難しかったです(´・ω・`)もうただ、それしか言えない。
「はぁ…はぁ…」
いつもとは違う朝の状況で事態を察し、すぐに走り出した。焦りと不安が私の中に募っていく。
(若葉ちゃんが部屋にいなかった。そして、皆の部屋に行っても反応はなかった)
私が動けている。皆がいない。それはいつも戦いが終わった時に起きること。きっと、皆は総攻撃を乗りきったのだろう。
(でも…)
私の受けた神託は、前の総攻撃とは比べ物にならないほどのものだった。それこそ、かつてないほどに恐ろしい神託の内容…きっと、無傷では済まなかったはず。
「お願い…皆、無事でいてください」
そう祈るように呟いて、病院のある方向へと向かった。
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「………あれ?」
目を覚ますと、そこは何もない白い空間だった。確か、樹海で皆に会う前に見たような気がする。そんなことを考えていると背後から声がした。
「目が覚めたか」
「えっ、ジーク……さん?」
「随分、無茶をしたものだ。無理やりリミッターを外し、一体化のその上をやってのけるとは」
「へ?」
思考が状況についていけずに困惑していると、ジークさんが僕の腕の辺りを指さした。首を傾げながら腕を顔の手前まで持ってくると、僕は目を見開いた。
「えっ!?ええええええ!?なんだこれ!?」
「ちょっとした副作用みたいなものだ。多少の痛みはあるだろうがそれ以外に害はない、気にするな」
「いや、気にしますよ!なんで…なんで手がドラゴンみたいになってるんだ!?」
「まぁ落ち着け。順に説明していくから」
軽い錯乱状態に陥った僕をジークさんが宥めてくれる。近所にいる優しいお兄さんって雰囲気だな、この人は。
「まずは、お疲れ様。君の健闘によって西暦の勇者達は皆、無事だ」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、精霊の力で多少の肉体的負荷はみられるが…命に別状はない」
体から力が抜ける。僕は大切な人達をしっかりと守れたようだ。ん、ちょいまって…皆は無事みたいだけど僕はどうなったんだ?
「ちなみに僕は?」
「同じく命に別状はない。まぁ手に後遺症が残っていたり、他の勇者達と比べると酷い方だが」
「てことは」
「ああ、君は守り抜いたんだ。この世界の勇者達だけではなく自分も…な」
「よかった、本当に…よかったぁ」
力無さげに呟きながら、その場にへたりと座り込んだ。ジークさんの話は続く。
「色々と話さなければならないことがある。目を覚ますタイミングはあちらの君の肉体次第だ。その時まで付き合ってもらえるか?」
「もちろんです。僕も確認したいこと多いですし、説明お願いします」
「ああ、任せてくれ」
「まず、俺の名はジークフリート。天草洸輔…君という人間に力を貸している精霊の一人だ」
話を聞きながら、やっぱりどことなく雰囲気がシグルドさんに似ているなぁっと思った。
「俺が今君の前に立っているのには理由がある」
「理由?」
「頼まれたんだ。ある人物に…君もこの世界に来る寸前辺りで会っていると思うが」
「まさか…あの、青い鳥!?」
「その通りだ、彼女に、自分の代わりに君と話をしてほしいとな」
「そ、そうなんですね。って彼女?」
「ん?ああ、まず、そこからだったか。あの鳥は、かつての勇者だった乃木若葉が精霊体となった姿なんだ」
「えっ!?あ、あの鳥が…若葉!?」
突然のこと過ぎて変な声をあげてしまった。ま、まぁあり得なくはない話なのかもしれないけど。
「彼女は、過去に多くの大切なものを失った。それを300年もの間、悔やみ続けていた彼女はいつか…過去で失ってしまったものを取り戻したいと考えていた。しかし、彼女自身が過去に行ってそれを行うことは出来なかったんだ」
「てことは、僕がこの世界に来たのって…」
「ああ、彼女が君の肉体に宿った俺をパスにして、過去へと送り出したんだ。謝っていたよ…私の我が儘に付き合わせることになってしまって申し訳ないと」
300年…そんな長い時間の中でも、若葉は皆のことを思い続けていたんだな…しかも、精霊になってまで。とりあえず、僕がこの世界に来たことはわかった。それと同時にある疑問が生まれた。
「でも、なんで僕だったんですか?僕なんかよりも正式な勇者システムを持った皆の方がいいんじゃ?」
「確かにな、しかし…彼女たちは神樹の恩恵を受けすぎていて、彼女では手出し出来なかったらしい。時間跳躍という行為を拒絶されたとな」
「どうして…」
「無垢なる少女に汚れを付けたくないからだろう。さすがの彼女でも…神樹のルールをねじ曲げる程の力は持っていない」
その話を聞いて、背筋に悪寒が走った。それはまるで…勇者達を自分の支配下に置いておきたいかのように聞こえたからだ。とりあえず、ある程度は理解が出来てきた。
「だから、僕のように神樹様からじゃなく精霊さん達によって勇者としての力をもらったイレギュラーを送りだした。そういうことですか?」
「そういうことだ。何より君という存在は送り出しやすかったらしい」
「?」
「君の肉体には擬似勇者システムを介して精霊が宿っていた。それが同じく精霊である彼女にとってすごく適していたんだろう」
「なるほどぉ…。それで、その肝心な若葉は一体どこへ?」
「っ…本人からは口止めされていたが…」
僕の質問に対し先程までに比べ、ジークさんの表情が険しくなっていた。そのまま彼は続ける。
「西暦の終わり、奉火祭と呼ばれるものが行われた。それは巫女を結界の外にある火の海へと投げうつ生け贄にして、赦しを乞う儀式だ」
「そ、それと若葉に何の関係が?」
「この世界で奉火祭が行われる前に…彼女は自分自身の手ですべて終わらせる気だ。自らを火の海に投げうってな」
「でも、巫女じゃなきゃダメなんじゃ!」
「いいや、実際の所巫女でなければならないという縛りはない。曰く神の意思を聞き入れるもの…強い神性力を持ったものならばいいようだ。今の彼女は精霊…神性力では巫女を遥かに上回っている」
「若葉、どうして…」
「俺はここまでしか知らない。彼女が何を思って奉火祭にまで手を出したのかは分からない。それは聞かされていないからな。それでだ…」
ジークさんの目が真っ直ぐと僕を見据える。同時に周りの空気も変わる。それは、人型御霊との戦いの時に語りかけられたときのような重さがあった。
「この話を聞かされた上で君に聞く。君はどうしたい?」
その問いに対しての僕の答えは決まっていた。何度もこちらで思い誓ったことだ。
「僕は、若葉を救いたいです」
「それはなぜ?」
「仲間だから!今の僕にとって若葉は大切な仲間だから!だから、救いたいです!」
「そう答えると思ったよ。実際の所、俺も彼女を助けたい。だが、打つ手がないのも事実なんだ」
「それは…」
「なんにせよ、彼女に何かしらの理由があるのは明白だ、少なからず…そこには君への償いもあるはずだ。最初は俺が身代わりになることも考えたが…パスの俺が消えれば、君があちらにもどれなくなってしまう」
呟いているジークさんを横目に考える。しかし、いい案が思い付かない。思い付くのは…やっぱり僕が身代わりになることくらいしか…。
『ならここに
「え?」
「ふっ…来るとは思ってたよ」
『なんだ、気づいてたのか。さすがは大英雄ってとこか?』
声がした方へ振り返る。そこには、
「なんで、ここに?」
『言っただろ?俺は
「そうだったね…って!そうじゃなくて、適任ってどういうこと?」
『簡単じゃねぇか、乃木若葉の代わりだよ。俺があいつの代わりとして火の海に意識を投げ出す』
「ちょ、ちょっとまった!ジークさんが言ってたでしょ?神性力の高いものじゃなきゃダメって。ましてや精霊じゃないのに…」
『精霊だけど?』
「……………へ?」
『だから、精霊なんだけど?俺』
またまた衝撃事実が飛び出したので、『僕』に説明を求める。彼は自分の悪の感情から生まれた存在…そこに関しては知っていた。彼から新しく語られたのは自分は勇者システムの副作用から生まれた精霊だということだった。
彼いわく、この世界で僕に芽生えたあらゆる悪意やらなんやらに勇者システムが過剰に反応してしまった結果らしい。正直、言われた所で完璧に理解することはできなかったけど、精霊と考えるなら彼の闇の力を僕が扱えたのも納得できるし、さっきジークさんが言ってた条件にも合ってる。
「確かに、それなら君は精霊という時点で適任とも言える。だが…」
「
『構わねぇさ。それによ、なんか俺思うんだわ。俺はもしかしたら…この時のために生まれてきたのかもなぁ~ってよ』
その言葉を聞いて、僕は驚いた。ジークさんに視線を送ると、肩を竦めながら笑っていた。同時に、最初の頃の下卑た笑みをしていた頃を、思い出して不覚にも笑ってしまった。
「ふっ…なに?運命でも感じちゃった?」
『ははっ!そうかもな。まぁ何より、どうせ消えてなくなるなら、
「随分変わったんだね。最初の力がどーのだとか、闇に染まれとか言ってた頃が嘘みたいだ」
『そりゃな、お前と一体化したせいか知らないが、やたら甘ったるい思考感覚になっちまったからなぁ』
(悪意がどうとか言ってたけどやっぱり、本質は一緒だね)
そんなことを思っていると、突然僕の体が光に包まれ始める。
「これは…」
「どうやら、あちらの君の意識が戻り始めたようだな。天草洸輔、目覚めたら壁に向かうんだ。きっとそこに彼女はいる。今行けばまだ間に合うはずだ」
『急げよ!若葉の野郎が身投げしちまったら、手の打ちようがねぇからな!』
「うん、わかった!」
視界が光に染まる寸前、僕は二人に向かってある言葉を掛ける。
「ありがとう。僕に力を貸してくれて」
言葉が言い終わると同時に、視界は暗転した。
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洸輔が消えた無の空間、二人の精霊は彼の最後の言葉を聞いてジークは笑みを、『闇』洸輔はため息をもらしていた。
「ホントに、君という男は…」
『たく、礼されるようなことはしてねぇっての。さて、後は
「だが、悪くはないんだろう?」
『まあな、悪感情も悪くはねぇが。こっちの方が心地はいいなぁ。んじゃ、俺はあいつに少し力貸してくるわ』
そのまま、『闇』洸輔は姿をその場から消した。
「貴方はよかったのか?彼と話さなくて」
ジークの目線が移される。そこには、いつ現れたのかシグルドが立っていた。
「構わない。もう、彼に当方は必要ないからな」
「しかし…彼の体に貴方の力が
「大丈夫だ。彼はいずれ、気づく。何よりそれは自分で気がつかなくては意味がないからな」
「貴方がそういうなら、これ以上俺から言えることはないな」
「貴公こそよかったのか?」
先ほどジークに聞かれたことを、シグルドは聞き返す。すると、ジークは満足そうな笑みを浮かべながら呟いた。
「ああ、かつての貴方と一緒だ。もう俺は、彼と共に願いを叶えた。それで満足だよ」
「そうか、彼はホントにすごいやつだな…」
「同感だ」
真っ白な無の空間に、二人の
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無機質な電子音が部屋の中を包み込んでいる。
「………」
目線の先には、痛々しい姿でベットに横たわっている洸輔くんの姿があった。顔には酸素マスクをつけ、両手は包帯でがっちりと固められていて、何故か隙間からは鱗のようなものが見えている。
「………」
病院へと駆け込んだ私は、皆が無事であることをしった。それぞれ精霊の影響で、肉体的な負荷はあったようだが命に別状はないらしい。杏さんと球子さんは、すでに目を覚まして検査を受けている。だが、洸輔くん、若葉ちゃん、千景さん、友奈さん…この四人は未だ目を覚ましていない。
「っ…約束しましたよね?皆で、無事に戻ってくるって」
呟きながら、彼の手を握る。もしも、このまま目を覚まさなかったらと…頭の中で、嫌な想像をしてしまう。
(大丈夫、絶対に大丈夫だから…)
「うっ……」
「!?」
呻き声を上げながら身を起こした洸輔くんを見て、一瞬思考が停止する。
「あ…れ、ひな…た?」
「よかった、目を覚ましたんですね!洸輔くん!」
「ここは…?」
「病院です。戦いが終わった後、皆ここに運ばれたんですよ。もちろん、若葉ちゃん達も」
「っ!!そうだ、急がないと!あ、うっ…くぅ」
「だ、だめですよ!安静にしてないと!ただでさえひどい傷なんですから!」
「でも、体は動く…痛いけど…これくらいなら…大丈夫。行かなきゃ…行かなきゃ…」
酸素マスクを外し、動きだそうとする洸輔くんを寝かしつけようとする。止まらない彼に私は語りかける。
「行かなきゃって、どこへ?」
「壁に…」
「どうして?」
「救いたい人がいるんだ。だからお願い…ひなた、行かせてくれ」
彼の目が真っ直ぐと、私を見ている。その目には、強い意志を感じた。あの時と一緒だ…私を咎めてくれたあの時と。
(はぁ、私ってば…洸輔くんに対して、相当甘いみたいです)
私だって本当は動いて欲しくない。でも、ここで私が止めたところで彼は止まらない。なら…
「分かりました」
「ホントに!?じゃ、じゃあ急がな」
「でも、一つ条件をつけます。私も連れていってください」
「え…?」
「もし、途中で倒れたりしたらどうするんですか?不測の事態が起きた時にも対応できるよう、私も連れていくこと、それが条件です!」
人差し指を洸輔くんに向けながら、そう告げる。内心、自分の甘さに溜め息をつく。すると、ベットから起き上がりながら、彼は優しい微笑みを私に向けてきた。
「ありがとう、ひなた」
「いいえ、それよりも急がなきゃなんですよね?」
「うん、急ごう!」
(ああ、まったく…ホントに甘いんだから)
自分の甘さにもう一度心中で、溜め息をついた。
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赤い炎に包まれた世界、これをこの時代で見たのは…かなり前の話だ。
「この日を、待っていた…」
あまり過去に変化を起こさせないよう、大社が奉火祭をある程度準備するまで待っていたが、やっと…これで私は償える。
「300年…長かったぁ…」
譫言のように呟く。大切な仲間達を失い、何も守れず、何も取り戻せなかった無力な自分…親友であるひなたにも…苦しい思いをさせた。
(でも、今なら…そのすべてを私が…)
その償いを行うために、未来の勇者…天草洸輔の力まで借りてしまった。苦しかったはずだ…突然、別の時代に飛ばされて…環境も何もかもが違ったのだから。
(今、すべてを償おう)
胸の内で呟きながら、炎で包まれた世界を見据えた。
作者であるこうがさんは、ご都合主義大好き人間です(*・ω・)
それより、ホントにすいませんでしたぁ!!許してください!何でもしますからぁ!
できれば感想ください(゚ω゚)