はい!それでは本編です!
「ん…………」
目を覚ますと、そこには見覚えない天井が映し出された。
「ここは………」
辺りを見回すと病室であることがわかった。
「そ、そうだ!それより友奈!!っ!」
無理やり起き上がろうとすると体全体が悲鳴をあげる。
「…ここにいるってことは…戦闘は終わったんだな…」
ふと自分の右手がやけに温かいことに気づく…そこには…
「…杏?」
「ん…んん…あれ?私寝ちゃって…え?あれ?洸輔さん!?」
僕の顔を見るとさっきまで握っていた手を離し…頬を朱に染めながら杏は飛び上がった。
「あ…えと…目が覚めたんですね!よかったぁ~」
「そ、それより怪我はない!?他の皆も無事なんだよね!?ゆ、友奈も…!」
「落ち着いてください!私も大丈夫だし皆も無事ですから!」
「…そう…なんだ…ごめん、取り乱して…」
「しょうがないですよ…今、目が覚めたばっかり何ですから」
「ありがとう…それとこの前の戦闘で何があったのか聞いてもいい?」
今回の戦闘では…死傷者はいないものの皆が多少の傷を負った。僕と友奈は重傷を負い…そして僕が寝込んでいる間に起きた皆の心のすれ違い…。
「千景さんが言ってましたよ?『乃木さんもだけど彼も…もっと周りを見てほしい』って」
「そうなんだ…でもあの時はどうしようもなかった…これからだって……」
「た、確かに…そうですけど…でも…」
杏はさっきのように僕の手を優しく握った。
「前にも…言いましたけど無理だけはしないでください…皆…自分が死ぬのと同じくらい…仲間が死ぬのも怖いんですから…」
「…でも…僕は…」
「…ずっと気になってたんですけど…なんで自分の身を削ってでも…先頭に立とうとするんですか?」
「…大切なもの…皆を…守りたいんだ…」
「…あの時と同じ…」
「ん?何か言った?」
「あ、いいえ何でもないです!」
そう…僕がすべきことは皆を守りぬき…そして勇者部に帰ること…そのためには彼女達の負担を減らさなくてはならない…なら僕の問題や悩みを押し付けるのは間違っている……必要のないことだ…。
『違うよなぁ?お前が相談しようとしないのは…こいつらを信頼してないから……そうだろ?』
(…黙れ…)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…………」
ベットに寝転がりながら…天井に向けて手を伸ばす。
『一番の問題はあなたの戦う理由よ…!!怒りで我を忘れるのも!周りの人間を危険に晒し…気づきさえしないのも!全部!あなたが…復讐のためだけに戦っているからよ……!!』
(…復讐のためだけ…か…)
バーテックスに報いを与えること…それが私の行動原理だった。殺された人々の怒りと悲しみを奴等に返す…その一心で己を塗りつぶして戦場に立ってきた…。
(それを否定されてしまったら…私は…)
枕を抱き締めながら…隣の部屋へと向かった。
「あれ?若葉ちゃん、どうしたんですか?こんな時間に」
「夜分遅くすまないな…その…なんだ少し話でも…」
部屋に入るとひなたは何故か鞄の中に物を詰め込んでいた。
「それは?」
「あ、ああこれですね。明日この寮を出るんですよ」
「え…な、なんで!?き、急に…どうし……」
「ふふ、動揺しすぎですよ…若葉ちゃん。大社に呼ばれて少し離れるだけですから」
「そ、そうなのか…」
「若葉ちゃんこそどうしたんですか?」
「えっと…あのその」
もじもじした私を見て…ひなたは微笑むとベッドに腰掛け手招きした。
「若葉ちゃん…ちょっとこっちへ」
ひなたの横に行って膝に頭を乗っける。何も言わずともひなたは耳掃除を始める。
(相変わらず…素晴らしいなぁ…)
少し経つとひなたが口を開いた。
「それで…話っていうのは病院でのことですか?」
「…教えてくれ…ひなた…私には…どうしていいかが全くわからないんだ…」
親にすがる子供のようにひなたに聞く…。いつもひなたは私が困ったときに…私を導いてくれる…今回も手を貸してくれるはずだと思ったが……
「…その答えは…自分自身の手で探すしかありません…」
「っ!どうしてっ!」
ひなたからの厳しい言葉に…おもむろに立ち上がる。
「そんな顔しないで…泣き顔撮っちゃいますよ?」
「むぅ…勝手にすればいいだろ…」
「明日から補給できない分の若葉ちゃん成分ゲットです!」
「ほ、ホントに撮った…」
拗ねた私にひなたが抱き付いてくる。まるで母親が子を宥めるかのように抱き締められた。
「大丈夫ですよ…若葉ちゃんなら乗り越えられる。きっと自分自身の力で見つけ出せる…私はそう信じていますから…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「綺麗な月だな…」
暗い病室に月明かりが射し込む。窓越しから見える幻想的な月を眺める。
「結局…守れてないじゃないか…」
昨日の戦闘の被害状況を考えると…結果的に僕は皆を守れていたとは言えない…。
「…くそ…」
『ふん…無様なもんだな?』
声がした方へと視線を向ける…そこには僕と同じ勇者服…同じ顔…同じ声をした少年の姿だった。しかし…勇者服はまるで闇に飲まれてしまったかのように黒い。
「…こんなところにまで出てきて…何の用だ…」
『そう怖い顔をするな…それに言ったはずだぞ?お前は俺なんだ…お前がいる限りどこへでも出てくるさ』
そいつは僕の方をみて夢の中で見たような下卑た笑みを浮かべた。
『まったく…あの時中途半端に闇の力を押さえ込まなきゃこんなことにはならなかっただろうにな?』
「うるさい…消えろ…」
『お前だって気づいてるんだろ?今の自分じゃ無理だと…だから一瞬でも俺に身を委ねんたんだろ?』
「違う!あれは…」
詳しい所はわからない…でもあの暗闇に包まれたあと戦っていた時…少しでも思ってしまった…『この力があれば』と…。
『…あの時言った通り…お前はあいつらを心配をして相談をしない訳じゃない…信頼してないもしくは奴等を自分が元の世界に帰るための道具としか思っていないからだ』
「……まれ…」
『だったら…感情を捨てて力だけを求めればいいだろ?何を躊躇う必要がある?さぁ…全てを捨てて身を委ねろ』
「黙れ!」
すると…突然病室のドアが開かれる。そこにいたのはひなただった。
「洸輔くん?大丈夫ですか?突然大声を出して」
「…ひなた…?う、うん…大丈夫だよ」
先ほどまで『僕』がいた場所を見るとまるでそこには最初から誰も居なかったように跡形もなく消えていた。
「体は…大丈夫ですか?」
「問題ないよ…それより急にどうしたの?」
「実は私…明日から丸亀城を少しの間離れるんです…その前に洸輔くんに伝えておきたいことがあって」
「?」
そういうとひなたは僕の顔を両方の掌で押さえ込んだ。
「ひ、ひなた?」
「悩み事は…一人で抱え込んじゃダメですよ?洸輔くん?」
「……………」
「最近の洸輔くんは色々とぎこちないです。違うとは言わせませんよ?」
「……………」
「一人で抱え込まずに皆に相談してみてください!きっと力になってくれますから」
ひなたの言葉を聞き終えた僕は笑顔で頷いた。
「…わかったよ…」
その時の僕は……しっかり笑顔が作れていただろうか…?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜に見た彼の…いまにも泣き出しそうなぎこちない笑顔と…幼なじみの少女の泣き顔を思い出す…。
「大丈夫…きっと…大丈夫」
自分に言い聞かせるように…言葉を繰り返す。巫女の私に出来るのは…彼、彼女らを導いてあげることだけだ。
(大丈夫ですよ…若葉ちゃん…洸輔くん…何故ならあなた達は決して一人じゃないんだから…)
そう私は心の中で呟き…寮から出た。
むむぅ……思ってたより真面目っぽい話が多いな~。
とりあえずボチボチと番外編とかも書いていきましょうかね~!
それでは…また!