天草洸輔は勇者である   作:こうが

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まずは!お気に入り150件登録ありがとうございます!!もう3ヶ月(?)くらい経ちましたがこんなに沢山の方に見てもらえるとは……嬉しい限りです。


ちょー頑張って書きました(迫真)


第十八節 選んだ道

 目を開く。

 

 周りを見渡すと白い空間が広がっていた。身を起こすと、頭の中のどこかに、霧が掛かっているような感覚がする。

 

「……」

 

 無言のまま、果ての見えない空間を歩く。足を進めると頭の中で、西暦の世界で過ごした日々が脳裏によぎっていった。

 

「酷いもんだね」

 

 自重気味に呟く。見えてきたものの殆どが、彼女達を傷つけてしまった記憶ばかり。

 

「…何か」

 

 思い出せない。何か、僕は大事なものを思い出したはずなのに。それが、なんだったのか…思い出せない。

 

『無様を取り越して憐れだな、お前は』

「……」

 

 黒く染まる。声の方へ視線を向けると、禍々しい色をした勇者服と剣を手に持っている『僕』がいた。

 

『出来の悪い本体(オリジナル)を持つと苦労する。憐れなお前にそろそろ教えてやるよ。俺が一体何なのかをな』

 

 状況についていけない中、奴の拳が自身の腹部に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

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「お、おい」

「あ、ぁぁ……」

 

 握っていた手が力なく落ちる。同時に、目に灯っていた最後の光も、消え去った。

 

「ば…バカ野郎ぉ!目ぇ、開けろって!」

「まだ何も……」

 

 目の前で力なく横たわっている少年。最初は怪しくて、それに異性だからと警戒してた。でも、頭を撫でられたり、杏と仲良くしているところを見ると、そんな気持ちは無くなっていた。

 

 それに。

 

「お前が、初めてだったんだよぉ……」

 

(からかっている訳じゃなくて、タマのことを、純粋な『女の子』として見てくれた。別に見てほしいだなんて思ってない。それでも、それが堪らなく、嬉しかったんだ……)

 

「ほ、ほら、早く起きないと……なぁ、もっと…くっつくぞ?」

 

 遠征の時、そして、いつかは覚えてないけど、教室で話したあの時…彼はこうされて顔を赤くしていたことを思い出す。

 

 体を抱き寄せると…装束に血がついた。その体には…彼の温もりがまだ残っている。

 

「頼む…たのむよ…起きてくれ…!!」

「タマっち先輩……お願い、洸輔さん」

 

 杏も手を握って、祈るように呟いていた。

 

 二人の少女は、ただ願い続ける。

 

 

 

 

 

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「つぅ…っ…」

 

 肺が圧縮されて、空気が体外へと吐き出される。異常な痛みに、僕はその場に蹲った。奴はゆっくりと歩み寄る。

 

『お前の心、その奥底に眠っていた悪意の集合体。それが俺の正体だ』

「……知って…いるとも」

 

 奴は嘲笑を浮かべながら、僕に向かって話続ける。

 

『お前がこちらに来て感じた不安、悪意、不信感。そして、お前の弱い心が生み出した存在……それが俺さ。端から見れば、俺はお前の偽物……出来損ないだ、だがな』

「ぐっ…」

 

 顔を蹴られ、体が飛ぶ。うつ伏せで倒れ、顔を上げると、奴の目は…僕をまっすぐと見据えていた。

 

『今じゃ、どっちの方が偽物で出来損ないなのか分からないな』

「……」

『うだうだと、闇を恐れていつまでも受け入れず。いざ、受け入れて完全に闇に落ちるかと思えば……最後には、守る必要のないものを庇い、自滅……いい加減にしろよ。偽善者が』

「っ…あああ!!」

 

 凶器が振り下ろされる。それは、僕の腕を貫通し地面に勢いよく突き刺さる。意識が飛びそうになるのを堪える。

 

「ぐっ…ぁ…」

『言ったはずだ。お前のその想いは偶然が重なりあって産み出された紛い物の想いだと』

 

『あいつらのことを拒み、傷つけておいて、今さら、守ろうなんて虫が良すぎるとは思わないのか?』

 

『お前のような出来損ないのことを…あいつらはもう仲間なんて思うわけがない』

 

 苛烈な言葉とともに、剣戟が体を傷つける。どうしてか、この痛みは肉体につけられた傷だけのものではないように感じた。

 

『何より、また立ち上がったところで。お前にはなにも出来ない。なら……』

 

 胸ぐらを掴まれ、体が宙に浮く。無理やり顔をあげさせられると、その先には勇者部の皆がいた。

 

『この空間に留まり、皆と過ごすといい。それがお前の望みだろ?』

 

 手を離され、力なく地面に倒れ伏せる。体に、力は入らなかった。

 

『それでいい。どちらにせよ、もう手遅れなんだ……楽になるといいさ』

 

 僕に背を向けながら『彼』は反対側へ歩き出した。手を伸ばそうにも、力が入らない。

 

(そう、かもしれない。彼の言う通り……もう手遅れなら。ここで……)

 

 諦めて、目を閉じてしまえば……。

 

 

 

 

 

 

『一人じゃないよ。洸輔くんは一人なんかじゃ、ない』

 

 

 

 

 

 優しい声、何度も僕を這い上がらせてくれた声。自然と体に力が戻る。右手から光が溢れてくる、手には大事な人からもらった押し花が握られていた。

 

「……君は、いつもそうだね」

 

 右手から、徐々に全身へと熱が伝わる。今度は二人の少女の声が聞こえた。

 

『皆待ってるっ!だから早く戻ってこい!洸輔!!』

『お願い…目を覚まして、洸輔さん!』

 

 体に戻ってくるのは只の温度じゃない。これは、人と人との繋がり。仲間という『大切』なものから感じられる温度。

 

「ありがとう、僕を思っていてくれて」

 

(あの時、もう気づいていたんだ。それを皆のお陰で、もう一度思い出せたっ!)

 

『待ってます!洸輔さんが、いつか自分のことを話してくれることを!私も皆も待ってますから!』

 

 体が光に包み込まれていく。光の中では、勇者部の皆が微笑んでいる。

 

 

 

 

 

 

「まだ、そっちには帰れないんだ……ごめんなさい。でも、絶対帰るから。待ってて、皆」

 

 

 

 

 

 

 

 『俺』が、顔を驚愕の色で染める。熱が戻ってきた体を持ち上げ、奴と対峙する。

 

『なぜ立ち上がった。もう手遅れだと言った』

「………ううん、手遅れじゃない」

『…は?』

「手遅れなんかじゃない…って言ったんだよ」

 

 強く拳を握る。もう頭の中の霧は消えていた。

 

「待ってくれてるんだ。こんな僕を彼女は……彼女達は、離さないでいてくれてる」

『また、綺麗事か?そんなものありはしな……』

「君も『僕』なら、感じているんだろ。この暖かさを」

『うるせぇんだよ……黙れ!!!!!』

「嫌だ、黙らない」

 

 放たれた黒い渦を、正面から拳で打ち消す。

 

『ありえない……こんなことが!!』

「僕は、負けない。彼女達を僕が守ってみせる」

『っ……だから!その想いは偶然が生んだ紛い物と言ったはずだ!!!』

「いいや、偶然なんかじゃない!確かに、この世界に来たことは偶然かもしれない……でも、この想いは!『これ』だけは!僕が自分の意思で決めたことだ!」

 

 拳と剣がぶつかり合う。今まで向き合うことを怖がってた闇と今度こそ向き合いながら吠える。

 

『そうやって何度立ち上がったところで!!また苦しむ、また泣く、また傷つける!!』

「そうかもしれないね」

『なら!!』

「でも、苦しまずに、泣かずに、傷つけないで、強くなる人間なんていないんだ」

 

 この世界にきてから何度も、打ちのめされた僕だから言えること!

 

 

「苦しんで!泣いて!傷つけあって!壊れそうになっても……それでも、最後には助け合い、想い合って前へ進む!それが僕たち人間だぁぁぁぁぁ!」

 

 

 剣が壊れ、拳が奴の顔面に当たる。鈍い音が空間内を満たし、僅かな静寂が場に残ると、彼は短い溜息を漏らした後、口を開いた。

 

『所詮、紛い物じゃ、これくらいが限界か……もういい、さっさと俺を消せ』

 

 黙って彼に手を伸ばす。疑問と怒りが入り交じった視線を僕に向けられた。

 

『何、してやがる』

「一緒に行こうよ」

『なんでだ?』

「もう戦いは終わったし」

『そういう意味じゃない!何故だ!?お前にとって俺は邪魔な存在だろ!それに俺が今までやってきたことを忘れたか!?』

 

 心底分からないといった顔で訴えてくる彼に、僕は平然と言い返した。

 

「忘れたわけじゃない。でも、もう過ぎたことだし。それに…ぶつかってわかったよ?僕はやっぱり『君』だ」

『……』

「悪意を持っていない人間なんていない。だから、僕は君を消さないし止めを刺さない」

『………』

「そもそもさ、僕の弱い心が生み出してしまったなら僕に責任はある…だから、一緒に行こう?」

『お前は、俺みたいな存在でさえも……包み込もうってのか?』

「うん!」

 

 即答、すると彼は上を見ながら右手で顔を覆った。

 

『ぷっはははは!!!はぁー負けた負けた……やっぱりすげえなぁ…お前は』

「そうかな?………って!?か、体が消えかかってるけど!?」

『たりまえだ、お前が言ったんだろ?一緒に行こうって』

 

 真っ直ぐと、彼の瞳が僕を捉える。

 

『諦めんじゃねぇぞ……最後まであいつらを守ってみせろ』

「うん、もう諦めない」

『ならいいさ。それじゃさよならだな、「俺」』

「ううん、さよならじゃないでしょ?」

 

 自分の胸に、優しく手を置く。その仕草を見ながら、目の前で首を傾げている「僕」に優しく諭す。

 

「いつも一緒だ」

『くっ……はは!!完敗だよ、「俺」』

 

 そう言うと、今までからは想像できない満足そうな笑顔を浮かべながら……彼の体が光の残滓となった。それが、僕の体に入っていく。なんというか、変な感じだ。

 

「よろしく、もう一人の僕」

 

 

 

 

 

 

 

『貴公らしいな』

 

 

 

 

 

 

 懐かしい声が聞こえた次の瞬間、空間が歪み……いつぞやに見た洞窟のような場所に風景が変わった。だけど、驚きはしない。

 

『答えは得たか?』

 

 問いかけに対し、静かに頷く。

 

『そうか、彼の言った通りだな』

 

 白髪の男性は満足そうな笑みを浮かべながら、そんなことを呟く。

 

『この剣を抜け、今の君ならきっと』

 

 剣が突き刺さった石段に近づいていき…束に手を掛けた。

 

「今、いくからね…皆」

 

 目一杯腕に力を込めて、剣を引き抜いた。

 

『行くがいい、少年よ。守りたいもののためにその力を振るってくれ。そして……』

 

 騎士の最後の呟きは、聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「う……」

「……えっ」

「い、今…」

 

 体に感覚が戻ってくる。目の前には、二人の少女の姿があった。

 

「あれ…僕…なんで?」

「洸輔!!」

「洸輔さん!!」

「ちょっ二人ともっ!?」

「心配……したんだぞ…ばかぁ!」

「ホントに、ホントに…よかったぁ…」

「っ!!ありがと、二人とも…」

 

 飛び付いてきた二人を抱き締める。杏と球子の想いが、言葉がなかったら、僕は……。

 

「杏、球子、今までごめんなさい。二人の声、しっかり聞こえてた。だから、えと、その…許してくれるのなら…また僕と仲良くしてほしい!」

 

 やってしまったことを消すことは出来ない。だからこそ、それを受け止めて前に進みたい。

 

「あぁ…あぁ!もちろんだ!お帰り、洸輔!」

「私からも…お帰りなさい」

「うん、ただいま!」

 

 二人に笑顔で答え、鮮血で染まった体を起こして立ち上がる。まだ、やるべき事は山積みだ。

 

「さて、と、行こうか」

 

(皆の元に帰りたいって気持ちがなくなった訳じゃない。でもそれだけじゃない)

 

 右手をかざし…白銀の長剣を握る。

 

「『大切』なものを守る。そう、それが……」

 

『お前が!』「僕が!」

 

『「選んだ道だ!!!!」』




胸アツ展開キタコレ!!(自分で言うなし)

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