天草洸輔は勇者である   作:こうが

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随分遅くなって申し訳ありません!

まずひとつ!お気に入り200突破ありがとうございます!一話あげてから約5ヶ月になりますが……まさか、こんなに沢山の方に見てもらえるとは、涙しかでねぇ。

では、本編です。いっぱい詰め込みました!


第三十二節 重なり合う想いと力

「……ふわぁ〜」

 

寝起きの僕の耳に響いてくるのは、時計から発されているアラームではなくスマホから響いている音だった。

 

「来ちゃったな……」

 

このアラームが来たということは答えは一つ。ひなたが神託でうけていたバーテックスの総攻撃が起きるということだ。

 

「皆、行ってくるよ。こっちで出会った大切な人達を守るために」

 

お守りである押し花を握りしめながらそう呟く。どんなときでもこれは僕と皆を繋いでいてくれた。

 

『いつも一緒だからね!』

『大丈夫、あなたは絶対負けないわ』

『私達も付いてるんだから』

『洸輔さんなら、きっとできます!』

『しょうがないわね。力、貸してあげるわ』

『こうくんなら絶対大丈夫〜』

 

今だって皆のことを近くに感じている。どんなに離れていたって心の繋がりだけは途切れない。

 

「ありがとう、絶対負けないから」

 

準備が終える頃には、僕のまわりを見慣れた光が包み込んでいた。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「おはよう、皆」

「なんで…お前らそんな元気なんだよ…タマは眠くてタマんないのに…」

「た、タマっち先輩!起きて!」

「まったく…時間を考えてほしいものよね」

「よし!皆で乗りきろうね!」

「ああ、行こう」

 

勇者装束を身に纏い皆と合流する。その樹海はひどく静かだった。今からバーテックス達の総攻撃が起きるなんて思えない程に。すると…

 

「お出まし……みたいね?」

「大型は六体いる。ホントに総攻撃って感じだ」

「でも、若葉さん達が言ってた超大型はいないみたい」

「完成していないのか?いや、今は目の前のことだな。洸輔、奴らについて分かっていることはあるか?」

 

若葉の問いに答え、皆に一体ずつの特徴を伝えていく。情報を知っているだけで防げる事態だってあるはずだ。

 

「行くぞっ!」

「絶対、皆で生きて帰ろう」

「うん!」「勿論よ……」「はい!」

「よっしゃぁ!この旋刃盤りぺあたいぷ?の力見せてやるぞ!」

 

球子は前回の戦いで武器である旋刃盤が破壊されてしまった。そして…それを補うためと大社から彼女に手渡されたのは、システムに残されたデータを元に補修・修復した盾だった。

 

皆それぞれの返事が終わったと同時に大型達も動き出す。まず牽制としてか、爆弾と共に星屑が僕らの方に飛んでくる。

 

「……はぁっ!」

「勇者パーンチ!!」

「行かせません!」

 

各々が事態に対して対処していく。そして、僕は大型が皆に近づく前にと跳躍する。

 

今回の作戦は僕が提案した。彼女達が大型を倒すためには精霊の力が必須になる…だから基本は僕が前に出て戦う。

 

(皆には悪いけど、精霊を何回も使わせる訳にはいかない)

 

「皆は周りの奴らを頼む!僕は奴らの相手を!」

「相手は、六体だぞ!?私達も!」

「わかってる、でも、だからこそ僕が行くんだ!」

 

若葉の言葉に対してそう返し六体がふんぞり返っている方向を睨み付ける。

 

「行くぞ、化物ども!僕が相手だ!!」

 

バルムンクの刃に銀色の波を纏わせながら六体の大型の方へと向かう。

 

(皆で、生きて帰るんだ!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

「それは、覚えている!」

 

飛ばされてきた爆弾を全て切り落としていく。その攻撃はあっちでも体験した。

 

「っ!……それも、もう見切ってる!!」

 

蝎バーテックスが僕のガラ空きになった背中目掛けて針を飛ばしてきた。それを紙一重でかわして長剣で切り落とす。と、同時に爆弾をばら撒く奴との距離詰める。

 

「道を、譲れッ!」

 

流れのままに、本体を一刀両断し、他のバーテックスにも迫っていく。反射盤を張り攻撃を防ごうとするバーテックスを標的にし剣ではなく拳を構える。

 

「立ちはだかる壁はぶち破る……友奈直伝!勇者ぁぁ!パーンチ!!!!」

 

拳を強く握りしめ、思いっきり腰を捻る。蓄えられた力を束ねられた反射盤に向かって一気にぶつけると、板は全て砕けちり、バーテックスに拳が突き刺さった。

 

(勇者になってから……どんだけ、戦ってきたと思ってるんだ。戦い方は、体に染み付いてるんだよ!!)

 

バーテックス達からの波状攻撃を紙一重で避け……さらに思考をフル回転させながら異形達の攻撃に対応していく。

 

(防御っ!……は間に合わない)

 

「……なら!!」

 

剣に力を込めて刃に纏われている波の威力を更に上げた。範囲も広がり矢を撃ち落としながら本体に迫る。しかし、全て落としきれてはおらず……体に、かすり傷が生まれていく。

 

(蝎の針だけ警戒しておけばいい。それ以外は直撃を受けない限り気にする必要はない……一つでも、多く最善手の攻撃を繰り出し!一歩でも多く奴らの懐に踏み込め!)

 

「っ…ぁ…っ!こんなの、どうってこと!ないっ!!」

 

生と死の境目を駆け抜ける。第二波が発される前にと一気に間合いを詰め横に剣を薙ぎ払いながら、バーテックスを両断する。攻撃の雨は止まない。

 

着地のタイミングを狙って再生させられた尻尾が、こちらに飛ばされる。即座に、剣先に力を込めて、白銀の波を乱暴に横に向けて放出すると蝎の体勢が崩れる。

 

「はぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

勢いを殺さずに蝎を屠る。無理に体を動かしつづけていたせいで息が荒れ、体も悲鳴を上げている。それを吹っ飛ばすように、雄叫びを上げながら近くにいた二体にも剣を振るう。

 

「こ、れでぇ…最後っ!!!」

 

威力が底上げされた剣は、その二体を一瞬で塵へと変えた。

 

「はぁはぁ……」

 

頭をフル回転させ…同時にそれについていくように無理に体を動かし続けたからか…いつもより疲れが表に出ている。もしこいつらが御霊を宿していたなら危なかった。

 

「でも、これで…」

 

剣を地面に突き刺し体を支えながら周りを見渡す。これで、戦いは終わったはずなのだが……多少の違和感に気がつく。

 

(待て。おかしい……僕が倒したのは、五体!?も、もう一体はどこに……)

 

気づいた頃には遅く、視線の先には地面から這い出ていき後方にいた皆に襲いかかっているバーテックスが見えた。

 

「くそっ!!一杯一杯だったなんてのは言い訳にならない!」

 

すぐに彼女たちの方へと向かうために跳躍すると突然現れた星屑が僕目掛けて一斉に飛んでくる。

 

「…邪魔だぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「くっ……」

 

いつの間にこちらまで移動してきていたのか。地面から突然現れてきたバーテックスに皆が吹き飛ばされた。私は間一髪の所で近くにいた乃木さんに背中を押されたお陰で逃れられた。

 

(動けるのは私、だけ)

 

天草くんは、五体の大型を相手していた。なら一体くらい、私がやってみせる。神樹様の方に向かっていく化け物に視線を向ける。

 

(ごめんなさい、天草くん。あなたが、私達の為にそうやって前に出てくれているのは……わかってる)

 

「私だって、皆を、あなたを……!」

 

呟きながら…本で見たある伝承を頭の中で呼び起こす。選んだことに大それた理由はない…ただどこか似ていると思った。

 

精霊を纏う際に必要なのはイメージ。さらに、強い力を得るために念じる。

 

目を見開き、私はその名を叫んだ。

 

「来なさい、玉藻前!!!」

 

纏う精霊は七人御先とは比にならないほど…高位のもの…それは私を飲み込もうとしてくる。

 

『あなたが、そこまでする必要があるんですか?』

 

「ふっ……今さら、何言ってるのよ」

 

前までの、私なら飲まれていたかもしれない。でも、もう負けはしない。だって誓ったから、どんなに傷ついても辛くても……離さないと。

 

乃木さん、上里さん、土居さん、伊予島さん、高嶋さん、天草くん、皆がいる居場所を守るために戦う。

 

(その想いがある限り、私はもう負けない)

 

装束の色が変化する。本来の赤色はなくなり、どこか儚さを感じる青を基調とした和装を纏った。

 

狐を思わせるような耳と尻尾が生えてきている。

 

鎌は色もそうだが、どこかいつもと違うように感じた。

 

「う……ううん。ちょっと油断しちゃったなぁ……って!ぐ、ぐんちゃん!?そ、それって!」

「高嶋さん、皆のことお願い」

 

それだけ言って、空中を浮遊しながら移動しているクラゲのようなバーテックスに近づいていく。

 

「止まりなさい」

 

何か呪詛のようなものが刻まれている札をかざす。瞬間、氷の呪術が発動し化け物の動きを止めた。

 

「どう?化け物には分からないでしょう?この力……」

 

氷結によって動きを止めているのを利用しさらに距離を詰めていく。

 

「確かに、人間は……弱いかもしれない」

 

追い討ちと言わんばかりに三枚の札を取り出してそれを敵の本体に投げつける。

 

「でも、大切な人達との心の繋がり……守りたいと思う心、それがあれば、何度だって立ち上がれるのよ」

 

(それらを私は彼から、皆から、教わった!)

 

瞬間、こちらに向かってくる天草くんが見えた。

 

「千景、一緒に!」

「……合わせなさい」

 

炎の呪詛…そして私達の同時攻撃を食らった化け物はゆっくりと消滅していった。

 

 

 

 

 

皆の無事を確認し…合流する。すると私達に向かって天草くんが頭を下げてきた。

 

「ごめん…、僕が取り逃がしたから」

「気にしなくていい。あれだけの数を相手してくれたんだもの……仕方ないと言えば仕方ないわ」

「すまなかった。二人とも、リーダーの私が……」

「あなたの咄嗟の判断のお陰で、私はあの場で動けた。それで十分よ」

 

似たもの同士もここまで来ると呆れる。この二人は、一人でどうにかしようとするところがとても似ている。言葉を掛けていると高嶋さんが心配そうに顔を覗かせた。

 

「ぐんちゃん、体は大丈夫?」

「大丈夫、上里さんから借りた本の知識のお陰かしらね……」

 

少しズキズキとくる体の痛みを我慢しながら答えていると横にいた伊予島さんが辺りを見回し怪訝そうに呟いた。

 

「なんか……静かですね」

「端末からも確認したが、敵はいないようだ」

「でも、まだ樹海化解けてないぞ?」

「多分……あいつが残ってるからだと思う」

「ああ、あなた達が言ってた。超大型ってやつね」

 

呟いたと同時に、それは壁から姿を現した。今ままでの大型とは、強さも大きさもレベルが違うと見ただけで分かる。それほどの異常性をあれからは感じた。

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、光が一瞬で視界を覆い尽くした。

 

「離れてっ!!!!」

「ぁ…」

 

声が響いたと同時に体が後ろに飛ばされる。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

『来るぞ!!』

「離れてっ!!!!」

「ぁ…」

 

頭に響いてきた声が聞こえたとほぼ同時に横にいた千景を押して剣を前方に向かって構える。

 

「っ…ぐっ!あああああああ!!!!!」

 

腕に尋常ではない負荷が懸かる。あの世界では満開状態の勇者が五人がかりで止めることができた…それを今は一人で支えている…体が変な音をたてているのだって不思議じゃない。

 

「あ、天草くん!!」

「に…逃げ…て…時間を…稼ぐことすら難しい…っ!!」

 

もし…ここで一瞬でも緩めれば僕を呑み込んでそのまま後ろにいる皆に当たってしまう。そうなったら…

 

(それだけは…それだけは!させない!!)

 

しかし、それの威力は弱まらず…どんどん押されていく。その度に体の一部一部が悲鳴をあげる。

 

(くそっ……バルムンクを使うしか…)

 

「やるしか、ない!!バル…」

 

追い詰められ、切り札を使おうとする僕の頭に先ほどのものとは違う声が響いてくる。

 

 

 

 

 

『「俺」のこと忘れてねぇか?』

 

 

 

 

 

「!?」

 

その声の主は…もうひとつの僕の側面のもの。

 

『一応、お前と一緒にいるはずなんだがな』

 

何故か体から力が沸いてくる。さっきまで軋んでいた肉体が少し和らぐ。

 

『お前は……もう、闇を受け止めてる。なら力は一つじゃねぇだろ?英雄から受け継いだ物だけじゃない』

 

それは、つまり?

 

『自分自身の力があるだろ?ま、人間が誰しも持ってる醜い部分のもんだが』

 

確かにそうかもしれない。でも、それが欠けていても人間は駄目なんだ。

 

『なら、あとはわかるよな?』

 

うん、行こう!『僕』!!

 

『そうこなくっちゃな。行くぜ、相棒』

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……はぁぁぁぁぁ!!!!」

 

装束が黒いものへと変化していく。それは剣も同様、だがそれだけではない…完全にではないが…体に力が戻ってくる。

 

(完全に消し去ることができなくても、弱めることはでき

る!)

 

「弱まれぇぇぇぇぇ!!!!」

 

剣を黒い波が覆っていく。それは普段のものよりも強力なもののように感じるのは…竜殺しの英雄と僕という人間の力本当の意味で合わさったからだ。

 

(ここだ…!!!)

 

段々とそれが先ほどまでの威力よりも弱くなっているのを確認し…その一瞬を狙って、近くにいた千景と若葉の手を掴んでその場から脱出した。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ここまでくれば…一旦落ち着けるかな」

「こ、洸輔さん…大丈夫なんですか?さ、さっきの…」

「少し痛むけどこれくらいなら大丈夫さ」

 

火の玉バーテックスからの攻撃を一時的にとはいえ凌いだ僕は…みんなと共に身を潜めていた。

 

正直…危なかった。闇の力を宿して…いなかったら火の玉に存在を消されていた。僕だけではなく、後ろにいた皆も、体に走る痛みと流れている血がそれを物語っていた。

 

「奴の強さ…今ままでのものと桁が違いすぎる。あれは一体…」

「あれは…最初に出てきた奴と決定的に違うところがあるんだ」

「…どういうこと…?」

「奴には…御霊があるんだ」

「御霊????何だそれ?」

 

よく分からないと首を傾げている皆に、御霊がなんなのかを説明する。あいつは僕らの世界で戦った敵と行動パターンは一緒だった。

 

しかし…大きさがあっちよりも数倍ある。それに、ただでさえ脅威だった火の玉も比例するように大きくなってたし…。

 

(先に…あの大型達を倒しておいてよかった…もし合体されたりしたら…)

 

「…奴は今までのバーテックスとは強さが比にならない、ということか?」

「うん、あるかないかで…強さも変わる」

「そ、そんな…」

 

皆の顔が曇る。僕としては…御霊ありとわかっただけで十分だった。どちらにせよ…切り札を僕は残している…。だから…

 

「そんな顔しないで、僕が倒すからさ」

「倒すって…ど、どうやって!?」

「この姿になったお陰で切り札を温存することができた…ならあとは、御霊を引きずり出し…破壊するだけ」

「一人で…やる気なの?」

「今回ばっかりは…危険とかそういう話の次元じゃないんだ。もし一発でもまともに受けたら…皆は…」

 

(それで死んでしまったら…意味がないんだ…)

 

封印の儀を皆に協力してもらう…案として浮かんできたはいいものの…それはあまりにもリスクが高すぎる。

 

「洸輔さん」

「…何、杏?」

「他に方法があるんじゃないんですか?」

「どうしてそう思うの?」

「確証はありません。ただ口調から何かあるように感じたんです」

「……あったとして…どうするの?」

「やるに決まってんだろ!そのためにここにいるんだからな!」

 

相変わらず図星をついてくる杏と、その横で旋刃盤リペアタイプを叩きながら笑顔で言い放つ球子。

 

「洸輔が未来から私達を守るために来てくれたのは知っている。だが…ここは私達の世界なんだ。なら自分たちの居場所を私達にも守らせてくれ」

「若葉ちゃんのいう通りだよ!それに、守りたいのは世界だけじゃない!ここにいる皆もなんだから!」

 

刀の持ち手を強く握りながら呟く若葉、そして拳を握り締め力強く言いきった友奈。

 

「そこには…貴方も含まれてるってことよ、天草くん。それに言ったじゃない…もしもの時を想定しているって…その時が…きたんじゃないの?」

 

最高位の精霊を纏った千景が真っ直ぐな瞳で僕を見据えながら言ってくる。

 

皆の言葉に動かされた僕はゆっくりと口を開く。

 

「…危険な賭けになるよ…?」

「構わない、むしろ賭けるくらいでなくては奴に勝てないだろう?」

「もう…覚悟は出来てます!」

「やるぞぉ!そのためにこれを貰ったんだからな!」

「…この力…皆のために…使う」

「こっからが本番だね!」

 

(…やってやる。この世界の皆と…もうひとつの居場所を守るために…)

 

未来の勇者と西暦の勇者達の想いは重なり合い力になる。




誤字があったりするかもしれません。その場合は報告お願いします!分かりにくい描写の部分は皆さんのイマジン力で補ってくれると幸いです。(作者が文才が無さすぎるので…)

感想待ってまーす(^o^)

今年の投稿は…どうだろう。もしかしたら…あるかもしません( ̄▽ ̄;)
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