改めて今年もあこゆと作者の事をよろしくお願いいたします!では本編どうぞ!
目を開く。見えてくる光景、それはもう何度も見たもの。周りにはあの村の人々、私を囲い、咎め、罵倒し、痛めつける。
その先には、父と母がいる。まるで無関係かのように背を向けて立っている。これは、夢。そう夢だ……。
(勘弁して欲しいわね、初夢がこれなんて)
縁起が悪いことこの上ない。もうきっとこの夢は見ないと思っていた。けど、刻み込まれた過去の傷はそう簡単に消えてくれるものではなくて────。
自身の左耳に触れる。残り続ける傷、それは心も同じ。過去とは消せないモノ。ずっと、ずっと、自分の中に在り続けてしまう。
自分を苦しめ続けた人達も、自分を追い詰め続けた現実も。消えたりなんかはしない。
(……皆と楽しい時間を過ごした後なのに)
眠る前、皆と年越しパーティーをしたのを覚えている。皆と過ごしたその時間はこれ以上ないくらい楽しくて────家では年末も年始も楽しいことなんてなかった私が……喜びと楽しさに包まれていた。
この夢は、その反動だとでもいうのだろうか。
(過去からは逃れられないとでも…言いたいのかしら)
貴女がいくら変わろうと、周りがどれだけ変化しようと、消せないモノがあるんだと。それを忘れる事は許されないと、訴えかけているのだろうか。
(だとしたら)
それは飛んだお門違いというやつだ。私は、この過去を一度たりとも忘れようなんて考えた事はない。
「私は、もう心に決めているの。過去も背負って進むんだって」
周りからの声を掻き消す程の大きな声は出していない。それでも、はっきりと意思を込め、言葉を発する。
過去の私は、何も言わずに身を守るだけで精一杯だった。その頃の私にはそれしかできなかったから。けど、今はもう違う。
『千景!手を!』
「……ええ」
暗がりの中、誰かに手を差し伸べられる。その手を握ると、懐かしい感覚に包まれる。この手の温もりを私は覚えていた。
その手に引かれて、私は暗闇の中から抜け出した。
「今の私には……皆が、いるもの」
さっきまで私を呑み込んでいた暗闇は消え、辺りは光溢れる景色に変わっていた。眩しさに細めていた目を開く。視界に入ってきたのは、大事な友人、仲間達の姿。
こちらに駆け寄ってくる人がいる。その人は私の手を優しく握ってくれた。
「行こう、ぐんちゃん!皆、待ってるよ」
夢の中でも、貴女は…高嶋さんは私の手を引いてくれる。貴女の存在はきっとどこまでも私という一人の人間を救ってくれた。
「千景〜遅いぞ〜!」
明るく元気な声が私を呼ぶ、きっと土居さんだ。前までは苦手だった彼女の関わり方も、今では…その、好きだ。
「千景さんも来ましたし、これでみんな揃いましたね」
優しい声色で、こちらに笑い掛けてくる伊予島さん。彼女とは元から話が合う事が多かった。今では前以上に関わることが増えた気がする。
「待ってましたよ、千景さん」
手を差し伸べてきてくれたのは上里さん。常に周りの事を見て、皆を支えてくれた彼女。今でもそれは変わらなくて…彼女の小さな気遣いに私は助けられている。
「皆、いつも一緒だ。そうだろう?千景?」
こちらに問いかけてくる乃木さん。どこまでも頑固で、馬鹿正直、生真面目な……私が大っ嫌い
彼女の問いに対して、私は静かに頷く。そんな私の反応を見て、皆が微笑む、それに釣られて私も笑顔になった。暖かな時間、夢だとしてもこの胸に感じている熱さはきっと本物だ。
この夢の中でも、私は皆に救われた。何度潰れそうになっても、何度堕ちそうになっても、皆が私を闇から救い出してくれた。
(それは……彼も一緒)
「いるんでしょ?天草くん」
振り返らずに私はそう一言だけ呟いた。それに対して、後ろから懐かしい声が聞こえる。
『なんだ、ばれちゃってたのか』
少し残念そうに彼は言う。バレないとでも思ったのだろうか、この人は。
「暗闇の中で手を差し出してきたのって、貴方よね?バレバレだったわよ」
『おっかしいな……だいぶ謎めいた感じ出せてたと思うんだけど』
「何それ、声がそのまんまの時点で謎も何もないでしょうに。バカね」
困ったように笑う彼。どうしてか、その笑顔を見たのが随分昔の事のように感じる。
「一つ、聞いてもいいかしら?」
『なんでもどうぞ。しっかり答えるよ』
「じゃあ、遠慮なく……貴方は、本物なの?」
『どうだろうね、正直、僕自身も何とも言えないかも。似たような経験あるけど、こういうのは本人がどう思うか次第って感じかな』
「……そう」
静かに頷く。正直、本物かどうかなんて些細な問題ではあった。今は……ただ、こうして話せている事を嬉しく思う。例え、夢の中であろうと、彼ともう一度会えたのだから。
「で、なんで今更夢に出てきたの?」
『うーん、まぁ、そうだね…理由的には千景が初夢にしては暗い夢を見ていたのが気になってさ、助けに来ちゃった』
そんな気まぐれ感覚で見にこれるものなのか。人の夢っていうのは。
「良く、分からないわね」
『分かる、僕もだよ』
「貴方は分かっておきなさいよ。人の夢に勝手に踏み込んできたんだから」
『あはは〜ごもっとも』と困った様に笑う天草くん。変な所で適当な部分も、変わらない。やはり、この人は私の知っている天草くん……だと思う。
『けど、どうやら必要なかったみたいだ』
どこまでも優しい表情で、彼は言う。その表情は心の底からその事実に安堵しているように思えた。
『千景はもう大丈夫って……見てて分かったからね』
彼が優しく頭を撫でてくれる。少し気恥ずかしく感じつつも……抵抗はしなかった。内心……少し、嬉しかった。そのせいか、一瞬感情の制御が上手くできなくなって────。
『……あーと、千景さん?』
「…何?」
『結構、密着してるけど……いいの?』
「いい、少しだけ…こうさせて」
彼の温度を確かめるように、強く抱きしめる。覚えている…この温かさに私は救われた事を。
(そんな彼に……私は────)
でも、今はそれを伝えるべきではない。この気持ちは夢ではなくて…またいつか現実で出会った時に、しっかりと伝えたい。
(だから、今は…)
彼とまた出会えた事、彼の温度をまた感じられた事。それだけで今は満足だ。
「って…何もじもじしてるの」
『だ、だって…千景が…なんか積極的だからさ、少しこう、ね?』
「何、はっきり言わないと分からないわよ?」
『ちょ!?さっきより強く抱きしめたら…』
今更何を恥ずかしがってるんだか。あたふたする彼を私はからかい続けた。攻防の果てに、やたらと息を荒くした天草くんに声を掛ける。
「大丈夫?天草くん」
『……ウン、ダイジョウブ』
「大丈夫じゃなさそうだけど……まぁ、その、久しぶりに貴方に会えて、嬉しかったわ」
『……ううん、いいんだよ、僕も千景に会えてとっても嬉しかったからさ!』
本当に嬉しそうにとびっきりの笑顔を浮かべながら、彼はそう言う。その笑顔に釣られて、私も微笑んだ。
『さ、時間だね』
「また、会える?」
『勿論!こうやって会えたんだし、きっとまた会えるよ』
根拠のない言葉だけど、天草くんが言うと不思議と無理ではないような気がしてくる。
『さぁ、皆が待ってるよ』
一際、眩い光が空間に差し込んでくる。
「……またね、天草くん」
『うん、またね、千景』
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「……」
目が覚める。見飽きた天井を仰ぎ見た後、体を起こす。少しだけ頬が濡れているようにも感じだが、気のせいだろう。
「全く……夢の中にまで出てくるなんて。お節介なのも…ここまで来ると達人の域ね」
しかも、初夢でわざわざ出てくるなんて…タイミングがいいのか悪いのか。夢の内容を思い出す中、扉がノックされる。
「千景、起きているか?」
「ぐんちゃーん!皆で初詣行こー!」
「あ…そうだった」
扉の向こうから、私を呼ぶ声がする。初詣は皆で行こうと乃木さんが言っていたのを思い出した。
(昔なら、特に特別な事なんてないただの普通の日だった。でも、今は違う)
「もう大丈夫だから」
その手に握られているのは、あの人から貰った大事な押し花。それを包みこむように握りしめて、扉へと向かっていく。
「あちらでも元気で……天草くん。それじゃ皆の所に行ってくるわね」
そう最後に呟きを漏らし、私は部屋を出た。今年も皆とずっと一緒にいられる良い年になりますように。
なんかわすゆ編の時に比べて天草くん明るくない?っておもったそこの貴方!元々天草くんは明るい子だからね!そこんとこよろしく!(投稿してるお話的に暗くなってるのは仕方ないから許して)
実はもう一つ書いてる番外編があるのでそっちの方もあげられたら次は本編の更新の番です!今年も頑張るぞー!