これさ、感情を表現するのが難しいね。
『それ』はあまりにも突然、起こった。
「え?」
異常というのはこういうことなんだろうなと、僕は思った。先ほどまで授業中だったはずの教室は異常なまでの静寂に包まれていた。しかしすべてではなかった。
「あれ?みんな……止まっちゃってる?」
「友奈ちゃんなんか怖いよ……これ」
「友奈!東郷さん!」
「よかった!!洸輔くんも動けてるのね?」
「うん。でもこれは一体?」
「わからないわ。私にも一体何が起こってるのか……」
そして、僕達は自分達の携帯に奇妙な言葉が写っているのに気づく。
「樹海化?」
「警……報?」
次の瞬間、まるで僕達を飲み込むかのような青白い光に僕たちの視界は奪われた。
「なにこれ!?」
「ま、眩しい…」
「ッ!?二人とも、とりあえず離れないように!」
直後、僕達が目を覚ました先で見たのは、樹々が生い茂る森のような所だった。森というにはあまりにも広すぎる。まるで世界全体が飲み込まれてしまったかのように視界には樹々しか写らなかった。
「ここは、一体?」
「あれ?私たちって教室にいたよね?」
「わけがわからないわ……一体何が……」
そう言った東郷さんの手は震えていた。
(当たり前だ。こんなの動揺しない方がおかしい。だったら、僕がやるべきことは一つだ)
「大丈夫だよ!東郷さん!ここには僕と友奈がいる!だから絶対に大丈夫!!」
「……洸輔くん」
「洸輔くんの言う通りだよ!東郷さん!!何があっても私達は東郷さんを離さないから!!」
「友奈ちゃん……二人とも、ありがとう」
そういったやり取りをしていた所に見知った女の子が現れた。
「樹ちゃん?」
「その声って、もしかして洸輔さん!?う、うぇーん怖かったぁ!」
「よしよし、怖かったね。もう大丈夫だよ」
「樹ちゃん!」
「樹ちゃんもここに来ていたのね」
「はい。ぐす……」
「でも、どうしてここが?ここ見た感じだとかなり広いから当てずっぽうで来れるような所じゃなさそうだけど…?」
「これの、お陰です……」
そうして樹ちゃんが見せてくれたのは風先輩に勧められてみんなが入れたスマホのアプリだった。
「これで僕達の位置がわかったの?」
「はい……」
そこには、まるでこの森の全体図のようなものと色のついた点にはそれぞれ勇者部の面々の名前が書かれていた。
「よくこのアプリにこの森の地図があるってわかったね?」
「私、目が覚めたらここに一人でいて。焦ってそのアプリをつけたら、みなさんの名前が表示されてたので、もしかしたらって思ったんです」
「みんなー!風先輩がこっち向かってきてるよー!」
「ほんとだわ、もうすぐそこまで来てる」
友奈と東郷さんが言うが早いかそこには勇者部の部長である、風先輩が来ていた。
「よかった!みんな無事だったのね?」
「風せんぱーい!」
「うえ~ん、お姉ちゃん怖かったよぉ」
「友奈!樹!ごめんね近くにいてあげれなくて」
「風先輩が無事でよかったです」
「うん、ありがとう。洸輔……え!?」
「どうしたんですか?」
「えっ…洸輔、あんたも動けるの!?」
「は、はい。そうみたいです」
僕が答えた瞬間に、風先輩の顔が険しくなった。
「みんな…アタシがこれから言うことを、しっかり聞いてね。私達が当たりだった……」
「当たり?」
この場にいた風先輩を除いた全員が理解できなかっただろう。しかし、状況を理解できているのが風先輩しかいないのでみんな風先輩の話を無言で聞いていた。
「勇者部の部員にダウンロードしてもらったアプリ。それには隠し機能があって、その機能はこの事態が起きたときに発動するようになっているの」
「隠し機能?風先輩はなにか知ってるんですか?」
「アタシは、大赦から派遣された人間なの」
「大赦って、神樹様を奉っているあの?」
僕を含めた全員が首を傾げる。まったく話についていけない。そこからも風先輩の説明は続く。
「ここは神樹様が作り出した世界?」
「バーテックスを倒さなければ世界が終わる?」
「そう。世界の恵みとして機能している神樹様にバーテックスがたどり着けば、世界は滅ぶ」
「っ……」
そこで動揺していた僕が見たのは風先輩がいる方向の先に見えた異形の怪物であった。
「あれが、さっき言ってたバーテックスって奴ですか?」
「ええ。そうよ」
「あんなのと、戦うなんて……無理ですよ!」
「戦う意思をみせれば、アプリのロックが外れて勇者になれる」
「……勇者?」
怪物は僕達への威嚇なのか、地面を揺らしてきた。
「ッ…お構いなしか」
「無理よ、あんなの勝てるわけが……」
東郷さんの悲痛な声が聞こえた。僕は勇者部に入ったときに入れたアプリを見ると見たことのないボタンが表示されていた。
(これで勇者になれる。僕が戦ってみんなの負担が減るのなら!)
「友奈は東郷と樹を連れて逃げて!」
「は、はい!」
「お姉ちゃん!私は一緒にいくよ!」
「樹!?」
「何があっても一緒だよ」
「っ、洸輔、あんたも……」
「なります、勇者に。ここで動けてるってことは、僕にも資格があるってことですよね?」
「わかった。でも男の勇者なんて聞いたことがないけど……」
「行きます!」
軽く深呼吸をして、ボタンを押す。
辺りがさっきのように白く光り僕を飲み込む。制服から黒と灰色が目立つ装束に変わる。腰の両方三個づつ短剣があり、右手には片手で持てる程度の青く光る剣が握られていた。
(これが、勇者か……。やってみせる!この力で、みんなを守るんだ!)
そして、ここから僕と勇者部の少女達との運命に抗う物語が始まるのだった。
天草くんが勇者に!これからの展開も頑張って書きます!!(次の話は短編でもいいかなぁ)