天草洸輔は勇者である   作:こうが

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はい!今回は文章量がいつもよりちょい多めです!

それでは…どうぞ!


第十一節 貴方の笑顔

「「はぁ~………」」

 

二人が退院し少し経ったあとの教室…。乃木さんが吹っ切れたと思ったら…今度は高嶋さんと彼の周りをどんよりとした雰囲気が包んでいた。

 

「…今度は…あの二人かよ…」

「私が見舞いに行ったときは、二人共普通だったんだけどな…」

「…やっぱり…何かあったのかな…」

「どうした?杏?」

「へ!?な、何でもないよ!?」

「お、おう…そうか…」

「…………………」

 

このメンバーの中でも常に笑顔を絶やさない高嶋さんがああなっているのも気になるが……彼も基本的には笑顔であることの方が多かったため…少しむず痒い…。

 

(…高嶋さんに関しては許せるけど…何よ…アイツの辛気臭い顔は…)

 

何故か自然と体が動く…突然動き出した私を見て乃木さん達が動揺する。

 

「千景?」

「…千景さん…?」

「ま、まさか怒鳴りにいくんじゃないよな?」

「どうしてそうなるの…あの二人のこと…任せてもらえないかしら…?」

「「「え…?」」」

 

ゆっくりと二人の席へと近づいていく。私の気配に気づいたのか高嶋さんが顔を上げた。

 

「あ、ぐんちゃん…どうしたの?」

「その…高嶋さん…今から付き合ってもらってもいいかな…?」

「で、でも授業が…」

 

高嶋さんの言葉を遮って横にいる彼にも声を掛ける。

 

「貴方も…いいかしら?」

「へ?僕?」

「他に誰がいるの?いいから…付いてきなさい」

「え?」

 

そのまま高嶋さんの手と彼の服を掴んでそのまま引っ張る。二人が状況を飲み込むことが出来ずに叫んでいた。

 

「郡さん!?急にどうしたの!?」

「ぐ、ぐんちゃん!?」

「乃木さん…」

「ど、どうしたんだ?千景?」

「…私達…早退するから…あとは頼んだわ…」

「へ?」

 

それだけ告げて…二人を引っ張りながら教室を出る。正直自分でもこんなことするのは柄じゃないと一人で呟いた。

 

(でも…乃木さんも変わろうとしてる…置いてきぼりにされるわけにはいかないのよ……)

 

ますます柄じゃないと…一人で自嘲気味に笑った。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「「「……………」」」

 

千景の突然の行動に私だけでなく…杏と球子も固まっていた。

 

「行っちゃった……」

「お、おい若葉、よかったのか?行かせちゃって」

「うーむ…」

 

さっきの千景の顔は何か考えがあるように感じた。そう、私を励ましてくれた時の杏のように…。

 

(気になるが…今回は千景に任せよう)

 

「確かに気になるが…千景に限ってただサボるためにぬけるなんてことはないだろう。それに…何か考えがあるようにも見えたからな」

「私もそう思います」

「ま、若葉がそう言うならいいか!」

「変わりましたね…若葉ちゃん…」

「「ひ、ひなた!?」」

「上里さん!?」

 

声がした方を見るとひなたがいた。皆も突然のことで驚いている。今帰ってきたのか荷物もそのまま手に持っている。目を潤ませながら彼女はこちらに歩み寄ってきた。

 

「…答えは見つかったみたいですね…」

「あ、ああ…皆のお陰だ…それよりひなたは今帰ってきたのか?」

「はい、そこでちょうど千景さん達を見て…千景さんはいつも通りだったんですが…後ろにいた二人が異常なほどに元気がなかったので気になってそのまま来たんです」

「なるほどな…なら話は早い。実は…」

「千景さんに任せる…ですよね?若葉ちゃん?」

「ああ、その通りだ」

 

(…仲間を信頼し頼る…私が今まで拒んできたことの一つだ…そうやって『向き合う』ことが今…私のすべきことだ)

 

「そろーり…そろーり…」

「タマッち先輩…なにしてんの?」

「ぎゃぁぁぁ!ばれた!?タマもサボろうと思ったのにぃ!」

「サボるのは駄目ですよ…球子さん…」

「ゆ、許してくれタマぇーーーー!!!」

 

(早く…元気になるんだぞ…二人とも…)

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

郡さんに引っ張られながら付いていった僕と高嶋は宿舎にある彼女の部屋に来ていた。着いてから郡さんは無言で何かを準備している。

 

「えーと…郡さん?」

「…ぐんちゃん?」

「…二人とも…そこに座って…」

「え、でも…」

「…学校が…」

「座って」

「「は、はい!!」」

 

有無を言わさぬ態度に気圧され僕と高嶋は正座で座る。すると郡さんが僕らに向かって何かを手渡してきた。

 

「これ…使って…」

「…ゲームのコントローラー?」

「もしかしてぐんちゃん…」

「三人で…ゲームをやりましょう…」

 

まさかの発言に二人で動揺する。

 

「え!?まさかゲームのために学校休んだの!?」

「ええ…そうよ…高嶋さん」

「そ、それってサボり何じゃ……?」

「…そうよ?…何か問題でも?」

「い、いや!さすがにだ…」

「…何…?」

「あ、いえ…なんでもないです…」

 

郡さんは鬼の形相で僕の発言を遮った…その目を見て僕はゆっくりと画面へ目を向ける。高嶋も諦めたようにコントローラーを握りしめていた。画面に映し出されたタイトルを見て僕は声をあげる。

 

「これって…スマ○ラ?」

「…ええ…これなら操作もそんなに難しくないし…楽しめると思って…」

「…楽しむって……」

 

正直…乗り気になれなかった…今僕は高嶋と距離を置いている。理由は単純でこの前のことでだ…いくら悩んでいたからといって彼女には酷いことを言ってしまった…。

 

(だから…距離を置いてたのに…)

 

高嶋もそれを気にしているのか…最近は話掛けてこない…。それだけではなく…若干避けられているようにも感じた……。

 

(…そんな状況でどう楽しめと…)

 

少し苛立ちながらも…コントローラーを握りしめ…対戦をはじめた。

 

 

 

 

 

~数時間後~

 

 

 

 

 

「のぉ~!!高嶋!やめて!リトル○ックは空中戦に弱いんだから!」

「ゲームだもん!関係ないよ~!」

「むむぅ……ふ、こうなったらプロボクサーの横Bを思いしれ~!(スカッ)はずしたぁぁぁぁ!!!!!」

 

さっきから執拗に高嶋が使っている音速の青ハリネズミに狙われていたので一発お見舞いしてやろうと思ったら…思いっきりカスってそのまま落下した。その様子を見て郡さんが憐れみの目で僕を見る。

 

「貴方…バカなの?」

「だ、だって!横B当たると気持ちいいじゃん!」

「気持ちはわからなくもないけど…それにしたって…もう少し頭を使いなさいよ…」

「やられたぁ~!やっぱりぐんちゃん強いや!」

「そんなことないよ…高嶋さんも結構上手だし…」

「えへへ~そうかなぁ?」

「…せっかくなら二人同時にかかってきてもいいけど…?」

 

郡さんは話ながらも…超有名な黄色い雷ネズミさんを使って高嶋を散らした…。すると彼女は僕と高嶋を見てそんなことを提案してくる。

 

「望むところだ!よし、高嶋!二人で郡さんを倒そう!」

「了解だよ!洸輔くん!」

「さぁ…かかってきなさい…」

 

 

 

 

 

~さらに数時間後~

 

 

 

 

「やったぁ!勝ったぁ!」

「やったね!高嶋!」

「うん!何度も負けちゃったけど…やっと勝てたね!」

 

二人でハイタッチをする。あのあと…何度も挑戦し負かされたが…やっとの思いで僕達二人は郡さんを下したのだった。そんな喜ぶ僕らを見て…郡さんはこんなことを呟く。

 

「…二人とも…学校にいたときよりは…ましな顔になったわね…」

「「え?」」

 

ゲームをやっているときは無我夢中で気がつかなかったが…学校の時やここに来たときに比べて…かなり気が楽になっていると感じた…それと同時にあることに気がつく。

 

(もしかして…郡さんはこのために…)

 

彼女はコントローラーを手に持ちながら…高嶋の方を見た。

 

「高嶋さんは…笑っている時が一番輝いていると…思う…だから…できるだけ笑っていて欲しい…」

「…ぐんちゃん……うん!!」

「あと……貴方の笑顔も…高嶋さんほどじゃないけど…嫌いじゃないから…できるだけ笑ってなさい…」

「郡さん……」

 

郡さんは顔を少し朱染めながら僕にそう言った。すると今度は少し真面目な顔になる。

 

「…人には…他人に話せないことなんていくらでもある…。それを無理に話してなんて…言わないわ…。それでもね…乃木さんにも言ったけど…自分は一人じゃないことくらいは…自覚しておきなさい…」

「………………」

 

郡さんの言葉を聞いて…最近の自分のことを思い返す…。突然現れたもう一人の自分…皆に迷惑を掛けないようにと気を張りすぎていたこと…。

 

(周りが…見えなくなってたんだ…)

 

手元にあったコントローラーを置いて…二人に向き直り頭を下げる。

 

「高嶋…郡さんも…ごめんなさい!」

「私はいいわ…それより…高嶋さんの方が重要じゃないの…?(何があったかは知らないけど…)」

「郡さん…うん…。改めて…この前はごめん!高嶋!僕…余裕がなくなって…それを君にぶつけてしまった…本当にごめん!」

 

もう一度高嶋に向かって頭を下げる。すると彼女は頬を掻きながら申し訳なさそうに喋りだす。

 

「私こそ…ごめんね。洸輔くんも記憶が混乱していて大変かもしれないのに…ずかずか踏み込んじゃって…」

「いや…いいんだ…。高嶋は善意でやってくれたんだから…これはそれに対して答えてあげられなかった…僕の責任だよ」

「洸輔くん…よし!それじゃ仲直りの握手!これから改めてよろしく!」

「ああ!よろしく!」

 

高嶋の手を強く握る。この世界に来て…僕は初めて彼女とこんなに近づいた気がした…そんな僕達を見て郡さんは少し微笑んだ気がする。

 

「さて…もう一戦行きましょう…」

「え!?まだやるの!?」

「結構長い時間やってるよ!?ぐんちゃん!?」

「さっき負けたから…今度は勝つわ…」

「よーし!なら今度も負けないよ~!ね、洸輔くん!」

「うん!今度も僕らが勝ーつ!」

 

僕は笑顔そう言った。その時の笑顔がここ最近で一番自然に笑えた気がする…。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「なんと言うか…千景らしいな…」

「それにしても…ゲームってすごいですね。無意識の内にあそこまでのめり込んじゃうなんて…」

「だから千景さんは…あの二人を部屋に入れたんでしょうね」

「あ~タマもやりたかったなぁ…」

 

私達四人は学校が終わるとすぐに千景さん達を探した。私が見た時に向かった方向を見ていたために三人のいる場所が宿舎の部屋だということはわかった。そして現在部屋のドアの隙間から三人の様子を見ている。

 

(若葉ちゃんだけじゃない…千景さんも変わってきているんですね…)

 

三人でゲームをやっている姿を見て…安堵する。洸輔くんも丸亀城を出ていく前に比べ…表情がスッキリしていた。

 

「…神託のことは…明日伝えましょう…」

「ひなた?大丈夫か?」

「ん?は、はい!若葉ちゃん、大丈夫ですよ!」

「あまり無理はするなよ?帰ってきて何気に疲れているんだろう」

「ふふ…そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」

 

前よりも雰囲気の変わった幼なじみを見ながら…私は思った。

 

(この六人なら…次にくるバーテックスの総攻撃にだって負けません!)




どうでしたでしょうか?誤字報告やキャラ崩壊とかもあったら僕に伝えてください!

え?千景ちゃんが原作より優しいんじゃないかって?やだなぁ…千景ちゃんは元からこんな感じダヨ?

感想、お気に入り登録待ってます!

それでは、また!
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