天草洸輔は勇者である   作:こうが

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朗報…天草くん闇に落ちそうになってもフラグ建築士は引退してない模様…。


第十五節 変わらない

「レクリエーションをしよう!!」

「れくり?えーしょん?」

「それって何をするんですか?」

 

皆昼御飯が食べ終わって教室に着くと若葉が開口一番そんなことを言い出した。

 

「ずばり!模擬戦だ」

 

若葉がルールをいちから説明していく。まず戦場は丸亀城の敷地全体、勝ち残った者は他のメンバーへ自由に命令できる権利が与えられるというものだ。

 

「なるほど…王様ゲームとバトルロイヤルを混ぜた感じってことだね」

「うむ!まぁそうなるな」

「なんか面白そうだね!」

「…レクリエーションに模擬戦って……」

「まぁ…いかにも若葉ちゃんらしいですね」

『確かに』

「なんだ!『らしい』って!!」

 

すると突然若葉の顔が曇り…声のトーンも少し落ちる。

 

「ひなたが神託を受け…遠征から戻ってきたが危機が訪れる時期も規模もまだ把握できない。また人心を操作する大社のやり方にも疑問がある…」

 

そう、僕らは神託を受けたひなたの言葉を聞きすぐに遠征を切り上げ捜査は途中のまま…四国に戻ってきたのだった。

 

しかし…大社は僕達の遠征が大成功だったとニュースや報道などで報じている。

 

(…確かに…士気を高めるために嘘の情報を流すっていうのはあるけど……)

 

正直真実を知っている僕らからすれば…見るに耐えないものだった。そんなことを考えていると若葉が優しい声で僕達に声を掛けてくる。

 

「皆それぞれ思い悩むことは…あると思う。でも…だからこそ…楽しむ時間が必要だと思ったんだ」

 

そう言った若葉の顔は最初にあった頃に比べて変わっていた。多分これまでの経験を経てリーダーとしても人としても強くなったんだろう。

 

「タマもその話に乗った!温泉の時のリベンジだぜ!!」

「私も!」

「それじゃ!皆さん勇者王決定戦開幕ですっ」

 

(変わらないのは…僕だけか…)

『ああ…そうだ…お前だけが変わらない…』

 

みんなの楽しそうな声を聞きながら…心の中でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「さすがだな!!」

「若葉ちゃんこそ!!」

 

高嶋さんと乃木さんが木刀(痛くないように柔らかめの)と拳をぶつけ合っている。私は草むらに隠れながら二人の戦いを観察していた。

 

(…潰しあいの隙をつくには…ここが最適ね…)

 

「終わりだよ!」

「甘い!!」

「……!?……」

 

拳が刀を弾き飛ばす。しかし…残っていた鞘が高嶋さんに振るわれる。それを見た瞬間…咄嗟に体が動き出す。

 

「ぐんちゃん!?」

「高嶋さん…無事…?」

「ありがとう!助かったよ!!」

「うん…気にしないで…これで二対一ね…」

「もう一人追加だ!千景!」

 

どこからか土居さんが現れる。これで三対一、人数的に考えればこちらが有利の状況だ。三人で乃木さんに攻撃できる間合いへと近づいていく。しかし……

 

「ふ、望むところだ!居合いの真髄…お見せしよう!!」

「きゃぷ!」

 

一閃…乃木さんの放った一刀は高嶋さんのお腹に命中する。それを気に掛けて…私も体勢が崩れた。

 

「高嶋さん!!」

「もらったぞ!!」

「っ…」

「危ない!!」

 

やられると思い目を瞑る。すると何故か私に刀が振るわれることはなく…ただ何か…温かい感触がするだけだった。それに…目を瞑る前に誰かの声が聞こえたような…

 

「?」

「大丈夫?郡さん?」

「!?」

 

目を開けると天草洸輔が目の前に立っていた…いや…厳密に言うのなら乃木さんの一刀を肩で受け…私を庇うようにして抱き締めながら立っている…が正しい…。

 

「天草!?いつの間に!?」

「敗者にばっかり意識がいってるみたいだけど余所見していいのかい?」

「何!?くっ!」

「若葉~!相手はこっちだぞぉ~!鬼さんこちら!手の鳴る方へ~!」

「待てぇ~!!球子ーーーー!!」

「なははは!!!」

 

土居さんと乃木さんの声が遠ざかっていく。

 

「はは…負けた負けた…まぁいいけどさ」

「所で~洸輔くんはいつまでぐんちゃんを抱き締めてるの~?」

「おっと…そうだった。ごめんね…郡さんがやられそうになってたもんで…つい」

「……………………」

「郡さん?」

「ぐんちゃん?」

 

なんで…こんなに顔が熱くなるのか…よくわからない…なんだかくらくらする…。

 

「だ…大丈夫よ…だから…あんまり寄らないで…」

「あ、はいごめんなさい…」

「それにしても…貴方…どこにいたの…?」

「自分が行った場所には…誰もいなくてね。それで何かがぶつかり合う音が聞こえたんでこっちに来たのさ!」

 

そう言うと彼は笑顔でこちらを向いた。それを見て…また顔が熱くなる。

 

「……あっそ……」

「?」

「洸輔くん…狙ってやってないよね?」

「?何が?」

「なるほど…恐ろしいね」

「何が!?」

 

二人の会話を聞きながら乃木さん達が向かった方向へ歩き出す。私は二人の方へ向きを変えずに…一言だけ呟いた。

 

「まぁ…なに…助けてもらったのは事実だし…高嶋さんと貴方の分まで…頑張ってくるわ…」

「うん!いってらっしゃい!ぐんちゃん!」

「頑張ってね~郡さん!」

 

(はぁ……一体何なのよ……この気持ちは……)

 

私は知らない感情に…心を支配されていた。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

勇者王決定戦(ひなたさん命名)は私の勝利で幕を閉じたのだった。

 

最初の戦闘で友奈さんは若葉さんにやられ脱落、同じく千景さんを庇った洸輔さんも脱落した。そのあと私がタマっち先輩と組んでいることがばれてないことをいいことに…二人を矢で脱落させた。(千景さんが二本の矢を躱してきたときは焦った)

 

最後は協力関係にあったタマっち先輩も倒してチェックメイト。

 

あと…私は見てなかったのだが洸輔さんは千景さんを守った際に抱き締めながら庇ったらしい。そのことで……

 

『そいえば…貴方…私に抱きついたわよね…?』

『ああ…うん…そうだけど…』

『…冷静に考えて思ったの…あれって…セクハラじゃない…?』

『え…』

『まぁとりあえず…殺すわ…』

『いや、ちょっとまって!あれは…武器を出すのが間に合わなかったから(ザクッ)oh………』

 

てわけでバトルロイヤルが関係していないところでぼこぼこにされていた。

 

そして…優勝者ということはもちろん…

 

「私のものになれよ…球子」

「そんなこと言われても、タマには好きな人が…」

 

タマっち先輩が若葉さんに壁ドンされて道が塞がれる。そこに……

 

「待ちなよ!球子さんが嫌がっている!!」

「た、高嶋くん……!!」

 

もう一人のライバル出現にストーリーはさらに急展開へと!!………なることはなかった。

 

「って!!待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!!!」

 

ついに我慢できなくなったのか…タマっち先輩が大声で叫んだ。

 

「カットカットォ!!だめだよ、タマっち先輩!ちゃんと台詞通りにいってくれないとォ!」

「言えるかぁ!!なんなんだよぉ!優勝者の命令が『お気に入りの恋愛小説の再現』って!!しかもなんでタマが『内気な少女』役!?」

「えへっ…このヒロイン…背が低いって設定だから…」

「えへっじゃねぇぇぇぇ!!!しかもなんだ!?チビだって言いたいのか!?」

「男子の制服ってなんか変な感じだね…」

「わざわざ衣装まで用意するとはな…恐ろしいこだわりだ…

「てっきり洸輔くんがやるのかと思ってたけど…」

「うん…僕もそう思ってたけど…よかったぁ~」

 

横では洸輔さんが安堵していた…。彼には別の命令があるため二人にやってもらったのだ。

 

「むぅ…再現度には不満がありますが…よしとしましょう…では次の人は…千景さん?」

「!!…あんな恥ずかしいの…ぜ、絶対お断りよ……!!」

「千景さんと洸輔さんで…ワンシーンだけやってもらおうかなぁ~」

「い、嫌よ…!あんな…抱きつき魔となんて…!!」

「抱きつき魔………(グサッ)」

「あ、死んだ」

「安心してください、千景さんの命令はちょっと違う感じですから」

 

そう言って…皆で作った手作りの卒業証書を向けた。

 

「千景さんへの命令はこれを受け取ることです」

「これ……は?」

「みんなで作ったんだよ」

「学年が変わるだけで場所はずっとここだがな」

「ああ…だが、形だけでも行った方が良い」

「僕からも…気持ちだけだけど」

「私もそう思います」

 

この中で唯一中学三年生の千景さんのために…学校から出ることがないから…私達が思いを込めて作った。

 

すると…彼女は頬を赤め…戸惑いながらもそれを受け取った。

 

「そう…命令なら…仕方ないわね…」

「おめでとう…郡さん…」

「ぐんちゃん、おめでとう!!」

「ありがと…高嶋さん…それに…貴方や皆も……」

 

千景さんもとびっきりの笑顔…とまではいかないが、今まで見たなかで一番の笑顔をしていた。

 

「あれ?僕だけ…命令ないけど?」

「洸輔さんのはもう少しあとです…なので後程」

「はぁ…」

「それより!このままシーン2いきましょう!!」

「まだやるのか!?」

「もちろん!シーン10まであるんだもん!」

「正気の沙汰じゃねぇぇぇ!」

「私もどんどっん!撮ります!!」

「ひなたは少し自重しろ!!」

「シーン2!お姫様抱っこからスタートっ!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

タマっち先輩の叫び声が…学校中に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

「これになります」

「えっと…ありがとう」

「一巻から貸すので終わったらいってください」

 

自分の部屋の前で本を渡す。洸輔さんに命令をするついでに前から言われていた小説を貸すことにした。

 

「これが…命令?」

「いえ!それは単純に前に言われたことを思い出したので渡そうと…命令…というよりもお願いですね」

「何でも聞くよ?できる範囲でだけどね」

「実は…勉強で分からないことがあって…教えていただければと…」

「なんだ…それなら頼んでくれればいつでも「私の部屋で…」…はい?」

「明日は丁度休みなので…どうかなと…」

「ま、まぁ僕は大丈夫だけど…」

 

照れくさそうに頬をかいている彼を見る。これには…実は別の目的がある。

 

(洸輔さんは…きっと何かに悩んでる…それを見つけ出すんだ…)

 

そう心の中で呟き…両手に力を込めた。




もうそろそろ…一番きついとこ来ますね…。心を強くもって頑張ります!

PS…課金しても千景さんは僕のもとに来てくれない模様…。
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