天草洸輔は勇者である   作:こうが

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今回は若葉とひなた!まぁゆるーく見てください。


第二十九節 思い思われ

「よしっ!」

 

 意識を集中させ、肺に溜まった空気を体外へと吐いてゆく。拳を勢いをつけ、前へと突き出す。

 

「ふっ!」

 

 友奈のお父さんから教わった武術を一通り行う。意外とこの技の一つ一つがバーテックスとの戦いで役立っていることも少なくない。

 

「……」

 

 横では若葉が木刀を振るっている。彼女も日課である素振りを早朝からやりにきたようだ。道場にいるのは僕と若葉の二人だけ。

 

 拳を収め、道場の上座に向かって礼をする。一通りの鍛錬が終わると、横で素振りをしていた若葉から感嘆の声が上がる。

 

「相変わらず、大したものだな」

「そう?若葉の方がよっぽどすごいと思うけど……」

「そんなことはないさ。私だってまだまだだとも」

「謙遜しなくてもいいのになぁ。それに木刀振るっている時の若葉、凛としててすごく綺麗だったよ?」

「……」

 

 急に若葉が黙り込む。その顔は少し赤くなっているように見えた。心配になり顔を覗き込む。

 

「若葉?」

「な、なんでもないぞ。気にするな……はぁ」

「?、あ、そうだ!若葉、何か僕にやってほしいこととかない?」

「やってほしいこと?急になんだ?」

「いやさ、色々迷惑かけちゃったりしたから。その恩返しにでもと思ってね?」

「まだ気にしていたのか、特にはな……」

 

 突然、若葉の言葉が途切れる。少しの間をおいて、もう一度彼女は口を開いた。

 

「ならば、一つ頼んでもいいだろうか?」

「うん、いいよ!なんでもばっちこいだ!」

「そうか、私が頼みたいことはな」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「あれ?若葉ちゃんと洸輔くんがいませんね?」

 

「ついさっきどっか行ったぞ?」

 

「二人でそそくさと消えていったわ……(ムスッ」

 

「ぐんちゃんちょっと不機嫌?」

 

「そ、そんなことない……」

 

「って言ってる割には顔赤いな?(ニヤニヤ)」

 

「っ!ふん!!(ザクッ)」

 

「んぁぁぁ!?!?目がぁぁぁぁぁ!!!???」

 

「んー…二人で隠れて何をしているんでしょうか?杏さん、心当たりあります?」

 

「……デートとか?」

 

『え!?』

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「…これが…この時代の結界…」

「すまないな。こんな頼み事で…」

「ううん、これが若葉の望むことなら」

「……洸輔…ありがとう…」

 

若葉の頼みごとは…彼女らしいと言えば…彼女らしいと思ったけど少し…複雑な気分だった。

 

それは…壁の外にいる大型バーテックスを調べて欲しいということだった。曰くもし未来で戦ったことがある奴なら僕に見せれば対処法が見つかるかもしれないということと、攻撃が通じるかも調べてほしいと頼まれたのだ。

 

僕が寝込んでいる間に千景、友奈、若葉で戦ったらしいが…結果は芳しくなかったらしい。ひとまず…動かずに停滞しているため、大社は様子見をするそうだ。(対処法がないだけだろうに…)

 

最初は皆で行くべきと思ったのだが…若葉に心配は掛けたくないと言われたので…危険を感じたらすぐ引くのを条件に頼みを受けた。

 

「じゃあ…行こうか」

「ああ…頼む…」

 

結界の中へと足を踏み入れる。すると僕の目に一番最初に入ってきたのは…………

 

「こいつは………」

「その反応、知っているみたいだな…」

「うん…よく知ってるよ…」

 

目線の先にいる大型バーテックス…あれはよく覚えている…言ってしまえば戦ったのだって何週間前とか前の話だ。

 

「…よし!とりあえず行きますか!」

 

近づいてきた星屑を剣で葬る。そのまま跳躍し、大型バーテックスへと近づいていく。

 

「これで……どうだぁ!!」

 

剣から白銀の衝撃波を放つ。しかし…その一撃は大型の装甲に微量の傷をつけただけだった。

 

「っ…けっこう威力高めなんだけどなぁ…」

 

相手を刺激しすぎないために、すぐに方向を変えて若葉の方へと向かう。

 

「洸輔!大丈夫か…?」

「ごめん、若葉…駄目だった。まだ…切り札も使えるけど…これ以上刺激すると…危ないね」

 

やつの強さは未来で嫌というほどに味わった。太陽のような火の玉を放出したり、自身を火の玉で包み込んで突撃してきたりなど…その強さは他の大型バーテックスを遥かに凌いでいた。

 

「奴のことについてはまた後で話す。とりあえず一旦ここから出ようか?」

「ああ…そうだな…」

 

そう言った若葉の顔は…暗かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

壁の外に出た僕と若葉は落ち着いて状況をまとめるために近くにあった公園のベンチへと腰を掛けた。

 

「とりあえず…あの大型の大まかな特徴とかは今話したのが全部だね」

「なるほど…。未来の勇者達でも…そこまで…」

 

ある程度の説明を終えて軽く一息つく。すると少し焦ったようすの若葉が…

 

「他には、何かわかったのか…?」

「あいつのことに関しては今話したのが全部なんだ…力になれなくて…ごめん」

「いや、いいんだ。それはそうと…さっき言ってた切り札とはなんだ?」

「ああ……切り札ね…言ってしまえば皆のと少し似ているかもしれない」

「…私たちの?」

「うん、ただ僕のはスマホに記録されたジー……精霊と一体化することによって力をデメリットなしでフルに使うことが出来るんだ」

「…つまり、私達のように宿すだけではなく…完全に同一化する…ということか?しかも…デメリットなしで」

「まぁ…そういうことかな」

 

あの装甲を破るためには…切り札の力は必要不可欠となる。だけど…彼女達のものは肉体と精神に負担が大きすぎるため…なるべく使って欲しくない。

 

「結論から言わせてもらうと…今は待って結界へと入ってきた所を叩くしかない。その時は…僕の切り札で迎え撃つ。皆には精霊を使ってほしくないからね…」

 

シグルドさんやジークさんに選ばれた僕にしか出来ないこと。それを成すために僕はここにいる。

 

「デメリットなしで……か。それが選ばれたということに繋がるんだな」

「…あっちで戦ったときも最後は精霊さんの力を全部借りたからね…」

「…そうか…大変だったんだな…未来も」

「まぁ…ね…」

 

会話が途切れて…二人で無言になる。すると…若葉からため息が漏れた。

 

「…待っていることしか……私になにか……」

 

その呟きを聞いて、僕は彼女に言葉を掛ける。

 

「一人で背負いこんじゃだめだよ?」

「………………」

「大丈夫、若葉は一人じゃないから。君が困った時は皆で背中を押す。そうやって助け合っていけばいいのさ」

 

僕としては…もっと彼女には息抜きを教えてあげたい。今回の頼みだって彼女らしいとは思う。でもやっぱり…楽しいこととかを頼んで欲しかったなぁと思った。

 

「洸輔……そうだな。私は…過去の出来事に囚われていた。だが皆との関わり合いや繋がりを得て…見えなかったものが色々と見えてきた」

「ま、僕も人のこと言えないけどね…」

「…どういうことだ?」

「一緒ってこと。僕もこの世界に来てから目的に囚われて…自分を見失ってた。でも…皆のお陰で取り戻すことができた」

「変な所で似ているな、私とお前は」

「はは…そうかもね」

 

二人で笑い合う。最初のころの僕ならこうやって彼女と話すこともなかっただろう。他のみんなとも…ね。

 

「さて、そろそろ戻るとしよ…っ……」

「おっと……まったく。やっぱり無理してたんだね?」

「気にせずとも…だ、大丈夫だ…」

「ああもう、言ってる側から!こうなったら…こうだ!」

「ちょっ!?こ、洸輔!?な、なにを!?」

 

言ってる側から無理をしようとする若葉を両手で抱え込み、笑顔を向けて彼女に語り掛ける。

 

「無理はしちゃダメ、若葉だって女の子なんだから」

「…お前というやつは…どこまで…」

「それじゃ行きますよ、お嬢様?」

「な、誰がお嬢様だ!誰が!?」

「いたっ!?べ、別に殴らなくても…」

 

なんとなくひなたが若葉に世話焼いている理由がわかった気がした。(てか…やっぱり力強い…)

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「はぁ……だから言ったんだ…お姫様抱っこはやめておけと…」

 

皆の元へ戻った私達は散々弄ばれた。(主犯はひなた…)洸輔は無意識にそういう行動を取ることが多い。

 

(私のことを…その…か、かわ、可愛いと言ってきたりとか…)

 

それに…彼と一緒にいると何故か胸の辺りが温かくなるのだ。ひなたや…皆といるときは違うような温かさが。

 

抱き抱えられた時に見た洸輔の笑顔を思い出す。

 

「…なんだろうな…この温かさは…」

 

胸に手を当てながら…私はそう呟いた。

 

 

 

 

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「え?ちょっ…ひなたさん?」

「ふふ♪疲れたので休憩です♪」

「いや…まだ一言も…」

「いいじゃないですか。ほらほらもっとくっついてください♪」

「………………」

 

感情を無にして…無表情になる僕の横には…満面の笑みで僕に寄り添っているひなたがいた。

 

どうしてこんなことになっているかというと……

 

若葉と共に帰ったあと…ひなたに何があったのかを根掘り葉掘り聞かれた僕は話を逸らすために何か頼んで欲しいことはないかと彼女に聞いた。そんな彼女の頼みは……

 

『私の部屋でお話をしましょう!』

 

だそうです。なのに…何故でしょう…さっきからひなたは喋るどころか…ずっと満面の笑みを浮かべながら僕にくっついてきているだけだった。

 

(それだけならいいよ?それだけならね?でもさ、ほら、当たってるんですよ『あれ』が)

 

正直、理性を保つので精一杯。本当にきつい……へ?い、いや別にぃ、ひなた(美森に負けてない)の果実があたって嬉しいとかおもってませんから。いやマジで。

 

「私は基本的に近くに置いてもらえたらそれで満足です。便利な女ですよ?」

「ごめん、どういうこと?」

「さぁ、なんでしょう?」

 

 突然変なことを言い出したひなたは思わせぶりに笑うと、僕の肩に頭を預けてくる。

 

紫色の綺麗な髪の毛が頬に当たり…いい匂いが僕を包み込んでいく。その行動に僕の心臓がバクバクと跳ね上がった。

 

「ま、まって…ひなた…ち、近すぎるって…」

「ふふふ、散々昼間は若葉ちゃんとイチャイチャしてたんですよね?なら私ともいいじゃないですか?」

「べ、別にイチャイチャなんて…」

「…私なら…若葉ちゃんには出来ない…すごいことをしてあげてもいいんですよ?」

 

(す……すごい…こと…だと…!?)

 

耳元で囁かれた言葉に更に高鳴りが増し…反射的にひなたの方に顔を向けると…

 

「ふふ♪どうしたんですか、洸輔くん?」

「……なんでもありません……」

 

まるで僕の下心を見通してるかのような笑み。おかしい…同い年の筈なのに…ひなたが凄く大人に見える……。

 

「…か、勘弁してよ…ひなた…そういうのは…」

「洸輔くんの反応が可愛いので…つい」

 

そういって意地悪そうに笑うひなた。完全に弄ばれてるなぁ…勝てる気がしない…。

 

こんなの外でやったら…バカップルだよ…。僕だって見たらそう思うし…。

 

少し…間をおいてからひなたがこんなことを呟いた。

 

「切り札にデメリットがないからと言っても…一人で無理はしないでくださいね?」

「…なんのことでしょう…」

「さっき若葉ちゃんから聞きました」

「…むむぅ…若葉ぁ…」

 

ひなたは真剣な面持ちで僕の方を向いている。そのまま彼女は話を続ける。

 

「若葉ちゃん達に何かあったりしたら嫌です。でもそれを起こさないためにと…あなたが犠牲になったりするのも嫌です」

「ひなたは…優しいね…」

「誰かはわからなかったけど…神託の時にもっと踏み込んであげてくれと言われたので…」

 

神託で僕が?なんでだろう…?もしかして…あの青い鳥は…神樹様と関係がある?

 

「それが理由なんだね…」

「いいえ…それだけじゃありません。もちろん皆のことも大切です。でもそれと同じぐらいにあなたも大切なんです…」

 

真っ直ぐとした瞳で僕を見つめながらそう言った彼女に…胸が熱くなる。

 

「ひなた…前から言おうと思ってた…その、ありがとう」

「気にしないでください。私も…あなたに何度か助けられましたから」

「…なんか…ごめんね…僕…頼まれた側なのに…」

「大丈夫ですよ?私…洸輔くんと一緒にいるだけで楽しいですから」

「…そ、そうなんだ…」

「顔、赤くなってますよ?」

「か、からかわないでよ……」

「ふふ♪」

 

多分…僕はひなたに一生勝てないんだろうなと思った。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「すぅ…すぅ…」

「…まさか寝ちゃうとは思いませんでした…」

 

あのあと膝枕に切り替え(渋々ながら)洸輔くんとその状態で雑談をしていた。

 

やがて…疲れていたのか彼の瞼は落ち始め、ゆっくりと眠りについていった。

 

(…ふふ…友奈さんから聞いていた通り…寝顔は可愛らしいんですね…)

 

自分の膝で寝息をたてている彼の頭を優しく撫でる。私は皆と一緒に戦えない…だから…こういう皆との時間を大切にしたいのだ。

 

「…あなたとも…もっと一緒に…」

 

撫でながらそんな言葉を呟く。すっかり私の心には洸輔くんへの…強い思いが宿っていたのだった。




まだまだリアルが忙しく…前のようなペースで投稿できなさそうです……。申し訳ございません。

それでも諦めずがんばりますよぉー!!

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