天草洸輔は勇者である   作:こうが

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これが記念すべき50話目とは…結構書いたなぁ~(遠い目)

この話書きながらのわゆ編もっかい見返したんですけど辛すぎません?(流血)



第八節 過信と闇

「この前よりも、増えてるわね……」

「見渡す限り、って感じだね」

 

 まさに数の暴力と言わんばかりに、星屑が樹海と化した世界の空を包み込んでいる。今まではうまく立ち回れてこれた。けど、この数は流石に…。

 

(バカか。自分が何のためにここにいるのか考えろ)

 

 弱音ばかりが思い浮かんでくる自分に渇を入れる。もし僕にこの状況を打開することができないのならここに呼ばれるはずがない。

 

「私が先頭に立とう、皆は後に…」

「先に行く!」

 

 若葉の指示を聞かずに星屑の大群へと向かっていく。彼女達に無理をさせず負担を掛けないように戦う。それが僕のすべきこと。

 

(周りの皆に迷惑をかけられない。これは僕自身が解決すべき問題なんだ!)

 

「覚悟しろ!化け物共が!!」

 

 その時の僕は知らなかった。長剣を握りしめていた手がまるで闇に飲まれてしまったかのように、黒く染まっていたことに。

 

 

 

 

 

 

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「周りをしっかり見ろ……か」

 

 先行している天草を追いながら呟く。この言葉の意味を私は未だに理解出来ずにいた。

 

「今は、この状況のことを優先しなければ!」

 

 頭を横に振って思考を切り替える。目の前には今までの十倍はいるバーテックスの群れ。本来、奴等を引き受け皆の大きな負担を減らすのはリーダーである私の役目だ……だが。

 

(なのに、あいつは)

 

 確かに、今の私は天草の強さにはまだ届いていないかもしれない。だが、私は乃木家のものとして、奴等に報いなくてはならないのだ。

 

「はぁっ!」

 

 バーテックスに対して刀を振り下ろす。天草がいるところまでは辿り着けなかったものの敵にとって中枢の奴等を倒していく。

 

「…なんだ?」

 

 突然、先ほどまで怒濤に攻め込んできたバーテックス達の攻撃が止み始めた。

 

「まさか、これは!?」

 

 奥にいる天草の方へと視線を向けると、バーテックスが彼を取り囲んでいた。直後、私の周りもバーテックスによって囲われる。

 

(これは戦術面での進化、私と天草を分断し撃破する気か!?)

 

「ッ!せやぁぁぁ!」

 

 思考を切り替え、目の前に群がってくるバーテックスを狩っていく。しかし、いつの間にか背後に回ってきたやつに右腕を噛みつかれる。

 

「っ!このっ!!」

 

 噛みつかれた場所から血が溢れる。他の奴等もチャンスと言わんばかりにさらに群がってきた。

 

「この程度のことでぇぇぇ!!!」

 

 咄嗟に刀を持ち変えて一度退けるが、バーテックスの波状攻撃により、また隙をつかれる。

 

「くそっ!!」

 

 しかし…迫ってきた化け物は私の目の前で不時着する。落ちてきたバーテックスの上には、友奈がいた。

 

「無理はだめだよ?若葉ちゃん!」

「ゆ、友奈……何故、来たんだ。私は一人でも…」

「友達が危ない目にあってるのに、黙って見ていることなんてできないよ」

 

 そう言った友奈の勇者服はボロボロだった。ここに来るまでにかなりのダメージを負ったのだろう。

 

「死ぬな、必ず生き残れ!」

「勿論!若葉ちゃんも、ね!」

 

 二人で背中合わせの状態から一歩踏み出し、化け物達と再度対峙した。

 

 

 

 

 

 

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「これで、ラストッ!」

 

 最深部にいた僕は最後の星屑を消し去る。基本的には数ばかりで一体一体の力量は大したことがない。だが、まだ敵の攻撃は止まなかった。

 

「本当、しつこい!」

 

 正面から突っ込んでくる星屑を剣で斬り伏せた。勢いは殺さず、剣を握ってない方で裏拳を繰り出し、背後から回ってきていた星屑にぶつける。

 

(このペースで行けば、今回も…)

 

 直後そんな甘い考えを持っていた自分をぶん殴りたくなった。視線の先にいる少女の痛めつけられた姿を見て、思考が止まる。

 

「……や、やめ……」

 

 自然と言葉が漏れる。何故だか、ジワジワと視界が黒く染まった。それに呼応するかのように、握っていな剣も黒く染まっていく。

 

(これは…なんだよ)

 

 答えは返ってこない。ただ、止まらず、暗い何かに自分が呑まれていく。目の前には、星屑に痛めつけられている……。

 

「友奈から……離れろぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

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「っ……」

 

 ガラス越しに見えるのは、沢山のケーブルが繋がれ酸素マスクを付けられた友奈と洸輔の姿だった。

 

(私が、もっと)

 

 友奈と合流した後、敵を退けてなんとか地面に刀をつけながら、立ち上がった私が見たものは………。

 

 救援に来てくれた時よりも多くの傷がついた友奈と、彼女の前に体中から血を流しながらも両手を広げて庇うように立っていた天草の姿だった……。

 

「何故、こんなことになったのか。あなたはわかっているのよね?」

 

 声の主がいる方に顔を向けると、心配そうな目でガラス越しに見える二人を見ている杏と球子。こちらを真っ直ぐ見つめている千景とひなただった。

 

(皆にも…ここまでの被害が…)

 

「私の突出と無策が原因、だった……」

 

 怒りに任せ、ただただ奴等を殺すという意識だけを待ち、暴走とも言えるほどの突貫をしたこと。私ならば大丈夫だと思い込んだ過信した心。しかし、千景は私の言葉を聞くと声を荒らげた。 

 

「違う!!やっぱりわかってない!」

「え……」

「一番の問題はあなたの戦う理由よ…!!怒りで我を忘れるのも!周りの人間を危険に晒し…気づきさえしないのも!全部!あなたが…復讐のためだけに戦っているからよ……!!」

 

 その時の私は、どんな顔をしていたんだろうか。私には、分からない。今、何をどうするべきなのかも分からない…。

 

 

 

 

 

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「考えはわからなくもないけど、やっぱ……言い過ぎだったんじゃないのか?」

「そうは言うけど、土居さんだって止めなかったじゃない」

「だ、だってよ……」

 

 なんであんなに熱くなっていたのか、自分でも分からなかった。でも、言うべきだと思った。もっと周りのことを考えろと、それは乃木さんにとっても、必要なことでもあると思ったから。

 

(嫌いって気持ちの方が強いくせに……)

 

私は、多分、乃木さんのことが嫌いだ。それでも、言わざるをえなかった。ほんとに何故かは分からないが。

 

「これからも……こんなことが起きてしまうのなら。もういっそ……」

「千景さん、もうやめましょう。確かに若葉さんのやり方に疑問を持ってしまう部分もあります。それでも、そのすべてを否定するのは間違っていると思います」

「っ…」

 

 伊予島さんの言葉を聞いて口ごもる。少し、反感を覚えたが……ここで言い合っても仕方ないと押さえ込む。

 

「二人とも、命に別状はないようです……」

「乃木さんもそうだけど、彼も彼だわ」

「え…?」

「高嶋さんを守ってくれたことはいい。けど、彼も……もっと周りをよく見るべきよ」

 

 ガラス越しに彼を見る。高嶋さんが心配なのは当たり前かもしれない。でも、彼も気になる。そんな私を見て、上里さんが驚いたような表情をしていた。

 

「何?」

「あ…い、いえ…その…千景さんも洸輔くんのことを心配しているのかな…と」

「私だって……心配くらいはするわ」

「そう、ですよね。早く、二人には元気になってほしいですね」

「そうね」

 

 相づちをうって、ガラス越しにいる二人の方へと視線を向けた。




もう少し先に進んだら、のわゆ編のイチャイチャも書いていきたいと思ってるので頑張ります!

それではまた!!

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