってないんですね。なら、僕が家まで送りますよ」

「い、いいって。そこまでしてくれなくても」

「いいえ、もう決めたことなので送らせていただきます!」

「強情ね、じゃ、じゃあお願いするわ……」

「喜んで!あ、荷物も持ちますよ!」

 

 笑顔で承諾した後輩を見て、私は顔を下に向けて呟いた。

 

「だから……その顔はずるいってのに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人で一本の傘に入りながら道を歩く。いわゆる相合い傘というやつである。

 

(お、落ち着きなさい、落ち着くのよ、犬吠埼風。これは送ってもらってるだけ……送ってもらってるだけなんだけど)

 

 先ほど羽織ってもらった上着から感じる温度に顔が熱くなる。

 

(本人は何気なくやってるんだろうけど、そういうのが一番……)

 

 顔を上げると、不意に目が合ってしまう。視線を外そうにも、洸輔が目を逸らさずこっちをじーっと見てくるせいで外そうにも外せない。

 

「あ、あのぉ…洸輔?その、そんなにまじまじと見られると…恥ずかしいというか…」

「……風先輩って、美人ですよね」

「ぴぇ!?」

 

 突然の誉め言葉に動揺してしまう。ましてや目があった状態で言われたため…只でさえ紅潮していた顔がさらに赤くなる。

 

「きゅ、急にどうしたのよ!?急に!?」

「あ、いや…遠巻きからでもわかるんですけど…近くでみるとより一層美人にみえるっていうか」

 

(狙ってないのよね?これで……?)

 

 そんなことを考えていると…ある違和感に気づいた。

 

「ねぇ、アタシの方だけ範囲広いけど…大丈夫?」

「え、えーと〜はい!大丈夫ですよ!」

「嘘おっしゃい!体の半分くらいびしょ濡れじゃないの!」

 

 洸輔の方を見ると体の半分くらいが傘からはみ出て、びしょ濡れになっていた。

 

「だ、大丈夫ですよ!これくらい!」

「つべこべ言ってないで!もっとこっち寄る!」

 

 無理やり洸輔の体をこちらへと寄せる。さっきなんて比にならないほどにお互いの体が密着する。

 

「あ、あの……風先輩。やっぱり、離れた方が」

「ダメ、離れないで……」

「へっ?」

 

 その時、私自身も何でそんな行動をとったのか……自分でもわからないが自然と洸輔の服の裾を掴んで、こちらへと体を引っ張った。更に距離は縮まり密着する。

 

「ふ、風先輩!?」

「お願い……何も、何も言わないで」

「……わかりました」

 

 お互いに無言のまま、帰路を歩いた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 二人で顔を赤くしながら、歩いていたら……いつの間にか犬吠埼姉妹が住んでいるマンションに着いていた。

 

「えっと、風先輩?着きましたよ」

「あ、ああ…ご、ごめん」

 

 僕が目的地に着いたことを伝えると、風先輩は名残惜しそうに手を離した。

 

「そ、それじゃ、僕はこれで」

「ちょ、ちょっと待った!」

「…な、何でしょう」

「その……ありがとうね。ここまで送ってくれて」

 

 優しい表情を浮かべ、風先輩はお礼をしてくれた。それに対し、僕も笑顔を浮かべる。

 

 

「お礼なんていいですよ。僕が好きでやった事なんですから」

「ふふ、あんたのそういうとこ、ホント好きよ?」

「え……」

「あ……」

 

 突然の言葉に思考が止まる。次の瞬間、風先輩があたふたしながら先ほどの言葉を訂正する。

 

「あ、えと…今のは!後輩としての好きね!?た、他意はないから!」

「で、ですよねー!あはは………で、では僕はこれで!!」

「う、うん!ばいばい!」

 

 手を振って、風先輩と別れる。恥ずかしさからか顔が熱い。

 

(上着、返してもらうの忘れてた)

 

 帰り道の間、僕の顔の熱が冷めることはなかった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「あ~何言ってんだろなぁ〜私」

 

 自分の部屋のベッドに横たわりながら、呟いた。

 

(あ、上着…返すの忘れてた)

 

 ベッドから起き上がって、上着をかけておいた椅子の方に近づいていく。

 

「ん、割と肩幅広いのね…あの子」

 

 先ほどは、いろいろなことがありすぎて意識してなかったが改めて見るとそんなことを感じた。

 

「……ちょっと、ちょっとだけ」

 

 上着に顔を埋めると匂いがした。その匂いに私の思考が溶かされる。謎の背徳感が、私の脳を支配する。

 

 これは、うん…良くない。

 

(ああ、やっぱり…私は)

 

 私は、あの子の事を───

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

『料理教えます!』

 

 

「さて、と!樹ちゃん、準備はいいかい?」

「は、はい!よろしくお願いします!」

 

 とある休日、僕は樹ちゃんに頼まれて料理を教えることになった。どうやら日頃お世話になっているお姉ちゃんのためにデザートを振る舞いたいだそうだ。

 

 ちょうど風先輩も同級生の女の子達と出かける用事があったらしく、今日という日に日程を決めたのだった。

 

 ちなみに何で僕に頼んできたかというと、友奈が「洸輔くん料理上手だよ!」って言ったからだそうな。

 

「あのー、一つ聞いてもいいかな?」

「はい、何でしょう」

「ホントに僕でよかったの?正直、僕なんかより美森の方が、教え方も料理も上手いから今からでも美森に頼んだ方が…」

 

 どうやら僕の質問がお気に召さなかったらしい。樹ちゃんの頬が膨らんで、不機嫌そうに僕に向かって言ってきた。

 

「いいんです~わたしが洸輔さんに教わりたいって言ったんですから!」

「まぁ、本人が良いならいいけど…」

 

 勢いに押されて、そのまま今日の本題に移る。さて、ここからが本番だ。

 

「えーと、確か料理するのって初めてだったっけ?」

「は、はい!」

「それで……何を作ろうと?」

「これです!ホットケーキ!」

「おおー」

 

 開かれた本のページには、ホットケーキが描かれていた。割と作り方も丁寧に書いてあったので安心する。

 

「ホットケーキなら僕も何回か作ったことあるし、大丈夫だと思うよ」

「ほんとですか!?」

「おうさ!それじゃやってこー!」

「おー!」

 

 この時の僕は知らなかった。樹ちゃんの『料理できない』は何もかもを超越した意味だということを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった」

 

 途中までは一緒に作ってた。突如として尿意に襲われた僕が、樹ちゃんから少しの間、目を離した。その結果───

 

(なぜ、ホットケーキが緑色なんだ!?)

 

 僕が目を離すまでは、ホットケーキだったはずのものがいつの間にか何か違うものに変わっていた。

 

「い、樹ちゃん…?これは一体…」

「えーと…栄養が足りなさそうだなって思って、お茶っ葉入れました!」

「ーーーーーーーーーー(声にならない叫び)」

 

意味がわからなかった…いやだって…普通思わないでしょ?どこに栄養が足りなさそうだからって、ホットケーキにお茶っ葉を投入する人がいるよ?

 

(あ、僕の目の前にいたわ(^q^))

 

「あの!…味見してもらってもいいですか?」

「へ!?」

「も、もしかして……いや…ですか?」

 

僕の態度に、樹ちゃんが目を潤ませてこちらを見つめてくる。

 

(くっ!多分これを食べたら僕は確実に死○!でも……樹ちゃんが頑張って作ったのも事実…ええい!ままよ!)

 

覚悟を決めて口に放り込む。

 

「はむっ……………」

「ど、どうですか…?」

「あれ?案外いけ………………ぅ!?」

「こ、洸輔さん!?」

 

最初は割と普通だったのだが…途中から…お茶の味と共に何故かレモンの味がした…。僕は涙目になりながらも樹ちゃんに質問する。

 

「あ、あのー…樹ちゃん?もしかして…これって…レモン入ってる?」

「は、はい!ビタミンCも取ってもらえるように!レモンの素を入れました!」

「そ、そうなんだ…」

「で……お味の方は…?」

「うん。すごく独創性があっていいと思うよ…」

「やったー!」

「でも………次からは…僕もしっかり教えるので…言われたことを守るように…」

「はい!」

 

笑顔で返事をした樹ちゃんが僕には悪魔が微笑んでいたようにしか見えなかった…。

 

(こ、ここで僕が…樹ちゃんの腕を高めさせなければ…風先輩の命が危ない!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから数時間…。

 

かなりの数の…異形ホットケーキが生まれたが、手際自体は樹ちゃんとてもよいので…なんとか形も味も及第点にすることに成功した……。

 

(まさかあの(^q^)料理から、ここまで持ってこれるなんて…よかったぁー…)

 

そんなことを考えていると、樹ちゃんから短い悲鳴があがった。

 

「きゃっ!?」

「樹ちゃん…!!!!」

 

悲鳴があがった方を見ると、樹ちゃんの指が赤くなっていた。多分何かの拍子で火傷してしまったのだろう。

 

「ちょっと待っててね!」

「だ…大丈夫ですよ、洸輔さん。そんなに大したことないし…」

「いいから!そういうのだって、ほっとくと酷くなったりすることだってあるんだよ!」

 

近くにあった救急箱からガーゼを取り出して冷水に浸す。小さい頃に友奈がやけどした時、母さんがやっていた対処法で樹ちゃんの指を治療していく。

 

「よし!これで大丈夫だ!風先輩のために頑張るのはいいけど…自分のこともしっかりね」

「は、はい…ありがとうございました…洸輔さん…」

 

顔を赤らめながら、樹ちゃんは礼をしてきた。

 

「どういたしまして。あと片付けも僕がやっておくよ」

「え、いやそれはわたしが…」

「もしその指が悪化したら、せっかくのホットケーキも風先輩に食べさせられなくなっちゃうかもよ?」

「…お願いします…」

「よろしい、それじゃ僕は片付け終わったら帰るね。頑張って作ってあげなよ?愛情たっぷりのホットケーキを」

 

僕が笑顔でそう言うと、樹ちゃんはさらに頬を赤らめながら静かに頷いた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「う~………」

 

先ほどのことを考えて、ベッドにある枕に顔を埋める。

 

治療をしてもらった指を見る。ただの火傷にも関わらずわたしにあそこまで真剣に対応してくれて嬉しかった。

 

(どうしてだろう…今洸輔さんの顔を思い浮かべると…)

 

自分でもよくわからない位に、今の私は気持ちが高ぶっていた。

 

その指には火傷ではない…違った熱が残っていた…。

 

 

(ちなみに…ホットケーキはおいしくできました!)




イケメンって怖い…。

文章能力が皆無なので、途中おかしなところがあったりしたら報告おねがいします!

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それでは!また!!

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