相変わらず時系列ガン無視ですが、気にせず楽しんでください〜(おい)
『寒い〜!』
勇者部部室、今日はここでクリスマスパーティが行われる。その準備の為に、私と洸輔くんは早めに部室へとやってきた。それはいいのだが……
「まさか、集合時間の一時間前に来てしまうとは……」
「うぅ、ごめんね。私が急かしたせいで」
「いやいや、僕も確認不足だったし。友奈だけのせいじゃないよ」
幼馴染くんの優しさが身に染みる。しかし、それで体が温かくならないのが現実の厳しい所です。ちなみに、東郷さんがこの場にいないのは風先輩とケーキを取りに行く役目があるからである。
「暖房も全然効かないし……うぅ、いつも風先輩はこの寒さを耐えながら私達を待っててくれたんだね」
「なんか、途端に後々から遅れてやってくることへの罪悪感が……」
風先輩の体の強さを再認識する。暖房も効いてくれれば心強いが、効くまでがなんとも長い。
「どうする?止まっててもあれだし、先に軽く準備始める?」
「だね、少し手を動かすだけでも違うと思うし」
「じゃあ、まずは飾り付けといきますか……テープってどこにあったっけ?」
「あっ、こっちにあるよ〜」
「サンキュ〜」
今日ってクリスマス、だよね?いつもの部活動中の会話の雰囲気と変わらなさすぎて、多少不安になる。もしかして、私全く意識されてない?だとしたら、結構悲しい。一応、二人きりなんだけどなぁ……。
「はぁ〜…」
「ん?どしたん、友奈」
「ううん、ナンデモナイヨー」
まぁ、洸輔くんはこういう子だからね。ある意味ではいつも通りでいるのが、私達らしいのかも。そんな事を考えながら、未だに冷えている両手を擦り合わせる。
「手、まだ冷える?」
「うん、ちょっとね。でも、大丈夫!少しずつ暖房も効いてるし」
「その割には手が震えてるけど」
「……サムクナイヨー」
「はい、ダウト。そうだな、じゃあ、友奈さんや。両手をこっちに」
ちょいちょいと右手で手招きされたので、頭に?マークを浮かべながらも、お互いに向かい合わせの状態になりながら、言われた通りに両手を差し出す。
「これでいい?」
「おーけー、そんじゃあ、はい」
「ふぇ!?」
急な事で変な声が出てしまう。何故ならば、差し出した両手が洸輔くんの大きな手に包まれたから。
「い、いきなり、どうしたの!?」
「こうすればもっと早く温まるかなって……もしかして、嫌だったかな?」
「い、嫌じゃないけど……」
嫌なわけがない、好きな男の子に手を握ってもらって嬉しくない女の子なんているはずがない。突然の大胆な行動に軽く思考が停止する中で、真面目な表情になった幼馴染が追い討ちをかけてくる。
「よかった、いつもは友奈に先を越されちゃうからね。今日くらい僕から先に握るべきかなって。ほら、クリスマスだし」
「……」
少し頬を赤く染めながら、彼は笑顔でそんな事を言う。
(そういう所が、ずるいんだってば)
急に見せるそんな所が、私の胸の内にある気持ちを更に強くする。その気持ちが私の体を動かしたのか、自然と椅子を洸輔くんの横の方へと移動して、身を預けるように寄せていた。
「皆が来るまで、少しの間だけこうしててもいいかな?」
「……いいよ、こうした方がお互いに体もあったまるしね」
「えへへ、ありがと」
「ねぇ……友奈」
「ん?」
「パーティ前で少し早いけど、メリークリスマス」
「うん、メリークリスマス。洸輔くん」
ちょっぴり積極的になった幼馴染に、とびっきりの笑顔を向けながら言葉を返した。手と体、好きな人の温度をその両方から感じる度、幸せな気持ちが溢れてくる。
今年のクリスマスは、少しばかり特別だ。
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「こんな所にいたんだ、随分探したよ?夏凜」
サンタの帽子を被ったそいつは、心配そうな表情で私の元へと駆け寄ってきた。
「ちょっと外出てくるって言ったわよ、私」
「知ってるよ、でもあまりにも戻ってこなかったから探しに来たのさ。で?何してたの?」
「……なんとなく、外から部室を眺めたくなったのよ。私の今の居場所をね」
クリスマスパーティが行われている部室へと視線を向ける。自然と温かい気持ちになった。
きっと勇者部の皆と出会わなければこんな気持ちを感じることはなかっただろう。
「そっか!うん!なんか、嬉しいな……」
「なんであんたが、喜ぶわけ?」
「そりゃ、喜ぶよ。だって僕と友奈の言葉がしっかり届いたってことでもあるし。何より、夏凜が勇者部の事を居場所って思ってくれていたのが嬉しいんだ」
「うっ……あっそ」
笑顔にドキッとしながらも、なんとか平然を装う。危ない、油断するとすぐにこれだ。
「そうだ。ねぇ、夏凜」
「何よ?そろそろ、戻るんじゃないの?」
「あー、そうなんだけど……少しだけ、後ろ向いててもらってもいい?」
「……雰囲気に任せて、変なことする気じゃないでしょうね?」
「するわけないでしょ!?ほ、ほら、そっち向く!」
よく分からないが、洸輔に急かされ反対側を向く。警戒していると首元に何か布のようなものがかかった感触がした。
「んっ……これ?マフラー?」
「メリークリスマス、プレゼントだよ、夏凜」
突然の事に、目をパチクリさせる。どう返していいか分からないでいると、首にかけられたマフラーに見覚えがある事に気づいた。
「これ……欲しかったやつ」
「やっぱり!この前二人で買い出しに行った時、すごい興味津々に見てたでしょ?それで、ピカーンときてさ」
「……覚えてたわけ?そんな事を?」
「初めてのクリスマスを楽しみたいって言ってたからね、その為にはクリスマスプレゼントの存在は必須でしょ?何より、夏凜の喜ぶ顔が見たかったしね」
じゃあ、何か、私を喜ばせる……その為だけに、こいつは態々、プレゼントまで用意してくれたって言ういうのか、私の為に。
「……よくもまぁ、そんな事を平然とできるわね」
「えっ……もしかして、嫌でしたか(泣)」
「嫌なわけないでしょ、逆よ、逆」
「んと、喜んでもらえたってこと?」
「そういうことよ……その、ありがと。これ、大事にするわ」
私の言葉に、そいつはまた嬉しそうに笑う。その笑顔に感化されたのか、自然と私の口元が緩んだ。
「夏凜、嬉しそう。そんなに気に入ってくれたんだ……てか、顔赤くない?」
「っ!そ、そんな事ない!ほら、そろそろ部室に戻るわよ!」
「えっ?なんで怒ってるの!?ちょっ!お、置いてかないでって!」
赤くなった頬と、吊り上がったまま戻りそうにない口元を隠すようにマフラーで覆った。
「ああ、もう、なんだってのよ……」
胸の高鳴りが増す中で、譫言のように呟く。
「めちゃくちゃ嬉しがってるじゃん……私」
初めてのクリスマスは、忘れられないものになった。
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「買い物に付き合ってくれてありがとね、洸輔」
「いえいえ、男子として当然の事をしたまでですよ」
パーティに必要な装飾品の入った袋を持っていない方の手で胸をポンと叩く後輩。その様子を見て、クスッと笑う。
部室で明日の準備を進めていた所、足りなくなった物が出てきたので、買い出しをする事になった。全員で行くと準備が進まないのを考慮して、部長の私と唯一の男子である洸輔がその役目を得た。べ、別に二人きりになれてラッキーとは思っていない。
「明日のパーティ、存分に楽しみましょうね」
「はい!その為にあと少しの準備も頑張りましょう!」
「勿論よ、今回は夏凜や園子もいるからね〜一層気合入れなくちゃいけないわよ〜」
「ですね〜……」
二人で帰路を歩く。別に緊張する必要もないのに、何故か肩に力が入る。恐らく、町中の雰囲気がクリスマス一色になっているせいもあるのかも知れない。
「ここって……」
「ん?どうしたのよ、急に止まって」
「あの、風先輩。ちょっとだけ寄り道いいです?」
「えっ、ま、まぁ少しならいいけど……どこ行くの?」
「それは、行ってからのお楽しみです!」
「ちょっ!?洸輔、どこ行くの!?」
(てか、手!TE!握っちゃってるから!無意識怖すぎるって!)
内心で叫びながらも、嫌がらないのはそういう事なのだろう。無意識な洸輔も洸輔だが、こうされて嬉しくなっている私も大概らしい。
「どうです、すごいでしょ?」
「えぇ、綺麗、ね……」
目を見開く。広がっているのは人工的に作られたとは思えない光の芸術、それは私の目を釘付けにした。
「すいません、急に寄り道しちゃって……でも、近くに来たなら、先輩にも見てもらいたいなって」
恥ずかしそうに笑う後輩の顔を直視出来ず、下を向いた。未だ繋がれている手からは、彼の温度を感じる。
(部長としては、早く戻らなきゃ…って思うんだけどね)
心の中では、洸輔と一緒にここにいたいと思う自分がいる。そんな想いがある事を確認する度、認識する私はこの男の子のことが好きなのだとと。
「あ、えと……手、勝手に握っちゃってすいません」
「えっ、今更?」
「あはは……その、嫌だったら離しますけど」
「むっ……」
急にドギマギとした表情になった洸輔が、手を離そうとしたので離れないようにお互いの指が間に入るようにした。
「っ……ふ、風先輩?」
「ふふ、男の子なら自分の行動に責任を持ちなさい?部室に帰るまでは離す気ないから」
「ま、マジですか……」
「うん、マジよ」
困ったように頭を掻いた後輩の姿を見て、笑ってしまう。
(クリスマス前なのに、思わぬプレゼント貰っちゃったわね)
伝わってくる温度を確かに感じ合いながら、私と洸輔は帰路を歩き始めた。
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「どうかな〜こうくん?」
「……え、控えめに言って最高ですけど」
サンタの衣装に身を包んだ私に対して、こうくんはグッジョブと親指を立てる。喜んでもらえてなにより〜。
「てか、その格好を見せてくれる為にわざわざ僕の家まで?」
「そうそう〜明日は勇者部の皆で集まるし〜見せる機会って今日くらいしかないからねぇ〜」
「嬉しいけど、寒くない?その……結構、足とか出てるけど」
顔を赤くしながらも、心配してくれるこうくん。その優しさにほっこりすると同時に、年相応の反応をする彼に胸が高鳴る。
「ご心配なく〜こうくんの部屋にいるだけであったかいから大丈夫〜」
「それはどういう体の構造……って、まぁいいか。えと、折角、来てくれたし、お茶でもど」
「ノンノン、こうくん。私が見せにきただけだと思うかい?勿論、やりたいこともしっかりあるんよ〜」
「ほう?それは勿論、その衣装に関係したクリスマス関連の事ですな?」
「ううん、膝枕〜」
「……クリスマス要素は?」
「この衣装?」
「なんで疑問系!?」とツッコミを入れてくれるこうくん。こういうちょっとした会話をしただけでも、嬉しくなってしまう程に彼の虜になっていた。
「そして〜更にダメ押し〜」
「なっ!?ぽ、ポニーテール……だと!?」
「えへへ〜こうくんの弱点はもう把握済みなんよ〜」
弱点を的確に突きつつ、膝枕の態勢に入る。膝をポンポンと叩いて、手招きする。顔を赤くしながらも、抵抗は無意味と分かっている為、案外素直にこうくんは頭を膝の上へと置いた。
「んっ……」
「寝心地はどうかな〜?」
「死ぬほどいいです……その、なんか色々とありがとぅ……」
「どういたしましてぇ〜」
膝にかかる重みに自然と笑みが溢れる。目を下に向けると、頬赤く染めたこうくんの顔が目に入る。追い討ちと言わんばかりに、頭を優しく撫でてあげる。
「うぅ……クソ、こんなにも強力なサンタがいたなんて」
「こうくん、今日すごい喋るね〜」
「いつもは喋ってないみたいに言わないで!?てか、そうしてないと落ち着かないの!」
「それは〜私にドキドキしてくれているって事でいいの〜?」
静かにこくこくと頷いたこうくんを見て、キュンとなる。反応が一回一回可愛いんだよねぇ〜。
「そういえば」
「どしたの?改まって」
「こうくんの所には、サンタさんっていつくらいまできてくれた?」
「えっ、そうだなぁ……基本的には小六までかな?中学に入ってから来なくなっちゃったし」
「あらあら〜でも、安心してぇ〜」
「安心?何に?」と?を浮かべているこうくんに対して、耳元で呟いてあげる。
「本物のサンタさんが来なくてもね。今は私がこうくん専用のサンタさんだからねぇ〜物はあげられないけど〜頼んでくれればなんでもしてあげるよぉ〜?」
「…………へ?」
耳元から、離れて彼の顔を見つめると顔がみるみる赤くなっていた。それこそ、今にも蒸気が出てきそうなほどに。
「そ、そそそそ、園子!ほ、本当に心臓が悪いから!か、からかうのやめてって!てか、そのサンタさんは色々アウト!」
「えー、別にからかってなんかないもん〜」
「言い訳はよしなさい!大体園子はね……」
数分後、騒いで疲れてしまったのかすやすやと寝息を立てているこうくんの顔を覗き込んだ。
「えへへ、可愛い寝顔〜」
「んん……」
「ありゃ、寝言かな?」
「その…こ……」
自分の名前を呼ばれて少し驚きながらも、嬉しくてにまーっとだらしなく笑ってしまう。彼の寝言をもっと近くで聞く為に、顔を近づける。
「もっと、もーーっと…名前、呼んでほしいなぁ〜」
「そ、のこ……す、き……」
「へっ……えっ!?!?」
突然の事に大きな声が出てしまうが、起こさないようにすぐに口を塞ぐ。しかし、心臓はバクバクと音を増していくばかり、寝言とはいえ好きと言われた事に戸惑う。
(ふ、不意打ちすぎるんよ!こ、こんなの、こんなの……)
「ポニテ……す、き……」
「……あ、そ、そう言う事かぁ」
寝言の続きを聞いて、納得する。きっとこの寝言は私のポニテ姿が好き、そう言っているに違いない。うん、そう思っておくべき!
(まぁ、それでもすごく嬉しいんだけどねぇ〜)
気持ちよさそうに眠っているこうくんの頭を、また優しく撫でた。
(私は、こうくんの事が大好きなんよ)
……これクリスマス短編になってる?(第一声がそれかよ)
いやはや、結局遅れてしまって申し訳ありません。クリスマス短編のはずなのに思いっきり過ぎてしまって……今年の投稿はこれで終わり、と言いたい所なんですが、投稿する可能性があるかも知れないので油断はしないでお待ちを……。
それでは、皆さん今年も残り少ないですが。また次回お会いしましょう!