ここらへんを越えたら出しますので……。
それでは、本編へいきましょう!
「っ…天草のやつ…」
携帯を強く握る…。元気な声を聞けて嬉しい気持ちと…まだ万全でもないはずの体で千景の元へ向かったことに腹が立つという気持ちで胸がいっぱいになる。
すると…横にいたひなたがゆっくりと口を開いた。
「洸輔くんは勝手ですよね。あれだけ人を心配させておいて……いざ起き上がったら……まるで悩んでたのが、眠ってたのが、嘘のように。驚くほど元気な声で……」
「ひなた……」
「ホントに……ホントによかったぁ」
ひなたの目に涙が滲んでいる。そんな彼女の肩に手を置いて、優しく言葉を掛けた。
「任せてくれ、ひなた。天草と千景は私が連れ戻してくる。なぜなら……リーダーだからな」
「はい、お願いします!」
寮のドアを開けて、勇者服を身に付ける。
(ひなたを泣かせた……その、代償はでかいぞ、天草!)
「今、いくからな!二人とも!!」
高知を目指し、跳躍した。
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「げっ!?」
スマホの画面に写し出された名前を見て、震えております。手を震わせながらも、電話に出た。
「えっと、もしもし?」
『もしもし、洸輔くんですか?』
「あ、はい。私、天草洸輔というものですが……」
『ホントに……』
「へ?」
『ホントに、心配したんですからね!!?』
携帯から怒号が聞こえる。なんということだ……かなり怒ってらっしゃる。
「ご、ごめんなさい!心配かけて」
『はぁ……体は大丈夫なんですか?』
「うん。体は、全然大丈夫……でも、ちょっと困ったことが」
『千景さんの実家、わからないんですよね?』
(何故、わかった!?)
「ぐふっ、ご名答です……」
『住所をメールで送信しておきます。それを頼りに向かってください』
「あ、あれ?止めないの?」
『止めません。でも、一つだけ条件があります』
ひなたは優しい声色に変え、諭すように呟く。
『千景さんも、あなたも、無事に帰ってくる。それだけは約束してください』
「ひなた……ありがとう。絶対、無傷で帰るから」
『あ、あと若葉ちゃんもそちらに向かってますので』
「あーっと、もしかして……若葉も怒ってる感じ?」
『はい♪ばっちり怒ってます♪』
「ひゃ~無傷で帰れないかも……」
『ふふ、もう、吹っ切れたみたいですね』
「皆のお陰……かな。それじゃ、また後で」
耳から携帯を離して通話を切る。思えば、ひなたは最初の頃から僕のことを気にかけてくれていた。丸亀城を離れるときも、わざわざ僕に声を掛けに来てくれたし。帰ってきたら、お礼しなくては。
「さてと、急がなきゃね」
ひなたから送られてきた住所をへと目を向け、その場所へと一直線に向かう。
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『健全な心身育成のために両親を丸亀市に移住させ一緒に暮らしてはどうか』
(大社からの提案はつまり……)
「私に、拠り所を与えるため、か」
『何を勘違いしているの?大社は、あなたという道具を失いたくないだけよ。誰も、あなたの味方ではないの』
また、聞こえてくる。自分と……似た声。
「るさい!うるさい……!言ってくれたのよ!村の人たちも、両親も、言ってくれたの!!」
玄関を開け、靴を脱ぎ、家へと入っていく。
「勇者である私が誇らしいって!!価値を認めて!愛してくれるって!!」
部屋の扉を開けると、やつれた父が私の方に顔を向ける。その顔には、感情なんてものはありはしない。
「なぁ、千景。今さら……家族三人で暮らす?冗談だろう?」
「でも、それは大社が決めたことで……」
「ああ、ああ!!知ってるよ!!大社から聞いたさ!!でも母さんは入院させとくのが一番だろ!!確かに、引っ越すのには大賛成さ!!こんな村……すぐにでも出ていってやる!!」
何かが切れたかのように、怒鳴り散らす父。状況が飲み込めず、質問する。
「なにが、あったのよ……?」
「これを、これを!見てみろよ!!」
投げつけられた紙には、罵詈雑言が書きなぐられていた。
『クズの娘はやっぱりクズ』
『さっさと出てけ』
『死ね』
『とっとと倒せよ、使えねえ』
『この役立たず』
その言葉の数々に、思考が止まる。
「は……?何、よ?これ?」
「毎日毎日、家に投げ込まれていくんだ!!!全部お前のせいだぞ!!この役立たずのゴミクズめ!!!」
怒鳴り散らす父の言葉を受けながら、私は、あってはならないものを見つけてしまった。
『土居と伊与島は無能勇者!!』
『天草は存在価値なし、さっさと消えろ』
その言葉を見た瞬間、思い浮かんできたのは三人の笑顔。そして、言葉。
『あんまり怖い顔してんなよ~杏には負けるが……千景!お前も笑ってれば案外可愛いからな!』
『千景さんが貸してくれた本、とても新鮮で面白かったです!』
『大事なのは、いつも一緒にいることじゃなくて……いつもお互いのことを思っているかじゃない?』
(身を削るように戦って……苦しんで……)
土居さんは、私のすごく苦手な踏み込んで来るタイプだったが……彼女自身のことは決して嫌いではなかった。
伊与島さんは、所どころ話があって、話していてすごく楽しかった。お互いに本の貸し借りもするようになったりもして。
彼は、人の心にどんどん踏み込んできて……正直、私にも自分が彼のことをどう思っているかなんて、わからない。でも、遠征の時に聞いたあの言葉。あんな言葉を口に出せる彼は、こんな風に言われるような人間じゃない。
(その報いが、これだっていうの?ふざけないでよ……)
そうだ、ふざけてる。
(勇者がいて、守ってくれてるからこそ……暮らせているくせに!)
その通りだ。勇者という守ってくれる存在がなくては、ただ滅びるだけの癖に。
(許せない。無価値なのは、クズは、ゴミは……どっちよ!!)
衝動的に、袋に入った鎌を取りだしながら道を歩いていく。
(許せない許せない許せない許せないなぜ褒めてくれないのなぜ讃えてくれないのなぜ認めてくれないのなぜ価値を認めてくれないのなぜ愛してくれないの価値を認めてくれないなら愛してくれないのなら……………………………殺してやる)
今、やっと理解した。自分がずっと聞いていた声は……私自身の心の声だった。
「えっ、な、こ、郡さん?」
「鎌……?何、それ?え?え?」
目の前にいるのは、小学生時代に私をいじめていた子達、全員が、呆然としながら立ち尽くしている。やがて、一人の少女から罵声が上がった。
「ふ、ふざけないでよ!勇者だからって調子に乗ってるんじゃないの!?バカじゃないの!?これだからクズは!」
周りの少女達からも罵声が上がり始めた。私は、ゴミを見るような目でそいつらを睨み付ける。
「ひっ!」
「戦いなさい」
「え?」
「皆、身を削りながらも……戦っている。そんなことも知らないで……偉そうに!!だから、味わいなさいよ……私たちの苦しみを!!!」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
叫び声をあげる少女へと、鎌を振り下ろしていく。自分の心が、どんどん壊れていくような気がした。そして振り下された鎌は、少女に致命傷を……与える寸前で止まった。
金属同士が打ち合うような音が響く。
「落ち着くんだ!郡さん!!」
「はっ?な、なんで……あなたが?」
目の前には、天草洸輔が立っていた。
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少女に郡さんの鎌が振り下ろされる寸前の所で、なんとか割って入る。
「っ……邪魔しないで!」
「それは、できない!!」
(風先輩を止めた時もこんな感じだった……)
暴走してしまった風先輩と夏凜の間に割って入った時もこんな感じだった。。あの時の僕は、大切な仲間である風先輩が……これ以上、自分自身を、仲間を、傷つけるのを見たくないと立ちはだかった。
(郡さん、君も、僕にとって大切な仲間なんだ)
それに誓ったんだ、取り戻すって。
「どうして、どうして、邪魔するのよ!?」
「君のその怒りは、君自身のものじゃない!!精霊を酷使しすぎた代償だ!!」
「なんの、ことよ!?」
鎌の一撃が重い。今の郡さんの攻撃を一度でも防ぎ損ねれば、即死する。そう感覚的にわかった。そんな中、郡さんの言葉と攻撃はさらに激しさを増していく。
「許せないのよ!!命を懸けて戦ってきたのに!!何故!蔑まれないといけない!!こんな、こんなことになるのなら!!人を守る意味なんてないじゃない!!!」
「っ……」
言葉が突き刺さる。涙を流しながら、鎌を振るう彼女の姿に胸を締め付けられた。郡さんが苛立たしげに僕にむかって叫ぶ。
「なんでよ、なんで……反撃してこないの!?本気を出せば、私なんかよりも強いくせに!!」
「そんなことない……僕だって、強くなんかないよ」
「嘘をつかないで!!そんな綺麗事、聞きたくもない!!」
「嘘なもんか。僕も一度、何もかもを諦めそうになった。でも、皆がいたから……立ち上がることができたんだ!」
闇に、『僕』に、一度負けて、堕ちてしまいそうになったあの時、僕はもう一度立ち上がることはできた。あれは、僕だけの力なんかじゃ決してない。
正直、僕一人では何も出来ない。でも、皆がいるから、支えてくれる人たちが、守るべき人たちがいるから、僕は何度だって立ち上がれるんだ。
「どうしてよ……どうしてそこまで!?」
「君が!僕の笑顔を取り戻してくれたから!!」
「はっ……?」
「あの時、郡さんが取り戻してくれなかったら、僕は笑顔の作り方すらも、忘れていたかもしれない!でも、君が、君が取り戻させてくれたんだ!」
例え、体がどんなに傷を負おうとも、彼女の笑顔を取り戻してみせる。これ以上、彼女の涙を見たくないから。
「なら、今度は……僕が君の笑顔を取り戻す!!」
「無駄よ……今さらそんなものを取り戻したところで私には、居場所も、存在価値も、何もかも!ありはしないんだから!」
「そんなことない!!僕も、友奈も、皆も!君を待ってる!」
段々と収まりだした攻撃は、友奈の名前と、皆というワードが出た瞬間に完全に停止した。
「高嶋さん……皆……わ、私、私はぁぁぁ……」
「こ、郡さん!!」
鎌を手から離し、両手で頭を抱えながら、彼女は崩れ落ちた。同時に、騒ぎを聞き付けたのか。村人達が僕と郡さんの周りに集まっていた。
その目には、憎悪と怒りという、負の感情しか感じられない。恐怖が込み上げた、自分はこんな目をした人間を今まで見た事がなかったから。
「やめて、やめて、そんな目で……そんな目で見ないで……嫌わないで、お願い、お願いです……私を、私を……好きでいてください」
(郡さんは、こんなものをずっと……)
「郡さ……はっ?」
駆け寄ろうとした瞬間、郡さんの頭に向かって石がぶつけられた。その光景をみて唖然とする。
「ふざけんなよ!使えねぇ癖に、人様の娘に手出してんじゃねぇよ!!」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
聞こえてくるのは、怒号。そして彼女から溢れでる懺悔の言葉。
「そうだ!そうだ!無能の癖に!!」
「お前らが守れねぇからこっちに被害が出てんだろ!」
「さっさと失せろ!!」
「クズはどこまでいってもクズだな!!」
「やだ、やだ……ごめん、ごめんなさい……」
こんなにも、大きな悪意を初めて感じた。遅すぎる理解だった、郡さんはこんなものを、ずっと前から抱え込み続けていたんだろう。だから、あんなにも。
「だったらさ。尚更、守らなくちゃ……助けなくちゃ、駄目だよな」
今、ここで彼女を守れるのは僕しかいないのだから。
「ぁ…あま、くさ…」
「大丈夫、僕が付いてる。郡さんを傷つけさせはしないし好き勝手にも言わせない。だから、帰ろう」
「っ!……うぅ」
「天草、これは一体……」
背後からの声に振り向くと、そこには若葉がいた。若葉は群衆を見ながら呆然と呟いている。
「千景……」
「若葉、郡さんをお願い」
「……お前は、どうする?」
「僕もすぐに追いつくから大丈夫だよ。……お願い」
「……わかった。帰ったら、説教が待ってるからな。忘れるなよ?」
「はは、お手柔らかに頼むよ」
若葉が郡さんを抱えてこの場から離脱する。若葉にも郡さんにも、これ以上の罵声を浴びせられてほしくないから。
(……一度、悪意に身を沈めた僕が、言えることじゃないのかもな。それにこの人たちにもこの人達なりの何かがあるのかも知れない。……でも、それでも)
もう我慢の限界だ。拳を血が出るのではないかと思うくらい強く握る。僕自身、あまり頻繁に怒るタイプじゃない。だけど、さすがに許せなかった。
いつまでも、意味のない罵詈雑言を飛ばし続けている村人達を黙らせるため、長剣を勢いよく地面に突き刺す。同時に自分の中に溜め込まれた怒りと共に込め、叫ぶ。
「うるっせぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
突然の怒号に村人達は叫ぶのをやめ、唖然とした顔でこちらに視線を向けてくる。瞬間、僕の中の怒りが爆発する。
「さっきから黙って聞いてりゃ……てめぇら、いい加減にしろよ!!!」
剣の持ち手に力が籠る。
「あの子は……郡さんは!あなた達から、言われた罵詈雑言をまともに受け入れて、ああやって自分を追い詰めてしまうほどに!真面目でいい子なんですよ!!」
「他の子達だってそうだ!!何を言われようとも!どんなことがあっても!!自分は勇者だからって恐怖払いのけて皆を守るために戦ってる!!」
僕はこの目で見てきた。
悩みながらも皆のために前に進んだ少女。
戦う力がなくても寄り添うことで支えようとする少女。
いつも明るく皆を引っ張ってくれた少女。
恐怖に負けそうになりながらも立ち上がった少女。
仲間を、友達を見捨てられないと拳を握った少女。
そして、人の悪意に苛まれながらも、戦った少女のこと。
天からの使い、バーテックスによって世界が蹂躙され支配されそうになっていたとしても、苦しい事しかない絶望的な世界でも、諦めずに前に進み続ける少女達の姿を。よく、知っている。
「僕だって、皆の内面を全部理解しているかって言われたらそんなことないかもしれない!!でもね、あんたたちよりはよっぽど彼女達のことを知ってるんだよ!!」
(この人たちに向かって、一番言いたいこと…)
「あの子達の内面を、気持ちを、想いを、理解しようともしてない癖して……断片的な情報聞いて全部知った気になって!!皆のことを好き勝手言ってんじゃねぇよ!!!!!!」
村には、僕の叫び声が響き渡っていた。
長くなりました、ごめんなさい……。
まだこんな感じの雰囲気が続きますが、よろしくお願いいたします。
感想お待ちしてます。
それでは、また!!