天草洸輔は勇者である   作:こうが

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これでも十分暗いけど…考えてみたらここからさらに暗くなるやん!(^q^)


第十節 沈む心

『答えは得たか?』

「え……?」

 

 白髪の男性が立っている。なんとなくだけど、シグルドさんと雰囲気が似ているなと感じた。

 

 周りを見渡すと洞窟のような場所にいた。男性の横には勇者になった際に僕が武器として使っている剣が石段に刺さっていた。

 

『いや……今のままではダメだな』

「こ、今度はなんなんだよっ!」

 

 只でさえ今は大変なときなのに、突然の状況に苛立ちが募る。そんな僕を見て男性はため息をつくと暗闇に向かい歩きはじめてしまった。

 

「ちょ、待っ……ぐぅ!」

 

 追いかけようと足を出した瞬間に、首元を誰かに掴まれそのまま体が宙へと浮かされる。息が思うように出来ず、意識が遠のき始める。

 

「誰、だ…!はな……せ」

 

 首を掴んできていた奴の方を睨み付ける。それを見て、そいつは心底楽しそうな顔でこちらを見た。そして只一言、僕に向けて。

 

『ほら、な?やっぱりお前じゃこの程度だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 目が覚める、朝の日の光が僕を照らしてくれている。しかし、僕の心はそんな光を打ち消してしまうのではと思うくらいに沈んでいた。

 

「なんなんだよ、誰か、助けてよ……」

 

 やたら、寒いのはきっと冬だからだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「もはやどんな処罰を受けても仕方ない……私は」

 

 若葉さんの周りが異常なほどに淀んでいる。

 

「リアルなゾンビってこんな感じなんだろうか?」

「今回の件がかなり堪えてるみたいだね……」

「千景の一言が発端だろ?なんとかしろよ」

「そ、そんなこと言われても」

「でも、あのままってのもなぁ」

 

 二人の横をすり抜けて若葉さんの元へと歩み寄る。

 

「若葉さん」

「な、なんだ?杏?」

「ちょっと付き合ってもらっていいですか?」

「へ?」

 

(あの人みたいにとはいかなくても、私だって……)

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「あ、勇者様だ」

「あら、ホントねぇ」

 

 勇者は様々なメディアなどにも取り上げられており、今ではかなり有名だ。ので、普通に道を歩いていてもこういう囁き声が聞こえてくる。

 

 

「お、おい、杏。どうして急に外へ?」

 

 教室で杏に声をかけられ、後を付いていくと町へと一緒に向かった。何故、呼ばれたのか分からず動揺する私を他所に杏はある家の前で動きを止める。

 

「この家のお姉さんは、三年前に『天恐』を発症して以来苦しんできましたが…勇者の活躍を聞いて症状が改善してきたそうです」

「……」

 

 彼女の言葉を黙って聞く。同時に何か胸に熱いものが灯った気がした。杏はゆっくりとまた歩き出す。

 

「昔から丸亀市に住んでいたこの家のご家族も…四国外から避難してきたこのアパートに住む人たちも、みんな私達(勇者)が戦う姿を見て…敵への恐怖を乗り越え前向きになれたそうです」

「そう……だったのか」

 

 こうやって話を聞いていくと、人々が今を懸命に生きようとしていることが伝わってきた。後ろからベビーカーを押している女性に声をかけられる。

 

「もしかして、若葉様ですか?」

「え?」

「私、三年前のあの日、島根の神社で救っていただいた者です」

 

 三年前、私が初めて勇者として戦ったあの日の事。

 

「この子は四国に避難してから産まれたんです。勇者様の名前にちなんで『若葉』と名付けました」

「……」

 

 抱き上げた赤ちゃんを見ながら微笑む。あの惨劇でたくさんの命が奪われた。それは消せようのない事実だ。しかし、私がかろうじて救った命から新たな命が育まれていたのだ。

 

「あの時は助けていただいて、本当にありがとうございました」

 

 

 

 

 

「本当に…私は。何も見えていなかったんだな……」

 

 二人に手を振って見送りながら、ポツリと呟いた。

 

 この町に住む人々のこと、自分の周りの人達のこと。全てがあの日の記憶に囚われ何も見えなくなっていた。死者の復讐を求め怒りに我を忘れてしまうほどに。

 

(やっと、やっとだ。答えが見つかったぞ、ひなた。私が背負うべきなのは過去ではない、今現在だ)

 

「そろそろ、丸亀城に戻りますか?」

「ああ、なんとなくだが……長い間、杏と一緒にいると球子辺りに怒られそうだからな」

「呼ばれて飛び出て球子様だぁー!!」

「「わぁ!?」」

 

 噂をすればと言わんばかりのタイミングで、球子が私達二人の間から顔を出した。

 

「ど、どうしてここに?」

「いやぁ~二人して深刻そうな顔で学校出てったからさ~……てっきり殴り合いのケンカでもすんのかと」

「し、しないよ!」

「球子にも心配かけたのか、すまない……」

「んなこと別にいーよ。それより、そろそろ出てきたらどうだぁ~?」

 

 電柱の方を見ると『ビクッ』って擬音が聞こえそうなほど体を震わせながら千景が出てきた。

 

「千景?」

「私は、無理やり土居さんに連れてこられただけよ……」

「やれやれ、気にしてそわそわしてた癖に」

「っ!してない!」

「いーやしてたね」

「してない!!」

「まぁまぁ」

 

 みんなの姿を見て、私は深々と頭を下げた。

 

「すまなかった!過去に囚われ復讐の怒りに我を忘れて、一人だけで戦っている気になっていた。これからはもう、あんな風な戦いはしない」

 

 顔を上げて皆の目をしっかりと正面から見る。

 

「今…生きる人のために私は戦う!だからこれからも戦ってくれないか」

「もちろん、若葉さんがリーダーですから」

「おう!タマに任せタマぇ!」

「…言葉ではなんとでも言える…」

「…………」

「だから…ちゃんと行動で示して…近くで見てあげるから…」

「ああ!心しておく!」

 

皆の言葉を聞き終わると…私は拳を握ってそう言った。

 

 

 

 

 

 

「私が寝てる間にそんなことが…心配掛けちゃってごめんね」

「いや…悪かったのは私の方だ…無事に意識が戻って良かった」

 

あれから少し経ったあと…友奈が目覚めたという連絡を受けて…急いで病室へと向かった。そして…ここ数日で起きたことを報告した。

 

「友奈…今までのこと本当にすまなかった。まだ…心身共にリーダーとして未熟な私だが…これからも共に戦ってくれないか?」

「もちろん!」

 

友奈は笑顔で私の言葉に応じてくれた。

 

「ありがとう…友奈」

「どーいたしまして!」

「それでは…私はこれで失礼しよう。これから天草の所にも行こうと思っていたんだ」

「え、えっと…若葉ちゃん…それはまた今度にした方がいいよ?」

「?どうしてだ?」

 

意味が分からず首を傾げる。

 

「洸輔くん…すごく疲れてるっぽかったからさ…今はそっとしておいてあげてほしいな…」

「…わかった…無理をさせるわけにもいかないしな…」

「うん…ありがとね…若葉ちゃん」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

『失礼しまーす…』

『………………………』

 

病室に入ると…洸輔くんがすやすや寝ていた。寝顔はすごく幼い…。

 

『寝ちゃってるんだ…』

『う…うぅ!』

『!?』

 

さっきまでの寝顔が嘘のように…顔が苦悶の表情へと塗り変わっていく…。

 

『…い…や…だ…やめ…て…』

『洸輔くん!』

 

咄嗟に手を握る…何故かはわからないが…体が動いていた。すると…彼の目がゆっくりと…開かれていく。

 

『…んん…』

『…大丈夫?洸輔くん?』

『え…友奈?』

『あ、初めて呼んでくれたね!いや…あの時も呼んでくれたから…初めてじゃないのかな?』

『…ー!!』

 

すると彼は私の手を無理矢理引き離した…顔を両手で包み込んで…彼は息を荒げながら喋りだす…。

 

『…はな…れて!…』

『え…』

『早く!離れて…!!今の僕は…君に何をするかわからない!だから早く出ていって!』

 

両手の隙間から見えた洸輔くんの左目からは…狂気のようなものを感じた…。

 

『え、えと……ご、ごめん!』

『うう…うぁぁぁ…………』

 

 

 

 

 

 

 

「また…私は…」

 

あの時と同じように…自分の行動に罪悪感を覚えた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「最低だ…」

 

頭が混乱している…先ほどまで光が射し込んでいた部屋は…真っ暗でなにも見えない…。

 

(僕は…なんで…!あんなことを!!)

 

高嶋に言ってしまった言葉を…思い出し…罪悪感に押し潰されそうになる……。

 

「どう…すれば…いいんだよぉ……」

 

真っ暗の病室に…僕の弱々しい声が響いた……。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「これから…神託の儀を行う…」

「…はい…」

 

両手を合わせて…部屋の真ん中で正座をする…。すると…体がすーっと意識を持ってかれるような感覚に襲われる。

 

(そろそろ…ですね…)

 

しかし…聞こえてきたのは…優しくも厳しそうな男性の声だった。

 

『彼は…内面に溜め込みやすい性格なのでな…できればもっと踏み込んでやってほしい…今の当方では…何も出来ないのでな…』

 

その声が聞こえ終わったと同時に…意識が朦朧としてくる…。

 

(あなたは…一体…?…)

 

そのまま意識が失われたと同時に…体から力が抜け…地面に倒れ伏せた………。




あれ?すまないさん?いや…気のせいか…(すっとぼけ)

感想やリクエストはいつでもお待ちしています!どうぞよろしくです!

鬱って書くのきついです…

それでは…また!
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