天草洸輔は勇者である   作:こうが

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誰でも自分にしかできないことって絶対あるんです!

はい!てなわけで本編いきましょう!


第二十節 僕にしか

「こんな綺麗だっけ……」

『久しぶりだよね、こういう感じで見るの』

 

二人で砂浜に腰を掛けながら、夕日に視線を向ける。小さい頃にこうやって一緒に何度も夕日を見たことがある。

 

間をおいて、友奈はこちらを向いて問いかけてきた。

 

『洸輔くんは、今どこかで戦ってるんだよね?』

「……うん」

『いっぱい苦しんだ?』

「かなり、ね」

 

この世界にきたばかりの頃を思い出し苦笑しつつ答える。少し暗めの彼女の声が一転して、すこし明るくなった。

 

『でも、見つけたんだよね?大事なもの』

「うん、皆のお陰で見つけることが出来た」

 

散々苦しんだ果てに、僕が見つけた歩むべき道。

 

「友奈や美森、風先輩、樹ちゃん、夏凜、園子。そして、あの世界で出会った若葉やひなた、郡さん、球子、杏、高嶋……皆が、僕を導いてくれたから見つけることが出来たんだ」

 

胸に手を当てる。右手には友奈からもらった押し花を握っていた。きっと……これが僕や皆を繋いでくれたのだ。

 

『言ったでしょ?何があってもそれが洸輔くんを守ってくれますようにって願いを込めたよって』

「そうだったね。何回も守ってもらったよ……何回も、ね」

 

多分、今ここで友奈と話せているのもこれのお陰なのだろうと一人で納得する。

 

『にしても直んないよね~、一人で抱え込んじゃう癖』

「似たもの同士でしょ?それに、僕は友奈みたいに単純じゃないからね」

『むぅ、これでも沢山悩みごとはあるんだけど』

「ほんと?例えば?」

 

久しぶりに話したからかな?言葉がとまらない。

 

『洸輔くんみたいになれないかな〜とか』

「そっか。ま、確かに僕になったら良いことがあるかも。友奈には絶対できないことがあるからね」

『え?なになに?』

「ずっと友奈の横にいられる。それと、友奈とは違う角度から…皆を感じていられる」

『じゃあ、私は私のままでいいかな。洸輔くんには絶対出来ないことがあるから』

 

二人で顔を見合わせながら笑う。そして、今の僕にしか出来ないことがもう一つあった。

 

「この手で西暦にいる皆を助けることも……今の僕にしか、できないことだ」

『それが分かっているなら、大丈夫だね』

 

ゆっくりと彼女は立ち上がると、こちらに満面の笑みを浮かべる。その笑みにはいつもよりも強い光が見えた。

 

『おっと……そろそろ時間かな?』

「もう、か。……早いね」

『そんな顔しない!まだ洸輔くんにはやらなきゃいけないことがあるんでしょ?』

「ああ、分かってるよ」

 

友奈は僕の方を向いて、手を優しく握ってくる。

 

『待ってるからね、洸輔くん』

「ありがとう、待っててね…友奈」

『それと!苦しくなったら…皆に相談するんだよ?』

「はは…わかってるよ。僕は一人じゃないからね」

 

そう言うと…友奈は最後に満足そうな優しい笑みを浮かべて…光と共に姿を消した…。

 

「…………さて!」

 

勢いよく砂浜から立ち上がる。押し花を握りしめて…夕日を見つめた。

 

「まずは…皆に謝らないとかな…」

 

…手には…まだ彼女の温もりが確かに残っていた…。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「こういう任務って珍しいね。今までは四国に入ってきた敵を倒せってだけだったのに…」

「そうだな。大社の方針が変わったのか…」

 

高嶋さんが退院して…すぐ大社から私達に任務が与えられた。内容は壁の外にいる進化体の討伐…。

 

(なぜ…急に…)

 

突然の方針変更に疑問を持ちながらも…乃木さん…高嶋さんと共に…壁の外へ出た。

 

「これは!?」

「…なに…これ…?」

 

私達が見上げる先には…この前襲撃してきた蠍の形をした進化体と同等…いやそれ以上の大きさに有した進化体の姿だった。

 

「こんな大きな敵…向こうからは見えなかったよ!?」

「結界の効果で…隠されていたのだろう…」

「また…隠すのね…」

「ああ…だが…」

 

乃木さんは義経を…私は七人御先を体に纏わせる。

 

「今は…全力で敵を倒すのが…優先…!」

「その通りだ!!」

「私もっ!」

「友奈が切り札を使うのは危険だ」

「ここは…私達に任せて…高嶋さん」

 

高嶋さんはまだ退院したばかりで万全とは言いがたい…しかもそこに酒呑童子の力を付与させてしまえば…また彼女に無理をさせてしまう。

 

「左側……」

「なら…私は右だ」

 

二人で左右から進化体を攻撃する…しかし…精霊を憑依した勇者の波状攻撃をもってしても……

 

(う…そ…全然…効いてないじゃない…)

 

もう数十回は切り裂いたが…やつの体には擦り傷すらも付いていなかった。すると…横から高嶋さんの叫び声が聞こえる。

 

「ぐんちゃん!!避けてぇ!!!」

「えっ…………」

 

寸前の所で一人を突き飛ばす。それでも…残りの六体は進化体の放った火の玉に飲み込まれ…消滅した。

 

「っ!?七人御先が…一度に六人やられるなんて…」

 

そして…見えてきたのは絶望の光景…。化け物の放った火の玉によって…本州は形を変えていた。

 

「ほ…本州が…あ、あんなのどうやって……」

「っ!うおおおおおおおお!!!!」

 

咆哮が聞こえた先を見る。そこには酒呑童子を身に纏った…高嶋さんの姿があった。

 

「ぅうああ……!!」

「た、高嶋さん!!ダメ!!」

「絶対に守る!!!今…眠っている皆の分まで!!私が!!勇者ぁ!!パーン…………」

 

振るわれた拳は…敵に届かず…高嶋さんの体は海へと…落下していった。

 

 

 

 

「友奈ぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「高嶋さん!!!!」

 

 

私と乃木さんの高嶋さんの呼び声が…瀬戸内海中に響き渡った。

 

結果として…私達の任務は失敗に終わり…海から救出された高嶋さんは再入院することとなった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜…

 

「勇者だから…」

 

キーボードを叩く音だけが部屋に響く。

 

「皆…私を…認めてくれて…」

 

暗い…暗い…部屋には…私…一人…。

 

「褒めてくれて…」

 

突然手が止まる…私の目線の先には…

 

『勇者三人が意識不明らしいじゃん?』

『まじ無能』

『勇者負けたって使えねぇわ』

『結局この程度』

『持ち上げられ過ぎたんだよ』

『全く守れてねえじゃん…使えねぇ』

『勇者が化け物倒せなかったせいで、竜巻が起こったらしい』

『マジかよ…役立たねぇな』

 

ネット上に溢れた言葉に手が震えはじめる。

 

「なに…よ…それ…?」

 

皆…命を危険に晒してでも…四国の人々を守ってきたのに…

 

「…ふざけないでよ…!!!!!」

 

私の心は…憎悪に飲み込まれていった…。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ふぁぁ…って暗!?」

 

急いで口を塞ぐ。どうやら夜に目が覚めてしまったみたいだ。

 

「…なんか久しぶりにゆっくり寝た気が…」

 

体が重くない…ゆっくり休めた証拠だろう。この世界に来てこんなにゆっくり寝たのは初めてな気がする…。

 

「二人も…無事だったんだ…」

 

横では…杏と球子がすやすやと寝息を立てながら…静かに横になっていた。

 

(よかったぁ……)

 

「それにしても…起きるタイミングが悪かったかな…」

 

周りを見ても真っ暗…でも…前みたいに僕を飲み込むような暗闇は消えていた。

 

(僕はここにいる…ならまだ手を伸ばせる…。今度こそ…向き合うんだ…)

 

「そう…僕にしか…できないことを」

 

月明かりは…僕を優しく照らしていた。




最初の部分は考えずに感じてください…。それが最善策だ……。

ああ…千景ちゃぁん……(書いててきつかった…こっからもっときついのあるのに……)

わかってる…わかってんだよ…すごくイチャイチャ書きたい…でもね…雰囲気が………(;o;)
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