それては、どうぞ!
探索も二日目に差し掛かり、さらに先へと進んでいく。今回訪れたのはかなりの大都市……なので皆で手分けしながら生存者を探すことになった。
「これは……」
観覧車や駅、ここにはかつて何人もの人がいたのだろう。崩れ去った建物は明らかに星屑達が侵攻したような跡で溢れかえっていた。
「誰かいませんか〜!」
僕は地上ではなく地下街を調べていた。捨てられたゴミや臭いから察するに、ここには人がいた形跡がある。
「頼むよ……一人でも」
先に進んでいくと突き破れているシャッターがあった。多分ここにいた人達が必死に抵抗したであろう形跡が見られる。
「うっ……」
突然、臭いが強くなる。今までのような食べ物が腐った臭いじゃない。それはこの場所に充満した死の臭い。辺りには血が飛び散って壁に染み付いている。
さらに奥へと足を踏み入れた。
「なん、だよ……これ?」
一言で言うのなら『地獄』だ。綺麗な水が吹き出ているはずの噴水のような場所を骸骨の死骸が取り囲んでいる。
「嘘……こ、これが人の死に方だっていうのか?」
込み上げてくる吐き気を抑え込むように、両手で口を覆う。足元に何かがあたった。
「日記…?」
拾い上げた日記のようなものを広げると地下に逃げ込んだある少女の記録だということがわかった。ページをめくり、内容を読み進める。
『2015年 某日、地下に潜んでから…何日経っただろうか?もう日付もわからない…だから時間の感覚を失わないために日記をつけることにした』
『七月末に現れた化け物から逃げて…私達は地下街に逃げ込んだ…皆で出入り口にバリケードを作ったが私達も外へは出られない…地上はいまどうなっているのだろう…両親はもういない…家族は妹だけ……まだ小学生の妹を私が守らなくちゃ……』
『今日起こった喧嘩で人が死んでしまった…食料の奪い合い…意見の対立…弱いものいじめ…みんな逃げるために閉じ籠っているのに…なんで人間同士で争うの…死体は決められた場所へと運ばれる…まるでモノみたいに…』
『妹が家に帰りたいと泣き出した…普段はワガママも言わない大人しい子なのに…妹の泣き声に苛立った大人が外に放り出すか殺すかしろと言った…そんなことは絶対にさせない』
『日を重ねていく度に…食料問題が肥大化していく…大人達がそれらについて話し合っているが…結論は出なかった』
『妹に元気がない。呼び掛けると返事はするけどぼんやりしていて……体調が悪そう。もしかしたら病気かもしれない』
『今日も妹の元気はない』
『私にはなにもできない……病院に連れていかなければ』
『妹が返事をしない…どうしようどうしようどうしよう』
『酷い争いが起きた…一部の人々が「食料節約」と言って老人や病人を殺した…その人達も別の人に殺されて…もう訳が分からない…妹も…殺された…私も…もう死のうか』
『地上へと出ようと訴えていた人々が…バリケードを壊した…化け物は次々に入ってきて…シャッターも呆気なく壊された…きっとあいつらは分かっていたんだ…私達が自滅することを…私はいま…死体置き場にいる…最期は…妹と一緒に…』
「…ぁ……ぅ…」
込み上げる吐き気を堪える。何も言葉が出てこない、出てくるはずがない。しかし、これを読んで改めて実感する、この世界は僕のいた世界と何もかもが違うことを。
僕の生きていた時代には、こんな場所は存在しなかった。この光景は今の自分の心臓を抉るように痛めつけた。
『アホだなぁ、人間ってのは。ま、今のままじゃお前もこいつらみたいになるのオチかもな』
声がした方を見ると、最近は見なくなったもう一人の自分がいた。そいつは骸骨を踏みつけにやつきながらこちらを見ている。
「お前……その足を退けろよ!」
『なんでだ?こいつらは敗北者、負け組だぞ?』
「その人達だって精一杯生きてたんだ…敗北者なんかじゃ、ない!」
どんな結果だったとしても彼らはここで生きていた。それを侮辱することは許さないと僕は叫ぶ。しかし、その発言を聞いた奴のにやつきは先ほどよりも増していく。
『お前よぉ、忘れたのか?言ったはずだ、お前は「俺」…つまり今、俺が言っていることは。心の奥底にある、お前自身の言葉でもあるんだぞ?』
「そんなこと!」
『ない、と言えるかねぇ?今の、中途半端な、お前に』
「……」
中途半端……その言葉に何も出なくなった。ここで黙ってはいけないと思っても、口が塞がる。それを良いことに、奴は好き勝手言い始める。
『そもそも、なんでお前はあいつらと協力なんてしてるんだ?お前は力に身を委ねればあんな奴ら必要ないくらい強いのに』
『ここに来たこと自体が偶然だ。なのに、自分が正義の味方かのようにあいつらを守ろうとする。ここに来たことから何もかもが全て偶然なのに』
『このままいけばお前もこいつらと一緒の目に遭うぞ?だから捨てろ……あいつらを』
「き、きさまぁぁぁぁぁ!!!!!!」
剣を握り奴に向かって斬りかかる。しかし…奴から溢れ出た風圧で体が弾き飛ばされる。
「ぐぁっ……」
『見ろ、これが闇の力。お前が拒み続け、怖がっている、力ってやつさ』
「っ…く、そ」
顔を掴まれて、そのまま体が宙に浮き始める。呼吸がしづらい、苦しい。
『何よりよ、お前の望みは元の世界に帰ることだろ?なら、あいつらが何人死んだところで、苦しんだ所で気にすることはないはずだろ?』
「ぁ…や、めろぉ…」
『違うとは言わせないさ。なぜなら俺は、「お前」だからなぁ』
「やめろぉぉぉぉぉ!!!!!!」
「洸輔さん!洸輔さん!!」
「…はっ…」
目の前には、杏がいた。視界が霞んでいて、息がしづらい。何か、変なものを見た気がする。
「だ、大丈夫…ですか?声を掛けても返事が……」
「あ、ああ、大丈夫。問題ない」
「そう、ですか……それは?」
「これ……か」
いつ来たかは分からなかったが、そんな疑問を頭を振って消し、静かに杏へと手渡す。
「地下に……いた人の日記だよ。内容は……かなり酷いから見るか見ないかは任せる」
「っ……」
話し込んでいると、先の方で何かが蠢いてるのが見えた。それに怒りと憎悪が込み上げてくる。
「出よう。もうここには、生存者はいないから」
思考を切り替えるかのように、そう吐き捨て剣を構えたが、手は震えていた。
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日にちは経ってもう五日目。今のところ、生存者は見つかっていない。大阪に訪れた際に、洸輔さんから渡されたノートの内容は酷いものだった。
(洸輔さんの様子もどこか…)
あの日から、少し洸輔さんの様子がおかしい。何となくだけど、目に光がない気がした。
「見えてきたね~」
「あ、ああ…諏訪までもう一息って感じだな」
そう言ったタマっち先輩の顔色は明らかに優れていなかった。先ほど訪れた名古屋で切り札を使ったからだろう。
「タマっち先輩…大丈夫?」
「なぁに、ちょっと疲れただけだ」
「無茶して切り札を使うから…」
「奴らの卵を見たら……な。カッとなっちまった、まぁ後悔はしてないけど…」
多分、今まで訪れた場所の中でも名古屋は一番被害が酷かった。あらゆる場所にバーテックスの卵が産み付けられ、まるで…ここはもう人間のいるべき場所ではない、と化物が訴えているような土地に変えられていた。
「今から向かうところは、確か諏訪だったよね?」
「はい。どうやら私達、四国と同じように勇者が守っていた場所の一つだそうです」
「守っていた……か」
「白鳥さん……」
「行きましょう。彼女も知ってほしいはずです、友達であった若葉ちゃんに……諏訪の結末を」
「ああ、そう…だな」
心配事は尽きないが、気持ちを切り替えて私たちは諏訪へと降り立った。
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「ここが結界の要だったからでしょうか?」
「異常なまでに破壊されているな……」
諏訪に降り立った私達が、見たものはまるで念入りかのように破壊された神社だった。ここが結界に必要不可欠のものだったから、ここまで無惨に破壊されてしまっているのだろう。
「若葉!こっち来て!」
「どうしたんだ、天草?なにか見つけたのか?」
「この形さ、多分、畑だと思うんだけど。これってもしかして…」
「えと、正確には畑だった場所みたいです」
「ふむ…確かに最近まで人の手が入っていた感じだな…」
多分…食料として野菜などを収穫していたのだろう。まだ跡が残っている…すると突然友奈が私の所へ駆け寄ってきた。
「畑の所にこれが…」
「これは一体?」
友奈の手元には木の箱に入った鍬と手紙…私は置いてあった手紙を開き読み始める。
『もしこれを見つけたのが、乃木さんでなければどうかこれを四国の勇者である彼女に渡していただければと思います』
『バーテックスが現れたあの日から既に三年ほどになります。諏訪の結界も縮小し切迫した状況にあります…ここはもう長くはないでしょう…』
『けれど…まだ乃木さん達が残っています。人間はこれまでどんな困難に見舞われても再興してきました。諦めなければきっと大丈夫』
『乃木若葉さん……まだ会ったことのない大切な友達。あなたに出会えたことを嬉しく思います。あなたが戦いの中でも無事であるよう、世界があなたの元で守られていくよう願っています』
『人類を守り続けるのが例え私でなかったとしても、乃木さんのような勇者が守り続けてくれるのであれば、それでいい。私はそこに繋げる役目を果たします』
手紙を握っていた手に力が籠る。
「っ……」
「ここも、同じ……全部壊されて!」
「いいや、郡さん。全部ではないよ」
「うん、そうだね。これが……残っている」
私が友奈から鍬を受け取る、自然と自分の目から涙が零れた。
「白鳥さん…やっと、会えたな。お前の意志は、私が引き継ぐ」
「二人には心の繋がりがあっただから……これがあったんだ……だから…大丈夫……僕も怖がらなくていい……いいんだ」
「天草?」
「若葉ぁー!!こんなん見つけたぞぉー!」
「どうした?球子」
天草の言葉が気になったが…球子に肩を叩かれそちらへと向き直る。
「蕎麦の種?」
「他にも色々な作物の種がありますね」
「…みんな…やろう…」
その一言だけで皆はすぐに動き出した。白鳥さんから受け取った鍬を使って畑を耕していく。
「大きく…育つといいね…」
「ああ、そうだな」
何故だか…横で白鳥さんが微笑んでいるような気がした…。
「この鍬と残った種は四国に持ち帰…」
「ちょっ、ひなた?どうしたの!?ひなた!!」
「ひなた!!」
全員で天草に支えられたひなたの元へと近づいていく。
「体調が悪いのか!?なら休…」
「ち、違います…」
「…え…?」
ひなたは悲壮な顔でたった一言私たちに告げた………。
「神託が…、ありました…四国が再び危機に晒されます」
オリ主の項目に新しい内容を更新しておきました!そちらもご覧ください!
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それでは…また!!